クローズアップ現代

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2020年11月18日(水)
女性が能力を発揮できる職場とは?

女性が能力を発揮できる職場とは?

「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に」という目標が掲げられてきた日本で、いま“女性活躍”が足踏み状態にある。どうすれば女性が能力を発揮できる職場を作れるのか?そのヒントを探る。いま関心を集めているのがこれまでの「思い込み」を打ち破る意識改革だ。ユニークな体験型研修を導入した企業や、「無意識のバイアス」を社員に気づかせるテストなど。模索を続ける企業の現場に密着する。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 武石恵美子さん (法政大学教授)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学医学部教授)
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

女性が能力を発揮できる職場とは?

子育てや介護の当事者になりきって働くという、ユニークな研修を導入した大手飲料メーカー。こちらの男性社員は「介護コース」を受講中で、1か月間母親を介護しているという架空の設定の下で働きます。研修の期間中、原則残業は禁止。必ず定時で帰ります。さらに、親の体調が悪化したなど、呼び出しの電話がかかってきた場合、仕事を中断して退社するルールです。

制約のある働き方を強制的に経験することで、社員の意識変化と業務の効率化につなげるのがねらいです。

研修受講者 根津拓登さん
「時間内に終わらせるようにしないといけないなと思って、仕事のしかたを変えないといけないというのを痛感しました。」

この研修は3年前、若手女性社員たちの切実な声をきっかけに生まれました。研修を提案した樋口さんは、当時、子育てをしながら働く営業担当の女性が少ないことに危機感を持っていました。

樋口麻美さん
「ロールモデルもいない、ママになったときに自分の仕事の幅って狭くなってしまうんじゃないかなっていう、漠然とした不安がありました。」

樋口さんは、同じ不安を抱えていた女性社員とともに、子育て中の母親になりきって働く実験に挑戦。実験を通して仕事の効率化を進め、業績が落ちないことも実証しました。
会社は、この試みが意識改革を促す鍵になると判断し、社員およそ6,000人を対象に研修として導入。これまでに400人以上が受講しています。

人事総務部 豊福美咲さん
「時間制約のある働き方って、誰しもが起こりうることなので、何かしらが起こったら『お互いさまだよね』って思える風土にしていきたいです。」

なりきり体験をした社員の職場では、次々と効果が表れています。営業部の管理職の宮内さんは、2年前に研修を受けるまでは、残業もいとわず働いてきました。初めは戸惑いがあったといいます。

宮内友久さん
「どうしても定時までに仕事を終わらせなければいけない状況が初めてだったので、不安とかはありましたけれども、お得意先には、お電話もなるべく日中くださいねなんてことをご理解いただいて、仕事をしてました。」

時間制約の中で、お互いをサポートしあう習慣もチームの中で生まれたといいます。

宮内友久さん
「今までは頼るのも怖いなっていう部分はあったんですけど、いざ頼ってみたら、こっちのほうが良かったねってお互い思う部分は多かったと思います。」

さらに、なりきり体験は仕事だけでなく、宮内さんのプライベートにも変化をもたらしました。

「もう帰るんですか?」

宮内友久さん
「そうですね、もうきょうは帰ります。」

この日は5時に退社、保育園へ。3歳の長男のお迎えです。

長男
「だっこ。」

同じ会社の同僚として働く、妻の美帆さんは、2人目の出産で実家に滞在中です。

宮内友久さん
「こっちで買っとくものとかあったら言っといて、用意しとくものとか。」

妻 美帆さん
「ベビーベッド。」

宮内友久さん
「組み立てやっときます。」

美帆さんはことし(2020年)の春、マーケティング部の管理職に昇進。夫の家事・育児参加は、妻の働き方に大きく影響すると実感しています。

妻 美帆さん
「子育てをひとりでやろうと思うと、キャリアを目指すのは正直厳しいんじゃないかと思っています。今は夫が協力してくれて、両方できる方法を考えようと言ってくれているので、その支えがあるからこそ、自分自身もキャリアを志向していけるのかなと思っています。」

労働力人口の減少が進む中、待ったなしと言われてきた“女性活躍”。しかし、女性の指導的地位に占める割合を、2020年のことしまでに30%とする目標の結果は、14.8%にとどまっています。
なぜ女性の管理職は増えないのか。ある調査によると、「管理職を目指したい」と回答する女性の割合は、入社後、徐々に低下していくことが分かっています。入社5年目の時点では、「目指したくない」と答える女性は59%。男性の5倍になってしまいます。

企業の人材開発が専門の中原教授は、職場の環境が女性の意欲を阻害している可能性を指摘します。

立教大学 教授 中原淳さん
「急激にモチベーションが落ちてしまうわけ。会社に入ってから、あんなふうな長時間労働をしてリーダーや管理職になるっていうのは、ちょっとなぁって思うところもあるだろうし。ふられている仕事が男性と女性で違うんだけど、配属されてる部署も何か不利じゃない?みたいなことを思っていくと、やっぱりリーダーや管理職に私はなれないかもしれない、なったら損かもしれないということを学習していくんだと思いますね。」

カギは“無意識の偏見”の克服

こうした中、上司の意識改革を促し、女性社員の育成につなげるための取り組みが始まっています。
この会社は、ことしすべての管理職を対象に、“アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)”に着目する研修を始めました。アンコンシャス・バイアスとは、自分でも気付かない考え方や、ものの捉え方の偏りのこと。例えば、上司に「男性は仕事、女性は家庭」という思い込みがある場合、女性部下に割りふる仕事が限定され、成長の機会を奪ってしまうことがあるといいます。
今回、研修を受ける管理職の井上さんです。

井上民朗さん
「自分がどういったバイアスを持っているか、正直わかんないというか、ちょっと緊張もしてます。」

研修では、性別に対する無意識の偏見がどれだけあるかを測定します。テストの画面がこちら。真ん中に出てきた単語が、「仕事」と「家庭」のどちらに属するか、瞬時に判断して分類します。

左右の項目には、「男性」と「女性」ということばが加わります。さらに、「男性」と「女性」は途中で入れ代わります。「男性と家庭」という組み合わせに偏見があると、回答のスピードが遅れます。

回答者の反応速度を基に、アンコンシャス・バイアスを測定していきます。

井上民朗さん
「はい、結果が出ました。0.871。“男性と仕事、女性と家庭を強く結びつけて考えている傾向があります”。」

結果は数値で表され、ほかの受講者の平均と比較することができます。

井上民朗さん
「ああ、結構高めなんですね…。正直もうちょっとフラットかなと思ってたんですけど、なんか(考え方が)古い感じなんですかね。」

結果は、研修ツールを開発した企業が詳細に分析し、改善策などのアドバイスを行っています。これまでに30社、1万7,000人以上が受講。管理職が自分の思い込みに気付くことが、意識改革の第一歩だといいます。

チェンジウェーブ代表 佐々木裕子さん
「本当に何かを変えていこう、変革をしていこうっていうときには、無意識バイアスを絶対に乗り越えていかなきゃいけないんですけど。きっかけさえつかめて、やっぱりそうだって腹落ちできれば、次の日に行動を変えることができるっていうのは、見ててもわかってきたので、ある意味、希望かなっていうふうには思っています。」

2年前にすべての管理職が研修を受講したこの企業では、その後、マネジメントに変化が起きていました。
30人ほどの部下を束ねる佐々木さんは、研修を経て、性別や年齢のバイアスがあったことに気付いたといいます。

佐々木雄士さん
「私の数値がここなので、かなりバイアス的には高い。バイアスというものをかけないで、1から仕事の割りふりを考えてみる。」

ことし4月。佐々木さんは思い切った決断をしました。

佐々木雄士さん
「今年、マネジメントの一端を担ったわけだけれども…。」

これまで管理職が担当してきた顧客への電話対応の指導役を、入社4年目の女性社員に任せたのです。

佐々木雄士さん
「実力をつけると、それで自分自身も積極的に活躍していけるということもあると思うし。」

梶原悠香さん
「自分は当初リーダーなんてできないって思ってたけれども、自分にはできないと思ってる仕事も挑戦はしてみて、どんどん挑戦を続けていくことで、経験を増やしながら成長はしていきたい。」

誰もが活躍を望める社会は、実現できるのでしょうか?

根強い“無意識の大きな壁”

栗原:アンコンシャス・バイアスについて、この研修ツールを開発した企業によりますと、実は女性も「男性は仕事」「女性は家庭」というバイアスにとらわれているケースが多いということなんです。ただ、このバイアスがあるからといって、その人の考え方がいいとか悪いではなくて、そのバイアスに気付くことが大切だということでした。

武田:女性活躍への取り組みが進まないということの背景に、やはりこういった無意識の思い込みが根強くあるんじゃないかということが浮かび上がってきたんですけれども、私も胸に手を当ててしっかりと考えないといけないと思いましたが、宮田さんはいかがですか?

ゲスト宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授)

宮田さん:きょうこのテーマについて、男性としてここでお話しすることに責任を感じています。ただ、これが必要なことで、例えば女性が活躍するためには、家庭で男性の協力が必要だという調査(結果)が出ているんですよね。マイノリティーに対する差別において、マジョリティーが変わらなければいけないのと同じように、これはやはり男性側の問題でもあるんですよね。例えば、男性の上司・管理職が、女性がそもそも望んでないんじゃないかということも言ったりするんですが、そもそもこの「キャリアを選択する」ということを、選択肢の中に入れられるかどうかということが必要なんですよね。そのときに、じゃあキャリアを選ばなかった女性の生き方を否定するのかといったらそうではなくて、人生の分岐点に立ったときに、フラットな選択肢として提示できる社会・組織であるのか。こういったことが重要な課題だと考えています。

武田:各国の男女格差を図る“ジェンダー・ギャップ指数”という数字があるんですけれども、日本は153か国中121位。主要先進国で最低レベルにあります。キャリア形成が専門の武石さん、これはどうして、日本でなかなか女性活躍が進まないのか。やはり無意識の大きな壁というのがあるんでしょうか?

ゲスト武石恵美子さん(法政大学 教授)

武石さん:管理職における女性ということで考えますと、まず女性が管理職になりたがらないというデータがありました。ただ、それは入社後だんだん下がっていくということは、どこか職場の構造に問題があるということを考えなくてはいけないと思うんですね。そうすると、やはり職場の中にこのアンコンシャス・バイアスがある。例えば、上司が「女性にこの仕事を任せていいんだろうか」とか、「この人はいつかやめるかもしれない」と思っていると、そこで重要な仕事だったり、責任のある仕事が任せられなくなっていく。その日々のちょっとした仕事の積み重ねが、アンコンシャス・バイアスによって任されないということが10年、20年たっていくと、ものすごく大きな経験の差になっていく。ここが非常に重要な問題だと思います。

武田:それが、大きな構造的な格差になっていくということですね。女性の側にもそういったバイアスがあるということもありましたが、これはどうとらえればいいでしょうか?

武石さん:女性も、自分は育児をしないといけないとか、夫が転勤したらついていかなくちゃいけないんじゃないかとか、自分を主体に考えにくい状況の中で、選択の中にどうしてもバイアスがかかってくるということはあると思います。

栗原:企業の中のケースを見てきましたけれども、実は、家庭の中にも意識の偏りがありそうなんです。
ある民間の会社が女性に行ったアンケートでは、「どうすれば日本社会の男女格差を解消できると思うか」と、複数回答で聞きました。その結果、「保育環境の充実」や「法律の厳格化」などの回答を抜きまして、1位は「男女の平等な家事分担」ということだったんです。

会社の中では女性活躍と言っている男性が、家に帰ると家事の大半を妻に任せてしまっているということはありそうなんですけれども、この意識と行動を変えるというのが非常に重要だと思うんですが、いかがですか?

宮田さん:そのとおりですね。女性に対する問題が難しいのは、最も身近な問題であるのにもかかわらず、多くの人たちが男女問わず無自覚だということなんですよね。例えばアンコンシャス・バイアスを問う、1つの質問があります。「小さい子どもを持つ女性には、なるべく出張のない業務を割り当ててあげたい?」というものがあるんですが、正解は「ノー」なんですよね。これは、小さいお子さんを持っていたとしても、キャリアを選択して出張したいかもしれないので、この質問をして、選択を一緒に行っていくということが必要なんですよね。これが難しいのは、ときに善意の形を取って、こういったアンコンシャス・バイアス、格差を広げてしまうかもしれないと。家庭や組織だけではなく、社会のあらゆるところに根づいているということが、この問題の難しさだと思います。

武田:私たちがよかれと思って言っていることの中にも、何かバイアスがかかっているんじゃないかということですけれども、そうしますと職場あるいは家庭でも、社会全体でこういった無意識の壁を取り払っていかなければいけないということですよね。

武石さん:無意識の壁があることによって、相当人材の無駄遣いというのが起こっていると思うんですね。非常に能力のある人がいて、でも「この人にはこういうことをやったら、ちょっとかわいそうなんじゃないかな」と仕事を任せないことによって、本当は100の仕事ができる人に、50の仕事しか任せないということになるわけです。この職場の人材の無駄遣いというのは、社会全体として見てみても、大きな人材が本当に能力が発揮できてないという状況につながっているということを、重くみる必要があると思います。

武田:誰も得することではないってことなんですね。

栗原:人材としての女性の現状はどうなっているのか、見ていきましょう。年代ごとの女性の就業率の変化を表しているグラフです。

かつて、出産・育児期に就業率が落ち込むことから“M字カーブ”と言われて、その改善に努めてきたわけなんですが、一方で今回注目を集めているのが、女性の正社員の雇用率を示したデータです。20代の後半をピークに、出産期以降下がり続けて、“L字カーブ”と言われているんです。出産期の女性の多くが、非正規雇用に移っている現状を表しています。そして見えてくるのは、出産前と同じような職場に戻ることができなかったり、本人自身がそこに戻ることを選ばない現実なんです。

武田:そうした中で近年、非正規社員の女性を大規模に正社員として登用し、活躍してもらおうという動きが広がっています。その現場で何が起きているんでしょうか。

多様な働き方で 女性の能力をいかす

都内にある大手生命保険会社で契約社員として働く、宮川さん。2人の子どもを育てながら、フルタイムで働いています。

子ども
「おなかすいたなあ。」

宮川八都奈さん
「できるだけシチューとか、あしたもいけるぜみたいなのを作ることが多いですね。」

夫は飲食店を経営。帰宅は深夜になることが多く、家事や育児の大部分を宮川さんが引き受けてきました。宮川さんは大学卒業後、人材紹介会社の正社員として働いていましたが、長男の出産を機に退職。その後、10年以上にわたって契約社員として働き続けてきました。

宮川八都奈さん
「子どもを育てていると、何もできないような気がしてしまうときがあります、やっぱり。例えば(正社員として)働く女性とかいて、やっぱりいいなって思うときがあって。いざ我が身を振り返ると、その選択肢は選べないなという。能力的なものもそうですし、環境面が許さないとか。そういう夢はもう見られないじゃないですか。だから自分に合ったものの中で、これとこれとこれはいけそうっていう、狭まってくるという意味で、しかたないよねってあきらめること。」

ことし6月、宮川さんに転機が訪れました。会社が、すべての契約社員2,500人に対して希望者を正社員にすると発表したのです。目的は、正社員の数が少ない氷河期世代の、30代・40代の人材を拡充することです。人件費の負担は増えますが希望者を正社員に登用し、戦力として育成していくことには大きなメリットがあるといいます。

人事部 グループマネージャー 石川和正さん
「今後10年、30年という先を見据えたときには、やはり要員っていうのはどんどん減少傾向にあるということの中で、(正社員登用の)希望者の方が新たな職務にチャレンジしていただくこと、これは会社にとっても本人にとってもきわめて有用だと思ってます。」

正社員になるチャンスを得た宮川さん。魅力を感じているのは、この会社に女性が無理なくキャリアを積み重ねられる環境が整っている点です。今回、正社員に登用される女性は、まず、転勤のない「地域型」の総合職になります。本人の希望に合わせて、経験が広がる「全国型」の総合職を目指す道も開かれています。自分のペースで2つの総合職を行き来しながら、キャリアアップを目指すことも可能。多様な選択肢が用意されています。

ダイバーシティ推進室 室長 淡路なな恵さん
「例えば家庭を両立しながら頑張りたいとか、ひとによってはお子さんがいない方もいらっしゃいますので仕事を頑張りたいとか、趣味を頑張りながらやりたいとか、女性は100人いたら100様のロールモデルが必要です。たくさんのロールモデルを準備して、自分に合うキャリアビジョンを見せてあげることで、頑張れると私は思っています。」

現在、会社の女性管理職割合は30%。契約社員から正社員を経て、部長職に就いた人もいます。

2年前に正社員に登用された社員
「先に登用された方たちが、それぞれの場所で活躍されてるのを見ると、今後のキャリアが立てやすいのかなと感じます。」

正社員登用を控えた契約社員
「私自身、専業主婦が長かったですけれども、『大丈夫、できます』って言っていただいたので、勇気を持ってちょっと飛び込んでみようかなって今は思っています。」

子育てをしながら働く宮川さん。夫にも「応援するよ」と背中を押され、正社員として新たな一歩を踏み出す決断をしました。

宮川八都奈さん
「やっぱりいくつになっても新しいことができるようになるのはうれしいですし、知らなかったことを知れるっていうのは楽しいことだなと思うので。なんか、かっこいいじゃないですか。そういうのを忘れないでいたいなと思うんです。もう子どもも2人いるし、35も超えてしまったしとか、いろいろあるんですけど、それでも少しずつできることやってるほうが、自分のことは好きでいられますよね。」

多様な生き方の“解放”を

栗原:宮川さん、表情の変化も感じられましたね。この会社では、2012年ごろから少しずつ制度の改革を積み重ねてきたんです。例えば、退職しても元のポストに復帰できるようにしたり、パートナーの転勤にあわせて異動できるようにするなど、多様なキャリアを選択できるようにしてきたんです。取材をした担当者のことばで「まずはやってみる。始めれば変わっていく」というのが本当に印象に残りました。

武田:制度を変えることによって一人一人の意識が変わっていく。「自分を好きでいられるようになる」ということばもありましたけれども、肩書が変わる以上の大きなことのような気がしましたがどうご覧になりましたか。

武石さん:やはりアンコンシャス・バイアスということで言うと、多分、非正規ということに関するアンコンシャス・バイアスもあったんだろうと思うんですよね。やはり非正規だから、子育てしているから、女性だからということで自分の限界を作ってしまっていて、その限界が、ある意味、制度が作っていた。そこの限界から出る仕組みがなかったわけです。でもそこに、こういった制度を作ることによって、次のステップにジャンプができる。そしてやってみたら、もっともっとどんどん世界が広がっていったということで、制度が限界を取り払って、新しいチャレンジの仕組みを作ったすばらしい事例かなと思います。

武田:きょうは大企業の取り組みを中心に見てきたわけですけれども、それはやっぱり大きな会社で余裕があるからできるんじゃない?中小企業では難しいんじゃない?という見方もあると思うんですが、そこはどうでしょうか。

武石さん:余裕があるということばの裏には、これは何かコストがかかる。会社にとって負担があるというニュアンスがあると思うんですね。ただ、これは決して福祉政策、コストがかかるものではなくて、むしろ投資であり、人材戦略です。ということで言うと、規模に関わらず人材をどう捉えるか。今いる人にしっかり能力を発揮してもらうという環境整備であれば、それは規模に関わらずやるべきである。中小企業だからこそやらなくてはいけないという部分も、人が少ないのでそういうことはあるかなというふうに思います。

武田:女性もそうですけれども、こうして会社の中に多様な生き方をする人ができるというのは強みになりますよね。

武石さん:ダイバーシティ経営の中で、そこに投資をして企業の価値を高めていくということだと思います。

武田:「100人いたら100のロールモデルが必要だ」という声もありましたけど、一人一人事情を抱えながらも、その人なりに活躍できる社会にしていく。そのためには何が必要なんでしょうか?

宮田さん:女性がキャリアをフラットに選択できる社会を作るということは、裏を返せば男性が家庭を軸にした生き方を選ぶと、そういう生き方を解放することなんですよね。これがこれまでなかなか難しかったんですが、コロナを一つのきっかけにして、ステイホームで家庭を大事にするような働き方もあるんじゃないかと。あるいはテレワークによって、いろいろな多様なライフスタイルを選ぶことができる。今まさにこういった変化が、全世界に訪れようとしているんですよね。そのときにこれからの社会、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンが非常に重要だということですし、さらには経済成長というものを考えたときにも、人々の多様な豊かな生き方をいかに創出することができるか。会社自体が多様性を大事にしているということが、そういう発想にもつながってくるということですね。未来を開くうえでも、この女性の活躍であり、多様な生き方の解放というのは大事だというふうに考えています。

武田:多様である女性が活躍できる、一人一人が生き生きと働ける、生きられる。そのことが力になるんだという、そういうアンコンシャス・バイアスを僕らは持っていくべきですね。

武石さん:そうですね。

宮田さん:簡単な話ではないんですけれども、やはりわれわれは向き合いながら一つ一つ解決していけるといいなというふうに考えてます。