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2022年5月17日(火)
あの商品、本当にNo.1? 氾濫する“No.1広告”のカラクリ

あの商品、本当にNo.1?
氾濫する“No.1広告”のカラクリ

売上、人気、満足度No.1…。店の看板やSNSに流れるネット広告などNo.1があふれています。こうしたNo.1広告の裏にはその根拠となる調査をする会社が多数存在。中には必ずNo.1が取れるという売り文句で調査を請け負う会社まで。地域密着度No.1店という広告のもとになったアンケートに全国の人が答えるなど、根拠が不確かな調査によってNo.1が作られるカラクリをひもとき、情報の賢い読み取り方を考えました。

出演者

  • 谷口 優さん (宣伝会議 編集長)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

あの商品、本当にNo.1? 望ましいNo.1広告とは

桑子 真帆キャスター:
街やネットでよく見かける、「No.1広告」。No.1と表記するうえで、広告として求められている形があります。

例えば、左側の国内販売実績No.1のように客観的なデータが示されているもの。そして、右側のように満足度評価No.1など、消費者の主観的な評価であっても調査の時期や対象などについて明記するなど、誤解されないようにすることが求められています。

No.1広告はどのように作られているのか、舞台裏を取材しました。

あふれるNo.1広告 どう作られるか追跡調査

私たちはまず、世の中にあふれる大量のNo.1広告のチェックから始めました。協力してくれたのは、消費者団体で広告の監視をしている木村智博弁護士です。

木村智博弁護士
「このお客様満足度は、購入者、お客様になった人が評価するものなんです」

商品の売上数や、購入した人の満足度評価、信頼度評価など、さまざまなNo.1であふれています。No.1を表記するには、その根拠を書き添えることが法律で決められています。

木村智博弁護士
「よくよく見ると(ランキング1位が)2021年10月22日になっていて、瞬間最大風速での1位だなと。しかもビューティー部門、オーラルケア部門、ホワイトニング部門、すごく限られた分野での、しかも限られた時点での1位だということがわかる」

さらに木村さんが注目したのは…。

木村智博弁護士
「これかなり気になりますね、14冠達成」

この歯磨き粉の広告で表示されていた、ほかのNo.1表記。おすすめ度評価、信頼度評価などのNo.1を獲得したとアピール。木村さんは、この広告の表示では消費者を誤解させる可能性があると指摘しました。

木村智博弁護士
「調査した対象が書いてあったりして、"この商品を買った お客さんの生の声"として1位っていう評価を与えられたと、消費者から見ると、ここから読み取れる」

私たちがこの商品の利用者を探すと、ネット上で複数の書き込みが見つかりました。

その中の1人に話を聞くことができました。

商品を購入した人
「フェイスブックを見ているときに、売り上げNo.1とか、品質No.1とか、いろいろなNo.1が並んでいて、信用できる要素だと思った」

以前から歯のホワイトニングに興味があったという女性は、この広告を見て購入を決めます。この商品は、初回購入時のみ1本980円。2回目以降は2本でおよそ8,000円に。解約しないかぎり、商品が送られてくる仕組みでした。

女性は期待したような効果が得られなかったため、1か月で解約しようとしました。ところが電話が一向につながらず、解約するまで苦労したといいます。

商品を購入した人
「2、3日で100回以上はかけたと思います。SNSで、いくつか解約できなくて困っているという投稿が載っていました。(簡単に)解約できなかったという意味では、信頼度はNo.1ではないと思います」

この商品について、どのような調査が行われたのでしょうか。私たちは、関西にある歯磨き粉の販売会社に向かいました。

会社の副社長を名乗る男性は、カメラでのインタビューは応じられないとしたうえで、No.1調査の手法については次のように説明しました。

<取材メモより>

会社側
「インターネットのアンケート調査で1位が取れたものです。4つほどの商品名が書かれたものの中から選んでもらいました」
取材班
「調査の対象は【歯の着色汚れなどが気になる全国の324名】になっていますが、これは実際に商品を使った人たちですか?」
会社側
「商品の使用の有無は確認していません。"使ったことがない人"の回答も含まれています」

14のNo.1のうち11は、商品を使用していない人の回答が含まれているといいます。

<取材メモより>

取材班
「『品質評価』や『おすすめ度』『信頼度』を使ったことがない人に聞くというのは、調査方法として違和感があるのですが?」
会社側
「商品にどんな成分が含まれているかなどは説明しているので、それを見てどれが良いと思うかというアンケートで、こちらとしては問題があるとは考えていません」

アンケートは、あくまで商品の「印象」を聞いたものであり、広告を見て誤解をしたという指摘は今のところ受けていないとのことでした。

そして、アンケートは自社で行ったものではなく、専門の調査会社に依頼した「イメージ調査」だと話しました。

調査会社は広告主から請け負って、No.1広告の根拠のもとになるデータをアンケートなどで集め、分析を行い、広告主に報告します。この歯磨き粉のイメージ調査をした調査会社に話を聞こうとしましたが、取材は拒否。詳しい内容は分かりませんでした。

No.1広告を作るカラクリ

そもそも「イメージ調査」とは、どのようなものなのか。私たちは、No.1調査を手がけてきた別の会社にその仕組みを聞きました。

代表の保木佑介さんです。自社ではイメージ調査を行っていませんが、最近その手法は業界で広まっているといいます。

保木さんによると一般的なNo.1調査は、例えば販売実績やシェア率、商品の性能など、客観的な数字をもとにしたものです。一方、イメージ調査は満足度や支持率など、主観的な気持ちや意見を聞くものです。

代表 保木佑介さん
「イメージという言葉自体が曖昧なので、調査も曖昧になるんですけど」

主観的な気持ちや意見は聞き方によって答えを誘導できるため、簡単にNo.1を作り出せる側面があるといいます。

例えばコーヒーに関するアンケートでは、味や香りなど、質問の数をとにかく増やして聞きます。その中のどれか1つで1番になれば、そのことをうたったNo.1のコーヒーとアピールできるのです。

代表 保木佑介さん
「1日で1,000人集めたければ1,000人とか1万人とかという回答を、1日で回収する事もインターネットだったらできる」

取材を進めると、イメージ調査で恣意(しい)的な調査手法に関わっていたという人物に接触することができました。

明かしたのは、店頭に並ぶ商品に書かれたNo.1を作り出す調査のカラクリ。

イメージ調査に関わっていた人
「コンビニで販売するお菓子を作っているメーカーがいたとします。依頼主の商品はAという商品だったとして、結果的に最初のアンケートだと3位だった」

例えば7つの商品でアンケートを取り、依頼主の商品Aが1位でなかったとき、Aより上位の商品を別の商品に入れ替えて1位になるまでアンケートを取り続けます。

イメージ調査に関わっていた人
「最初の1位2位を取ったBとCがいないんで、2回目はNo.1になる確率は高くなるでしょうし、商品AというのをNo.1に持っていくというのは無理な話じゃない」

また、アンケートが行われている期間の途中でも、1位になった瞬間に集計をストップするという手法もあるといいます。

イメージ調査に関わっていた人
「自分たちが欲しい結果を取れるまで何回もアンケートを取る、集計する。そういった意味ではアンケートのデータはいくらでも改ざんしようと思えば改ざんできますし、(広告主も)気にしていないですから」

No.1広告で法規制 不当表示で行政処分

恣意(しい)的な調査でもできてしまうという、No.1広告。法律による規制はどうなっているのか。

埼玉県消費生活課では、広告の不当表示の監視を続けています。3年前に県が処分を行った広告の1つが、接骨院の広告。3つの分野でNo.1になったとアピールしていました。

埼玉県消費生活課 荏原智美さん
「『全国の患者様から選ばれてNo.1 お客様評価』ということで、ランキング表示の前提となった調査がイメージ調査。実際にこの接骨院を利用したお客さんに対してのアンケートではなかった」

利用者でない人も回答していましたが、その記載がなく、消費者に誤解を与えかねないと判断されました。広告主は、県の聞き取りに対し「調査会社から、この表示で問題ないと説明を受けた」と答えていました。

ところが、処分を受けたのは広告主だけでした。現在の法律では原則、調査会社は処分を受けることはないといいます。

埼玉県消費生活課 荏原智美さん
「景品表示法で責任を負う者というのが『表示物を最終的に決定した者』と定められている。それに当てはめていくと、今回広告主だけの処分になりました」

埼玉県がこれまでに行政処分を行ったNo.1広告は、2件。いずれも同じ調査会社が請け負っていました。都内にあるこの調査会社を訪ね、取材を申し込んだところ、後日文書で回答がありました。


「依頼された企業の意向に合わせようと、No.1の結果を出すためにいたずらに調査方法を操作するなどの非公正な調査を行うことは断じてございません。

市場調査の適正さを確保するため、常に謙虚な姿勢をもって、市場調査の対象・方法の在り方の検証を重ねてまいりました。

今後も、弊社内部の体制強化に加え、外部の専門家による監修体制を導入するなど、更なるサービス向上、公正な調査を行っていく所存です」

調査会社からの回答

調査方法に課題が

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
きょうのゲストは、月刊「宣伝会議」の編集長で広告やマーケティングに詳しい、谷口優さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

もちろんNo.1広告には確かな根拠に基づくものも多くありますし、私たちにとって有益なものではあるのですが、中には公正とは言えない調査によるものもあるということで、これについて何が問題だと考えていますか。

スタジオゲスト
谷口 優さん (宣伝会議 編集長)
マーケティングや広告業界に詳しい

谷口さん:
No.1広告といったときに、まず調査の不適切な実施という問題と、それによって作られた不適切な広告という2つの問題があるわけなんですが、不適切な調査で結果ありきで作られた調査結果を基にした広告が消費者の目に触れると、消費者からすると誰かがお墨付きを与えてくれて、ほかの人も買ったから大丈夫と安心をして商品を買ってしまうことになりかねない。それは実際の商品の内容であったり、取引条件よりも優良だったり、有利に誤認させるおそれがある。こういったものは景品表示法で処罰の対象になっているわけですが、まさにここに該当してしまいかねないのが今のNo.1広告の問題だと思います。

桑子:
そうした広告が出る中で、「イメージ調査」というものもあったわけですが、使っていない人の答えがそのままNo.1になりかねない。これはどうなんでしょうか。

谷口さん:
皆さんが求められているのは、お墨付きであったり実績であったりするわけなので、使っていない方のイメージを聞くというのは、そもそもNo.1に使うというのが適切ではないと思うんです。

一般消費者の方からしたら、販売実績No.1なのか、イメージ調査No.1なのか、見る方には同じNo.1に見えてしまうので、この紛らわしさというのは消費者の権利というのを侵害しかねないと思います。

桑子:
今、No.1広告がこんなにも広がってしまう背景にはどんなことがあるのでしょうか。

谷口さん:
まず調査という観点でいうと、インターネットによって調査ができるようになって、非常にコストと労力が削減されて、いろんな方たちが調査をできるようになった。それはいいことではあるのですが、ただ、昔は調査といえばアナログだったので電話をかけたりとか。

桑子:
訪問したりということもありました。

谷口さん:
そういった手段、手法で非常に労力、コストがかかっていたものが、今では例えば国勢調査もインターネットで回答ができる時代なので、非常に答える側の負担も少ないですし、調査対象者、協力者を見つけてくるプロセスにおいても非常に労力の削減になっていると。なので、調査のハードルが下がったということが、一部の職業倫理を持たない事業者が参入する事態になっているのかなと思います。

桑子:
調査会社自体が乱立しているような状況にもなっているわけですね。世の中にあふれるNo.1広告ですが、なぜ広告主はNo.1にこだわるのでしょうか。

広告主がNo.1を求める理由 その効果に疑問の声も

No.1広告を使う、ある会社が事情を明かしてくれました。

No.1を掲げる会社の代表
「同業他社が(No.1を)3つ並べだしたんでね、同業者に取られたら悔しいじゃないですか。その強迫観念もある。3冠をとるため、180万円(調査会社に支払った)。費用対効果はわからない。惰性でやっているような感じですね」

実は、このNo.1表記はすでに広告としての効果が薄れてきていると分析する専門家もいます。

ネット広告のコンサルティング会社 社長 加藤公一レオさん
「結論からいうと、No.1表記は今の時代はそこまで上がらない。今って、もう大半の広告主がNo.1、No.1、No.1って付ける。これって逆に言うと、みんながやっちゃったら目立たなくなるということ」

No.1が書かれた広告と、書かれていない広告を比較した結果、宣伝効果にほとんど違いは見られませんでした。それでも広告主のNo.1へのニーズが無くならないのは、なぜなのか。

加藤公一レオさん
「コロナになって、この2年半くらいネット通販への進出が増えている。老舗のホテルさんもレストランもネット通販に入っているし。その時に(広告に)装飾をする上で、周りの業者から『No.1取ったほうがいいよ』とか提案されるので、そこに乗っかってしまう。ルーキーの新人の会社はそういう業者さんに、言っちゃ悪いですけど、だまされてNo.1表記を取ってしまうところがあると思います」

企業の対応と消費者

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
もはやNo.1広告があふれ過ぎて、利用者もNo.1だからといって飛びつかなくなっているという指摘もありましたが、広告に携わるお一人としてどうでしょうか。

谷口さん:
先ほど「惰性で出している」なんて言葉もありましたが、企業からしてみると、企業が一方的に自分たちの商品の良さを伝える広告というのは、なかなか信頼していただけなくなってきているという側面もありまして。

桑子:
「うちの商品いいですよ」と、なかなかそれだけでは。

谷口さん:
そうなると、例えば今回はNo.1広告ですが、口コミみたいなことも含めて第三者の評価ということを消費者の方たちが非常に重要視している、そこを信頼をしているという企業側の思いもあるので、やはり何かしら第三者評価を広告に使いたい。その一つとして、No.1広告。「もしかしたら効果がないかも」という声もあるかもしれないですが、なかなかやめられない実態もあるのかなと思います。

桑子:
すがってしまっているというか。広告のリサーチ会社の業界団体ではこうした状況に危機感を持っていまして、こういったものを出しています。

公正でないNo.1調査に対する抗議状なのですが、「No.1を取得させるという結論が先にありき」だと。「市場調査に対する社会的信頼を損なうものであるため、当協会としては到底看過できない」ということでNo.1表示に関するガイドラインの策定もしているということでした。

さらに国としても、消費者庁が「根拠が示されていても消費者に誤認される表示は景品表示法に違反するおそれがある」ということで、事業者に対応を求めているという状況です。

このままだと調査自体に信頼できなくなる、信頼が揺るぎかねない状況になっていますが、調査会社にどんなことが求められると思いますか。

谷口さん:
調査は、マーケティング活動においてはお客様の声を聞くと。それに基づいて戦略を立てるというのがマーケティングの基本なので、調査はなくてはならないものではあるんです。けれども、期待する答えを作るというような実態がありますと、調査自体の社会的信頼が揺らぎかねないと。

ただ、その調査を行っていらっしゃる主体の方々も、目の前にいるお客様は広告主さんかもしれないですが、その先にはたくさんの消費者がいるわけで、社会的責任を持って調査に取り組んでいくべきなのかなと思います。

桑子:
そして調査会社だけでなく、広告を私たちに届ける企業も対策に乗り出しています。広告主が広告を届ける過程を図式化してみました。

一般的にNo.1広告というのは広告代理店などを通じて「テレビCM」、「ネット広告」、「新聞」などを通じて私たち消費者の元に届きます。

このうちの「ネット広告」大手のヤフージャパンが、2020年度だけでもおよそ1,500万件のNo.1表示を承認しなかったということです。かなりの数だなという印象があるのですが、やはり届ける側の対策というのも必要になってきますよね。

谷口さん:
そうですね。もともとはテレビCMとか新聞雑誌の広告、従来のマスメディアというのは広告原稿というのを専門の部に適切かどうかチェックして、特にNo.1のような最上級表現というのは明確な根拠が提示できないと、そもそも広告を出すことができないという厳しいチェック体制があったんです。

ただ、ネット広告というのは誰もが広告という手段を使えるようになって、個人事業主の方でも広告を使えるようになり、まさに広告の民主化ということですばらしい側面があります。

ただ一方で、たくさんの広告原稿が流通していますので、テレビや新聞等、これまでやってきたような厳しいチェック体制をとるのがなかなか難しい。そういうことを続けていると、広告自体の信頼性が揺らぎかねないので、ヤフーさんの取り組みもありましたけど、業界を挙げてこういった問題に取り組んでいるという、今そういう最中ですね。

桑子:
もちろん私たち消費者も、これは本当の正しい調査なのかということを見極める力も必要なのかもしれません。

多くの店がNo.1を看板に掲げている横浜中華街では、このままでは中華街のイメージそのものが悪くなってしまうということで対策に乗り出しています。

No.1広告の自主点検 "No.1よりも大事なもの"

地元の商店街の組合が見回りを行い、疑わしい広告のチェックを始めています。

横浜中華街発展会 山下耕司さん
「人気No.1って、何かアンケートとかをとったの?」
店員
「これは社長が決める。私はわからない。なんでこれが気になるんですか?」
山下耕司さん
「No.1の裏付けがわからないと、看板ってよくない」
山下耕司さん
「結局No.1というのが、お客さんのためになってるか、なってないかも含めて、お店にはぜひそこはご検討いただきたい」

見回り中、こんなお店が。

取材班
「今、何をやっていらっしゃるんですか」
中国料理店 店主
「ちょうど(看板を)チェンジするタイミングですね」

このお店、5月初旬に訪れた際にはNo.1という看板が出ていました。

中国料理店 店主
「どこでもNo.1だから、お客さんから見るとややこしいかなと。うちの店はやめたほうがいいかなと。味で勝負です。そういういい商売をするため、アピールしています」

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