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2023年1月24日(火)

マスクは?ワクチンは?コロナ"5類"で今後どうなる

マスクは?ワクチンは?コロナ"5類"で今後どうなる

新型コロナの扱いがインフルエンザと同等の"5類"に移行する動きが加速しています。今後は、国主導の感染対策から、より一人一人の判断が問われることに。これまで行ってきたマスクの着用はどうすれば?ワクチンの接種は?変異を続けるコロナのリスクは、これまでとどう違ってきているのか?国内で初めて感染が確認されてから3年。大きな転換点を迎えている対策について、政府分科会の尾身茂会長ら専門家とともに徹底検証しました。

出演者

  • 尾身 茂さん (新型コロナウイルス対策分科会会長)
  • 藤谷 茂樹さん (聖マリアンナ医科大学病院医師)
  • 大竹 文雄さん (大阪大学 特任教授)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

マスクは?ワクチンは? コロナ"第5類"でどうなる

桑子 真帆キャスター:
先週、岸田総理大臣は、新型コロナの感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同等の5類に移行する方針を表明。今後は、国主導の感染対策から、より一人一人の判断が問われるようになります。

今回は大きく3つのテーマについて専門家と共に考えていきます。

・新型コロナのリスクは今、どれほどのものなのか
・ワクチンの扱いは今後、どうなっていくのか
・日常のルールは変わるのか

国内で初めて感染が確認された3年前の1月から延べ3,200万人が感染し、死者は6万5,000人を超えました。その死者数、今回の第8波はこれまでより高い水準が続いています。

まずは新型コロナのリスク。これまでとどう違うのか、医療の現場から見ていきます。

コロナのリスクは今 これまでとの違いは?

番組が3年間にわたり取材を続けてきた、神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院。

救命救急センター長の藤谷茂樹さんです。主に重症者の治療を担ってきましたが、第8波が広がる今、その数が大きく減っているといいます。

聖マリアンナ医科大学病院 救命救急センター長 藤谷茂樹医師
「コロナの重症患者はいないですね。第5波とか6波とかで患者数が非常に多くなって、病棟管理が困るっていうようなことを今まで経験してきたんですけど、今の時点でベッドがまわらないとかは、あまり感じていない」

現場が最もひっ迫したのは、2021年の夏。デルタ株の感染拡大のときでした。肺の機能が低下した重症者が急増。呼吸不全に陥り、人工心肺装置・ECMO(エクモ)を必要とする事態も相次ぎました。

一方、オミクロン株が拡大する第8波の今。この病院に搬送される患者の症状は大きく変わっています。「肺の機能低下」で死に至る人はほとんどいないというのです。

藤谷茂樹医師
「コロナの重症で人工呼吸器をつけている患者さんは、おられません。第5波のように若い人たちがどんどん入ってきて重症化していくというピクチャー(状況)でもない」

こうした変化は全国的に起こっています。

現在の第8波の感染では、過去の第5波や6波と比べて重症者の数は増えていません。その一方で死者は1日で500人を超え、過去最多を更新しています。

実は、その多くがコロナの症状が重くなる前、中程度の段階で亡くなっているというのです。

患者の受け入れが急増している川崎市立多摩病院では、主に中等症患者を受け入れています。コロナ対応の病床を25床まで増やしましたが、そのうち24床が埋まっている状況です。(1月20日現在)

患者の多くは、糖尿病や腎臓病などの基礎疾患を抱えた人々。コロナに感染することで元の症状がさらに悪化し、亡くなる例が相次いでいるというのです。

川崎市立多摩病院 本橋伊織医師
「基礎疾患を持っている人とか、高齢者、何とかぎりぎりで生活していた人がコロナに感染して、一気に体力が落ちて亡くなってしまった場合がほとんどだと思う。コロナの患者が入れるベッドを確保しようとしている状況ですね」

この状況をどう考えればいいのか、深掘りします。

コロナ"第5類"へ 対策はどうなる

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
きょうは、3人の専門家とともにお伝えしていきます。まず、現場で治療に当たっている医師の藤谷さんに伺います。

亡くなる方が、重症化した方よりも中等症の方が多くなっている。医療現場ではどう受け止めていますか。

スタジオゲスト
藤谷 茂樹さん (聖マリアンナ医科大学病院医師)
3年間コロナ重症者を診療

藤谷さん:
主に感染者というのが、高齢者、特に療養施設の患者さんが多く、もともと重篤な状態にある方がコロナ感染にかかって亡くなられるということで、私たちの施設に来るということはほとんどなくなってきてます。

そして、感染者が爆発的に増えてきているということで、院内感染が起こって院内クラスター、そして濃厚接触、病棟閉鎖となり、冬期、特に救急患者が増える時期なのですが、救急医療にひっ迫を与えているというのが今の現状ではないかと思います。

桑子:
こうした中で国は、新型コロナの感染症法上の扱いを見直す方針を示しています。

現在、新型コロナは2類相当ですが、これを季節性インフルエンザと同じ5類に見直す方針を示しています。これによって対応がどう変わっていくのか。

まず、5類になると「行動制限がなくなります」。そして診察に関しては、現在発熱外来が中心なのが「原則一般の医療機関」で行うことになります。医療費については、公費負担の現状を「当面継続」する案が出ています。

行動経済学が専門で政府分科会のメンバーの大竹さんに伺います。かねてから大竹さんは日常を平常化すべきだと訴えていましたが、現状亡くなる方が多い状態が続いています。この中で5類への検討がされている、どう評価していますか。

スタジオゲスト
大竹 文雄さん (大阪大学 特任教授)
行動経済学が専門・政府の分科会メンバー

大竹さん:
私は、5類への変更を検討する、進めるということに賛成しています。もちろん亡くなる方が多いというのは非常に大きな問題です。ただ、VTRにもあったとおり、重症化して亡くなる方、コロナによって重症化する方というのは減ってきたと。

一方、感染対策を続けていく、行動制限を続けていくことの弊害も大きいです。ですから、そのバランスを取っていくということが重要で、対策をすることでどこまで死者を減らすことができるのかはなかなか難しい以上、これから対策を変えていくというタイミングに来ていると思います。

桑子:
尾身さんは、政府の分科会の会長として対応に当たってきましたが、5類に移行するに当たって今後議論していくべきポイントはなんだと思いますか。

スタジオゲスト
尾身 茂さん (新型コロナウイルス対策分科会会長)
3年間コロナ対策で政府にアドバイス

尾身さん:
議論するのは大賛成です。しかし、5類に移行すれば自動的に感染者数、あるいは死亡者数が減るということはないんです。また、自動的にコロナ診療に参加する医療機関の数が増えるということでもないんです。

残念ながら、新型コロナの感染症はいわゆる季節性インフルエンザとか、普通のかぜと全く同じというわけではないんです。そういう中で、私は今やるべきことは2つ、大きな目標があると思うんです。

1つは、やはりここまで来ると、社会、それから経済、教育、これをなるべく普通のところに戻す。

もう一つは、そうした中でも必要な医療を提供できる、維持できるということが非常に重要です。この2つの目的を実現するためには、私は準備期間を置いて段階的にやっていく必要があると思います。

例えば、体の具合が悪い人が会社を休むといっても休める環境を作る。医療のほうも、しっかり準備体制を段階的にした上で移行するということが大事だと思います。

桑子:
今お話にもありましたが、新型コロナと季節性インフルエンザは全く同じではありません。どの点が違うのか見ていきたいと思います。


まず「致死率」を見ていきます。新型コロナは第5波のデルタ株と比べてオミクロン株になりますと、どの年代を見ても下がってきています。今や季節性インフルエンザとほとんど変わらないというデータもあります。

藤谷さんに伺いますが、「感染力」、「治療薬」に関して見ると違いがありそうですね。

藤谷さん:
インフルエンザの場合、予期してワクチン開発ができるということで予防がある程度できるのですが、オミクロン株に関しては変異株がどんどん出てくるので、なかなかワクチン開発が追いつかない。そういった中で感染力がどんどん高まっていくことが大きな違いなのかなと思います。

「治療薬」に関して3種類の傾向の抗ウイルス薬があるのですが、薬物の相互作用というものがありまして、基礎疾患を持っている人たちには投与しにくい。よほど基礎疾患が重篤な患者さんの場合にのみ、今は抗ウイルス薬を投与している。なかなか使い勝手が悪いというのが現状です。

桑子:
「季節性」に関して尾身さんに伺いますが、これは大きく異なっていますね。

尾身さん:
オミクロン株の特徴は、藤谷さんが言ったことに加えて2つ重要な点があります。

1つは、「季節性というものがない」。年がら年中起きているということが1点。

もう1点重要なのは、このウイルスがまだ「進化」して「変化」し続けていて、「予測することが非常に難しい」ということです。

したがって、予測が非常に難しいということでワクチンをどう準備するか。医療体制をどこまで、どう強化するかという準備をすることが難しい部分かと思います。

桑子:
そして「後遺症」。り患後の症状ですが、藤谷さん、この違いはどのように現場で感じていますか。

藤谷さん:
インフルエンザの場合、後遺症はほとんど残らないということがいわれています。

しかし、今回の新型コロナの場合、6%から15%が3か月後に後遺症が出てくるということが報告されています。脱力感、けん怠感、そして脱毛、不安感、今後の生活に関するような症状をもっていて、当院でも3か月待ちぐらいの患者さんが出てきている。なかなか社会がそれを理解していない。本人が仕事、環境でも苦しんでるということが今、問題になっています。

桑子:
新型コロナと季節性インフルエンザ、同じようなところもあれば違うところもあるということです。

次に見ていくのは、ワクチンはどうなるのか。鍵を握るのは「ウイルスの変異」です。

変異繰り返すウイルス ワクチン 今後は?

今、アメリカ東部を中心に新しい変異ウイルスが急速に広がっています。「XBB.1.5」です。

これは、感染した人が何人に感染を広げるかを示した数値です。これまでのオミクロン株は1.2を超えない程度でした。しかし、XBB.1.5は1.6と高くなっていました。これまでのオミクロン株の中で、最も感染力が強い可能性があることが分かってきました。

一体なぜ、感染力が強いのか。

1つ目の理由は、「免疫を逃れる力」です。アメリカ・エモリー大学では、XBB型に対するワクチンの効果を調べました。

オミクロン株に対応したワクチンが作り出す抗体は、初期のウイルスや、これまでのオミクロン株に効果を発揮しています。一方、XBB型では効果が大きく低下していました。

それはなぜか。

ワクチンを接種すると、体内では「抗体」が作られます。この抗体が、ウイルス表面にある「スパイクたんぱく質」と結合することで細胞への侵入を防ぎます。

ところが、XBB型ではスパイクたんぱく質の形が変わっています。このため、抗体がスパイクタンパク質と結合しにくくなり、ウイルスが細胞へ侵入するのを防ぎづらくなっているというのです。

エモリ―大学ワクチンセンター メフール・スーター准教授
「XBB型は、それ以前のウイルスよりも感染やワクチン接種によって生じる抗体からうまく逃れるようになっています。その結果、この変異ウイルスは非常に高い伝染力を持つようになりました」

さらに、XBB.1.5は細胞の表面にある受容体との結合力が大きく増していることが分かりました。

東京大学医科学研究所 G2P-Japan 佐藤佳教授
「XBB.1.5のすごいところは、免疫から逃げるのをほぼ完璧にした上でACE2(受容体)との結合力を上げる機能を獲得した」

こちらがそのデータ。受容体との結合しやすさが、これまでのオミクロン株に比べて格段に高くなっていたのです。

この3年間の新型コロナとの戦いは、まさにウイルスの変異との戦いの歴史でした。

2019年末に登場してからウイルスは次々と変異を繰り返してきました。2021年には、重い肺炎を引き起こす「デルタ株」が出現。このころからワクチン接種が広く行われるようになりました。しかし、2021年の年末に「オミクロン株」が登場。変異によって、ワクチンによる感染予防効果が低下します。そこで、オミクロン株に対応するワクチンも作られました。さらに、新たな変異にも対応したワクチンも登場。それでも、XBB型のように私たちの免疫をすり抜ける新たな変異ウイルスが誕生しているのです。

佐藤佳教授
「これまで非常に出来が良かったワクチンによってもたらされていた、『重症化予防』効果と『感染予防』効果の2つがあった。『感染予防』効果に関しては、もしかしたら今のワクチンの方向では期待できなくなってきているのが現状。重症化を防ぐことができる効果は、まず間違いなくある。どういった人がどれくらいの感覚でブースター(接種)で、免疫を増強させる必要があるのか、議論するのが今後大事になってくる」

"日常のルール"は? コロナ5類でどうなる

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
XBB.1.5は、すでに国内でも確認されています。尾身さんに伺いますが、今後の流行への懸念はどういうふうに感じていますか。

尾身さん:
今、日本の感染のレベルは少しずつ徐々にですが下方に来ているわけです。これからXBB.1.5の動向によって、これがもっと主流になってくると恐らく時期によりますが、第8波が下がってきているのだけれども、下がりきらないうちにまた再燃するのか、あるいは下がりきったあとにいわゆる第9波というものが来る。そういうことも可能性としてあるということを考えておいたほうがいいのではないかと思います。

桑子:
VTRにもありましたが、ウイルスはこれまで変異を繰り返してきて、これに対して私たちはワクチン接種というもので対抗してきました。

ワクチンの接種率をまとめています。当初、国内の多くの方がワクチン接種をしていました。ところが、2022年秋から始まったオミクロン株に対応しているワクチン接種の状況が40%余りということです。

尾身さん、ワクチンを打たなくていいのかなという空気感を感じられるのですが、今後どうあるべきでしょうか。

尾身さん:
ワクチンは間違いなく、重症化予防効果はかなりあります。それと同時に、若い人の、り患後症状、後遺症の発症予防もワクチンによって一定程度予防できるという報告も出つつあるんです。

したがって私は、なるべく打てる人は打ったほうがいいと思います。しかし、ここに来て免疫逃避の話もあるし、副反応のこともあるしワクチンを何度も打つのは大変だということで、関心が薄くなっているというところもあります。

したがって、これから第6回、7回、8回というのを打つのかどうか。あるいは、打つ対象をどうするのかというのはこれからの変異株の動向も踏まえて、われわれ専門家も政府、厚生労働省を中心にしっかりと議論を進めていきたいと思っています。

桑子:
医療の現場にいる藤谷さんは、ワクチン接種のあり方はどう考えていますか。

藤谷さん:
ワクチン開発の速度と変異株ができる速度というのは、どうしても変異株ができる速度のほうが早くなっている。免疫逃避に関して、ワクチンでは重症化は予防できますが、感染性に関しては予防できないということを考慮すると、いかに医療ひっ迫を来さないようなワクチン戦略を考えるかということが重要になってくると思います。

未感染者、そして医療従事者、高齢者、基礎疾患を持った患者、(ワクチンを)打たないと病院に来て重症化してしまうような患者、うつしたら大変なことになる医療従事者、そういうところに限ったワクチン戦略が必要になってくるのではないかと思っています。

桑子:
最後に見ていくのは、日常のルールが今後変わっていくのか。海外では、欧米を中心に日常を取り戻す動きが進んできています。

例えばイギリスを見ますと、2022年2月、感染者の隔離義務を含む、すべての法的な規制を撤廃。

また、アメリカでは2022年3月までに全米50州でマスクの着用義務を廃止。

さらにオーストラリアでは、1月から開催されているテニスの全豪オープンで選手は検査を受ける必要はなく、陽性であってもプレー可能にする考えを示すなどの動きもありました。

さらに、WHOも3年前に出した"緊急事態"の扱いをどうするのか、今週、扱いを審議する見通しです。

大竹さん、こう見ますと日本との差を感じるわけですが、どういうふうにみていますか。

大竹さん:
海外はどんどん日常が進んでいますよね。やはり病気の実態にあわせて変えてきたんだと思います。

ただ、日本ではやはり「コロナは怖い病気だ」というイメージが長く続いてきたということだと思います。しかし、弊害も大きいんです。教育にも影響を与えているし、自殺も増えるし、そして子どもの数も減りました。そして結婚も減った。そういった将来に影響を与えるような弊害が目立ってきた。

そうすると、病気の実態も変わってきたというタイミングで日本も変えていくタイミングに来ているのではないかと私は思っています。

桑子:
尾身さん、今5類への移行も検討が始まっていますが、そうなってくると感染そのものを受け入れる社会になっていくということでしょうか。

尾身さん:
感染を許容するかどうかというのは実は、一定の死亡者を許容するかどうかという議論とつながるんです。諸外国の例を見ても、対策を急激に緩和してしまうと死亡者が急激に発生するということも分かっています。

しかしここまで来ると、3年たって、社会、経済、教育を元に戻すという、それが時代の要請ですよね。実は、われわれ専門家もかなり前からどこまでなら許容できるのかという議論をしようと思っていた。ところが実は、なかなか難しい。その理由は、実は許容という部分は、もうこれは純粋な医学の領域を越えて「価値観の問題」、国、それぞれの価値観、それから国の中でも医療関係者なのか、経済の人なのか、あるいは高齢者なのか、若い人なのかによって見る景色が違ってくる。

そういう意味ではなかなか難しいのですが、私は今回5類の議論をするということは、実は「価値観の問題」を議論するということで、これは国民的なコンセンサス、広い議論をして少しずつコンセンサスを作っていくということが必要だと思います。

桑子:
まさに社会の空気がどうなっているのか。NHKの世論調査を見ていきたいと思います。

「感染対策」と「経済活動の回復」、どちらに力を入れるべきか聞きました。経済活動に力を入れるべきと答えた方が半数を超えて、60%という結果になりました。

一方で、「感染拡大が収束し、屋内や人混みで"マスク着用"が求められなくなった場合どうしますか」と聞きますと、「以前のようにマスクをしません」という方は23%。それ以外の多くの方は、「マスクはできるだけつける」、「以前よりは着用機会が多くなる」という結果になりました。

この結果、大竹さんはどういうふうにご覧になりますか。

大竹さん:
まず、感染の実態というのを日本人もかなり理解してきた。だから、社会活動、経済活動を元に戻すべきだというのが増えてきたということだと思います。

そしてマスクについては、リスクに応じた着用に変えていきたいということだと思います。しかし今なかなか難しいのは、感染対策としてのマスク着用ではない場面が多いです。感染しない可能性が非常に高いのに、1人で屋外にいてもマスクをしている。それはやっぱり社会規範なんですね。マスクをしないと外に出てはいけないような雰囲気になっている。

この社会規範を変えるためには、結構強いメッセージを出して「こういう場合はいいんですよ」ということをはっきりしていかないと、リスクに応じたマスク着用というところに変わらないのではないかと思います。

桑子:
メッセージを出すのが「国」ということになりますが、加藤厚生労働大臣はこのように話しています。

加藤勝信 厚生労働相(1月20日)
マスクの着用に関して
・今よりも人や場をしぼったつけ方をお願いする
・具体的な内容は、これから議論していく

まさに具体的なところが気になりますが、尾身さん、どうしていくべきだと考えていますか。

尾身さん:
3年以上感染対策が続いてきたので、やややり過ぎという感染対策もとられてきたというのは事実だと思います。

これからは私は、政府の要請に基づいて一律に感染対策をするというよりは、個人や会社組織がそれぞれの状況や感染のリスクに応じて主体的にいろいろ選択肢から選んでいくということが重要だと思います。

例えば会社の中でもNHKで会議をやると、みんなもうワクチンを打っているし、元気な人ばかりだと。「じゃあ、きょうはマスク取ってもいいのではないか」という場合もあるだろうし、中には基礎疾患、あるいは日常的に高齢者に会うような人がいれば、「きょうは少しマスクを」と。こういうような状況に応じた判断というのも、これから求められるのではないかと思います。

いずれにしても専門家としても、具体的なことをなるべく早く、まずは基本的な考えから少しずつ具体的なことに議論を始めようと国や厚生労働省と一緒になってやりたいと思っています。

桑子:
ぜひ選択肢というのを提示していただきたいと思いますが、藤谷さん、医療現場からご覧になってマスクのつけ方はどうでしょうか。

藤谷さん:
私たち医療現場の立場からいうと「医療ひっ迫を起こさない」。犠牲になる高齢者、基礎疾患のある患者さんを守るためにはどうすればいいかということを考えると、やはり医療現場ではマスクはまだまだ必要なのではないのかなと思っています。

あと、基礎疾患のある方は自分自身をプロテクトするということで、マスク着用で「自分は自分で守る」といった対策を取ることが必要ではないかなと思っています。

桑子:
最後に大竹さん、(コロナが国内で確認されてから)4年目となりますが、今後日本はどうしていくべきだと思いますか。

大竹さん:
私は、ことしこそ新型コロナが普通の病気になる年にしたいと思っております。

桑子:
尾身さん、いかがでしょうか。

尾身さん:
これはしっかりと議論すべきだと思います。やはり社会、経済、教育をなるべく元に戻すということが必要です。そのためには段階を置いてじっくりと議論をし、5類に行くときにはもう準備ができて、いろんなネガティブなことが起きないようにやるということが今求められて、みんなの知恵が今、求められていると思います。

桑子:
議論は絶対に大事にしたいところです。ありがとうございました。

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