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世界で急拡大!注目のESG投資とは? 問われる日本企業

世界で急拡大!注目のESG投資とは? 問われる日本企業

2017年10月10日

世界の投資家たちのマインドが変わりつつある。地球規模で広がる環境破壊や、労働者を酷使する人権問題に、投資を通じてノーを突きつける動きが広まっているのだ。環境や人権問題に積極的な企業には投資を増やし、そうではない企業からは資金を引きあげ、厳しい対応を迫る「ESG投資」。その波は日本にも到達。多くの企業が「環境・社会・ガバナンス」への取り組みを求められている。地球の「持続可能性」と結びついたESG投資の実態と、対応を迫られる日本企業を追った。

「言うことを聞かない企業の株は売り飛ばす!」 世界の投資家の厳しい目 

ESGとは、「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)」の頭文字。企業の業績だけでなく、環境や人権などの問題に、どれだけ取り組んでいるかを考慮するのがESG投資だ。2006年、国連が機関投資家に「責任ある投資」を呼びかけたことがきっかけに誕生した。

ロンドンにある大手資産運用会社「アビバ・インベスターズ」は、50兆円を超える資産をESG投資に充てている。ここでは3年前から人権に関する企業の取り組みを調査し、グローバル企業98社のランキングを公表。ESG投資の新たな指標としても注目されている。

「人権問題を放っておくのは危険です。不祥事などが起こり、業績が悪化する事例も数多くありました。ランクが低い企業が1年たっても改善しない場合は、恥をかくことになるでしょう」(最高投資責任者のスティーブ・ウェイグッド氏)

実際、日本の大手アパレルメーカーや流通グループも調査の対象となったが、ランキングが低く、改善を求められている。巨額の資金を運用する投資家たちによる、企業の在り方を一変させる動き。多くの企業が、人権、環境問題、企業のガバナンスなどに対する取り組みを行っているか、投資家から突き付けられるようになったという。

「『あなたの会社の人権に取り組む方針を見せろ』とか、『サプライチェーンをちゃんと見ていくときの方針を見せろ』とか、そういう要望をいただく。世界がこの3~4年で変わったなという感じがします」(大手繊維メーカー)

現在、ESG投資の運用額は世界で2,500兆円超。世界の投資の4分の1を占めるまでに急拡大した。経済アナリストのジョセフ・クラフトさんは、ESG投資にメリットを感じる投資家が増えた理由が3つあるという。

「まず第1に、リターンが向上したこと。この5年間で、従来の投資ファンドとほぼ同じリターン、場合によってはそれを上回るリターンがある。2つ目は、情報開示により投資がしやすくなったこと。そして3つ目は、海外を中心にミレニアム世代(2000年以降に成人を迎えた世代)の86%が、このESG投資に非常に興味を持っていることです。この10年間で約30兆ドルという多額の資産がミレニアル世代に相続されることからも、いま金融機関はミレニアル世代に非常に注目しています」

“社員の人権だけ”は時代遅れ。“取引先の人権も”がグローバルスタンダードに

新たなうねりとなったESG投資に、日本企業はどう対応すればいいのか。「社員の人権だけではなくて、取引先の人権も見なくてはいけない」と話すのは、花王株式会社で執行役員を務める田中秀輝さん。

花王は今、人権に配慮した対応を迫られている。主力商品のせっけんや洗剤に含まれている原料の1つ、東南アジアから調達されるパーム油が、国際的な人権団体から注目されるようになったのだ。去年(2016年)11月、人権団体が公開したビデオでは、あるパーム油の生産現場で労働者を酷使したり、子どもを働かせていたりと、さまざまな人権問題が明らかになっていた。

その後、こうした生産現場とつながりのある大手企業の名前が公表され、抗議のメールや電話が殺到。このケースでは、日本企業の関与は指摘されなかったが、同じようなパーム油の調達先を抱える花王は強い危機感を持っている。

パーム油は、数多くの取引先を経由して調達される。花王は上位3段階までの取引先は把握しているが、末端の120万軒以上に及ぶ小規模農家までは把握しきれていない。そこで花王では海外の生産地を直接訪れ、実態調査に乗り出した。しかし、膨大な手間やコストがかかり、すべての農園を追跡するのは容易ではないという。

「2020年というのを1つのターゲットにしていますから、もうあと何年もありません。さらにギアの速度を上げてかなきゃいけないなと思っています」(花王株式会社 執行役員 田中秀樹さん)

「持続可能な世界」へ。改革に必要なのは「トップの信念」

企業にとっては大きな負担にもなる「持続可能性」への取り組み。環境や人権に配慮した企業の在り方を国際会議の場で提案したこともあるサントリーホールディングス社長の新浪剛史さんは、こうした取り組みを進めるには「トップの強いコミットメントが必要」と話す。

「長期にわたって社会と向き合い、社会と共に企業が成長していく。このコミットメントは、企業理念でもあるわけです。企業理念をしっかりと貫いてやっていくには、なんといっても企業のトップがぶれずに自分の企業を社会に貢献させ、そして社員と共にやっていくんだという旗を振っていく。私たちにとっては、これが最終的なリターンを上げることにもつながる。そう信じていちばん最初に走っていくのが、トップの役割だと思っています」

巨額の資金が動くESG投資は、持続可能な世界を実現するための強力な推進力になる可能性を秘めている。しかし、海外と比較すると、日本国内のESG投資はあまり伸びていない。アメリカでは全体の21.6%、欧州では52.6%なのに対し、日本は3.4%。クラフトさんは、「アメリカでは一般家計の6割近くが株式投資だが、日本は1割未満。これではESG投資はなかなか伸びない。リスク投資を積極的に増やしていくことも重要」と指摘する。

こうしたなか、日本でESG投資を拡大させようとする動きも出てきた。ことし7月、「世界最大の年金基金」と言われるGPIF・年金積立金管理運用独立行政法人が1兆円の運用を開始し、注目を集めている。

ESG投資は、私たちにとっても、投資を通じて企業が責任ある行動をとるように促すことができる1つのツールといえる。持続可能な社会を実現させるために、日本の投資マインドも変化の時期を迎えようとしている。

この記事は2017年9月27日に放送した「2500兆円超え!?世界で急拡大“ESG投資”とは」を元に制作しています。

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