帝釈山から関東へと入り、続く女峰山を快調なペースで登った田中。
かつての職場があるみなかみ町を訪れるが、恩師の遺影への挨拶もそこそこに、谷川連峰・仙ノ倉山へと向かう。
佐武流山、鳥甲山を登った後、白砂山へ向かうところで、田中は初歩的な地図の読み間違いから、50kmの大迂回を強いられる。
そこには、少しずつ遅れを見せ始めている計画への焦りがあった。
岩菅山、黒姫山と登り、危険な岩稜が待つ戸隠山へ。厚い霧の中、幅50cmの蟻の戸渡り、幅30cmの剣の刃渡りの難所を越える。
続く飯縄山、そして浅間隠山では大勢のファンが田中を待ち受けていた。丁寧にファンにサインをする田中だが、表情は冴えない。
榛名山、妙義山、荒船山を経て、八ヶ岳の天狗岳へ。その下りで、田中は右足の甲を捻挫してしまう。初めは軽いと思っていた足の怪我は思いの外長引き、山上の山小屋で6日間の停滞を余儀なくされる。
そこで田中は意外な言葉を口にする。「思うような旅が出来ていない」
予定が進まない焦り、そして押し寄せる大勢のファンへの戸惑いの中で、歩く原動力になっていた、登る喜びや達成感、そして挑戦する心がいつのまにか失われていたことに気づく。
ここで田中は予定を変更。当初は秩父や奥多摩の低山へと向かう計画だったが、先に南アルプスへ向かうという。
痛めた足もまだ完治していない。だが、そこには田中の重大な決意があった。
去年残雪の中苦難の末、歩き切った南アルプス。そこを歩くことで、挑む気持ちを確認したい、と考えたのだ。
右足に気遣いながら、御座山、茅ヶ岳を登った田中は、いよいよ南アルプスへ。
悪天候の中、険しい岩稜が連なる鋸岳を踏破する。
次に目指すのは二百名山最高峰3026mの農鳥岳だ。
絶好の天気の中、田中は南アルプスの巨大な懐の中へと入っていく。
去年、田中を苦しめた南アルプスの峰々を眺めながら登っていく田中。
そして北岳から続く標高3000m天空の稜線を一人歩くうち、田中はいつしか熱い気持ちを取り戻していた。
No | 山名 | 標高(m) |
---|---|---|
029 | 帝釈山 | 2060m |
030 | 女峰山 | 2483m |
031 | 仙ノ倉山 | 2026m |
032 | 佐武流山 | 2192m |
033 | 鳥甲山 | 2038m |
034 | 岩菅山 | 2341m |
035 | 白砂山 | 2140m |
036 | 黒姫山 | 891m |
037 | 戸隠山 | 1904m |
038 | 飯綱山 | 1917m |
039 | 浅間隠山 | 1757m |
040 | 榛名山 | 1449m |
041 | 妙義山 | 1104m |
042 | 荒船山 | 1423m |
043 | 天狗岳 | 2646m |
044 | 御座山 | 2112m |
045 | 茅ヶ岳 | 1704m |
046 | 鋸岳 | 2685m |
047 | 農鳥岳 | 3026m |