クローズアップ現代

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No.13 クロ現が伝えた“2012年”

2013年4月に、「クローズアップ現代」(以下、クロ現)は放送開始から21年目に入りました。これを機に、テーマ曲、番組ロゴとスタジオが一新! 今回のウェブ特集は、リニューアルのプロジェクトに携わった方々に、そのコンセプトや完成までの取り組みをうかがいました。

テーマ曲

リズム際立つオープニングと、番組の想いをのせたエンディングへ

2013年3月某日、番組の新しいテーマ曲が録音されると聞き、都内の音楽スタジオにうかがいました。
クロ現の歴史では8曲目にあたるテーマ曲を作曲したのは、NHK「ファミリーヒストリー」などのテーマ曲も手がけている横山 克さんです。

スタジオには室内楽のオーケストラとピアノ奏者の皆さん。その隣のコントロールルームには、横山さんを中心とした音楽スタッフや、クロ現の番組担当者、NHKの音響効果専門のスタッフが陣取ります。
「オープニングはタッタッタッタッと歯切れのいい感じでいきましょう!」 演奏が始まると、横山さんからそのつど指示が入り、音の強弱や、細かいパートのチェックを繰り返して、オープニング曲、エンディング曲ともに録音が進んでいきました。

録音が終わったところで、横山さんと、クロ現の編集責任者を務める関 英祐さんにテーマ曲の作曲と録音までの過程についてお話を聞きました。

横山 克さん

作曲家
国立音楽大学作曲学科卒業後、映像音楽を中心にPOPS等の楽曲提供も積極的に行う。近年では、ももいろクローバーZへの楽曲提供や番組テーマ、ドキュメンタリー音楽、ドラマやアニメの劇中歌等、幅広い分野の音楽を手がける。サンプリング/シンセサイザーを融合したサウンドメイクや、クラシックアレンジにも定評がある。

――
横山さんの曲は、どのような過程でクロ現の新テーマ曲に決まったのでしょうか?

作曲家の方や音楽プロダクションに依頼して、コンペ形式で選びました。音響効果の担当者が30曲ぐらい、現場のプロデューサー、ディレクターが実際に聴いたのは十数曲ですが、最初の段階で2、3曲には絞れていましたね。どの曲をどなたが担当されているか、まったく知らされずに聞きましたが、みんな、横山さんの曲の印象が強く、かっこいいねという反応でした。

左から2番目が、クロ現編集責任者の関 英祐チーフ・プロデューサー


――
横山さんは作曲に向けて、どのようにイメージをされたのですか?

横山 作曲の依頼のなかに、報道番組としていろんなことを取材するけれども、あくまで『前向きな姿勢がある』という内容があったんです。そこをすごく解釈しようとしましたね。
作曲に影響したのは番組のブランドカラーの赤でした。実は番組の曲を書くときに、色を意識することは多いんです。例えば緑だったら草原のような爽やかな曲になっていたかもしれませんが、赤だから、リズムで攻めてみようと。“ラララララー”とメロディーでうたうのでなく、“チャーチャー、チャッチャッ、チャーチャー、チャッチャッ”って弾くっていう感じで、特に頭のインパクトを大事にしました。毎日テーマ曲が流れるときに、刻んだリズムで『あ、クローズアップ現代ね』と思ってもらえるように。 曲作りの過程も、最初ピアノでポロンポロンと弾いてみたんですがダメで(笑)、ベランダのいろんなところを拳でコツコツたたいたりしたんです。そのうちリズムが出てきて、『あっこれだな』って。そこからコンピュータの前で膨らませていったんですね。

――
オープニング曲「Open Your Eyes」を聞かせていただきました。
冒頭のリズム感から、しばらくすると流れるような曲調に展開していきますね。

横山
流れるような音楽に変わるのは、スタジオにいらっしゃるキャスターの国谷さんをイメージしてのことです。番組のオープニングはその日のVTRが出て、国谷さんのところに続いていく、一連の流れです。

――
一方のエンディング曲「Close Your Eyes」はオープニングのイメージを生かしつつ、雰囲気が違ったものになっています。

横山
オープニング曲は“縦”、と言いますか、インパクトをつけるためにリズム発想で作っていて、エンディング曲は同じモチーフを “横”、メロディーで解釈して作っているんです。価値観をかえてゆったり、番組をしめくくるイメージですね。

最初は低音の印象が強く、もう少し緊張感、深刻さ、憂いがあるような曲でした。(音楽の選定会議で)今までの番組に流して試したら、アルジェリア人質事件のような重いテーマの回にはいいけれど、「ぎんさんの娘 長寿の秘訣」にあてると重すぎる。人間に寄り添うテーマもありますから、多少優しいところを拾っていっていただいて、理想に近づいたんです。
クロ現は難しいテーマを扱うときにも、最後になにか一つでもヒントを、あるいは一つでも意見の合意を…必ずしもできないんですけど、そういう希望になることも残して、番組として終わりたいなと考えていて、そういう想いがある曲になっていると思います。

2013年2月、音楽選定会議の様子


番組ロゴデザイン

番組のキーワード“合意形成”を洗練されたデザインで表現

赤とグレーを組み合わせたシンボルマークと、その右に番組タイトルの文字。これが21年目に入ったクロ現を象徴する新しいロゴデザインです。
番組のデザインを統括するNHK デザインセンターの岡部 務さんと、ロゴをデザインしたアートディレクター、甲谷 一さんに、リニューアルのコンセプトや実際にできあがるまでの取り組みについてお話をうかがいました。

岡部 務さん

NHK デザインセンター
映像デザイン部 チーフ・ディレクター
NHKニュース番組のデザイン統括として、番組タイトル、スタジオのデザイン計画やブランディングに携わる。クロ現の現在のスタジオセットも4年前に設計を担当。

甲谷 一さん

(有)Happy and Happy
アートディレクター/グラフィックデザイナー
タイポグラフィを活かしたデザインを得意とし、ロゴやブックデザイン、広告等のデザイン全般を手がける。NHKのロゴデザインとしては、「NHK BS1」「NHK BSプレミアム」のほか、「海外ネットワーク」「未解決事件」の番組ロゴなど。2008年、09年 ニューヨークTDC賞、他受賞多数。

――
今回のリニューアルには、どういうねらいがあったのでしょうか?

岡部
私たちの部署は、報道局のニュース番組について番組タイトルやスタジオセットなどのデザイン計画を毎年9月から始めるんです。10月から全番組に調査をかけ、その後、番組の編集責任者やデスクと一緒に打ち合わせを始めていくんですね。クロ現の打ち合わせで何を議論したかといえば、文字デザインの改善です。一番の課題となるロゴとシンボルマークをより洗練されたものにしよう、という方針がでました。 どうブラッシュアップするか考えているとき、キャスターの国谷さんが会議の場でよく「合意形成の場になるような番組でありたい」とおっしゃっているという話がでて、それをわかりやすく可視化したシンボルにしようということになったんですね。また、「クローズアップ現代」は、番組のコンセプトがそのままタイトル名になっているわけだから、ここにもう一度立ち返ろうと。よく現場では、「鳥の目線、虫の目線」という議論をします。大局的、背景といった目線と、現場の目線ということですね。それがわかりやすく伝わるロゴにしようよ、という議論をして、これらを簡単にまとめて(笑)、甲谷さんに依頼しました。

――
依頼された甲谷さんは、「合意形成」という依頼を聞かれてどうでしたか?

甲谷
「合意形成」が番組作りのキーワードにあるということなんですけど、それだけをストレートに表してしまうと、番組を見ている人にはちょっとわかりづらいので、「合意形成」だけでなく、「クローズアップ感」ということも入れたいなと思いました。「クローズアップ感」というのは、映像や写真なら一部分に焦点をあててズームで寄っていけば、すごくわかりやすく出るんですが、2次元のシンプルなロゴで表そうとすると非常に難しくて。すごく悩みました。 あと、番組を僕なりに解釈すると、「今の状況(現代)の一部分を切り取って見せる」みたいなことかなと思って、自分のなかでロゴ作りのテーマとして作っていこうと思ったんですね。

僕は最初にこういうラフを書くんです。ベッドにもメモ帳を置いておいて、寝る前に浮かんだアイデアをサッと書き留めたりもします。こうやって「合意形成」「クローズアップ感」や「現代を見る」という3つをどう表そうかと思考錯誤して、どの案がかたちにできそうかな、コンセプトにあうかなと、整理していく。そこから、コンピュータを使って形にして、ブラッシュアップしていきました。

こちらは、文字のデザインです。ゴシック、明朝がまざったもの、先端が丸くなって優しさを出したもの、シャープなものなどを検討して、文字を作っていますね。今回は既成のフォントで組んだようなシンプルなロゴにしたいとのお話がはじめにありましたので、あまり逸脱しないよう、スタンダードに見える文字を目指しました。

数々のデザイン案

――
この文字を見たとき、まさに新しいスタンダードという感じがしました。

岡部
非常にシンプルで丁寧に、ち密に計算されたものにこそ、クオリティがあるということですよね。
クロ現って、NHKでドキュメンタリーを志している制作者たちの「教材」みたいなところがあるんですよ。僕たちの仲間は最初、地域局に配属されるんですけど、先輩の番組統括やデスクたちとともに、毎日19時半になるとクロ現をみて、(番組作りを)勉強するわけですよね。そういう教材みたいな番組でもあるので、放送の質を向上させるためにも、クロ現のデザイン向上をするということはすごく効果的なんですよ。

――
すごい数のデザイン案ですが、このなかからどうやって絞っていったのですか?

岡部
クロ現の番組チームには、こちらで4案ぐらいに絞ったものを提出しました。それをさらに2案に絞って、テロップのデザインや、オープニングのモーショングラフィック(CG)を実際に開発して、検討しました。


2013年2月の番組ロゴ会議。
VTR素材にロゴ案をのせて検討

甲谷
2案に絞るときに話に出ていたのは、今のロゴとその前の世代のロゴが丸い形をしていること。それを今回も生かすのがいいんじゃないかということで、どちらも丸いシンボルマークが残りましたね。
岡部
20年続いている蓄積がある番組なので、まったく違うものが出るよりは、丸い形を継続したほうがいいだろうということですね。
――
最終的に決まったデザインは、どのようにイメージされたのでしょう?

甲谷
レンズやシャッターをイメージして図案化したものです。「焦点をあてて“視る”」ということを表しています。また、丸い形というのは「調和」を意味しますので、8つの図形が集まり、ひとつの丸い形となることで、「合意形成」というキーワードも込めています。この8つの図形がすべて中心に歩み寄っていくと、完全に一体となります。このような想いをロゴに込めることで、「クローズアップ現代」ならではのロゴになるんじゃないかと考えました。
シンボルマークの赤は、番組のブランドカラーを引き継いでいます。
グレーの色は、赤に強い色をぶつけるのではなく、一歩引いた色を使うことで、赤がより印象的に見えること、そして洗練された感じや、落ち着いた印象を与えるためです。
――
番組冒頭のモーショングラフィックはどのように検討されたんですか?

岡部
モーショングラフィックは、今、手短なものがいいとされています。かつてNHKスペシャルの大型シリーズでは、90秒や60秒のオープニングタイトルがスタンダードだった時期があって、僕もそういうタイトルをたくさん作ったんですけど、最近はぱっと番組に入る。番組のファーストカットがその日の取材対象のVTRというわけですね。 クロ現のこの20年でみても、1993年の放送スタート頃のオープニングはすごく力投しているCGですよね。それがだんだん短くなっています。
「ニュース7」が終わって、「クローズアップ現代」になったら、ぽんと、番組の取材内容がわかるVTRがあって、ひゅってシンボルが出て進んでいく。CGを魅せるというよりは「ロゴやシンボルマークに込めたメッセージが伝わるモーション」を開発したということなんです。

確かに、クロ現のこれまでのモーショングラフィックを振り返ると、その変遷が感じられます。(ウェブ特集No.07でご覧いただけます)
21年目に突入したクローズアップ現代。引き続き、お楽しみください!

スタジオセット

スタジオが全面LED、消費電力が5分の1に!

クロ現の放送がお休みに入った2013年3月末、新しいスタジオセットの準備が行われている現場に潜入! でも一見すると、これまでと同じようなセットにも見えます…どの部分がリニューアルされたのでしょうか? 番組ロゴ編で登場していただいたNHK デザインセンターの岡部 務さんに聞きました。

岡部 務さん

NHK デザインセンター
映像デザイン部 チーフ・ディレクター
NHKニュース番組のデザイン統括として、番組タイトル、スタジオのデザイン計画やブランディングに携わる。クロ現の現在のスタジオセットも4年前に設計を担当。

――
今回のリニューアルのポイントはどこにありますか?

岡部
視聴者の方はどこが変わったんだろうと思われるかもしれませんね(笑)。環境に貢献するスタジオになったんですよ! あの背景の電飾全部をLEDに変えました。これまでは電球とLEDを併用していたんですが、電球をやめたことで、消費電力は5分の1になりました。週4日の番組ですから、これは非常に大きいですよ。

――
セットのデザインは継続されたわけですね。

岡部
番組の構成が変わらないことから、セットを変える理由はなかったですね。今回はリノベーション。現在の資産を改善するというスタンスです。
このセットは、もともと理にかなったセット、欠点がないセットなんです。4年前に僕が設計をしているんですけど、そのときに『バーチャルセット』を導入しているんですよ。『バーチャルセット』とは番組のなかで図表をCGで出したり、簡単なCG模型を出したりすることです。僕は“情報装置”と呼んでいますが、その装置の強化をしたことが、当時の番組の大きな進化だったんです。
『バーチャルセット』で番組の演出を強化するとなると、背景はモノいうセットじゃないほうがいいんです。クロ現には、キャスターの国谷さん、情報のCG、モニターの3つがある以上、背景のセットはなにがしかの情景を醸し出さないほうがいい。そうなってくると“白い壁”になるんですね。それも、“情報装置を持った、クオリティの高い白い壁”です。
また、スタジオセットは、番組のブランドカラーとも表裏一体になっています。ちょうど真ん中には、電飾で赤に染めた水平ラインが通っていますよね。それがクロ現のブランドカラーの赤を表したものなんです。