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2023年5月24日(水)

ぐっすり眠れていますか?徹底分析!日本人の寝不足

ぐっすり眠れていますか?徹底分析!日本人の寝不足

日本人の睡眠時間は先進国で最低レベルの6時間18分。寝不足による経済損失は18兆円に上るとも試算されています。いまAIなどの最新技術で睡眠不足に陥る原因が明らかに。さらに新たな指標「睡眠休養感」が高齢者の死亡リスクと大きく関わることも判明。ぐっすり眠るためのノウハウを伝授するビジネスも活況です。どうすればぐっすり眠れるか、明日から使える寝室の工夫も。睡眠研究の第一人者が解説しました。

出演者

  • 柳沢 正史さん (筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長)
  • 桑子真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

ぐっすり眠れない…最新研究で徹底分析!

桑子 真帆キャスター:
日本は、世界でもまれに見る「寝不足大国」と言われています。

世界50以上の国と地域の平均睡眠時間を調査したグラフですが、日本は最下位で、6時間18分となっています。人によって必要な睡眠時間には差がありますが、寝不足による経済損失は、18兆円に上るという試算もあります。

今回は、睡眠研究の第一人者である柳沢正史さんと睡眠の新常識や対策をお伝えします。まずは、現代人の寝不足事情ご覧ください。

現代人の寝不足事情

都内で会社員として働く、樋口さん。樋口さんの平均睡眠時間は6時間。就寝時間は、およそ深夜1時です。常に寝不足の状態で、毎日お昼の休憩時間には仮眠をしています。

会社員 樋口さん
「昼の時間、昼食終わってから『寝たいな』というので、よく仮眠をとったりしますね」

樋口さんは、帰宅しても仕事のことが頭から離れません。副業や転職が当たり前の時代。スキルアップをするために睡眠時間を削って勉強を行っています。

樋口さん
「周りに置いていかれたくはないというか、会社として組織として必要にならなきゃいけないなと思ったら、睡眠(の優先順位)が下がってしまう。(仕事を考えることから)逃げられないっていうか」

2時間以上勉強したあと、ようやくベッドに入ります。しかし…

樋口さん
「はあ、汗かいちゃったな…」

わずか30分で目が覚めてしまいます。

そのあと、明け方まで何度も目を覚ましていました。こうした状態がここ数年続いているといいます。

樋口さんの会社では、社員の睡眠を改善しようと睡眠コンサルティング会社と契約しています。この日、樋口さんはコンサルタントと面談を行いました。

睡眠コンサルタント(看護師)大坪沙織さん
「どうぞよろしくお願いいたします」
樋口さん
「よろしくお願いします」

樋口さんの2か月分の睡眠データを解析した結果です。青が寝ている時間で、黄色が覚醒し、起きている時間です。樋口さんは多いときで10回以上起きたと見られます。通常の人の2倍の頻度でした。

大坪沙織さん
「いびきとか指摘されたことってございますか?」
樋口さん
「指摘はよくありますね。いびきと、あと昔から寝言をよく言うんですよね」
大坪沙織さん
「無呼吸(症候群)が疑われる方とか、いびきが多い方って、割と黄色がチャーっとこういうふうにいっぱい入ったりするんですね」

睡眠時間が少ないことに加え、無呼吸症候群の可能性も指摘されました。自宅での運動で改善が見られなければ、病院を受診する必要が出てくるといいます。

樋口さんは、今後もコンサルタントと継続して睡眠改善をしようとしていますが、病院に通うのは気が進まないといいます。

樋口さん
「睡眠のこともそうですし、メンタルに関しては病院に行くことが人によってはいいふうに聞こえない。(病院に)お世話になることに、ネガティブなイメージがあるのではないか」

柳沢正史さんに聞く 日本人の睡眠不足の理由は

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
忙しい、勉強したいということで、睡眠時間を削る方多いのではないでしょうか。
ただ、日本は寝不足大国ということで改めてこのデータ見ていきたいと思います。柳沢さん、日本は最下位になっていますが、やはり(睡眠時間が)短いのはよくないのでしょうか。

スタジオゲスト
柳沢 正史さん (筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長)
睡眠研究の第一人者

柳沢さん:
はい。最近、スマートウォッチなどを使って各国の客観的な睡眠時間、国民のをですね、はかれるようになりました。それをやったらおもしろいことに、国民1人当たりのGDPが高い国、つまり経済的にリッチな国ほどよく寝ているという結果が出たんです。

だから、日本人が普通に考える「寝る間も惜しんで頑張る」というコンセプト自体がもうナンセンスなんですね。頑張りたいなら、それこそよく眠ってくださいという話です。

桑子:
それが数字で表れ始めていると。ただ、どうして日本人は睡眠時間を削ってしまうのでしょうか。

柳沢さん:
これは本当に社会通念としか言いようがないのですが、日本人は昼間はちょっと眠い、つまんない会議に出てると眠くなっちゃうみたいな。それが当たり前と思ってる人がほとんどじゃないでしょうかね。

桑子:
思っているかもしれない。

柳沢さん:
これ、国際標準では異常なんです。ヨーロッパの人が昼間に眠そうにしている人を見かけたら「おい、体調悪いんだったらうち帰って休めよ」という。それが国際標準だと思ってください。

日本人の睡眠不足は子どもの時から始まるんですね。おそらく小学校高学年、日本の中高生はほぼ全員寝不足です。彼ら、昼間眠そうにしていますよ、授業中とか。

桑子:
理由とすると。

柳沢さん:
塾に行かなきゃいけない、部活をしなきゃいけない、朝課外がある、忙し過ぎるんですね、日本の子どもは。遊ばなきゃいけないとか。だから育ち盛りの価値観が形成される年齢のときにそういう生活になってしまうので、昼間眠いのが当たり前になっちゃうんです。

桑子:
その考え方をなんとか変えていきたいところですが。

柳沢さん:
変えていかなきゃいけないと思います。

桑子:
樋口さんが、夜中何度も起きてしまう。これもやはり改善したほうがいいでしょうか。

柳沢さん:
20代、30代、若い世代で深夜に途中で何回も起きてしまうようだと何かを疑ったほうがよくて、VTRでも言っていましたが、もしかしたら睡眠時無呼吸かもしれない、いびきをかくようですとね。だとすると、やはりちゃんと呼吸器内科とか、お医者さんに行って診てもらったほうがいいと思います。

桑子:
ただ、病院に行くのも少しネガティブな印象になってしまうという。

柳沢さん:
日本はいまだにそういう風潮がありますが、これはもう自分の体の話ですし、体調を改善することで、それこそパフォーマンスも上がります。そこはもう意を決して、何も後ろめたくないので医者に診てもらったほうがいいと思います。

桑子:
周りも「後ろめたくないんだ」という空気を作ることも大切ですよね。

柳沢さん:
とっても大事です。

桑子:
この睡眠不足、実はコロナ禍で異常が出ているという人もいるんです。

日中に眠気が襲う理由 睡眠時間の「差」

社会人3年目の佐藤さん。佐藤さんもまた睡眠コンサルティングを受けています。経理を担当していますが、日中の眠気が仕事に悪影響を及ぼしているといいます。

会社員 佐藤さん
「眠くなる時間もあって、そうするとやっぱり集中できてないなと思って。もっと集中していれば3分の1(の時間)ぐらいでできちゃったりしそうな気がします」

佐藤さんの帰宅は夜10時。その後、定額動画サービスで海外ドラマを見ることが日課です。佐藤さんがこうした日々を送るようになったのは“コロナ禍”がきっかけでした。飲み会や旅行が減った代わりに、動画やスマホに自分の時間を使うことが多くなりました。夜にスマホを触る時間はコロナ禍前の2倍。4時間近くになることもあるといいます。

佐藤さん
「自分の中での優先順位が睡眠が一番低かったので、睡眠時間を削ることによって、自分のやりたいことをやってましたね。平日遅くなるのはしょうがなくって。その分、土日に寝る。それでバランス取ってる」

佐藤さんの平日の睡眠時間は、深夜1時から朝7時の6時間。足りない分は週末にしわ寄せがきて、11時間寝ることも。平日との睡眠時間の差は5時間に上ります。

佐藤さん
「一番はやっぱり月曜日がつらいですね。(スマホの)目覚ましを何個もかけて、一応のために15個くらい」

実は、この平日と休日の睡眠時間の差こそが最も大きな問題なのです。

睡眠リズムに異変 ポイントは「中央時刻」

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
睡眠時間の差、「ソーシャル・ジェットラグ」というそうです。柳沢さん、具体的にどういうことでしょうか。

柳沢さん:
平日の睡眠時間がどうしても十分に取れない人というのは、休日に睡眠負債を返しているわけです、休日も昼前ぐらいまで眠っていると。次の日起きなくていいというと、就寝時間まで遅くなっちゃう。そうすると、就寝時刻と起床時刻のちょうど中央の時刻。これを「睡眠中央時刻」といいます。

「睡眠中央時刻」というのは、その人の睡眠のタイミングのいい指標になるんです。それが、平日と休日でひどくくずれてしまう。例えば3時間ずれていたとしたら、週末の間にインドあたりまでの西に飛んで、旅行に行って月曜日に日本に帰ってくるようなもんです。
だから、月曜日に調子が悪いのは当たり前なんです。それを「ソーシャル・ジェットラグ」ないしは「社会的時差ぼけ」といいます。

桑子:
「社会的時差ぼけ」、まさにそうですね。平日と土日の間で起こる「ソーシャル・ジェットラグ」もそうですし、今在宅勤務によって起こるということもあるんです。

働き方と睡眠の関係を表したデータです。「日中の眠気を週3回以上感じる」と答えた方が、「在宅勤務のみ」の人よりも「在宅・出社勤務を併用している」方のほうが割合が高い。
また、「睡眠時間が週3回以上足りないと感じている」人も、同じような傾向が見られたのです。これはやはり今ならでは。

柳沢さん:
コロナ禍で在宅勤務が普通になり、日本も国民の平均的な睡眠時間は少し増えたんですよ。

桑子:
全体としては増えたんですね。

柳沢さん:
通勤しなくてよくなって。ところが、コロナ禍がだんだん落ち着いてきて在宅の日と出社しなきゃいけない日がまざるようになりましたね。
いわゆる「ハイブリット勤務」。これがやはり平日の中でも出社しなきゃいけない日とそうでない日で「ソーシャル・ジェットラグ」が生まれる原因になってしまうということです。

桑子:
では、どうすればいいかということになってきます。

柳沢さん:
平日にどうしても睡眠時間を確保できない方は、その睡眠負債を抱えたままでいるよりは週末とか休日に返したほうがまだマシです。

桑子:
寝だめをしてもいいと。

柳沢さん:
「次善策」です。だけどその場合は、難しいことなのですが「睡眠中央時刻」をできるだけずらさないほうがよくて。朝ゆっくり眠れる日ほど、その前の晩を早めに寝るということを心がけていただくと少しはよくなります。

桑子:
寝る時間を早めにすると。

柳沢さん:
そう。

桑子:
週末、ちょっと夜更かししたくなりますけれども…。

柳沢さん:
とっても難しいですけどね。

桑子:
睡眠学的には重要と。

柳沢さん:
それが理想です。本当の理想は、平日もちゃんと睡眠時間を確保する、それが理想です。

桑子:
ここまで睡眠の時間について見てきましたが、もう一つ大切なのが「睡眠の質」です。睡眠の質が死亡リスクに関わっていることが明らかになってきました。

眠りの新常識!睡眠休養感と健康リスク

2022年9月、「睡眠の質」に着目した画期的な研究が発表されました。それは、睡眠の状態を測る新たな指標「睡眠休養感」。

起床した時にどれだけすっきりしたと感じるか。その人の主観を5段階で評価するというシンプルなものです。脳波などの複雑な計測を行わなくても、本人の感覚を継続して測れば睡眠の質がある程度正確につかめることが分かってきました。

国立精神・神経医療研究センター 栗山健一医師
「睡眠の質が重要だと言われているけれども、実際に睡眠の質を何をもって評価すればいいのか、みなさん分からないと思うんです。よりダイレクトに自分の睡眠の質がいいのかを判断する指標として、睡眠休養感というものに注目しました」

「睡眠休養感(すっきり感)」と「睡眠時間」を掛け合わせると、現役世代の人々の健康に大きな影響があることが分かりました。

睡眠時間が少なく休養感が低い人ほど、肥満やうつ、がんなどといった死亡リスクが高まることが分かったのです。さらにその影響が大きかったのは、65歳以上の高齢者です。

鍵は「床上時間」。布団に入っている時間のことです。実際に眠っている時間だけではなく、その前の眠れない時間や、その後の起きて布団から出ない時間も含みます。

高齢者では床上時間が長く、睡眠休養感がない場合に死亡リスクが最も高くなっていました。

栗山健一医師
「(高齢者の場合は)床上時間が8時間を超えてくる方々に関しては、数年後の死亡リスクが有意に高まるということが分かってきました」

なぜ、床上時間と睡眠休養感が高齢者の死亡リスクに関わるのか。スタジオで解説していきます。

ぐっすり眠るには?理想の睡眠へ

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
「床上時間が長く」て「睡眠休養感がない」と死亡リスクが高くなってしまうと。

柳沢さん:
高齢者の場合ですね。今のVTRの前半で言っていましたが、若い働き世代は絶対的に睡眠時間が足りていないので、睡眠時間が足りない人は当然、「睡眠休養感もない人」。それが死亡率が高いのですが、高齢者になると自分の時間が自由になるので、逆にたくさん寝ないとだめだと思ったりして、ずっと早いうちからベッドにいて、朝起きても何時間かベッドにいるような方もいるんです。

桑子:
それで床上時間が長くなってしまう。

柳沢さん:
はい、床上時間がどうしても長くなる。やはりそういう生活スタイルをしている人というのは、おそらく昼間と夜の「めり張りがついていない」。おそらくそういう方は昼間、何か活動的な生活をしてない。そういうことで床上時間がどうしても長くなってしまって、なおかつ睡眠休養感も取れていないということは、もしかしたら眠れないのではないかという不安があるのかもしれないし、その辺がやはり問題になってるんでしょうね。そういうことが反映されているデータだと思います。

桑子:
では、改善していくためにどうしたらいいですか。

柳沢さん:
先ほど言ったように、特に高齢者は「昼間と夜のめり張り」。

昼間、精神的にも肉体的にも活動的な生活をできるだけ続ける。そうすると夜の睡眠も自然によくなりますので。

眠くなるまでベッドには行かない。ベッドは本当に眠るための空間ということで、ベッドの上にいる時間は必要最小限の時間にしてめり張りをつける。

朝起きたら、さっさとカーテンを開けて活動的な次の日の生活を始める。それが理想的なのではないでしょうか。

桑子:
具体的によい睡眠をどう取ったらいいかということで、ここから柳沢さんに方策を解説していただきたいと思います。

まず理想の寝室、どういうものなのか。具体的に見ていきたいと思いますが、まず印象として「薄暗い」ですか。

柳沢さん:
日本の住宅って、夜が明るすぎるんですよ。これはすでにもう寝室に限らず、リビング、ダイニングから夜の照明が日本の住宅は明るすぎると言われていて、それは生物学的には不自然ですよね。

桑子:
夜は暗いものですからね。

柳沢さん:
人間というのは夜は眠る、昼間は活動するようにできていますので、夜の時間帯に強い光を浴び続けるような生活環境でいると、それだけで眠くならないし、リラックスもできないし、体内時計が遅れがちになっちゃうんです。体内時計からみると「まだ昼だよ」とシグナルを送っているようなものですから。それでなかなか夜眠くならないということになってしまいます。

桑子:
大体どれぐらいの暗さがいいでしょうか。

柳沢さん:
イメージとしては、欧米のホテルの部屋とか、ちょっと雰囲気のいいレストラン、ちょっと薄暗いと感じるじゃないですか。そのぐらいに思い切って住宅も薄暗いぐらいにしたほうが私はリラックスできるし、夜の生活のクオリティーが上がると思います。

桑子:
そして部屋の温度ですが、どうでしょうか。

柳沢さん:
少なくとも寝室に関してはエアコン、冬も夏も朝まで入れっ放しにすることを私は推奨します。

中には「電気代もったいない、このご時世に」という方もいると思いますが、私に言わせるとそれによって得られるよりよい睡眠のほうが価値が高いと思います。

住宅の性能にもよりますが、朝になると夏は暑苦しくなっちゃうとか、冬は寒くなってしまうという寝室は多いので、そうするとどうしても睡眠の質が悪くなっちゃいますからね。

桑子:
そうすると「適切な温度というのは何度」ということは、なかなか難しい?

柳沢さん:
何度というのはなかなか難しくて、その人にとって快適な、もちろん厚い布団が好きな人もいるし、薄いタオルケットが好きな人もいる。夏と冬でも違いますし、その中で自分と相談して、自分にとって眠るのに快適な温度を朝まで保っていただきたいと。

桑子:
番組でも時間の許す限り聞いていきたいと思いますが、まず昼寝の時間はどれぐらいなのか。

Q.昼寝の時間は?
A.14時までに20分以内で

柳沢さん:
夜の睡眠を十分に確保できない働き世代の方は、昼過ぎぐらいの時間帯に、「パワーナップ」とかいいますけれど、ちょっと仮眠をとると、そのあとの仕事のパフォーマンスが確実に上がります。
だけど、それは「14時ぐらいまで」。遅い時間帯にやっちゃうと、その日の晩、また眠れなくなっちゃうんです。だから14時までに終わらせる。それから「20分以内ぐらい」で切り上げる。これは、それ以上長く眠ると「深睡眠」といっていちばん深い睡眠に入っちゃうんです。そうすると、そこから覚醒に戻るのにまた時間がかかり、ものすごく不快な思いをします。ですから「20分以内」と。

桑子:
昼間は必ずしなきゃいけないではなく、睡眠が足りている人はもちろんする必要もないと。

柳沢さん:
これは「応急措置」だと思ってください。理想は、夜の睡眠を十分に取ること。それができない場合は、応急措置として役に立ちます。

桑子:
そして寝る前にスマホ。VTRで佐藤さんも同じ例が出ましたけれども、どうでしょうか。

Q.寝る前にスマホは?
A.光より操作がNG

柳沢さん:
スマホの光が悪いと言われて久しいですが、実は光よりもっと危険かもしれないのが、実はインタラクティブな双方向の「SNS」とか「ユーチューブのショート(動画)」とか、どうしても次また操作をしながら続けてしまう。これをやっていると、全然眠くならないんですね。脳が刺激され続けるので、それがいちばん危ないのではないかという論文も出ています。

桑子:
スマホを扱うとしたら受動的なというか。

柳沢さん:
そうですね。受動的な普通の静かな映画とかですね、一方通行で見てる方がまだマシだとされていると思います。

桑子:
そして、寝る前に音楽を聴く方もいると思いますが。

Q.寝る前の音楽は?
A.OK(だけどフェードアウト)

柳沢さん:
リラックスできる音楽を聴けばよく眠れるという方はたくさんいますので、それは全然悪いことじゃないです。
ただし、何か1曲でフェードアウトにするようにとか設定をして、寝ついたあとは静かな環境になるようにしてください。

桑子:
寝る前にお酒を飲むという方もいると思います。

柳沢さん:
このいわゆる「寝酒」というやつですね。これだけは睡眠学的にはやめていただきたいです。お酒は私も大好きですが、理想的には眠る時間までには半分さめているような時間帯でディナータイムで切り上げると。
眠るために飲むお酒は確かに寝つくことはできるのですが、そのあとの睡眠の質がとっても悪くなっちゃいます。

桑子:
質を考えたらやめると。

柳沢さん:
寝酒をやめていただきたい。

桑子:
そして、サプリや飲料の効果はどうでしょうか。

Q.サプリや飲料の効果は?
A.自分に合うものを

柳沢さん:
「機能性表示食品」とか、ある程度の効果が科学的にうたわれてる商品もたくさん出ていますが、やはりこれは個人個人で違うので。もし自分に合うような製品が見つかるのであれば、大いに活用していただければと思います。

桑子:
頼り過ぎもよくないということですね。お風呂に関してはどうでしょうか。

Q.お風呂は?
A.就寝1~2時間前に

柳沢さん:
これは「温泉効果」といって、英語でも「ホットスプリングエフェクト」というのですが、「就寝1~2時間前ぐらいの時間帯」にゆっくりお風呂につかって深部体温を少しだけ上げる。ちょっと汗ばむぐらいあったかくして、そこから深部体温が戻っていく時に非常に寝つきがよくなるとされているんです。これは科学的な証明もございますので、これは効果があると思います。

桑子:
そして、夜中途中で起きてしまったらどうすれば眠れるか。

Q.途中起きてしまったら?
A.複式の深呼吸がオススメ

柳沢さん:
夜中起きちゃったよという時ですね。「腹式の深呼吸」ということですが、これは実は不眠症の心理学的な治療法でも使われるリラックス法の一つなんですね。
よく言われるのは「7秒大きく吸って、8秒かけて吐く」と。ものすごくゆっくりです。
「1往復15秒ぐらい 腹式の深呼吸を3~4回繰り返す」ということをやると、頭がリラックスしてまた自然に眠れるということができると思うんです。

桑子:
今、睡眠において大切なことはどういうことでしょうか。

柳沢さん:
日本人って、本当に睡眠は「残り時間で取るもの」といまだに考えてる方が多いと思うのですが、お金で例えたら、これは住宅ローン、必要経費だと思ってください。もう1日7時間なら7時間セットアサイドして、そこは他のことには使わない。これが大事だと思います。

桑子:
1日17時間という考え方もいいかもしれないですね。

柳沢さん:
はい。

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