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「あなたの運転、判定します」 ドラレコがあぶり出す事故のリスク

「あなたの運転、判定します」 ドラレコがあぶり出す事故のリスク

2018年2月8日

ドライブレコーダーが捉えた決定的瞬間が、事故の真相究明につながるケースが相次いでいる。さらに、ドラレコの記録から「危険運転をするドライバー」や、「事故が起きやすい場所」の傾向も明らかになりつつある。ドラレコがあぶりだす意外な事故の原因、そして膨大なデータから見えてきた命を守るためのヒントとは。

動かぬ証拠 ウソを暴いた“ドラレコ”

ドラレコの映像が、交通事故の捜査で決定的な証拠となったケースがある。2016年、福岡県の交差点でミキサー車と軽自動車が衝突、軽自動車に乗っていた田﨑俊佑さんが死亡した。ミキサー車の運転手の60代の男は「信号は青だった」と供述、責任の一端は田﨑さんにあったかのように主張した。しかし、その供述が虚偽だったことが明らかになる。

交差点にいた別の車のドライブレコーダーが、事故の一部始終を捉えていたのだ。交差点を右折しようとした田﨑さんの車に向かってきたミキサー車。その時、ミキサー車側の信号は赤だった。
警察がドライブレコーダーなどを解析した結果、交差点進入時の速度は時速70キロを超えていたことも判明。動かぬ証拠を突きつけられた男は嘘の供述をしたことと過失を認め、危険運転致死の罪で懲役7年の刑が確定。ドラレコが田﨑さんの無実を証明した。

事故に巻き込まれた時、その瞬間を記録するドライブレコーダー。去年、あおり運転による死亡事故が相次いで以降、販売台数が急増し累計200万台以上が普及しているとみられる。

事故はなぜ起きる? ドラレコがあぶりだす意外な“落とし穴”

ドラレコが記録できるのは、映像だけではない。車の速度やGPS情報、急ブレーキや急ハンドルなど、様々な走行データを記録する機能もある。そこで、こうしたデータを分析することで、交通事故の原因を探ろうという研究が始まっている。

研究機関などには、全国のタクシー会社、運送会社、一般ドライバーなどから、個人を特定しないという条件で、膨大なデータが提供されている。今回、NHKは研究機関とともに、事故やいわゆる「ヒヤリハット」に至った10万件以上の走行データを分析した。すると、意外なことに、57%は30キロ以下の低速で、52%は見通しのいい道路で起きていたことが分かった。

 
例えばこんなケースだ。経験を積んだタクシードライバーが、見通しのいい交差点に差し掛かる。左右の安全を確認し、ゆっくり前進、ところが目の前の歩行者に接触してしまった。東京農工大学が60万件の映像を分析したところ、同様のケースは多数見つかった。なぜ、こんな不可解な現象が起きてしまうのか。交通事故のメカニズムを研究している東京大学大学院の小竹元基准教授に、映像を見てもらった。

小竹さんが注目したのは、ドライバーがアクセルを踏んだタイミングだ。交差点にさしかかりブレーキを踏んだドライバー。左を確認した後に右を確認。その直後、右を見たままアクセルを踏んでいた。目の前の歩行者に気付いた時には、すでに接触。安全確認が終わらないうちにアクセルを踏んだことが事故の原因だった。ベテランドライバーだからこそ陥りやすい心理だと小竹さんは指摘する。

「本来は安全確認をしてから状況を判断して行動を起こす。“操作の先行”はそれを全部省いてしまう行為。『大丈夫だろう』という思い込みが“習慣”という形になって、1つの事故を引き起こしている。」(東京大学大学院 小竹元基准教授)

ドラレコで事故が減る 保険料が下がる

ドラレコのデータを使って、ドライバーに安全運転を促すシステムも開発された。手掛けたのは大手保険会社。ドライバーの運転を点数化し、運送会社やタクシー会社といった契約先の企業に提供する。点数が向上して事故が減った場合、企業が払う基本保険料を最大で30%ほど削減するという。

このシステムを導入した福岡市の運送会社。ドライバーの新坂桐香さんは69点という低い評価を受けた。ドラレコは、カーブでも減速せず制限速度ぎりぎりで走行していたことや、事故につながりかねない急ハンドルや急ブレーキを検知。新坂さんは会社から「改善しない場合は懲戒処分もありうる」と伝えられたという。

「ハンドルが荒いんですかね。あとはブレーキが遅いと。今まで20何年そういう運転をしてきたと思うと…。最低でもこの仕事で運転する時はきちんとした運転をしようって、まず思いました。」(シティーアクト ドライバー 新坂桐香さん)

指摘を受けた後、新坂さんの運転は劇的に改善。運転中、カーブが連続する山道にさしかかると、ブレーキをこまめに踏んで減速。ハンドルも丁寧に操作した。すると点数は20点ほどアップ。会社から安全運転評価で表彰されるまでになった。この会社では、事故の件数を5分の1に抑えることができたうえに、年間の保険料も40万円以上安くなったという。
---- 事故はここで起きやすい ドラレコが示す「危険地点」

さらにドラレコは、道路の危険箇所をあぶりだし、改善につなげることにも活用されている。例えば、ドライバーがどこで急ブレーキをかけたか。ドラレコのセンサーが検知したデータを分析すると、全国でおよそ35万か所もの「急ブレーキ箇所」が浮かび上がる。

 
このうち新潟市の日和山地区では、国土交通省などが114か所を特定。すぐ近くには学校があり、子どもたちがいつ事故に巻き込まれてもおかしくない状況だった。そこで市と警察が協力して、30キロの速度制限を設け、注意看板や標識を設置。朝の時間帯には交通規制も実施した。その結果、車の平均時速が下がり、急ブレーキ箇所は30か所減少した。

 
これまでも「事故多発地点」とされてきた場所は多くあるが、日本交通事故鑑識研究所代表の大慈彌雅弘さんは、ドラレコの記録が、より効果的な事故対策につながると期待する。

「今までは事故が起きた箇所を、ポイント的にただ事故多発地点ということで捉えてたんですけれども、ドライブレコーダーの映像を見ますと、どういう事故がどういう形で起きたのかっていうところまで分かるわけですね。だから非常に対策がとりやすいんじゃないか。」
(日本交通事故鑑識研究所代表 大慈彌雅弘さん)

毎年3000人以上が、交通事故で命を落としている。事故はなぜ起きるのか。人間はどう行動するのか。日々ドライブレコーダーに記録されている膨大なデータには、それを解き明かすヒントがまだまだありそうだ。そのデータを活かし、命を守るための知恵を絞りたい。

この記事は2018年1月29日に放送した「“ドラレコ”革命 ~危険な運転を炙り出せ~」を元に制作しています。

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