教授紹介
- 小林 傳司( こばやし ただし)
- 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授
1954年京都市生まれ。78年京都大学理学部卒業。83年東京大学大学院理学系研究科科学史・科学基礎論専攻博士課程修了。専門は科学哲学、科学技術社会論。福岡教育大学、南山大学を経て、2005年4月より現職。
社会における科学技術のあり方について、専門家と市民が同じテーブルで理解を深め提言する市民参加型テクノロジーアセスメント手法の「コンセンサス会議」を日本に紹介、実施。
2001年、科学技術社会論学会の設立にかかわる(初代会長)。
2009年COP15に向けて世界で実施された、地球温暖化をめぐる市民会議World Wide Viewsの日本代表を務める。
著書に「公共のための科学技術」(編著)玉川大学出版会、「誰が科学技術について考えるのか」名古屋大学出版会、「トランスサイエンスの時代」NTT出版など。
今回は、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター、小林傳司(ただし)教授の「科学技術社会論」の講義を取り上げます。4回の講義のテーマは「社会と科学技術の関係を考える」。
東日本大震災と津波に起因する福島第一原子力発電所の事故は、改めて我々に社会と科学技術の関係を見つめ直すことを求めています。先進国にとって科学技術はその経済的繁栄の原動力ですが、1960年代から科学技術がもたらす負の側面が顕在化し始め、社会はその対応を重ねながら科学技術を推進してきました。原子力発電技術は、20世紀を代表する巨大な総合的科学技術の典型でもあります。そして、人々の生活に直結する科学技術の歯車がひとたび狂うと、その災厄は極めて大規模になることを如実に示したのが、今回の事故です。
小林教授の講義では、このような科学技術の性格をきちんと理解し、今後科学技術を活用するために科学技術の専門家はどのような責任を負い、同時に一般市民はどのように関与していくべきなのかを考えます。
科学哲学・科学技術社会論を専門とする小林教授に導かれ、理系・文系の枠を超えて集まった大学院生たちが、正解のない問いをめぐり白熱した議論を繰り広げます。
- 第1回「英国BSE事件が問いかけるもの」 10月30日(日) Eテレ 午後6時
- 中等教育に見られる「正解の必ずある科学」というイメージは、社会の中で利用されている科学や技術の場合には必ずしも成り立ちません。それをまず理解することから始め、イギリスのBSE事件の事例をもとに、科学技術が不確実性を伴った見解しか出せない場面で、専門家をいかに集め、どのように社会的な意思決定をしていくべきかを議論します。
- 第2回「社会的意思決定はどう下すのか」 11月6日(日) Eテレ 午後6時
- 科学技術が不確実性を伴った見解しか出せないにもかかわらず、社会的に意思決定が求められるような“トランス・サイエンス”的状況について検討を行います。科学技術の専門家は「中立的」なのか?「科学に基づく判断」とはどういうことなのか? 科学者に答えを求めても答えが分裂している場合、人々はどのような対応をすべきかを議論し、その上で、今回の福島第一原子力発電所事故で示された科学技術の不確実性をどのように理解すべきか、その課題は何かについて考えます。
- 第3回「想定外!?原発のリスクを考える」 11月13日(日) Eテレ 午後6時
- 『3月11日以前に立ち返った時、原子力発電所のリスク(地震、津波)はどこまで想定すべきだったのだろうか』。大震災および福島第一原発事故について第2回の講義で提示されたこの“問い”をもとに、「科学技術の不確実性」、「想定外」、「リスク」などをキーワードとした討議を行います。学生たちは3つのグループに分かれて議論。各グループの結果発表を聴く教授や学生たちから鋭い質問が投げかけられ、さらに議論は深まっていきます。そして、福島第一原発事故のリスクの要素を分析し、リスクマネジメントにどう繋げていくのかを探ります。
- 第4回「科学技術とどう向き合うべきか」 11月20日(日) Eテレ 午後6時
- いま毎日のように使われる「国民的討議が求められている」という言葉。しかし、その「国民的討議」とは具体的にはどのようなものなのか? 国民・住民の意見はどうすれば反映させられるのか? アンケート調査・パブリックコメント・討論番組・国民投票・市民参加型の議論・国会議員の議論・臨調……。
現代社会の中で大きな役割を果たしている科学技術について、われわれはどのように関与していくべきか。大震災・原発事故を念頭に討議し、社会的意思決定の在り方を探ります。