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「損をするのはお客様、本当に申し訳ない」メール400通 郵便局員たちの告白

「損をするのはお客様、本当に申し訳ない」メール400通 郵便局員たちの告白

2018年5月7日

それは番組に届いた1通のメールから始まった。「高齢の母が郵便局員に保険を押し売りされた」という訴えだ。同様のトラブルは他にもあるのか。私たちは実態を探るため、SNSで情報提供を呼びかけた。するとわずか1か月のうちに400通を超えるメールが届いた。しかも驚くべきことに、その多くが現役の日本郵便の社員たちからのものだったのだ。「高齢者は騙しやすい」「ノルマに追い詰められ、詐欺まがいで契約させた」など、法に反する可能性が高い営業手法や、上司からの圧力について、告白が次々と寄せられた。当事者の声と内部文書から、高齢者をねらった郵便局の“不適正”な営業の実態に迫った。

「3人に囲まれて、サインを書かなきゃいけないんだと」 高齢者への“押し売り”の実態

山下満さん(仮名)。去年(2017年)、70代後半の母親が郵便局員の訪問を受け、納得のいかない保険の契約をさせられたという。郵便局員に勧められたのは、毎月の支払い額が4万円の生命保険。支払う総額が640万円なのに対し、死亡時の受け取り額は、不慮の事故などの限られた場合を除き500万円。しかも支払いは母親が90歳になるまで続くというものだった。

「支払う金額のほうが保障より大きい、意味のない保険と、まず思った。ありえないでしょ。」満さんは憤る。さらに問題だとするのが、営業のやり方だ。郵便局員が用意した書類には「70歳以上の高齢者には家族の同席をお願いする」と書かれている。しかし、母親が家族の同席の必要を尋ねられることはなかったという。「同席拒否」と書かれた紙を渡され、そのとおりに書くよう促された。

「メモを渡されて『ここに書いてください』と。そのまま書いてしまった。『90歳まで私、払えません』と言ったんです。でも『息子さんのために』と繰り返し話をして、3人に囲まれて、サインを書かなきゃいけないんだと思いました」(山下満さんの母親)

続々と寄せられた郵便局員たちからの告白 その手法とは…

山下さんの情報をもとに、番組のSNSで情報提供を呼びかけたところ、わずか1か月で400通を超えるメールが届いた。しかも、その大半が現役郵便局などの関係者からだった。その1人、現役郵便局員のAさん。「満70歳以上の高齢者と契約するとき、家族に同席を求める」という社内の決まりには、抜け穴があるという。

「契約の作業途中で、『(家族の)同席をお願いしないといけない、手続きがやり直しになる』。お客様は『せっかくここまでやったのに面倒くさい』と思いますから、『“同席を拒否します”と書いてもらえますか?』と話をすれば、そういう流れになる」(現役郵便局員 Aさん)

さらに、家族の代わりに「郵便局の上司」が同席すれば、契約が可能になる「例外規定」があることも判明。郵便局員から入手した内部資料によれば、2016年の9か月間だけで、こうした不適正な営業による苦情は4,000件以上も寄せられていた。

「違法性の高い営業に実際に関わっていた」と告白するのは元郵便局員のBさん。1人の高齢者から何度も契約を取る「短期(2年)解約」という手法があるという。契約期間の途中で解約させ、払戻金で新たな保険に加入させる。解約の際、払戻金が減って客が損をすることは十分に伝えず、見かけの契約件数を増やすのが目的だという。

「2年もたつと『特約が変わった』『お金を返す』と言って、実際には解約。数字(契約)を上げるための手段。損をされるのはお客様。本当に申し訳ない」(元郵便局員 Bさん)

厳しい目標設定 達成できなければ「恫喝研修」 現場の悲鳴

なぜこうした“不適正”な営業が広がっているのか。取材を進めると、現場に強いプレッシャーがかかっている実態が見えてきた。それを裏付ける内部資料がある。各郵便局の営業目標を記したものだ。多くの局で前年度の契約実績の1.5倍~2倍、中には3倍近い目標が割り当てられている局もあった。目標を達成できなければ、上司からの激しい叱責が待っているという。

「数字が足りなかったら人間否定ですよね。『この仕事に向いてないんじゃないか』『辞めたほうがいいんじゃないか』とか」(現役郵便局員)

さらに、こうした圧力を組織的にかけられる「しくみ」があることも見えてきた。営業成績がふるわない局員を対象にした研修があるという。「営業力をあげるため」という名目だが、その実態は「恫喝(どうかつ)研修」「懲罰研修」だという声もあった。

「目標が未達、できなかったので呼び出されるわけですけど、世間でいうパワハラ研修。
『低実績の連中が、がん首そろえやがって、お前らここに来て恥ずかしくないのか!』と、かなりきつい恫喝を1時間近く受けます。ノルマに追い詰められ、お客様を詐欺まがいで契約させるパターンはしょっちゅう見ます」(研修に参加したことがある現役郵便局員)

届いた声を郵便局幹部にぶつけると… 

番組に届いた声を、直接、郵便局の幹部にぶつけるため、日本郵便グループの本社を訪ねた。対応したのは日本郵便の佐野常務執行役員。“不適正”な営業によって高齢者に不利益を与えてしまったとする現場の告白をVTRで見せたうえで、「高い目標設定が現場を追い詰めている」という郵便局員たちの訴えも伝えた。

「信頼を裏切るような行為が、少ない数、起こっている。会社として非常に深刻。郵便局に対しての信頼を失ってはいけない、改めないといけない。」「上司からの圧力・パワハラは受け止めによって一律にはできないが、営業の目標があるからお客様に転嫁するという話は、絶対あってはいけない。」(日本郵便 佐野公紀常務執行役員)


日本郵便と、日本郵便に保険販売業務などを委託しているかんぽ生命では、こうした不適正な営業をなくすため、すでに対策を打ち出していると説明している。契約者に電話や書面で契約内容を事後に確認すること、80歳以上の場合は家族の同席がなければ、原則、契約を交わさないことなどだ。こうした取り組みにより、苦情件数はピーク時の4分の1にまで減ったという。

かんぽ生命の堀家吉人専務執行役は、「お客様が契約内容に満足し、長く継続していただけたことを評価する指標を導入するなど、評価制度の見直しにも取り組みたい」という。また「高い販売目標が不適正な営業の背景にある」という指摘を受け、今年度は会社全体の目標を1割引き下げることも決定したという。

番組に寄せられた400通以上のメール、その中には「すべての社員がそういう方法で営業しているのではない」といった声もあった。一方、告発の数の多さ、内容の生々しさは、郵便局が抱える問題の根深さを物語る。日本郵政グループは、私たちの暮らしに深くかかわる23万人の巨大組織だ。ある郵便局員は「郵便局というだけで、高齢者はだましやすい。」と証言した。その信頼を裏切るような行為を改め、事態をどう改善していけるのか、経営層の責任と本気度が問われている。

この記事は2018年4月24日に放送した「郵便局が保険を“押し売り”!? ~郵便局員たちの告白~」を元に制作しています。

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