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日本の夜はもの足りない!?  注目されるナイトタイムエコノミー

日本の夜はもの足りない!?  注目されるナイトタイムエコノミー

2017年11月8日

2020年に向け、観光立国を目指す日本。訪日外国人旅行者数は年間2,400万人と、今や世界16位となった。ところが旅行者1人当たりの消費額となると44位と低迷、オーストラリアのわずか3分の1だ。打開策として期待されているのが、夜の経済、「ナイトタイムエコノミー」。夜間の市場を活性化させ、外国人観光客の心をつかもうという取り組みが始まっている。日本経済の新たな起爆剤として注目される「ナイトタイムエコノミー」を徹底分析する。

さみしい日本のナイトタイム 一方世界では…

夜8時の浅草。イタリア人の男性2人組と出会った。東京一の観光名所だと聞いて、期待に胸を膨らませてやってきたという。ところが、既に参拝時間は終了し、観光客はまばら。商店街も閉まっていて、写真を撮ることぐらいしかできなかった。

「もっと遅くまで開いていれば、観光客は助かるのに。」(イタリアからの観光客)

お腹が減った2人。さまようこと1時間、ようやく開いている店を見つけ、焼きそば、天ぷら、たこ焼きなどを一気に注文した。食事時間はわずか30分。ほかの店も楽しみたかったが、終電を気にしてあきらめた。この夜使ったのは、2人合わせて2,500円だった。

さみしい限りの日本の夜。一方、世界では今、ナイトタイムが巨大市場に成長している。

ナイトタイムエコノミーの先進地、ロンドン。深夜3時でも街には人がいっぱいだ。外国人観光客も多いという。ミュージカルは夜8時開演。美術館でも夜12時近くまでイベントが行われる。その原動力になっているのが地下鉄だ。去年から金曜と土曜は朝まで終日運転している。

国を挙げてナイトタイムエコノミーを推進した結果、ロンドンの夜の経済規模は4兆円にまで成長。新たな雇用も生まれ、72万人が夜間に働いている。

もっと夜の娯楽を こんな人気スポットも…

日本の夜には何が足りないのか。外国人観光客に尋ねると、夜に開催されるショーやアクティビティなど、娯楽が足りないという声が目立った。実は、日本の外国人観光客が娯楽に使うお金は、消費額全体のわずか1%。欧米では10%を超える国があるのに比べると、もの足りない数字だ。

日本政府観光局の特別顧問を務めるデービッド・アトキンソンさんも、日本のナイトタイムエコノミーを厳しく評価する。

「(日本の夜は)海外に比べてつまらないものだと思います。夜遅くまで電車は動いていませんし、コンサートにしても、スポーツにしてもチケットが取れない、もしくは会員じゃないと入れないとか、回数自体が非常に少ないとかですね。やはり皆さん、真面目に働いていますので、ナイトタイムエコノミーというのが、ほとんど存在していないようなものだと思います。」

アトキンソンさんによると、日本が観光立国を目指すねらいは、人口減少による経済の停滞を食い止め、活性化すること。そのためには、増える観光客を狙って夜に稼ぐ機会を作ることが重要だという。

そんな中、何とかチャンスをつかもうという動きも出始めている。

食事をしながらロボットやダンサーによる華やかなショーが楽しめる、ロボットレストラン。夜10時開演のレイトショーも大にぎわいだ。入場料は飲食代別で8,000円。年間12万人の観客のうち、8割以上が外国人だという。



新宿のディープな歓楽街を巡るナイトツアーも外国人観光客に好評だ。小さな飲み屋が並ぶ横丁「ゴールデン街」など、外国人にはちょっと入りづらい場所を丁寧に案内する。価格は、2時間で5,900円。参加者に話を聞くと「狭い路地が面白かった。自分たちだけじゃ来られないし。」「大都会の角を一つ曲がったら、エネルギッシュな別世界があった。」など、興奮した様子で答えてくれた。

治安は?騒音は? 地域の不安をどう解消するか

経済活性化の切り札として注目されるナイトタイムエコノミー。しかし、異論もある。ナイトタイム充実の是非を尋ねたNHKのアンケートでは「うるさくて眠れなくなる」「夜に事件や事故が増えそう」「街が汚く臭くなるのではないか」など、むしろ反対意見が多かった。ナイトタイムエコノミーを推進していく上で、地域の人々の理解をどう得ていくかは大きな課題だ。

先進地のイギリスも、当初はこの課題に直面した。市民から「治安が悪化するのではないか」「ゴミが放置され景観を損ねないか」など、不安の声が相次いだのだ。そこで政府が5年前に導入したのが「パープルフラッグ」という認定制度だった。

「パープルフラッグ」は「安心して夜遊びできる街」と国が認定したことを示す、いわば「お墨付き」。認定を得るには、犯罪率の低下、治安改善、飲酒者への適切な健康対策など7項目の厳しい評価をクリアしなければならないが、多くの観光客を呼び込めるとして、各地でフラッグの獲得合戦が繰り広げられている。

ロンドン郊外のクラップハムも認定をめざす街のひとつ。かつては市内有数の治安の悪さで知られていた。ナイトタイムを推進する団体が中心となり、地域の苦情への対策会議を毎週開催。非番の警察官などで警備ボランティアを組織し、夜9時から朝5時まで巡回するなど、改革に取り組んできた。

すると犯罪率は2年で半減。酔った客の介抱場所を設けることで、救急車の出動回数を減らすことにも成功した。またバーやクラブだけでなく、未成年や家族連れでも楽しめるレストランやカフェも増やした。

「クラップハムは『週末に行きたい街』として知られるようになりました。われわれの任務は、このまま安全を保つことです。近いうちにパープルフラッグを獲得する自信があります。」(ナイトタイム推進団体 ジェレミー・キーツさん)

ナイトタイムエコノミー推進のためには、このように、地域の不安や不満を丁寧に吸い上げ、解決していくことが欠かせないだろう。そのうえで、外国人観光客も日本人も夜に楽しめる機会が増えれば、“観光立国”の促進につながる。経済へのプラス効果だけでなく、私たちの生活がより豊かなものになることを期待したい。

この記事は2017年10月31日に放送した「ナイトタイムエコノミーが日本を救う!? ~観光立国・新戦略~」を元に制作しています。

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