6月27日(日)
オーストラリアのシドニーでは、二、三ヶ月ほどゆっくりするつもりです。まずシェアハウスを探しました。シェアハウスとは、日本流に言えば「間借り」です。シドニーのインターネットサイトには、たくさんの「間借り」情報があります。土地勘がないので、ぜいたくですが都心の物件に絞って「ボクらは日本人夫婦です。インターネットが無料で、専用の部屋を探しています」とメールしました。反応は上々です。半分以上はホテルのように豪華な家具、そして高層マンション、それなのに相場より断然家賃が安い部屋からで、ぜひあなたたちに貸したいとあります。王様暮らしができるわいと喜び勇んで「部屋を見たい」と返信すれば、今イギリスにいるから弁護士と契約してくれと言います。いろいろと質問しても微妙に質問に答えてくれません。他の豪華物件も同様に、家主はニュージーランドかエジプトか、とにかくどこか外国にいます。そして絶対に部屋を見る事ができず、会えず、決まって弁護士を紹介されます。契約を迫ります。どうやら振り込めサギのようです。だまされませんよ、ボクら。
6月20日(日)
三ヶ月間におよぶニュージーランド一周ドライブが終わりました。唯一の心残りは、数百枚のブラジャーを並べたエキセントリックな壁、 通称「ブラフェンス」が二年前に撤去されていたことです。またニュージーランドにしか生息していない鳥キウイを見逃したけど、これは意外に悔いなし、です。オークランドへもどり、相棒のスクーターを売り払い、ラーメンを続けて食べ、ボクらにとっての新大陸、オーストラリアへ飛びました。シドニーは4万年前からアボリジニが住み、オーストラリアにおける最初の植民地ですから、おそらくずいぶんといいところなのでしょう。散歩すると、間口一間半の家が壁を共有して一ミリのすき間もなく立ち並んでます。それぞれ勝手に改築した個性あふれるテラスハウスと呼ばれる長屋の一軒が、とんでもないことになっていました。玄関先に数えきれないほどのインコが。ヒッチ・コックの映画「鳥」状態です。インコのさえずりは、向こう三軒両隣からクレーム必至の、激しい騒音になっていました。
6月10日(木)
「カウリ」という木をご存知ですか。ニュージーランドでしか見られない巨木です。伐採し過ぎたため、国が保護している貴重な木です。寄り道してワイポウア・カウリ・フォレスト保護区に入り、現存する最大のカウリ、その名も「森の神」に対面しました。幹の周囲がなんと13メートル。高さ51メートル。低い位置の枝は自然に抜け落ちるため、天を支える柱のようです。祐子は声にならない声でうめき、驚いてました。本当にデカいです。少し離れた遊歩道には、四本のカウリの大木がくっつきそうに並んだ、通称「四人姉妹」。その先には幹の周囲16メートルを誇る、一番太い「森の父」が鎮座していました。父は樹齢2,000年だそうです。ちなみに樹齢100年だと、BABYと呼ばれます。
6月5日(土)
ニュージーランド最後の目的地、最北端のレインガ岬へラストスパートです。前夜は雷をともなう激しい嵐に襲われ、築120年のおんぼろ宿ごと吹き飛ばされそうでした。朝はまだ滝のような雨が降っていましたが11時には上がり、岬を目指して一直線。半島の西側は90マイルの砂浜が続きますが、それは地図の上で、ボクらの視界は相変わらず羊と牛です。そういえばこの国で畑を見た事がありませんが、食料自給率はどうなっているのでしょう。最北端のレインガ岬から海を望めば、左側のタスマン海と右側の太平洋がぶつかり、白い水しぶきがあがっています。先住民のマオリの人々が魂の通り道とあがめていたここから、東京までは8,831キロとありました。思えば遠くへ来たのもです。
5月28日(金)
フェリーに乗り3時間半、5週間ぶりに北島に戻りました。冷たい雨でした。ローワーハットの町でボクらのブログを読んでくれた人を訪ね、初対面でしたが、晩ご飯やワインをごちそうになり、洗濯機を借り、二晩もやっかいになりました。翌日はワンガヌイという別の町で、やはりブログにメッセージを入れてくれた人の家へ押しかけ、またまた晩ご飯とワインをごちそうになり、連泊しました。インターネットのおかげで、聞いたことのない町に住む日本人からお声がかかり一緒に食事ができるなんて、一昔前では考えられないですよね。ところでスクーターのベルト交換ランプが点灯したため、予定を変更してオークランドへ向かいました。たった500キロの距離ですが、連日の豪雨で、5日もかかりました。宿の人は異常気象だと空をにらんでます。
5月22日(土)
カイコウラ半島を6時間かけてトレッキングしました。日かげで寝そべるオットセイを腹ばいになって写真に撮り、断崖絶壁からは海を望んでクジラを探します。望遠レンズのはるか先に、水しぶきが上がり、白く光ります。かたわらに立つ物知り顔のひげ面ニュージーランド人が言うには、残念ながらクジラではなくイルカのようです。たとえそれが象であったにしろ、ボクにはわかりませんでした。無数の海鳥が波の上で揺れています。果かんに海にもぐる鳥は、昼飯だと思います。
足を滑らせば転落しそうな斜面を、ときどき足を滑らせながらおりれば、小石の浜がゆっくりとカーブを描いて続きます。潮に置き去られた海そうと、寝ること以外には仕事がなさそうなオットセイ。門構えのようにそびえる二つの巨石をくぐり、崖の階段を登れば、うねうねと緑が重なる牧場に出ました。何十頭もの黒い牛がボクらの前に立ちはだかっていました。
5月15日(土)
ニュージーランド観光の目玉のひとつは、ペンギンです。オタゴ半島にイエロー・アイド・ペンギンの生息地があり、まだ明るい夕方、ペンギンが海から1羽ずつ戻って来ます。砂浜をよちよちと歩く姿は、帰宅中の会社員のようです。この半島より北の町オマルでは、ブルー・ペンギンに会えます。小さなブルー・ペンギンは臆病なのか、暗い水際の岩の影で、2、30匹ほどの集団を作ってから、一斉に走り出します。ときどきよそ見をしてるペンギンが道に迷います。必死になって仲間を探す姿は、とてもユーモラスです。
5月8日(土)
湖に面したテアナウの町で豪雨に会い、町全体で電話とインターネットが不通になりました。雨が去った湖は、木々やベンチやさん橋を飲みこみ、水面から顔を出したピクニックテーブルが妙にシュールでした。ボクらは晴れ間を逃さず、年間降雨量が7千ミリを超すミルフォードへスクーターを走らせましたが、すぐに嵐のような雨に見舞われ、全身がずぶ濡れです。翌日、暗い曇り空。昨日のリベンジとばかりにレンタカーを借りて再度ミルフォードへ向かうも、またもや豪雨。しかしこの雨が、黒い岩肌の山を無数の白い滝となって流れ落ちます。ぐるりと見わたせば、数えきれぬ滝、滝、滝。車から出て、濡れるのもかまわず写真を撮りまくりました
。勝手に「千本滝」と名付け、我が家的には世界遺産に決定です。
4月28日(水)
湖に面したリゾート地ワナカで、祐子がスカイダイビングに挑戦しました。約4,500メートルの上空から、真っさかさまに飛び降りる、それだけと言えばそれだけの遊びに、メキシコでのひと月分の生活費がかかりました。実に大冒険です。宇宙船に乗るようなジャケットを着せられた祐子が、軽飛行機で飛び立ち、雲に消えました。留守番のボクは空を見上げ、白い雲を見張ります。やがてごまのように小さな黒い点が現れ、ボクは夢中でシャッターを押し続けましたが、着地した人を望遠レンズでよくよくのぞくと男性でした。まちがえたようです。祐子はどこを飛んでいるのでしょう。
4月24日(土)
南へスクーターを走らせ、ウエストランド国立公園へ入りました。ふたごと呼ばれる二つの氷河が目当てです。まずフランツ・ジョセフ氷河を歩いてみました。あこがれの氷河ウォークです。谷に広がる砂利のグラウンドにいく本かの滝が落ちています。氷が融けた冷たい小川を何回かまたぎます。カンジキをはき、足の裏で氷を踏み締めながら、一歩一歩ゆっくりと登ります。土ぼこりで黒く汚れた氷河の末端ですが、一足ごとに氷の青が濃くなり、白が深まり、結晶が輝き、表情が複雑になってきました。ところで祐子のくつは穴があいているようで、氷河の冷たさもしっかりと味わっているようです。
4月16日(日)
アーサーズ・パス国立公園のアバランチ・ピークをトレッキングしました。林の中の急こう配を登り続け、突然視界がひらけたので頂上かと思いきや、木の生えない森林限界でした。ランドセルほどの大きな石がごろごろと転がっている、道とも言えぬ道を、時には両手で岩をつかみながら登ります。見上げれば、すぐそこが頂上とも思えるのですが、登っても登っても山は上へ続きます。尾根にたどり着けば、両サイドが崖です。砂利で足が滑ります。あおげば走るほどに早い雲、汗を冷やす冷たい風、岩にこびり付いた赤紫の小さな花、そしてわずかな土を白く染める雪、溶けかけた氷。右手には氷河が広がっていました。
4月11日(日)
ガイドブックによると、ニュージーランドの国民的スポーツはトレッキングだそうです。こちらではトランピングと呼ばれ、いわゆる山歩きです。ボクらも挑戦してみました。手始めに距離の短いトラナキ・フォール・トレッキング、2時間。翌日トンガリロ山を縦断するおよそ19キロ、7時間半。頂きから大地を遠望すれば、折り重なってかすむ山々が果ての果てまで続いてました。南島へわたってから、ニュージーランドで一番人気のエーベル・タズマン国立公園の海岸線、22キロで7時間。途中、海をわたるときズボンを脱ぎパンツ姿になったら、それを見た若い女性もズボンを脱いでました。すれ違う時、アイコンタクトか敬礼でもと思いましたが、下着姿の女性に照れてしまい、ボクもまだまだ青いです。ちなみに祐子はズボンをひざまでたくしあげましたが、効果なくお尻まで濡らしてました。
4月2日(金)
ニュージーランド一周ドライブが始まりました。最南端の道路の果てまでひたすら南下します。初日、冷たい雨。第四の都市ハミルトンに泊まり、二日後、洞くつの町ワイトモ着。洞くつの中で満天の星のごとく輝く、天の川以上に美しいツチボタルに感動しましたが、ツチボタルという名前なのに、ハエだそうです。温泉の町タウポへ。
温泉は切なくなるほど重苦しい曇り空の屋外にあり、正直寒かったです。ニュージーランドのドライブは車が少なく、次の町が近くて気が楽です。ただほとんどの道が100キロ制限なのは、のんびり派のボクらには辛いです。
人より羊が多いと言われていますが、今のところ牛の方がはるかに多いですね。