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2022年8月29日(月)

旧統一教会と政治 見過ごされてきた関係

旧統一教会と政治 見過ごされてきた関係

第2次岸田改造内閣の閣僚・副大臣・政務官で、少なくとも32人に何らかの接点があり、他にも自民党幹部や野党議員との関係も次々と判明している旧統一教会。なぜ、どのように政治家との関係を広げていったのか?政治家が繋がりを持つ理由とは?実態に迫りました。さらに安倍元首相がビデオメッセージを送っていたUPFジャパン、国際勝共連合など関連団体のトップ・梶栗正義氏が初めてテレビカメラの前に。数々の疑問について問いました。

出演者

  • 塚田 穂高さん (上越教育大学准教授)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

旧統一教会と政治 見過ごされてきた関係

桑子 真帆キャスター:
世界平和統一家庭連合、旧統一教会側と政治家の関わり。

8月に発足した第2次岸田改造内閣の大臣、副大臣など、政務三役からは32人に上っています。

そして、各党も関連団体のイベントに出席したり、祝電を送ったりするなどの接点が相次いで明らかになっています。

いま問題視されているのは、高額な献金や霊感商法など問題が指摘されている教会側に政治家が関わり、その関係が長年にわたって不透明なままにされてきたことです。

旧統一教会側と政治家、両者はなぜ、そしてどのように関わってきたのか。全国各地の取材から水面下での結び付きが浮かび上がってきました。

旧統一教会と政治の関わりとは

安倍元総理大臣の側近だった、自民党の萩生田政務調査会長。旧統一教会側との接点が明らかになっています。

自民党 萩生田 政調会長
「地元の支援者の中にボランティア活動を熱心にやっている皆さんがいて、その方たちが国連NGOの世界平和女性連合の会員でした」

萩生田氏の地元、東京八王子市の教会に通っていた元信者です。2009年の衆議院選挙で落選していた萩生田氏。教会側は、その後の選挙活動を応援していたといいます。

取材班
「選挙活動でどういうことを?」
元信者
「私は主に電話がけをしていました。(教会で言われたのは)一番影響力が大きい安倍さんを、日本の代表にする必要があります。萩生田さんという立場は安倍さんの一番近い存在で、セットで政界で活躍すれば、(教会は)大いに発展ができる」

複数の教会関係者は、萩生田氏がたびたび教会施設を訪れていたと証言。教会内には"暗黙のルール"があったといいます。

元信者
「政治家たちが(教会に)来るところは撮っちゃいけないって言われていて、選挙活動をしてると他言をしちゃいけない。ばれちゃいけないから、絶対そこは出ちゃダメ」

萩生田氏の事務所は番組の取材に対し、関連団体のイベントなどに参加したことを認めた上で次のように回答しました。


会場はホテル、雑居ビルやイベントスペース等がありました。訪問した先の所有者は当方にはわかりませんが、教会施設であるとの印象を受けたことはありません

萩生田氏事務所の回答

教会や関連団体との関係性を断つと表明した、萩生田氏。これまでの選挙への協力について問われると…。

萩生田 政調会長
「もしかしたら支援いただいている方の中に、そういう方がいたということは否定できないかもしれませんが、私はわかりません」
元信者
「すごく自分は熱い思いで応援していたのに『そんな人いませんでした』って言われた感覚。むなしいですね」

旧統一教会は1964年、日本で宗教法人の認証を受けました。その教義は、伝統的な家族観や男女の純潔などを重視するものでした。

その後、反共産主義を掲げる政治団体「国際勝共連合」が設立されます。中には国会議員の秘書や地方議員になった信者もいます。

国会議員の元秘書
「秘書に入って、いずれは議員になって日本を変えていく。思想の啓蒙(けいもう)ですよ。政治に対しては布教ですね」

教会側が、政治との結び付きを強める目的は何なのか。

全国有数の保守王国、富山県。知事と富山市長が選挙の際、教会の関連団体から投票を依頼する電話かけなどの支援を受けていました。

<8月>

富山県 新田八朗知事
「支援を受けたのは適切ではなかった」
富山市 藤井裕久市長
「(相手の)活動内容を把握するのに欠けていた」

番組では、教会側との接点について、県議と富山市議74人全員に直接問いました。

74人のうち、22人が「旧統一教会や関連団体のイベントに参加した」などと回答。さらに、そのうち6人が「選挙支援を受けたことがある」と答えました。

教会側と政治家。両者をつなげてきた中心人物が取材に応じました。

鴨野守氏。富山で関連団体のトップとして活動しています。かつて、教会本部で広報局長を務めた幹部でした。

世界平和連合 富山県本部 鴨野守 事務局長
「富山選出の国会議員に富山で会うことは、楽ではないんですね。だから、われわれは富山における県議や市議、そうした方々と交流をさせていただいている」

取材を進めると、教会側が地方の政治家を通じて、政策に影響を与えようとする実態も見えてきました。

同性カップルを結婚に相当する関係と認める「パートナーシップ制度」。富山でも検討が進んでいます。この制度について、ことし1月、議員が参加する勉強会が開かれました。講師として招かれた人物は、制度に反対の立場をとる、国際勝共連合でかつて要職を務めていました。

勉強会を主催した市議会議員。教会側から選挙の支援を受けていた1人です。

取材班
「(講師が)国際勝共連合の関係者だと認識していましたか?」
成田光雄 富山市議
「していませんでした、全く。講師にアポを取ったのは鴨野さんなんですけど」

勉強会で使われた資料には、同性愛や性同一性障害は心理的障害であるなどと記載。制度の推進派の県議は、国際的な認識とかけ離れ、人権侵害に当たると指摘しています。

種部恭子 富山県議
「いろんな意見を聞くのは悪いことではないと思うんです。ただ、中を見て非常に差別的な書き方がされています。これを聞いたら危険なことだと理解すると思います」
取材班
「パートナーシップ制度についても働きかけを行っていると聞いていますけども」
鴨野守事務局長
「LGBTQ、または同性婚を一つの地方自治体において条例を進めていく。また一方では『慎重になろう』という意見もあったときに、先生方にご提案することは、それほどおかしくないことだと思っています。お決めになるのは先生方です」

これまで、ほかの自治体でも自分たちの思想に沿う政策の実現を後押ししてきた教会側。その、ねらいはどこにあるのか。

鴨野守事務局長
「地方で条例がたくさん重なっていけば、それを一つの土台にしながら、東京において国会議員に地方がこういう動きですから東京においてはどうでしょうかと持っていけるのではないかなと、そんなことは想像します」

旧統一教会と政治 関係を持ち続けている理由

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
旧統一教会側との関係を巡り、自民党は党所属の国会議員が点検した結果を今週金曜までに提出させ、集約でき次第公表することにしています。

きょうのゲストは、政治と宗教が専門の上越教育大学、塚田穂高さんです。まず伺いたいのが、政治家が教会側と関係を持つことの問題というのはどこにあるのでしょうか。

スタジオゲスト
塚田 穂高さん (上越教育大学准教授)
「宗教と政治」が専門

塚田さん:
今回の問題は「宗教」と「政治」という一般論から入るべきではない。まず、これは「カルト問題」。宗教が主に関わる人権問題や社会問題と、宗教と政治の問題がかけ合わさったものとして考えるべき。

桑子:
2つの問題がかけ合わさっている。

塚田さん:
そう思っています。旧統一教会は、正体を隠した勧誘や宗教的な脅しを伴う霊感商法、あるいは同様の強要的な献金というのを積み重ねてきました。民事訴訟の判決も30件以上、信者らが刑事手続きを受けたものも30数件以上ある。そういう団体と政治家とがつながってきた、つきあってきた。これこそが第1の問題と考えています。

桑子:
問題が相次いだあと、2009年に教会はコンプライアンスを強化する宣言をし、その後、民事訴訟の件数は減ったとしているのですが、実態はどうなのでしょうか。

塚田さん:
確かに件数自体は減ったところはありますが、依然として訴訟は続いています、献金の返還に関するものですね。そして、それまで行っていた物品を介した霊感商法というのは確かに控えられるようになってきたわけですが、今度は強要的な献金にある種振りかわっただけと見ているので、そういう被害は依然として続いていると認識しています。

桑子:
そういった教会側と政治家、両者が関係を持ち続けてきたわけですが、理由というのはどんなことだとお考えですか。

塚田さん:
宗教団体が政治活動に関わること自体は、原則としては自由です。政教分離の問題ともややずれてはいます。

だからといって何でも自由というわけではなくて、例えば「家庭を壊す」と彼らが考えるところの夫婦別姓、LGBTQの理解増進を妨げていると。こういうような政治活動をやっていますので、これはある種、他者の自由、あるいは権利を抑圧する面があるのではないか。こういうものは何でもオーケーではなくて、やはり個別に検討するべきものだと思います。

これは統一教会に限った話ではないですが、宗教と政治ということで言えば、それぞれ選挙の際に教団が信者に投票というのを押しつけていないか。実質的に強制していないかという点も、やはり個別に検討されるべきだと思います。

その上で関係の理由というところに進みたいのですが、まず両者が非常に都合のよいつき合いというのを続けてきた。政治家側からすればいくつかありますが、まずは「票」ですね、票田というところで。ただ、これは限定的です。国政選挙ではおよそ8万票と言われてきていますので、統一教会が自民党を牛耳っているとか、そういうことはないわけです。

2点目としては、秘書や選挙の運動員スタッフを提供する、してくれると。これが一番効果的というか、いちばん大きかったのではないかなと。それで都合よく使っていたと。あとは政策を支援したり、応援してくれるという面も確かにあったと思います。

桑子:
教会側からの理由というのは。

塚田さん:
教会側としては根本にあるのは、宗教的な理想を実現したいと。みずからの統一原理というもので世界を統一していきたいという究極的な目標があるので、そのために政治的な力を持ちたいとか、賛同者を増やしたいということで政治に関わっていたことがいちばん大きいと思います。

桑子:
統一教会は政治家との関係について、特定の政党や候補者を組織的に応援することはないとしています。一方、関連団体で政治家が関係を認めているのがこちらになります。

この中でも政治と深い関わりを持っていた国際勝共連合、世界平和連合のトップであり、安倍元総理大臣がビデオメッセージを送ったUPFの日本のトップでもあるキーマンが、初めてテレビの取材に応じました。

関連団体トップを直撃

政治活動を担う教会関連団体のトップ、梶栗正義氏です。問題視されている旧統一教会と政治とのつながりを、どう捉えているのか。

国際勝共連合 世界平和連合 UPFジャバン 梶栗正義氏
「ほとんどが祝電を送ったとか、雑誌のインタビューに答えたというごく普通の関係であって、何ら法的、論理的に問題があるものではなかったと思います。私たちの掲げる『反共 安全保障 平和 家庭』といった理念に賛同しようとする政治家のいったいどこが問題なのか疑問を禁じえません」

関連団体は、社会的に問題が指摘されている教会とは別の独立した組織であることを強調する梶栗氏。しかし、実態として教会と関連団体は一体なのではないかと問うと。

取材班
「私たちの取材によると、信者が納めている献金が、関連団体の活動原資の一部になっているという情報もある」
梶栗正義氏
「まず世界平和連合と、政治団体である国際勝共連合は、宗教団体からの寄付はいただいておりません。UPFに関しては、これはさまざまな個人、そして団体からいただいている寄付の中に家庭連合(旧統一教会)からの寄付も含まれております。私たちとしては家庭連合(旧統一教会)からの善意なる寄付と受け止めております」
取材班
「信仰に基づいて献金されたお金が、UPFの団体としての活動に充てられていることになるが」
梶栗正義氏
「信者は教団に対してお布施をしたのであり、教団として私どもの活動を理解していただき、これに支援をいただく、寄付をしていただくということですから、信者からの直接的な関係ではないと考えております」

梶栗氏は、UPFについては教会からの寄付が活動の原資になっていることを認めました。

去年9月、そのUPFが韓国で開いたイベント。トランプ元大統領など、各国の要人と並んで安倍元総理大臣がビデオメッセージを寄せました。

安倍元総理大臣
「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします」
梶栗正義氏
「(イベントは)朝鮮半島の平和のあり方が世界平和にいかに貢献できるのかというテーマをもとに、世界の政治指導者、そして有識者の皆様でオンラインの大会を行うというものでありました。ぜひ安倍元首相にも平和を実現するためにメッセージを語っていただけないか、お願いしていたということでありまして、それ以上ではございません」

一方、教会への恨みを募らせ、安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者。「安倍元総理はビデオメッセージを送るなど、教会と関係が近いと思った」と供述しています。

梶栗正義氏
「このビデオメッセージと教団との関係ということをつなげるには、いささか距離があるように思いますので、私としては正直、困惑しているといったところであります」
取材班
「一方で、実際にはそのような受け止めがあるということをどのように感じますか」
梶栗正義氏
「そのような受け止め方をされたということであれば、事実であれば、重く受け止めなくてはいけないものと考えます」

2010年に初めて出会ったという、梶栗氏と安倍氏。その2年後、安倍氏が自民党総裁に再び就任し、政権を奪還すると、教会関連団体は組織として安倍氏を支援するようになったといいます。

梶栗正義氏
「安倍元首相もやはり反共の意識の強いリーダーのおひとりでありましたので、私たちとしても尊敬は申し上げておりましたが、安保法制など安倍元首相が掲げてきた政策に対して、理解を広めるためのさまざま勉強会を各地で行ってきたのであり、また選挙においては応援を依頼された方を各地において応援をさせていただいた」

安倍氏の考えに賛同し、各地で選挙支援を行っていたと、梶栗氏は、そう認めました。

2013年の参議院選挙で初当選した、安倍派の北村経夫参議院議員。信者で地方議員でもある男性は、教会側が北村氏への投票を呼びかけていたことは内部では周知の事実だったといいます。

地方議員を務める信者
「安倍さんとも近いということもあって『安倍さんも応援していますよ』と。『厳しいから、ぜひ応援してほしい』、教会をあげて一生懸命応援しましょうと」

北村氏の事務所は、番組の取材に対し「組織的な応援は受けていません。応援をしていただいた皆様の中に『国際勝共連合』という政治団体の方がいたことは確認しております」とコメントしています。

2016年の参院選で、教会側から選挙支援を受けたことを認めている安倍派の元参議院議員、宮島喜文氏。当選の翌年、旧統一教会のイベントに来賓として出席し、あいさつをしていました。

元参議院議員 宮島喜文氏
「昨年7月の参議院選挙で、皆様方の応援をいただき、当選させていただきました。この場を借りまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました」

そして去年9月、安倍氏はUPFのイベントにビデオメッセージを送りました。この翌月、UPFジャパンのトップ、梶栗氏はその背景について、信者に向けて次のように語っています。


この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において、私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人が記憶していた

信者に向けた日曜礼拝での発言

一国の元総理大臣が寄せたメッセージ。信者である親との関係に悩む宗教2世は、深刻に受け止めていました。

親が信者の女性
「悪い霊を集める壺(つぼ)と言われていて、7個あります」

この女性の両親は教会に対し、数千万円もの献金を重ねてきました。思い悩み、みずから命を絶とうと考えたこともあるという女性。このメッセージに絶望したといいます。

親が信者の女性
「日本で影響力のある方が教会を肯定したな。教会は評価されて、大きくなっていくばかりなのではないか。二世としては『終わったな』というような気持ち」

教会側と安倍氏の結び付きを示すことになった、ビデオメッセージ。これまで水面下でつながってきた政治との関係が公になることを危惧する声が、実は教会内部でも上がっていました。


ここ数年の安倍氏との近さは、教団内でも心配する声があった

教団の広告塔のように使っていると思われるのではないか

教会内部の声
取材班
「今後の政治との距離・関係性をどう考える?」
梶栗正義氏
「政治家と皆様との関係に関しましては、まずは私どもの社会における信頼回復というものを図りながら、今後の適切な関係のあり方に関して、模索をしていきたいと考えております」

今後のポイントは

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
塚田さんに聞きますが、梶栗氏へのインタビューで注目したポイントはどんなところでしょうか。

塚田さん:
まず梶栗正義さんは、お父さんが梶栗玄太郎さんといって、日本の統一教会の元会長で、さまざまな要職を歴任した草分け的な存在です。そのご子息、教会内ではエリートですし、実質的なトップではないかという見方すらある、そういう人物のインタビューだったということです。

桑子:
その中で注目されたことは、どんなことでしょうか。

塚田さん:
まず、宗教法人からの献金がUPF=天宙平和連合に流れていたことを認めたというのも1つ、大きかったと思います。

ただ、関連団体は別だとか、独立だと言っていましたが、結局主張ですね、政治的な主張。それは教会本体と変わらないですし、結局はそういう宗教的理想を実現するために一体となって向かっているそれぞれの団体なので、そこの一体性というのは依然として見逃すことはできないと思います。

そして、安倍元首相とのつながりというところでは梶栗さん、みずからがダイレクトに話をつけたわけですし、自分たちが示した誠意に対してビデオメッセージは見返りだったのかなと。その結び付きの強さというのを実感する内容でした。

桑子:
限られた時間ですが、旧統一教会と政治の関係、今後求められるべきことはどんなことでしょうか。

塚田さん:
まず、政治家と旧統一教会の決別宣言ですね。これはきちんとした調査と、そして反省を示すと。うっかりであっても関わったことによってもたらした影響、効果というものに思いをいたさなければいけないですし、そして決別すると。この3ステップが必要だと思います。

その上で被害救済ですね。被害は続いていますし、過去の被害も回復されていないということで、これに超党派で取り組んでほしい、早急に取り組んでほしい。それこそが政治家の行うべき仕事だと考えています。

桑子:
あと、見ないといけないのが2世の問題です。旧統一教会と政治の問題の中で、来週、私たちは信者の子どもたちの声から、見過ごされてきた2世問題についてしっかりとお伝えします。

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