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2021年4月1日(木)

コロナ禍で“爆売れ”
急拡大ライブコマース

コロナ禍で“爆売れ” 急拡大ライブコマース

コロナ禍でインバウンド需要が激減する中、中国に“爆売り”する現場が各地で生まれている。スマホで日本から生中継しながら商品を売る「ライブコマース」だ。去年、中国では市場規模が17兆円にまで拡大したと予測されており、大手デパートやドラッグストア、地方の中古ブランド品店などが次々と参入。さらに日本国内やフィリピンの消費者に販売しようとする動きも出始めている。コロナ禍の社会の変化を背景に成長する「ライブコマース」。その実態を深掘りする。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 髙田明さん (ジャパネットたかた創業者)
  • 前田裕二さん (SHOWROOM社長)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

コロナ禍で"爆売れ" ライブコマース 消費に新潮流

コロナ禍でも、飛ぶように物が売れる。スマートフォンの専用アプリで生配信しながら売り買いをする、「ライブコマース」が拡大しています。

国内だけでなく、国境を越えて物が売り買いされるライブコマース。今、爆売れとも言える現象が生まれています。売り込みを図っているのは、大手デパートから家電量販店、そして町なかのドラッグストアなどさまざま。

中でも熱いのが、利用者4億人近くを数える中国。市場規模は急拡大を続け、コロナ禍に見舞われた去年、前の年の2倍超、17兆円に上ったと見られています。

ライブコマース ライバーは客の心をどうつかむ?

このライブコマース、コロナ禍でなぜ人気を集めているのか。そして、これまでのネットショッピングと何が違うのか。福岡で中古ブランド品店を経営する、李成倫さんです。

インバウンド需要が激減した去年7月、ライブコマースを本格的にスタート。今、月1億円以上を売り上げています。

専用アプリを通してつながっている客は、中国に住む延べ5万人近くの人たち。客は生配信で紹介される商品を見ながら買う物を決め、電子決済で支払いを済ませると登録した住所に商品が届けられます。

李さんのように、ライブ配信で物を販売するのが"ライバー"。客の心をどうつかむのか、それが腕の見せどころです。

中古ブランド品店 社長 李成倫さん
「プラダのバッグ、破格の値段!はい!お買い上げ!こちらも、いい商品だ!『しゃべり過ぎて気絶しないか心配』って?暑い!誰かエアコンつけて!」

身振り手振りを交え、商品を次々に紹介。テレビショッピングの販売員やお笑い芸人の話し方などを研究し、身につけたといいます。

李成倫さん
「コップンカー(ありがとう)」

客からひっきりなしに寄せられるコメントや、質問にも即座に答えるサービスの徹底ぶり。

李成倫さん
「『バッグのサイズを知りたい』ですね?19cmですね」

この日のライブ配信は10時間以上続き、90点以上700万円近くを売り上げました。

中国・天津在住の女性
「これは李さんのところで買った靴です。いいでしょ?」

李さんのライブ配信をいつも楽しみにしているという、中国・天津在住の女性。

中国・天津在住の女性
「ほかの人のライブを見てもそんなに買わないのに、李さんのライブだと必ず買っちゃう。この服は全部ライブコマースで買ったもの」

感染の拡大前は日本をたびたび訪れ買い物を楽しんできましたが、旅行ができなくなってからは日本の商品を販売するライブコマースのチェックが日課となりました。

中国・天津在住の女性
「ライブコマースは、もう生活の一部。時間があれば、必ず見ています」

李成倫さん
「ニーズは永遠にあるから、何万人、何千人が同時にこの店の商品が見られる。とても効率のいいビジネス。(売り上げが)さらに上がる自信があります」

ライブコマース 恩恵は物流業界にも

急拡大するライブコマース。その恩恵は、商品を運ぶ物流業界にも及んでいます。

東京都内に営業窓口を置く、中国の大手物流会社です。中国への小口の荷物が急増し、営業窓口を7から36に増やしました。

従業員
「毎日こん包作業に追われて、人手が足りませんよ」

コロナ禍にもかかわらず、自前の貨物機を使った定期便も増やしています。去年3月以降、中国4つの都市との間で定期便を就航。中国内陸部にも、最短3日で商品を届けています。

SFエクスプレス日本 ゼネラルマネージャー 姚萌さん
「迅速で利便性かつ、低コストの運賃を提供できる1つの武器なんですよ。弊社が物流の最強のパートナーという位置づけを目指しています」

ライブコマース拡大を支えているのが、アリババなど中国のIT大手の存在です。ライブ配信や決済を一括して行えるアプリを提供し、手数料などで収益を上げてきました。去年、ライブ配信の資格を一般に開放。審査を通れば誰でもライブコマースを行えるようになり、利用者が一気に拡大しました。

中国の本社には、日本市場の担当者を配置。ライブコマースなどの拡大戦略で、日本をその中核と位置づけています。

アリババグループ本社 アジアマーケット責任者 趙戈さん
「マーケットの伸びに対しては十分な技術投資をして参りましたから、きちんと支えるインフラというのが、われわれが構築しておりました。将来に関しても、成長の可能性が無限大にある」

ライブコマース 世界に向けての販売

中国だけでなく、世界各地に向けて商品を販売する動きも始まっています。この店では、去年10月からフィリピン人のライバーを起用し、毎週のようにライブコマースを行っています。

フィリピン人 ライバー イベットさん
「おはようございます!こんばんは!こんにちは!」

イベットさん
「カナダからのあいさつですね。イギリスのチャメリンさん。こんにちは、ドバイ。沖縄、ハーイ。オーストラリア、どうも」

ターゲットはフィリピン本国だけでなく、世界各国で暮らすフィリピン人の富裕層です。

イベットさん
「(お客は)例えばドクター(医師)、ロイヤー(弁護士)、しっかり仕事がある人。優秀な人たちです。みんな身につけたい。みんな派手なのが好き」

卸値の2倍近い金額を付けた商品もありますが、飛ぶように売れてゆきます。

イベットさん
「(値段に)ゼロがたくさん並んでいて、わからなくなりました。お安いですよ。たったの5万8,000ペソ(約13万円)です。お急ぎください。私も買おうかな」

各国の時差を考慮し、ライブ配信は時には12時間にわたって続けられます。

中古ブランド品店 ブランドシェルター本部長 杣元忍さん
「フィリピンでは、中国では売れないブランドでも売れるという需要が(あると)わかって、今後の可能性も高いということで、(コロナ禍)以前と売り上げは変わらない状況」

ライブコマース 髙田明さんの評価は

保里:このライブコマースの活況ぶり、テレビを通した通販の先駆者として知られる髙田明さんは、どう見ているのでしょうか。中古ブランド品を販売する、李成倫さんのライブ配信を見ていただきました。

保里
「李さんの身ぶり手ぶり、熱い雰囲気、伝え手として、どのように評価されますか」

ジャパネットたかた 創業者 髙田明さん
「今回拝見して非常に躍動感があって、おもしろいですよね。やはり伝えるというのは言語と、もうひとつあるのは非言語なんです。表情です。にこやかにとか、うーんと渋い顔をしてみたり、ちょっと怒った顔をしてみたり、表情、表現というのも伝え手の一番大事なところ。そういうところは結構、訓練なさっているんじゃないでしょうか。伝えるというのはエンターテインメント性がなかったら、見てもらえないんですよ。チャンネルもテレビも変えられる。そこは大事ですから。非常に彼がやってる姿は感動するものがあります。あのしゃべり方も、僕より声が高かったと思うぐらいに。ちょっと僕には出来ないなと思いましたね。一番の違いは何かと言いましたら、双方向でコミュニケーションがとれていくことですね。見ていて、視聴者の方がどんどんその場で質問を投げかけてくる、相談してくる。そこに、こたえていく部分が非常におもしろくて、これは今の時代だからこそできることで、僕時代にはなかなかできなかった。こういう世界がもっと広がってくるだろうなと思いました」

ライブコマース急拡大 人気のワケは"エンタメ+買い物"

井上:今後、ライブコマースはどこまで広がるのか。アメリカの調査会社に話を聞きました。この現象、一過性のものではなく、ポストコロナ、パンデミック後も続くと指摘しています。

井上
「アメリカでのライブコマース市場は、どんな勢いで拡大していますか」

コアサイト・リサーチ 調査部門トップ ケン・フェンヨーさん
「フェイスブックやインスタグラムなど多くの巨大プラットフォームが、こぞってライブコマース機能を追加しています。ブランドや小売業、インフルエンサー個人もライブコマースでの販売を試すようになっています」

井上
「急拡大する市場の規模や、潜在的可能性をどう見ていますか」

ケン・フェンヨーさん
「多くの小売業やブランドが、従来の顧客やこれまで接触できていなかった、特に若い世代を獲得するためにライブコマースを活用したいと考えています。10代後半から20代前半の若者たちにとって、エンタメと買い物を同時に楽しめるのは魅力的です。ブランドの成長と売り上げの拡大に、とても役立ちます。市場の拡大は、パンデミック後も続いていくと確信しています」

中国の若者の憧れ "ライバー"

井上:実際、世界各国でその傾向は顕著なんです。まず韓国では去年、市場規模は2,800億円に上り、2023年にはおよそ8,000億円に達すると見られています。

保里:2倍以上なんですね。

井上:そして話を聞いたアメリカ・巨大市場、ここは2年後には、ことしの4倍を超える2兆7,000億円まで拡大すると見られています。ライブコマースで成功するかどうかの鍵は、商品をプレゼンして売り込む"ライバー"の存在が重要となってきます。保里さん、このライバーの皆さんですが、個性豊かですよね。

保里:爆発的なブームとなっている中国では、今若者たちの憧れの職業になっているのです。そのライバーのトップに君臨するのが、ウェイヤーさんです。ザリガニからロケットまで、ありとあらゆるものを売り、毎月の売上額は250億円以上に上ります。ウェイヤーさんたちのような存在は、"Key Opinion Leader=KOL"と呼ばれ、世界各国の企業から商品を販売してほしいという依頼が殺到しています。

井上:トップライバー・ウェイヤーさんに、今回インタビューすることができました。

中国のトップKOLが語る "ライバーの極意"

大勢のスタッフに囲まれて、インタビューに備えるウェイヤーさん。自分専用のスタジオからライブコマースに出演するのを前に、取材に応じました。

中国 トップKOL ウェイヤーさん
「こんにちは、日本のみなさん。ライバーのウェイヤーです」

ウェイヤーさん
「ライブコマースを使えば、おもしろいこと、価値があることをたくさんできます。みなさんと一緒に頑張りたいと思います」

ウェイヤーさんは、ほぼ毎日夜8時からライブコマースを行っています。この日、販売を依頼されたのは水筒などの日用品、食品、そしてスマートフォンの最新機種。

商品を手にしたときどんな感じがするのか、使い勝手はどうか、自身の体験をもとに丁寧に伝えていきます。

ウェイヤーさん
「撮影した写真を拡大してみると、口紅や目元がこんなにきれいに映っています。インカメラの性能がよいです」

日曜日には、延べ1,800万人の客がウェイヤーさんの生配信を視聴。日本円で、78億円余りを売り上げました。

ウェイヤーさん
「ライバーの極意をひとつあげるとすれば、必ず真実を伝えることです。私は消費者とメーカーをつなぐ懸け橋で、本当にこの仕事が好きです。良質の商品を選ぶために、私のチームでは大勢の専門家をそろえています。食品やコスメ、ファッション、日用品のプロ、医師や化学、バイオの研究者、栄養士たちです。外に出て買い物をするのが難しい中で、お客さんたちには私のスタジオで買い物をしてもらい、おしゃべりをたくさんしています。私はお客さんたちに寄り添い、経済にも貢献することができます。そのことを誇りに思っています」

ライブコマース急拡大 誰もが"ライバー"に 新たな商機

ライブコマースに挑む日本企業にとって、KOLの確保が重要な意味を持ちます。中国向けの販売拡大を目指す、大手デパート。出演を依頼したのは、中国出身で日本で暮らすKOL・サンディさんです。モデルとして人気を集め、中国のSNS上でフォロワー数84万人を誇ります。

中国人 KOL サンディさん
「みなさん、こんにちは!サンディです。…うわぁ!中にぶどうの粒の食感がある!」

販売する商品について事前に学び、その魅力を紹介。同時に自分のSNSを使って、ライブ配信への誘導も行います。デパート側は、その対価として出演料と売り上げに応じた報酬を支払います。サンディさんのもとには、出演依頼が次々と寄せられています。

この日は化粧品メーカーです。

サンディさん
「この2種類を交互に使うことで、美肌を目指せます」

中国の若者の好みを知るサンディさんのプレゼンに、メーカーの担当者は大きな可能性を感じたといいます。

日本ゼトック 海外事業部長 安室操さん
「非常に刺激的なツールではある。短期間に一気にというところは。今回の件で、10万人ぐらいの人に知っていただける機会をもてた。かなり価値のあることだった」

サンディさん
「化粧品は一番多いんですけど、ほかは例えば服とか。ライブ配信がどんどん増えました、こういう感じで」

ライブコマースの活況を支えているのは、企業から依頼されるKOLだけではありません。誰もがライバーとして参加できるようになった今、みずから企業に働きかけて配信を行う一般のライバーが急増しているのです。

その1人、翻訳などの仕事をしてきた王琳さんです。コロナ禍で仕事が減る中、新たに見いだしたのがライブコマースでした。

王琳さん
「もうすぐライブの本番です」

この日の現場は、秋葉原のキャラクターグッズ店。店側の了解を得て、早速ライブ配信を始めました。中国にいる日本のアニメファンに向けて、毎日のように行っています。

店員
「鬼滅のフィギュアは、今ここにあるだけになるので」

王琳さん
「分かりました」

王琳さん
「これはトトロのメイちゃんだよ。お買い上げ、ありがとう」

王琳さん
「全部買いたいんですけど」

この日の売り上げは、およそ25万円に上りました。

王琳さん
「さっきみたいに一気に全部買うとかいうのも、気持ち良いじゃないですか。今後もこれで頑張っていきたいと思います」

キャラクターグッズ・ホビー専門店 あみあみ 岩永梓さん
「やっぱり、ありがたいですね。ものが売れるのが(会社)全体のモチベーションにもつながるので。ビジネスとしては今後、すごく将来性がある」

この販売力に注目し、ライバーを積極的に呼び込む会社も出始めています。

宝石・ブランド品店 ジュエリーアリア マネージャー 三山博子さん
「こちらの方に大きな看板、ご用意しております。『ライブ販売大歓迎』ということで、中国の方向けに中国語」

この店では一部のスペースをライバーに無料で貸し出したところ、感染拡大で仕事が減った商社の従業員や、中国人のツアーガイドなどから申し込みが殺到するようになりました。

三山博子さん
「3~4月といっぱいになっていて、もう5月~6月の(予約を)取るようになってきている。ライバーさんのチャンネルごとに、多いところだと1,000人以上のお客さまをもってらっしゃって、ライバーさんが売ってくださるのでありがたいです」

ライブコマースへの参入を、支援するビジネスも始まっています。ノウハウを教えるセミナーには、化粧品や食品などの業界から毎回数十人が参加しています。

船井総研ロジ グローバルSCM室長 中野好純さん
「爆売りの入り口企画、今回は特別企画を考えさせていただきました。KOLとか、インフルエンサーの方が絶対に越境ビジネスにとってはプラスになるというふうに、ご理解いただければといいと思う」

コロナ禍で"爆売れ" 急拡大ライブコマース

井上:ここまで見てきた、ライブコマース。では、日本でどのくらい広がっているのかといいますと…。例えば三越、伊勢丹などの大手デパートに、パルコや東急ハンズ、ロフト。また、化粧品や健康食品を手がけるファンケル。さらに、衣料品店のユニクロなどです。徐々に徐々にではありますが、幅広い業種が参入してきています。

保里:そうした中で今回私たちが注目したのが、こちらのライブコマース。

コロナ禍で希薄になりつつある、人と人とのつながりを大切にしていこうという取り組みです。

"物語"を付加価値に 地方発ライブコマースの模索

インターネットを通じ、地方の産品を販売する会社です。ことし1月、ライブコマース事業に乗り出しました。

2回目となったこの日は、東北の農家や漁師たちが参加。取れたての品を販売します。

岩手でホタテを養殖 千葉豪さん
「どの家庭にもある、これはホタテむき、へら」

ポケットマルシェ 統括 中山拓哉さん
「どの家庭にも、あまり無いと思うんですけど!」

千葉豪さん
「いいっすね!当たり、いいホタテ。貝柱が立派」

成功の鍵と考えているのが、商品の背景にある物語を伝えて、付加価値にすることができるかどうかです。

この日は、東日本大震災の被災地からの販売でした。

岩手の猟師 兼澤幸男さん
「変わり果てた大槌町。見て分かりますよね。何もないです」

ポケットマルシェ 細越雄太さん
「いま映していただいている所が、まさに津波で?」

兼澤幸男さん
「そうです。何も無くなりました」

細越雄太さん
「ここ、もともとは?」

兼澤幸男さん
「家が密集していたんです。ここ」

かつては東京の船会社で働いていた、兼澤幸男さん。震災後、仕事を辞め、地元に戻らなければならない事情があったと語りました。

兼澤幸男さん
「震災から3日後に母親が流されて、行方不明だっていうのを知って、もうそこから生きた心地がしなくてですね。母親も見つかっていないので、離れることはできませんっていって。でも世の中はね、時は流れてて」

ふるさとで生きていこうと決めた、兼澤さん。選んだ職業が、山野で鹿を撃つ猟師の仕事でした。

細越雄太さん
「もうちょっとだけ、お肉を映していただけるとありがたいです。おいしそうですね」

細越雄太さん
「兼澤さん!注文が入りました」

兼澤幸男さん
「ありがとうございます」

中山拓哉さん
「われわれはライブショッピングを通じて売り上げを立てていくというよりは、個と個がつながって、そこで生産者を知ってもらって、長期的な関係性をつくっていく、一つ目のステップにしていきたいと考えている。生産者さんのことを気遣うとか、応援するとか、また次のシーズンに買ってもらうとか、そういう関係性をつくっていきたい」

前田裕二さんが分析 "ストーリー・ライブコマース"とは?

国内向けのライブコマースに熱いまなざしを注ぐ、この方に話を伺いました。新進気鋭の実業家・前田裕二さんです。

6年前に、アイドルやアーティストのライブ配信サービスを立ち上げました。その会員数、490万人に上ります。合わせて行っているライブコマースでは例えば、瀬戸内を拠点とするアイドルがみずから地元の特産品作りを体験して、その魅力を紹介する取り組みも行っています。

SHOWROOM 社長 前田裕二さん
「いろいろと試してみて僕らも気づいたのですけど、何も思い入れのない文脈のひもづいていない商品をいきなり配信者の人に渡して、それを『はい、売ってね』と言っても、本当にそんなに売れないケースが多いんですね。本人が心からストーリーを語れる状態、文脈を語れる状態のことをストーリー・ライブコマースと呼んでいる。そこに行く着くと、かなり売れ数は全然変わってくるというのが分かってきている」

井上
「だからこそライブコマースも一見、非効率に見えるけれども、そこに人がいることの価値というのがあるわけなんですね?」

前田裕二さん
「自分が買ったことによって、自分の応援している気持ちを伝えられたとか、自分という存在を認識してもらえたとか、もっと言うと役に立てたとか。買い物が本来満たすべき効用を、一歩越えている。この社会に対して、意味を果たしているんだと感じる。『機能』よりも『意味』というのが、"人型のライブコマース"が満たしにいっているものだろうと思います。コロナ禍が収束していった先にライブコマースがどうなるのか」

井上
「残ると思いますか?」

前田裕二さん
「僕は残ると思います。自分たちでやっていて、もう少し複雑なものかもしれないと思っているのは、単純に心を満たすためだけのものでもないんですね。ものが買えて便利という価値観と、あのお店の、あの洋服屋さんの、あの店員さんに選んでもらうのが楽しくてみたいな。もはや洋服自体に価値がというよりは、洋服を買う時間自体に価値がある。結局、現実世界がもう1個、パラレルワールドがもう1個できる感じです。市場を奪い合うのではなくて、両方シナジー(相乗効果)を利かせて、市場全体を伸ばしていく方向にいくのではないか」

髙田明さんが語る ライブコマースのこれから

保里:髙田明さんは、商品の価値を深めるツールになるかどうかがライブコマース普及の鍵だと指摘しています。

ジャパネットたかた 創業者 髙田明さん
「結論から言えば、本当に人の幸せに寄与するビジネスか。すべてそこからスタートするんじゃないか、そこに尽きるんじゃないかと僕は思いますね。例えばビデオカメラ。3歳の子、5歳の子の運動会を撮るじゃないですか。それは『子どもさんを撮ってください』という発信ではなかったんです。僕はその子どもさんが30歳になったとき、いちばん喜ぶのは『お前こんなに小さかったんだよ』というよりも、お父さん、お母さん、あるいはおじいちゃま、おばあちゃまが映っていて、『わぁ、お父さん、お母さん、こんなに若かったの』と『一緒にそのビデオの映像を見たときに、ビデオの価値は数倍出てきますよ』と、こんなご提案をしたとき注文がすごく入ったことがあるんです。ものというのは人の人生を豊かにしていくという、すごい"生きた生き物"なんですよね。そういうところがライブコマースという、すばらしい便利なインターネットを駆使した販売の中で生かされてくるかが、これから一番の課題かなという気がします、僕は」

井上:今回取材した髙田さんのインタビューの詳細は、関連記事からご覧いただけます。

保里:髙田さんは本当に人が何かを伝えることの意味や、消費を通して人生を豊かにすることの大切さなど、長年の人生経験を織り交ぜながら髙田さんにしか語れないことばをたくさん話してくださいました。感じ入ってしまいました。ぜひご覧になってみてください。

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