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2022年6月15日(水)
崖っぷち!?“投票率”は上がるのか

崖っぷち!?“投票率”は上がるのか

7月に行われる見通しの参議院選挙。3年前の前回、過去ワースト2位の48.8%だった投票率がさらに低下するのではないかと懸念の声が上がっています。他の世代よりも投票率の低さが際立つ「若い世代」に焦点をあて独自アンケートを実施。なぜ投票に行かないのか?選挙に対するホンネに迫ります。では、投票行動に向かうカギはどこにあるのか?投票率が全国平均を大きく上回る町の“秘密"をはじめ、ヒントを探りました。

出演者

  • 鈴木 福さん (俳優)
  • 小島 勇人さん (主権者教育アドバイザー)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

崖っぷち!? "投票率"は上がるのか

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
1週間後の6月22日に公示。7月10日に投票が決まった参議院選挙。

これまでの投票率を見ますと、過去70%を超えていた時期もあったのですが、この30年はほぼ50%台に低下。

そして3年前の前回では、過去2番目に低い48.8%にまで落ち込みました。中でも低かったのが10代、20代の投票率で、3人に1人しか投票に行かなかったという結果になりました。

このまま投票率が下がり続けると、どんな問題が起きるのか。投票率を上げていくための鍵はどこにあるのか。若い世代に焦点を当てて、ゲストと共に考えていきたいと思います。

きょうのゲストは、6月17日に18歳を迎え、選挙権を得る俳優の鈴木福さん。そして、長年自治体の選挙管理委員会の職員を務めてこられた、選挙のスペシャリスト、小島勇人さんです。

まず鈴木さん、ふだん、お友達などと政治や選挙の話はしますか。

スタジオゲスト
鈴木 福さん (俳優)
6月17日に18歳を迎え 選挙権を得る

鈴木さん:
全くといっていいほどないですね。授業の中でどんな法案が可決されたという話が出るときはありますが、周りの反応的にはあんまり興味がないなというのが空気として漂うというか、そういったことはあります。

桑子:
やはりそうですよね。小島さん、若い世代で投票率が低いと、ずばりどんな影響が出てしまうのでしょうか。

スタジオゲスト
小島 勇人さん (主権者教育アドバイザー)
選挙の実務に長年携わる

小島さん:
選挙の投票率というのは民意の総和ですので、一票一票の積み重ねです。投票率が低いとなると、政治に活力がなくなり、どんどん政治が後ろ向きになっていく。その結果、生活にはね返ってくる。そういうおそれもあると思います。

桑子:
投票率が低い背景に何があるのか。番組では、6月上旬に全国の18歳から70代までの3,000人に対し、政治に対してどんな思いを持っているのか、インターネットを通じてアンケートを行いました。

例えばこちらの質問。

「政治に変化は必要だと思いますか?」

と聞きました。すると、「必要」そして「どちらかと言えば必要」と答えた人が合わせて9割を超えました。

小島さん、多くの人は政治に変化が必要だと思っているのに、投票率に結び付いていない。これはどうしてでしょうか。

小島さん:
この結果を見る限りは、関心が低いとは言えない。ですから、関心があるからこそ政治に変化が必要だという、1つのアンケート結果が大きい結果として出てきたのではないかなと思います。

桑子:
関心はあるんだと。

小島さん:
関心はあるのだけれども、投票に行くためには「自分の1票では変えられない」という意識をどんどん捨てていただいて、一票一票の総和が政治を動かすんだということを考えていただければと思います。

桑子:
政治に対する意識、どうすれば高められるのでしょうか。直近の国政選挙で3回連続投票率が全国1位となっている山形県で手がかりを探りました。

なぜ投票率が高い!? 全国1位の"秘密"

秋田との県境に広がる、山形県遊佐町(ゆざまち)。およそ1万3,000人が暮らす、一次産業が中心の町です。山形県内でも投票率が高いという、この町の人に話を聞きました。

取材班
「選挙に行かれてますか」
町の人
「去年(衆議院選挙に)行ったぜ」
取材班
「毎回欠かさず行っている感じですか」
町の人
「だな」
取材班
「(選挙に)必ず行かれる?」
町の人
「うん。行かれない時は、期日前投票やってます」

ほかの年代に比べて投票率が低い、若い世代にも聞いてみると。

学生
「私は行くと思います」
学生
「僕は行きます」
若者
「必ず行くと思います」

23人に聞いたところ、「選挙に行く」と答えた人は8割に上りました。では、なぜ選挙に行くのか尋ねると。

町の人
「ちゃんとした人に政治をやってもらいたいと思うので」
町の人
「自分の住むところをよくしたい」
町の人
「何もしなければ何も変わらないし、これだと思う人に入れておけば、それなりにいいこともあるだろうし」
町の人
「住んでいる地域の政治に責任を持つというか、行かないという選択肢が頭に思い浮かばない」

去年の衆議院選挙で、遊佐町の投票率は全国に比べて全体で10ポイント、18歳では13ポイントも上回っていました。

なぜ、政治への参加意識が高いのか。多くの人が挙げたのが、ある取り組みでした。

町の人
「高校の時に、一度だけ『少年議会』で活動させていただきました。自分の言ったことが反映される、貴重な経験だなって」

少年議会とは一体何なのか。町役場を訪ねました。

遊佐町長の時田博機さんです。

少年議会は19年前、人口減少が進む中、若い世代のアイデアを取り入れて地域を活性化するねらいで始まったといいます。

遊佐町 時田博機町長
「少年町長がリーダーシップのもとに、いろいろな政策提言をやってもらえる。ものすごくショッキングな発言があるわけですよ。"遊佐町には名産品はあるけど、特産品はない"とか」

町長1人、議員10人からなる少年議会。町に在住在学の中高生なら誰でも立候補できます。選挙の際には、生徒たち全員が投票に参加します。

任期は1年。予算45万円を町から与えられ、自分たちが考えた政策を実現することができます。町のオリジナルキャラクターの考案や、ベンチにバスケットゴール、通学路に街路灯を設置するなど、若い世代の視点で政策を実際に形にできるのです。

時田博機町長
「アクションを起こす。課題として取り上げる。それによって状況が変わるということを体験してくると、政治に無関心でいればいいんだよねという意識から、1つまた次のステップに進んでくれると思う。あなたたちの意識で変えられるんだよっていう」

少年議会で、若い世代の意識にどんな変化が生まれるのか。

高校まで遊佐町で育ち、今は山形市内の大学に通う齋藤愛彩さんは、中学2年生のときに気軽な気持ちで初めて立候補したといいます。

大学生 齋藤愛彩さん
「少年議会に入るのも、民主主義とかを意識して入ったわけでもなく、サークル感覚で入った感じ」
取材班
「それまで政治とか、議員の世界に関心や興味はありましたか」
齋藤愛彩さん
「いや、全くなかったです」

しかし、少年議会で町を紹介する図鑑を作ったことで、政治に無関心だった齋藤さんに変化が生まれたといいます。

町の伝統行事や文化を見つめ直すとともに、図鑑を使ってPR活動を実践。これまでにない充実感を味わいました。

その後、齋藤さんは議員を2期、町長を3期務め、次々と政策を実現しました。

齋藤愛彩さん
「大人が動かしていると思っていた地域や社会を、自分たちもまちづくりの一員としてちゃんと考えるとか、これから大人になっていく中で、自分たちの未来を自分たちで選択するとか。そういうのが今までは何にも関心がなかったけど、自分のことだから自分で決めて当然だな、私にだって町を変えられるんじゃないか、本気で思うようになった」

実体験を通じて変化を見せた、若い世代の政治への無関心。町は、ほかの世代へも働きかけを行い、全体の投票率を高めようとしています。小さな子どもを持つ家庭が投票所を訪れやすいよう、抽選会を実施。投票の呼びかけは、少年町長が防災行政無線で行います。

少年議会が始まって20年目。町では、当初のねらいを超えて思わぬ効果も生まれていました。

時田博機町長
「子どもたちがものすごく少年議会で活躍、頑張ってくれるのを見ている。大人が、高齢者が、議会が、子どもたちが頑張ってくれているから、俺たちも負けていられないと。相乗効果というか、そんな形が生まれてきているのではないか。傍観者では何も変わらないという意識があると思います」

低いとどうなる? 投票率の"秘密"

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
鈴木さんは番組の取材で実際に遊佐町の少年会議のメンバーに会ってお話しを聞いたそうですが、いいなと思ったのはどんなことですか。

鈴木さん:
やっている子たちがすごく生き生きとしていると感じましたし、あとはそういった活動をしている子が身近にいるというのがすごく大事だなと思っていて。

というのも、学校から代表として行くわけじゃないですか。定員がオーバーしたら地域の学校全体で投票をする。自分の身近な存在が選挙に立候補して、地域の代表としてやっている。そういった存在が身近にいるというのは、すごく大事だなと思いました。

あと、自分が考えたこととか自分の身近な人が考えたことが実際に物事として動く、そういった成功体験が身近にあるというのがすごくいいなと思いました。

桑子:
成功体験は本当に大事ですよね。ただ小島さん、全国すべての自治体で遊佐町と同じようなことができるかというと、どうでしょうか。

小島さん:
遊佐町のよかったところは、町長なり町議会自体が若い人たちに期待をして、何かを任せてやってもらおうということが若い人たちに響いているので、そういう部分を全国の皆さんは参考にしてやっていただいたらいいのではないかなと思います。

桑子:
参考になるポイントが必ずあるということですよね。政治への意識を見てきましたが、投票率が低いままだとどういうことになってしまうのか。

実は、投票率が低い世代ほどお金の面で負担が増えるという試算もあるんです。鈴木さん、40代以下の投票率が1%下がったとします。すると、年間で1人当たり、将来的にどれぐらい損をするというふうに思いますか。

鈴木さん:
若者向けの政策が増えなかったらということですよね。

桑子:
とも言えますね。

鈴木さん:
3,000~4,000円ぐらい。

桑子:
なるほど。では、東北大学大学院の吉田浩教授の試算を見ていきます。投票率が下がると、若者向けの施策というよりも高齢者向けの政策が重視される、こういうふうに仮定します。そうなると必要になってくるのが社会保障費の負担ですが、それを支えるために40代以下の負担がおよそ2万7,000円、年間で増えるという。

鈴木さん:
1%で。

桑子:
これだけではないんです。さらに、社会保障費を受けとれる額の格差というのも広がるんです。介護費用など高齢者向けの給付が増えて、子育て支援などの給付が下がるということは、世代によって社会保障費の格差というのが年間およそ3万3,000円に広がる。たった1%でこれだけ損失が出てしまうと。どういうふうに見ますか。

鈴木さん:
僕らが高齢者の方々を支えるために必要なお金が増えるうえに、僕らが受けられる恩恵というものが全くないというか減ってしまうと、将来生きる人間にとっては、このままではいけないなという部分で「投票する」という行動にもつながるとは思うんです。

ただ、だからといって「僕らが投票しなかったら変わらない」というのもおかしいなとは思います。政治家からすると、やはり投票していただいて、当選しなかったらそれは失敗になってしまいます。それはいけないことだと思いますが、若者向けの政治をするということで、僕たちの関心がそこに行くという可能性もあるじゃないですか。そこを信じて、政治家、政党の方々にはやってほしいですし、それをぜひ高齢者の方々、中年世代の方々にも応援してほしいなと。一緒になって将来のことを考えていくというのもあってほしいなと思います。

桑子:
おっしゃるとおりですね。若い世代の投票率を上げるためにはどうすればいいのか。海外の事例を見ていきたいと思います。

若者の投票率向上に積極的に取り組んだ国の一つが、スウェーデンです。直近の国政選挙での18歳から25歳の投票率は実に80%を超えています。

大きな役割を担っているのが、政治の仕組みを学ぶ「主権者教育」なんです。特徴は、高校などに政治家を実際に招いて討論会を開催。政策などについて気軽に意見を述べ合う授業を取り入れているんです。

こうした主権者教育、実は日本でも18歳選挙権の導入以降、積極的に進められていて、ことしからは「公共」の授業が高校で必修化されました。果たしてその効果は。

どうすれば投票率が上がる?

都内にある公立高校。高校1年生の公共の授業が行われていました。

都立戸山高校 公民科 山田亮太教諭
「第26回の参議院選挙が行われます。選挙に関して考えていってもらって、今の状況を改善するための打開策を提言してもらう」

この日のテーマは投票率。どうすれば投票率を上げられるのか、生徒自身に考えてもらいます。

生徒
「義務化するべきだと思う」
生徒
「罰金を発生させるとか」
生徒
「"選挙行くんで、休み取ります"はだめなの?」
生徒
「制度を作る。いいね、確かに」

みずからが1票を投じる主権者として、政治や社会の課題を自分のこととして考え、行動できる力を身につけてもらうことがねらいです。

実は、高校生が主体的に政治に取り組むことは戦後長らく望ましくないとされ、生徒への指導でも中立や公正が重視されてきました。

昭和44年当時の文部省の通知では、「国家・社会としては未成年者が政治的活動を行うことを期待していないし、むしろ行わないよう要請している」と記されています。

こうした方針は、2015年に選挙権年齢が18歳に引き下げられたことを機に見直されました。ところが、今も公共などの授業で実際の政治を取り扱うにはさまざまな制約があります。

国が教員向けに作成した指導資料には、さまざまな禁止事項や注意点が記されています。例えば、各政党の政策を生徒に伝える場合、政党の公約集は学校内では配布できません。選挙期間中は一定の場所でしか配ることができず、公職選挙法違反になるおそれがあるためです。

先生が各政党の主張をまとめる場合は、すべての政党の主張を平等にまとめ、平等に扱わないかぎり違反になるおそれがあるとされています。また、先生個人の見解を伝えることも選挙運動と見なされるおそれがあるというのです。

山田亮太教諭
「生徒から"この政党ってやってることどうなんですかね"って聞かれた時に、今この期間だから答えられないって言うのも、変な話だと思うんです。もっと学校現場であったり、若い人たちの投票率を上げるということを考えるのであれば、比較的オープンに話ができるような環境づくりができればいいのかなと」
生徒
「制限ばかりだと窮屈な感じ。やっぱり、それは興味が離れちゃうのかなと思います。なるべく教えてもらえると自分なりの意見を持つこともできるので、もっと教わりたいと思います」

若い世代の政治参加 どうすれば?

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
なかなかうまくいかないところもありつつも、こうやって日本で授業が始まっているわけですが、小島さん、これを実効性を持たせていくためには何が必要だとお考えですか。

小島さん:
やはりスウェーデンの成功体験がありますので、それを日本の主権者教育の中で学んで取り入れていく。政治家の顔が見える、そういうものを学校現場に取り入れて、子どもたちがそれを受けて一生懸命討論する。それが大事だと思います。

桑子:
生の顔を間近で見る、そして話を聞くという体験が重要だと。

小島さん:
重要だと思います。今はもう生徒たち、若い人たちに政治家というものが離れていますので。どこか遠いところにあるのではないかというイメージがあって、親近感そのものが湧かないのではないかと思います。

桑子:
鈴木さん、どうしたら投票しようと思ってもらえるのでしょうか。

鈴木さん:
こういったお仕事をさせてもらっている中で、投票は自分たちの国への誇りだったりとか、こうなってほしいという願い、ポジティブな動きからするものではないかなと。どうしても何かを変えなきゃいけない状況にあったら投票しなきゃとなるかもしれないけど、今はそれほどではないほど平和なので、だからこそ、よりよい方向に若者向けへの政治をしてくださる方々に僕らも投票したいと思ので、そういった方々が増えていってほしいなと思います。

桑子:
ありがとうございました。投票率アップの鍵となる、若い世代の意識。それを上げるために今、遊佐町で新たな動きが始まっています。

投票率"全国1位" あの町では

6月、山形県遊佐町では20年目の少年議会が始まります。

この日、役場の職員が新年度の立候補者数を取りまとめていました。手を挙げたのは、過去最多の18人。来週、選挙で新たな町長と議員が決まります。

少年議会でまちづくりに参加し、政治への興味が湧いたという齋藤愛彩さん。

齋藤愛彩さん
「自分たちのことを自分たちで考えるというのはすごくおもしろくて」

今、齋藤さんは少年議会の取り組みを各地に普及させる活動に力を入れています。

齋藤愛彩さん
「少年議会によって今の私があると思うし、いずれ地元、遊佐町に還元したいのはもちろんだけど、少年議会の経験や形を広めていきたい」

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