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これまでの放送

No.3203
2012年5月24日(木)放送
眠れる熱エネルギーを活用せよ

ずらりと立ち並んだ工場の施設。
特殊なカメラで見ると熱を出している高温の部分が赤く浮かび上がります。
街なかでも、空調の室外機などあちこちで熱が放出され捨てられています。
こうした排熱を有効利用することで深刻化するエネルギー問題の解決につなげようという取り組みが始まっています。
工場からの排熱を繰り返し使うことで燃料の消費を大幅に減らすという研究。

排熱利用の専門家
「(熱は)使い捨てるものというのが前提だった。
そうじゃなくて、熱は循環できる。」

意外な場所の身近な熱を冷暖房などに利用する取り組みも広がっています。
建物の下にある地中の熱を使う試み。
都市全体に張り巡らされた下水網から熱を取り出す挑戦も始まりました。

下水熱の専門家
「下水が資源ですね。
資源が流れている、これをうまく使おうと。」

これまで、注目されることがなかった熱のエネルギー。
秘められた可能性をどう生かすか、その最前線を追います。

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“捨てられる熱”を徹底利用せよ

今、企業の間である設備を導入する動きが広がっています。

「こちらがエンジンと発電機になります。」

まずは、電力不足に備えるための自家発電機。
そのすぐ裏側に設置したのは、発電機から出る排熱を建物の空調などに利用するボイラーです。

「こちらが排熱を使って蒸気を発生させるボイラーになります。
夏はほぼこれで賄えると思います。」



電気を作り、そのときに出る排熱も利用するこのシステム。
「コージェネレーション」と呼ばれています。
これまで工場で使う電気と熱はそれぞれ別々の燃料から作られていました。

このうち、発電に使う燃料が持つエネルギーを100%とすると実際に電気として取り出せるのは40%。
残る60%は排熱となっていました。
コージェネレーションではこの排熱を利用します。
その分、もともと熱を作るのに使っていた燃料を大幅に減らすことができるのです。

コージェネレーションを導入した富士重工業 群馬製作所 関口正樹さん
「電気と熱 両方合わせて考えますと、電気だけより省エネルギーというふうに考えております。」

 

10年前からコージェネレーションの設備を販売しているこの会社では、去年の原発事故を機に企業からの注文が殺到するようになりました。
昨年度の実績は、その前の年の15倍。
今年度はさらなる拡大を見込んでいます。
販売会社では取り組みを一歩進め、自然エネルギーとの連携にも乗り出しています。
太陽光や風力などの自然エネルギーは天候に左右されるという弱点があります。
そこで、自然エネルギーの出力が低下するところをコージェネレーションで補うシステムを開発しようというのです。

例えば、太陽光発電は太陽が出ていないと必要な電力を賄うことができません。
こうしたときだけコージェネレーションを稼働させて、不足部分を補い安定したエネルギー供給を実現させる仕組みです。

 

エネルギーアドバンス 三浦千太郎社長
「太陽光、あるいは風力、あるいはバイオマスみたいなものをいれても、コージェネレーションで不安定部分を完全にカバーできると。
再生可能エネルギーとの連携は非常に取りやすいシステムになると思っています。」

工場などから出る排熱を徹底的に使い尽くそうという画期的な研究も始まりました。
東京大学の堤敦司教授は工場から出る排熱を1回だけでなく、何度も繰り返し利用する方法を考えています。

 

「私たちはエネルギーを完全に使い捨てる、使い捨てするものだというのが前提だったわけですね。
そうじゃなくて、熱は循環できますよと。」

堤さんが注目したのが、熱を持った気体を圧縮すると温度が上がるという原理です。

通常、燃料を燃やして蒸気などの形で利用した熱は使い終わると温度が下がり排熱として捨てるしかありません。
堤さんは、温度が下がった熱を圧縮することで再び温度を上げようとしています。
温度が上がればその熱は元どおり利用することができます。
これを繰り返せば圧縮するのに多少のエネルギーを使うだけで熱を何度でも利用できるようになり捨てる熱はなくなります。
新たに燃料を追加する必要もなくなるため大幅な省エネにつながるというものです。

本当に理論どおりいくのか。
実験用のプラントに圧縮機を取り付け2年にわたる実証試験が行われました。
結果は成功。
圧縮に使うエネルギーを含めても従来に比べ、エネルギー消費を7分の1に減らすことができました。

実証試験を行った新日鉄エンジニアリング
木内崇文マネージャー
「最初、半信半疑なところも自分にもあったし、会社もそう考えていたところもありますので、理論の世界から実証の世界へ持って行けたので、非常に良かったというふうに考えています。」

東京大学 堤敦司教授
「エネルギーの使い方そのものの原理を新しい原理に変えたと。
今、用いられているエネルギー技術ですね、その全てに原理的には適応できることになります。」

熱利用の制約を根本から取り払おうという試みも始まりました。
熱は冷めてしまうため保存したり運搬したりするのが困難です。

その壁に挑んでいるのが九州大学の石原達己教授です。
石原さんは、工場の排熱を使って水から水素を作ろうとしています。
排熱のエネルギーを水素に蓄えようというものです。
水素は今後、普及が期待される燃料電池自動車などの燃料となり、保存や持ち運びも可能です。
排熱の利用範囲が広がればその分、エネルギーの消費を減らすことにもつながります。

「水素という形にして持ってきて実際に僕らが使うところで使おうと。
そうすると時間と空間をこえて、今使われてないエネルギーを有効に運んできて、また使う」

実用化の鍵を握るのは水素を水蒸気から分離するときに使う「電解質」と呼ばれるフィルターです。
石原さんはさまざまな元素を組み合わせ新たな電解質の開発に成功しました。

電解質は、水蒸気を分解する際に酸素だけを通すことで水素と酸素を別々にする役割を持っています。
しかし、従来の電解質が機能するには1000度もの高温が必要でそれより、はるかに温度が低い工場の排熱では酸素を通せませんでした。

これに対し、石原さんが開発した新しい電解質は、300度で機能するため工場の排熱を利用することが可能となったのです。
開発にあたっては、3年がかりで200種類に及ぶ元素の組み合わせを試しました。
さらに、性能を高めるためレーザーを使って200分の1ミリまで薄く加工しました。
石原さんは現在さらに低い温度の排熱も利用できるようにしようと研究を進めています。

九州大学 石原達己教授
「排熱を回収して、もうかる産業が日本の中からできあがって、それが新しい日本の大きな柱となって世界のエネルギーの使用量を減らして、そういう問題を解決するのに貢献できたらと思います。」

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眠れる熱エネルギーを活用せよ
ゲスト梶山恵司さん(富士通総研)

これ(熱利用を巡る研究や開発)はもうまさにこれからの産業で、正しい一歩です。
エネルギー消費削減の可能性っていうのは膨大ですので、これこそがまさにこれからのエネルギー戦略の根幹になるべきです。
しかもエネルギー消費が削減するということは、国内での投資です。
しかもそれによって、CO2の削減とか、環境への負荷も削減することができるということですので、今までのような、エネルギーを外から買うと、これは外にお金が出ていくばっかりですけれども、エネルギー消費削減は、まさに国内でビジネスを成長させるということですから、まさにこれこそがこれからのエネルギーの本来の姿ということが言えます。

●地方でのビジネスで日本の成長へ

電力の場合は、系統につながればどこでも使えます。
ところが熱の場合は、作った所で使わなければなりませんので、そういう点では現場現場で対応が必要ですし、しかも太陽熱とか、地中熱とかですね、いろいろな再生可能エネルギーの組み合わせも可能になります。
そういう点では現場ごとにでも特性が異なりますので、まさに現場に合わせて対応していくということで、地方でのビジネスにもつながるわけです。
ですからそこはもう、膨大な可能性があります。

●経済成長とエネルギー削減 どう両立させるか

経済成長とエネルギー削減の両立こそが、まさに21世紀の経済の在り方です。
まずこちらをご覧ください。
これはですね、ドイツと日本を比較したものです。
ドイツは経済成長しながらエネルギー消費を減らしています。
むしろエネルギー消費を減らすことこそが、成長の源泉になってるわけですね。
これに対して日本は、GDPの成長に伴ってエネルギー消費も拡大していると。
まさに20世紀の成長パターンそのままなわけです。
ですからこれを、これからはこういう姿、21世紀の新しい経済社会の姿に変えていくというのが、エネルギー政策の根幹となるべきです。

ドイツでは、まず2000年に、再生可能エネルギーの電力の買い取り制度を導入しました。
これは日本がようやくこの7月から導入しようとしているものです。
それとあとは2003年に、電力で出来た熱を回収する、いわゆるコージェネですね、これを使った発電の電力も買い取る制度を作りました。
これによって熱の利用が一気に広がっていったわけです。

普通の化石燃料で発電した電力よりも、若干高い価格で買ってくれると。
それによってインセンティブが非常につきましたので、より熱を有効利用しようとする動きが広がっていったわけです。

●なぜ日本では熱利用が遅れたのか

オイルショックのときに、日本は努力して省エネ大国になったのは、これは事実です。
ところが、特に80年代の後半から、エネルギー価格がだいぶ安くなりまして、それで省エネの進歩が止まってしまったと。
ですからそれにもかかわらず、省エネ大国という神話だけが残ったというのが実際のところです。

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身近な熱の活用 都市は宝の山

おととい(5月23日)開業した東京スカイツリー。
人々が注目するのは上のほうばかりですが実は地下にも画期的なシステムが導入されています。

「こちらは冷暖房用の冷水、温水をまとめて作る場所になります。」

施設の冷暖房に使われているもの。
それは地中熱です。
青いチューブの中を循環しているのは、大量の水です。
大気に比べて、夏は冷たく、冬は暖かい地中の熱を運び出しています。

地中熱を運搬する水は、この送水管を通して、施設全体さらには近隣の建物にも送り出されています。

 

 

その範囲は、周辺2つの駅を含む10ヘクタールに上っています。
地中熱というのは、火山帯の地下2、3000メートルにある地熱とは異なります。
水を流すチューブを埋める深さはせいぜい100メートルです。
温度は年間を通じて15度前後。
冷暖房に使うエネルギーを減らす効果があるといいます。
通常の冷暖房は大気を利用しています。
しかし、夏は熱い大気を冷やすために、冬は冷たい大気を暖めるために多くのエネルギーを消費します。
これに対し地中熱は、大気に比べ、温度変化の幅が小さいため冷やしたり暖めたりするエネルギーが少なくて済むのです。
東京スカイツリーの一帯では地中熱の利用によってエネルギーの消費を48%、CO2の排出を40%削減できる見込みです。

東武エネルギーマネジメント 今野真一常務
「どこでもできるという普遍性がある手法なので、いずれ、これが広がっていくのではないかと思っているところです」



大気との温度差を利用できるのは地中熱だけではありません。
温度変化の少ない河川や海水などの熱を周辺のビルや観光施設の冷暖房に利用する取り組みが各地で始まっています。

さらに、思わぬ場所の熱を利用する研究も始まりました。
なんと下水です。
風呂やシャワーの排水が流れ込む下水。
大気より温度が高めになるため、その熱を暖房や給湯に利用しようというのです。

下水網は、街じゅうに網の目のように張り巡らされているため、実用化できれば地域全体のエネルギー消費を大きく減らすことができます。
ことし3月、国の研究機関や大学、民間企業が共同で取り組む下水熱の実証試験が始まりました。

大阪市立大学 中尾正喜教授
「これがみなさんが家庭とかで使った生の下水ですね。
下水が資源ですね。資源が都市内にたくさん。管路網がありますので、資源が流れている、これをうまく使おうと。」

目指しているのは下水の熱を効率よく取り出す器具の開発です。

「下水管の底に金属製のチューブが見えますよね」

金属製のチューブの中にはきれいな水が流れていてその水に下水の熱を移し替えます。
現在、さまざまなタイプのものを試しています。

 

「プラスチックのさびにくいというメリット、金属製の熱伝導率がいいというメリット。
それをあわせ持つような、いい所どりをしたものを考えております。」

 

下水熱の利用効率をもっと高める方法もあるといいます。
赤で表示された建物は風呂やシャワーなどに多くの熱を必要とするマンションやホテルです。
一方、青の表示は多くの熱を排出している清掃工場や冷凍倉庫などです。

下水熱は利用したあと温度が下がるため下流に行くほど効率が悪くなります。
そこで、途中で清掃工場などから出る排熱を取り込むことで温度を回復。
このシステムで、省エネ効果を一段と高められるというのです。

大阪市立大学 中尾正喜教授
「今回の研究成果がトリガー(引き金)となって、ビジネスの領域に(企業が)どんどん参入してきて、いい製品が出てくればと考えています。」

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眠れる熱エネルギーを活用せよ

まさにここ(スカイツリーの地中熱)こそ膨大な可能性のある所で、しかもすでに技術は確立しているんですね。
ですから、それをいかに普及させるかという点ではこれ、非常にショーケース的な面もありますので、そういう点では非常にいいと思います。
あとはこれをいかに波及、展開させるかという政策、バックアップ、国の強い意志、これこそが大事になってきます。

日本の競争力は、すでに申し上げましたように、技術そのものはもうすでに完成されたものは日本は持っております。
コスト的にも、これから普及が進めば、さらに下がっていきますので、そういう点ではポテンシャルは膨大です。

●エネルギー効率の向上 必要な政策とは

まず政策でエネルギー効率の向上、エネルギー消費の削減、これを政策の根幹に据えると、これが第一歩です。
これをすることによって、人々がまさに今まで乾いた雑巾と言って、日本ではエネルギー消費策への可能性はないというふうに思われてきたわけですけれども、実は可能性が膨大であるということで、どんどんビジネスが発掘されていきますので、そういう点ではまさに政策がまず強い意志を示すということが、大事です。

例えば、今、省エネ技術とかは、もう5年で回収できる技術というのはたくさんあります。
ところが企業サイドからすると5年はちょっと長いと、3年ぐらいで回収できれば、投資をやりたいという例はたくさんあるんですね。
ですからこの、5年を3年に縮めるのは税制措置とか、そんなに難しい話ではありません。
ですから、そうやって政府が本気になって政策を進めることによって、投資は爆発的に増えていきます。
これこそが、まさに日本でのこれからの新しい成長を生む源泉になっていくわけですね。

●地熱利用を社会全体に浸透させるには

これはまさに、ですから政府の政策と、あとエネルギー消費を削減するということは実は生活の質の向上にもつながっていきます。

今までのエネルギー消費削減は生活の質が落ちるんではないかとか、我慢の節電とか、そういうイメージが強かったんですけれども、先ほどのドイツの例が示すように、まさにエネルギー消費を削減することによって、経済成長をすると。

そのために現場の人たちに築いてもらう、そのためにやはり政府が強い意志を示す、これが一番大事なことです。

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