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2021年5月26日(水)

グローバル企業にも負けない!?
世界で注目の働き方

グローバル企業にも負けない!? 世界で注目の働き方

働くみんなでお金を出資して、事業を立ち上げ、みんなで経営方針を話し合っていく「協同労働」という働き方が注目されている。コロナ禍で職を失っていた若者は、協同労働で自分にあった職に出会い、労働意欲や将来への希望を手に入れた。世界では、タクシー運転手や、ホームクリーニング業の人々、フリー演奏家などさまざまな職種で協同労働を始める動きが起きている。「協同労働」は、コロナ禍で閉塞した社会を切り開く手がかりとなるのか?可能性を探る。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 大高研道さん (明治大学 教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

グローバル企業にも負けない!? 世界に広がる働き方「協同労働」

井上:新型コロナウイルスの影響による解雇や雇い止めは、10万人を超え、深刻な雇用情勢が続いています。

保里:そうした中で今、改めて注目されているのが協同労働です。一般的な株式会社では、株主が会社に出資をして、経営者が経営方針を決めて、雇われた労働者が働いているわけです。

ただ、この協同労働では労働者の一人一人が出資をして、経営方針についても話し合い、みんなの意見を反映させて働いているということなのです。

井上:みんな対等な関係ですね。

保里:そうなんですよね。その出資の額は、一口3万円から5万円ほどからだということです。

井上:この協同労働は、グローバル経済が進んで格差が広がる中、この状況を変える可能性があると期待されています。まずは、この協同労働とはどんな働き方なのか見ていきます。

コロナ禍で注目の「協同労働」 働く人みんなで経営

介護施設の送迎バスの運転手として働く、石山翔太さん(25)です。コロナ禍で失業していましたが、去年10月、ハローワークの紹介でこの仕事に就きました。

協同労働1年目 石山翔太さん
「この仕事を始めてからは、ドライバーの仕事をやりたかったのもあって、仕事をやっていて楽しいというのもあるし、そこは前のところと気持ち的に違う」

石山さんの勤め先は、協同労働で運営される団体です。手がける事業は、介護施設の送迎バスの運行や、ヘルパーの派遣、清掃など。220人が働き、年間およそ5億円を売り上げています。

協同労働の最大の特徴は、働く人たちが経営方針を話し合い、意見を反映させることです。

月に1度開かれる経営会議。この日、議題に上がったのは、病院内で運営する売店の経営状態について。

「赤字脱却に向けて取り組んできましたが、今年度の決算予測は前年の半分に落ち込んでいます」

長期間赤字が続いている売店は、閉鎖するべきという意見が数多く上がりました。仕事を始めてまだ半年の石山さんも、自分の考えをぶつけます。

石山翔太さん
「病院で働いている人も、弁当とか買ったりしているの見るので、(売店は)あったのほうが助かったりはしてるのかなって見てて感じたりはします」

就労支援 担当
「必要なわけですよね。そこで買いに来るということは」

議論した結果、売店は存続させることに決めました。

生活支援 担当
「誰か一人でも反対がいるようだと、今、決定ができないという感じなんですけど。この1年は(売店を)残す方針で、もう1回模索をする」

石山さんは以前、食品関係の会社で正社員として7年間働いていました。しかし、体調が悪くても休みを取ることもできず、退職。その後、非正規雇用の仕事を転々としました。

石山翔太さん
「最初の仕事をやっていたときは機械じゃないですけれど、命令されて、上から言われて、物事をぼんぼんやるだけの感じだったんですけど。ここに入ってからは、みんなで相談して、みんなで協力してやるというのが。ここで働けて良かった」

みんなで合意できれば、現場でつかんだ客のニーズをいち早く事業化できるのも、協同労働の特徴です。急な体調不良でも、送迎してほしいという客の声を聞いた石山さん。臨時の送迎チームを作りました。

埋もれていたニーズに応えたことで、事業の収益は増加。石山さんの給料は、正社員のときと同じくらいにまで増えました。それにもまして石山さんは、仲間たちと新たな仕事を生み出せたことに、大きなやりがいを感じたといいます。

石山翔太さん
「仕事に対する姿勢も何か変わってきていると自分でも思ったりしていて、自分がやりたい仕事ができている」

中には、年間3,000万円近くの赤字を短期間で黒字に変えることができたケースもあります。

宮城県・亘理町(わたりちょう)にある、福祉事業所です。手作りの弁当や、地元野菜の販売などを行っています。

この事業所の前所長・池田道明さんです。池田さんが所長に就任した6年前、この事業所は深刻な赤字を抱えていました。

ワーカーズコープ連合会センター事業団 東北事業本部 池田道明さん
「私が所長になったとき、非常に経営難になっていまして。毎月220万円ぐらいの赤字で」

赤字額は、年間2,800万円以上。このままでは、閉鎖もやむなしという状況に追い込まれていたのです。池田さんは震災で職を失い、再就職に苦労した経験から、これ以上誰も辞めさせたくないと動き始めました。

池田道明さん
「1人では何もできませんけれども、仲間と一緒だったら何とでもなるという気持ちが、あのときは正直ありました」

真っ先に取り組んだのは、経費削減。1日5枚使っていたごみ袋。以前は、ごみを3分の1程度しか入れないこともありましたが、袋いっぱいまで詰めるようにして1日2袋減らしました。節約できたごみ袋代は、1日400円。月に換算すると、1万円の節約です。全員で無駄を見つけ出し、次々と解消した結果、経費をおよそ3割削減できました。

一方で収入面も改善できないかと、一人一人が地域のニーズに耳を傾けました。障害者の居場所がないという声を受けて、就労支援事業を始めるなど、さまざまな取り組みを行った結果、年間2,800万円あった赤字は2年で解消。黒字経営に転換できたのです。

こうした改革を短期間で達成できたのは、全員が出資者であり、経営者であるため。事業所の行く末を自分事として捉え、経営について一から学び直したからです。

店舗の販売担当
「家庭で家計簿をつけているのと同じように、ここは会社ですけれども、やることはみんな同じなんですという考えで」

移動販売の担当
「やっぱり、みんなお尻に火がついた。何とかしないと、つぶれるなって。話し合いをしていくうちに、だんだんと他人事から自分事に徐々には変わっていきました」

コロナ禍で注目の「協同労働」 可能性と課題は?

井上:「コロナ禍で注目される、協同労働」。巨大ITビジネスに対抗、「世界で広がる新たな動き」。そして、「協同労働が地域再生の切り札に」という内容でお伝えしていきます。

保里:自分も働いてみたいなど、より具体的に協同労働について知りたいという方は、関連記事からもご覧いただけます。

井上:今現在、日本で行われている主な協同労働の業種がこちらです。例えば、子育てや介護。清掃や物流、そして農業分野などです。多岐にわたるのですが、その事業規模を見ていきます。1,000億円あると言われてまして、およそ10万人が働いています。

スタジオには協同労働の現状に詳しい、明治大学教授の大高さんにお越しいただいています。よろしくお願いします。

大高研道さん (明治大学 教授)

大高さん:よろしくお願いします。

保里:大高さん、コロナ禍で雇用による影響が続く中、どうして今、この協同労働が注目されているのでしょうか。

大高さん:まずコロナ禍は、これまで見えなかった、あるいはあえて僕たちが目を背けていたような問題を可視化したというような側面もあると思います。例えば非正規労働であるとか、フリーランスであるとか、不安定でどちらかというと労働者保護や社会保障とか、それが手薄だった働き方が、特に女性とか若者とか、あとは高齢者に驚くほど広がっているわけです。それが世代を越えた問題にまで今なっている状況というのは一つあると思います。このような労働問題だけではなくて、そもそも私たちが今、働く意味というのをなかなか見い出しにくくなっている。これは一般企業で働いている方もそうだと思うのです。働く意味の空洞化と言ってもいいと思うのですが、このような状況が起きている。そういう状況の中で自分たちで出資して、みんなで話し合って、そして経営に主体的に関わるような協同労働がまさに、社会に役に立ついい仕事をしたいと思っている人たちの感性をつかんだというのはあるかなと思っています。

保里:働く意味を見い出しづらくなっているのは、どうしてでしょうか。

大高さん:どんどん分業化も進んでいますし、自分がやっている仕事がどこで役に立っているのかというのは、なかなか実感できないですよね。そういうことも、大きな影響になっているのではないかなと思います。

保里:この協同労働、近い将来さらに広がると見られています。その理由がこちらです。去年12月に新たに成立しました、労働者協同組合法です。これまで協同労働はNPOなどの形で運営されて、扱える事業にも制限があったわけなのですが、法律面でも整備されたことによって、派遣業を除いて、さまざまな事業を行うことが可能になります。健康保険や労働保険なども適用されます。

井上:大高さん、今まさに触れていただきましたけれど、コロナ禍でさまざまなところに影響が出ている中で、この協同労働というのはどういう解決策の1つになるのでしょうか。

大高さん:まず協同労働というのは、基本的にエッセンシャルワークといわれるような社会で必要不可欠な仕事なのですが、そのような仕事の領域というのは非常に多いのです。こういう仕事というのは、コロナ禍であっても減るどころか、むしろ増えているのです。

井上:ニーズが増えているわけですか。

大高さん:ですから協同労働の仕事の現場は、むしろ増えていると考えています。例えば、そのような現場が仕事を失ったとしても、協同労働の場合は別の現場で働いたりとか、あるいは自分たちの仲間で仕事を起こしたりとか、そのようなことも行っているわけです。さらにいくつかの地域の話を聞くと、例えば都市と農村をつなぐマルシェのような活動も結構あるのですが、そういうような人たちがその活動を仕事にしたいという人たちもいるわけです。そういうような意味では、新たな可能性もそこにあるのではないかなと思っています。

保里:さまざまな可能性が見えてきて、協同労働の働き方としてのいい面が見えてきました。ただ一方で、同時に課題についてはいかがでしょうか。

大高さん:そこ突っ込んできますか。やはり事業の採算性というか、経営基盤を安定化させていくという、これはとても大きな課題だと思っています。同時に先ほどお話をしたように、エッセンシャルワークの領域の仕事が多いので、必ずしもその経営状況とか、そういうようなものがいいというようには言えないわけです。ところがエッセンシャルワークというのは、あんまりもうかるような仕事ではないわけです。でも、社会には必要不可欠な仕事になってくるわけです。そういうことを考えると、むしろエッセンシャルワークが正当に評価されるような制度、あるいは、エッセンシャルワークというものを社会が本当に大切だということを心から実感して認めていく。見方も変化していかなければいけないのではないかなと思っています。

保里:賃金についてはいかがでしょう。

大高さん:賃金は、もちろんそれなりに法律の中で最低賃金は絶対に保障するというようになっていますので。あるいは労働者保護というのが一つの生命線ですので、そういう意味では法律では守られていると思います。特にこの法律のもうひとつ大事なところは、私たちは雇われるという意識が非常に強いわけです。ですから、自分たちが主体になって経営と言われてもぴんとこない。うちの学生なんかもそうなのですが。

保里:大事なポイントは何でしょうか。

大高さん:大事なポイントは、やはり徹底的に話し合うということです。徹底的に話し合って、そして、その話し合いを諦めないということです。これが、この協同労働の生命線になるわけです。さらにそのことがある意味、ずっと引きずるような課題というふうにも言えるかもしれません。

井上:この協同労働ですが、日本だけではありません。アメリカを見ていきます。大手IT企業のビジネスの在り方に、「ちょっと待った」と協同労働が一石を投じています。

タクシーアプリで収入増!? アメリカで広がる協同労働

アメリカ・ニューヨークでは、協同労働の新たな取り組みが始まっています。

「ニューヨークに来たら、このアプリをダウンロードするといい。ほら、これさ」

タクシー運転手たちが作った協同組合が運営する、配車アプリ。利用者は、このアプリを通じて予約することができます。

こうしたアプリは大手IT企業が開発し、運営するのが一般的です。利用者が料金をアプリを通じて支払うと、サービス料として25%程度が引かれると見られ、残りが運転手の収入になります。

一方、運転手たちが運営するアプリの場合も一定の金額を引かれますが、その割合は15%。運転手には、これまでより多くのお金が残るようになるといいます。

協同労働で働くドライバー
「コロナ禍で本当に苦しかったけど、協同労働のアプリやサポートのおかげで、すべてが変わったんだ」

コロナ禍で多くのIT企業が成長する一方、労働者の雇用環境はコロナ前ほど改善していません。協同労働には、こうした状況を変える力があると専門家は指摘します。

デジタル労働の研究者 トレバー・ショルツさん
「アプリを作ったIT企業は、労働者から利益の多くを搾取しています。労働法が適用されないことも多く、法律の整備は十分ではありません。協同労働によってアプリを運営すれば、仕事によっては2倍稼ぐことだってできるんです」

清掃、美容、音楽…多種多様 世界で広がる協同労働のカタチ

井上:協同労働ですが、EUや南米などを中心に世界30か国以上に広がっていまして、労働環境の改善にも活用されています。
今見てきたアメリカでは、ホームクリーニング。協同労働で、時給がおよそ2倍になりました。またインドでは、貧困層の女性が美容ケアを行う協同労働が生まれています。またEUでは、給料の不払いに困っていたフリーランスの演奏家が、協同労働で労働環境を改善しました。
大高さん、まさにグローバル経済が加熱している中、資本主義からの格差社会というのもありますけど、協同労働というのはどう広がっているのでしょうか。

大高さん:まず暴走する資本主義のゆがみというのは、最も弱いところに現れるのです。そのような中で、人の助け合いの関係なんかも商品化されていっている。どんどんと助け合いの商品化が進められていくと、お金を持っていない人はなかなか助けを求められないという状況になります。そういう意味では、どんどん孤立していく。さらに、ものも言えなくなっていく。そういう状況がどんどん進んでいくわけです。今回のVTRで見てきたような、「ギグワーカー」と言われるような雇用関係がないような働き方…。

井上:単発的な仕事の方々ですね。

大高さん:そうですね。個人の事業主というか、そういう方たちというのは、基本的に実際には労働者性が非常に高いのです。だけれども全然社会保障がないという働き方があるわけで、こういう働き方がアメリカだけではなくて、どんどんと日本でも世界中でも広がっていっているという状況があると思います。それと同時に協同労働がもし広がっていくと、地域の中で経済が循環していくという可能性もあるので、協同労働の可能性というのは多面的なんです。

保里:まさにこの協同労働。地域社会の課題の解決にも、力を発揮しています。

協同労働で地域課題を解決 現役世代の移住者が増加

愛媛県・西予市明浜町。年間およそ12億円を売り上げる、協同労働の組合があります。

地域協同組合、無茶々園。組合の中には、さまざまな部門があります。特産のミカンの有機栽培。真珠などの養殖や加工。福祉施設の運営など、およそ120人が働いています。

石川県出身の村上尚樹さん(39)です。有機栽培に取り組む協同労働の働き方に魅力を感じ、15年前にやってきました。

無茶々園グループ てんぽ印 村上尚樹さん
「(農業は)やらされてやっていると、正直生産性って上がらなくて。いろんな要素を考えて、ひとつのものを作っていくという仕事は、とっても楽しい」

組合として大事にしているのが、移住してきた現役世代が生活していくための仕事作り。ミカンの有機栽培だけでは、農閑期に収入がなくなってしまうからです。

そこで必要とされたのが、年間を通じて収穫できる野菜の栽培です。メンバーで議論しながら、タマネギやニンジンなど、栽培する品種を10種類以上に増やしてきました。さらに、収穫した農産物の加工品にも力を入れ、安定的に収入を得られるようにしたのです。

将来を見据えて、新たな特産品の開発にも着手しました。真珠の養殖が不振になったため、高知大学と共同で高級ノリ、スジアオノリの養殖をスタートさせたのです。

安心して仕事を続けるために、生活面の課題にも取り組んでいます。家族の介護が必要になったときに備え、老人ホームやデイサービスの事業を協同労働で立ち上げました。

ここでは、短時間勤務や子どもを連れての勤務を可能にするなど、働きやすい環境をみんなで整備。60人以上の雇用が生まれました。その結果、全国からおよそ30人の若者が移住してきました。

村上尚樹さん
「彼女は東京から。彼女なんかは福島であったり、岩手県だったり。向こうの人は京都から」

大阪から移住していきた女性(25)
「農業しながら結婚して、いつか子どもも育てていけるんだよというモデルを作れたら良いなと思います」

専務理事の大津清次さんです。必要な仕事をみずからの手で生み出すことが、持続可能な地域社会を作ると考えています。

地域協同組合 無茶々園 大津清次専務理事
「この協同組合、みんなで話して、意見を出し合いながら決めて、腹にすわったものというのは崩れないんですよね。地域の人たちが幸せになるということや、経済的にも暮らしもちゃんと支えられる。そんな社会を作るということですかね」

協同労働で地域課題を解決 行政が積極的に後押し

広島市では、地域の課題解決のために行政が協同労働に積極的に関わり、注目されています。

市は、60歳以上の人が協同労働で仕事を立ち上げる場合、100万円を上限に経費を半額まで補助。

さらに、専門のコーディネーターが事業の立ち上げや、運営について手厚くサポートします。

取り組みを始めて7年。地域の住民ならではの発想で、さまざまな仕事が生まれました。自宅のガレージを使って、週1度開かれる有機野菜の朝市。

庭木のせんていや、網戸の張り替えなど、ちょっとした家庭の困りごとの支援。

ほかにも元農協の役員などによる耕作放棄地対策や、参加料200円で高齢者が集まるコーヒー付きのサロンの経営など。現在までに、合わせて25団体、およそ300人が協同労働で新たな仕事を立ち上げ、今も運営を続けています。

広島市 雇用支援課 山根かおり課長
「地域に住んでいる方々が、自分たちの地域にはこういう問題があるので、その問題に対して協同労働を使って解決していこうという、自発的なところがいいんだと思います」

地域の社会問題を解決 「人間らしく働く」ためには?

保里:この協同労働が、地域の再生に果たす役割はどんなことでしょうか。

大高さん:広島の話にもありましたが、高齢者が生きがいを感じながら地域の問題解決というものの主体になっていくということは、地域にも高齢者にとってもプラスになると思います。ただし、それをもって経費削減の言い訳にさせてはいけないなと思っています。あとは地域の産業という意味では農業、再生可能エネルギー、福祉等は、たぶんこれからも大事な仕事の場所になるかと思います。あと最後に、やはり都市への一極集中に何らかの形で見直しを考えている方たち、若い者がいるわけです。今回出ましたけれども、それが現実的な選択肢になっていくのではないかと思います。

井上:本当にいろいろな働き方があっていいと思うのですが、改めてこの協同労働というのは、私たち一人一人にどんなことを問いかけていると思いますか。

大高さん:協同労働が私たちに何を投げかけたのかということを考えると、まずは労働と生活を切り離さない。あるいは、自分と他者の関係を切り離さない。自分の生活というのは、あらゆる他者の営みによって成り立っているわけです。いろんな営み、命の循環といってもいいと思うのですが、そのような中で私たちの暮らしは成り立っているということを、私たちは忘れかけているのです。そのような想像力を取り戻す契機として、協同労働というのは特別な意味があると思います。そういう意味では、どのような組織であっても働く意義を感じて人間らしい働き方ができる、そんなことを当たり前のように私たちが求められるような社会になってほしいなと思っています。

井上:改めて、今後どういう働き方をしていくのか、立ち止まらせてもらえたと感じました。

大高さん:そうですね。ぜひそれを一緒に考えるというのが、また協同労働なのかもしれないですね。

保里:見失っていた価値、つながり、さまざまな豊かさを思い起こさせてもらったと感じました。

井上:やりがいを持ってね。

保里:ありがとうございました。

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