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中国で急拡大する再生可能エネルギー 日本は飲み込まれる?

中国で急拡大する再生可能エネルギー 日本は飲み込まれる?

2017年12月12日

中国が急速にエネルギー政策を転換している。石炭火力と原子力が中心だった発電を、風力や太陽光などの再生可能エネルギーへと猛スピードでシフトさせているのだ。習近平政権は「2050年までに再生可能エネルギーを全電力の8割に拡大する」と宣言。国家の後押しを受けて、この分野の技術力は急速に向上している。中国企業はコスト競争で優位に立つまでに成長し、日本市場にも狙いを定め始めた。世界をリードする存在となりつつある中国の再生エネルギー産業。最前線で何が起きているのか。

石炭・原子力から風力・太陽光へ 習主席の大号令

今年10月、北京で開かれた共産党大会で、習近平主席はこう宣言した。
「エネルギー生産と消費で革命を起こし、クリーンで低炭素、安全で高い効率のエネルギー体系を築く」
国をあげた再生可能エネルギーへの大転換。勢いづいているのがエネルギー業界だ。

上海に本社を構える太陽光パネルメーカー。大量生産技術を確立し、去年、パネルの出荷量で世界一になった。売りは高い技術と低コスト。割高だった再生可能エネルギーだが、火力や原子力より低いコストを実現した。さらに独自の発電事業にも力を入れ、中国国内に300以上の発電所を所有するまでになった。オフィスの一角にあるモニタールームでは、常時、大型画面で中国全土に広がる発電所を監視している。今後は太陽光パネルだけでなく、発電所のインフラを丸ごと世界に輸出していく構えだ。

「研究開発に力を入れ、引き続き世界のトップでいられるよう努力します。太陽光発電を、世界の隅々まで広げていきたいと思っています。」(太陽光パネルメーカー 李仙德会長)

中国では各地で再生エネルギー関連のベンチャー企業が次々と誕生。農村では新しいビジネスモデルも広がっている。日当たりのいい農地に企業が太陽光パネルを設置し、発電で企業が収益を得るだけでなく、農家も土地の賃料が得られるしくみだ。再生可能エネルギーで貧困問題も解決できるのではないかと、海外からも引き合いが来ているという。

これまで中国のエネルギーの柱は石炭火力と原子力だった。ところが深刻な大気汚染で健康被害が広がり、火力は限界に達している。原子力発電には期待がかかったが、6年前、日本で起きた原発事故が影を落とす。2014年には政府系の研究者がある論文を発表。「中国内陸部で福島のような原発事故が起きれば、国家の破綻を招きかねない被害が予想される」という警告に衝撃が広がった。

「日本のような事故が起きたらどうなるのか、国中が関心を持ちました。中国政府は期待していた原発の安全性に限界があることに気付いたのです。」(中国科学院 特任教授 劉正新さん)

国の原発政策にも変化が表れた。5か年計画では2020年までに国内に新たな原発を30基作ることを目標に掲げていたが、建設は計画どおりに進んでいない。

世界で加速する低コスト化

世界規模でも再生可能エネルギーは、今後さらに伸びると予想されている。中でも中国の突出ぶりは顕著だ。国際エネルギー機関による見通しによると、中国の発電量は2014年に比べ2020年にはおよそ1.5倍に、2040年には3倍にまで増えるとみられ、日本やアメリカ、EUと比べても際立っている。

急速な普及の背景にあるのが「低コスト化」だ。技術の進歩で発電コストは年々減少。去年、ヨーロッパでは風力発電で、1kWhあたり6円で発電する企業が登場したほか、中東UAEでは3円で発電するメガソーラーが建設されている。日本で最も利用されているLNG火力のコストは14円程度とされていることから、いかに世界で低コスト化が進んでいるかが分かる。また、太陽光や風力は変動しやすく、電源としての安定性も大きな課題だったが、蓄電設備や送電線の活用などでそれも克服されつつある。名古屋大学大学院の髙村ゆかり教授も、「政策によって無理やり推進しているというより、市場が経済合理性から選択している」と指摘する。

「日本買い」をねらう中国企業

一方の日本では、再生可能エネルギー市場は一時期の勢いを失っている。太陽光発電などへの新規参入事業者数は年々減り続け、ピーク時の3,300社から1,800社にまで落ち込んでいる。倒産件数も今年9月の段階で68件と過去最多だ。こうした状況に目を付け「日本買い」をねらう中国企業もある。

東北にある発電施設の建設現場を訪れたのは、中国のパネルメーカーの担当者だ。資金繰りが厳しくなった日本のエネルギー事業者から、十数億円かけ、土地と事業の権利を買い取ったという。このように資金的に行き詰まる日本の事業者が、中国資本に頼るケースが増えているのだ。
「権利を売っていただきまして。弊社は現金、お金を用意して、これからどんどん(発電所を)作っていこうと。」(中国 太陽光パネルメーカー)

日本の事業者の壁となっているのは、高いコスト。3年前に太陽光発電用の土地を購入したある事業者は、地元の電力会社から突如想定外の出費を求められ、施設の建設を中断せざるを得なくなった。発電事業者は、電力会社が管理する送電線に接続し、そこを通じて発電した電力を消費者に購入してもらう。ところが、発電事業者が増えたので送電線の増強工事が必要になったとして、3億円を超える費用負担を要求されたのだ。この事業者は想定外の出費に加え、工事完了までの6年間は発電による収入が得られなくなってしまった。

送電するためのインフラが、自由に使えないケースもある。東北地方のある事業者は、新たな風力発電所を着工した矢先に問題に直面した。東北電力が送電線の空き容量がなくなったと発表し、発電してもインフラを使えない可能性に見舞われたのだ。ところが、ある研究者が東北4県の送電線の利用率を計算したところ、空き容量ゼロとされた送電線は、実際には2~18%程度しか使われていなかったことが判明した。背景には、将来の原発の再稼働に備えて容量を確保しておきたい電力会社の考えがあるとみられる。

世界の潮流を見据えたエネルギー政策を

壁が多い日本の再生可能エネルギー市場。にもかかわらず、なぜ中国企業は新規参入をねらうのか。理由のひとつが日本の「固定価格買取制度」だ。国内事業者育成のため、再生可能エネルギーの価格を20年間据え置く制度だが、長岡技術科学大学大学院教授の李志東さんによると、日本の固定買い取り価格は中国の売電価格よりも高く、これを利用すれば、初期投資が高くても利益は十分出ると中国企業はみている。さらに、日本でのビジネス成功は高いブランド力となり、世界展開にプラスになる側面もあるという。

日本の2014年度の再生エネルギーの電源比率は12%。国はこの比率を2030年度に22~24%程度に増やしたいとしている。中国をはじめ、世界で加速する低コスト化のメリットをどう取り入れていけるのか。海外の潮流を見据えた制度改革や環境整備が求められそうだ。

この記事は2017年12月4日に放送した「中国“再エネ”が日本を飲み込む!?」を元に制作しています。

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