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2020年6月25日(木)

北朝鮮 キム・ヨジョン氏台頭 ~内部で何が起きているのか~

北朝鮮 キム・ヨジョン氏台頭 ~内部で何が起きているのか~

ケソン(開城)にある韓国との共同連絡事務所を爆破した北朝鮮。25日は朝鮮戦争が始まった日であり、その動向が注目される中、キム・ジョンウン(金正恩)委員長の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏の存在感が急速に高まっている。キム・イルソン(金日成)主席と直接、血のつながりがある「白頭山の血統」の強化が図られていると指摘する専門家も。
内部で何が起きているのか、韓国やアメリカはどう動き、日本にはどのような影響があるのか、読み解く。

出演者

  • 礒﨑敦仁さん (慶應義塾大学准教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター)

北朝鮮 内部で何が起きているのか

ことし(2020年)3月、ピョンヤンで撮影された映像です。人々はマスクをつけ、遊具やスポーツジム、鉄道など、徹底して消毒する様子が映されています。

北朝鮮は、新型コロナウイルスの感染者が1人もいないとしています。しかし、経済はかつてない状況に直面していました。ウイルスの流入を防ごうと、1月から中国との国境を封鎖。対外貿易の95%を占めていた中国との物流が、ほとんど止まったのです。

北朝鮮の内部情報を分析する、韓国の国家安保戦略研究所の元所長、ナム・ソンウク(南成旭)氏です。国境封鎖の影響は北朝鮮の市民だけでなく、政権中枢にまで及んでいるといいます。

元国家安保戦略研究所 所長 ナム・ソンウク氏
「北朝鮮は過去にも幾多の経済危機がありましたが、今回の特徴は、これまで打撃を受けることがなかったピョンヤンのエリート層も直撃していることです。北朝鮮経済の生命線ともいわれる、中国との密貿易も打撃を受けています。キム・ジョンウン(金正恩)委員長に流れる不正な資金は、私たちの調査では50億ドル規模ですが、それも減少しているとみています。」

経済制裁に加え、新型コロナの影響で密貿易も断たれたというナム氏。その結果、党や軍の幹部までもが資金繰りに苦労し、政権への求心力が揺らいでいるというのです。

知られざる実像

そうした中で、南北共同連絡事務所を爆破した北朝鮮。その指揮をとり、突如、存在感を増したのがキム委員長の妹・ヨジョン(金与正)氏でした。正確な年齢は不明ですが、ことし32歳になったという情報もあります。
10歳ごろのヨジョン氏。性格は明るく活発で、周囲からは“お姫様”と呼ばれていたといいます。
その姿を初めて大衆の前に見せたのは、父、キム・ジョンイル(金正日)総書記が死去したときでした。生前、ヨジョン氏を「頭の回転が速く指導者の器がある」と話していたというキム総書記。親交が深かったロシアの元高官に対し、後継者の1人として考えていたことを明かしていました。

ロシア 元極東全権代表 コンスタンチン・プリコフスキー氏
「ジョンイル氏は、1枚の写真を見せてこう言いました。『私には4人の子どもがいるが、下の2人が政治に強い関心を持っている。息子(キム委員長)と娘(ヨジョン氏)だ。これから10年くらいかけて教育し、いずれどちらかを後継者にするつもりだ』と。』」

プリコフスキー氏は、兄・ジョンナム氏とジョンチョル氏はビジネスに関心が高く、その一方で、ジョンウン氏とヨジョン氏は政治に関心が高かったと聞いたといいます。世界を学ぶため、10代のときスイスに留学。このころから2人の信頼関係はより強まったと考えられています。

2016年に韓国に亡命した、北朝鮮の元外交官、テ・ヨンホ(太永浩)氏。北朝鮮にいた当時のヨジョン氏の印象について語りました。

北朝鮮 元外交官 テ・ヨンホ氏
「恐ろしい性格だとか、無慈悲だという話は聞いたことがありません。周囲は評判通り、お姫様のような人だと話していました。」

ただ、その権威は絶対的で、それは建国の父、キム・イルソン首席の血を引く「ペクトゥ(白頭)の血統」が基盤となっているといいます。

テ・ヨンホ氏
「北朝鮮の人々にとってペクトゥの血統といえば、自分たちと同じ人間ではなく神がつくった人物だと教育されます。神がつくった天才、いわば神とつながった絶対的指導者なのです。」

ペクトゥの血統を背景に、キム・ジョンウン政権になった後、傍らで兄を支え続けたヨジョン氏。2018年のピョンチャンオリンピックでは、韓国のムン大統領を相手に「ほほえみ外交」といわれる交渉を担いました。

強硬姿勢の真意は?

そのヨジョン氏が、なぜ攻撃姿勢に転じ、存在感を増してきたのか。
長年、北朝鮮を研究してきたソウル在住の政治経済学者、ロー・ダニエル氏です。韓国のムン大統領に厳しいことばを投げかける役割を、今回ヨジョン氏が担ったことに、北朝鮮の強い意思が隠されているといいます。

政治経済学者 ロー・ダニエル氏
「朝鮮半島では、礼儀や上下関係を重んじる儒教の精神が根強く残っています。32歳の女性が67歳の男性、しかも大統領に対し見下した乱暴な言葉を使ったことは、過去の南北の歴史を見ても一度もありません。朝鮮労働党には古参の党員がたくさんいますが、心理的な打撃を与えるには若い女性が適任でした。しかもヨジョン氏とムン大統領は何度も会って仲むつまじい姿を見せてきました。北朝鮮が今回のような侮辱的なパフォーマンスを行ったということは、韓国との関係、今後2年残っているムン政権の間に『もう何も期待しないぞ』というメッセージを投げかけたのだと思います。」

北朝鮮の強硬姿勢の背景には、韓国への期待がことごとく裏切られてきた経緯があると指摘されています。2年前の南北首脳会談の後、北朝鮮は観光や経済特別区の再開などを具体的に提案。しかし、今も実現できていません。さらに、経済制裁が続く中、アメリカの説得役としても韓国が機能せず、不満が極限に達したというのです。

ロー・ダニエル氏
「この2年間、結局、北朝鮮に何の変化も訪れませんでした。アメリカをはじめとした経済制裁は続き、融和に向けた経済政策も何一つ実現していません。これはキム委員長にとって大きな挫折です。キム委員長は新年の談話で“正面突破”ということばを使いました。これはアメリカや韓国に頼ることなく、正面から事態を打開するために、核開発を進めると宣言したということです。
8月には米韓合同軍事演習、10月には朝鮮労働党創立75年の行事が控えています。その前に、主導権を握るため何らかの行動を起こす必要があったのです。そんなやさきに偶然ビラが飛んできました。韓国はよい口実を与えてしまったのです。」

連絡事務所の爆破翌日、ムン大統領と直接会って話したという元統一相のチョン・セヒョン(丁世鉉)氏。その席でムン大統領が語ったことばについて明かしました。

元韓国統一相 チョン・セヒョン氏
「(ムン大統領は)『さみしい』と、ただひと言だけでした。あそこまで深刻な態度を見せるとは想像もしませんでした。」

アメリカと北朝鮮のはざまで、韓国は出口の見えない厳しい局面に立たされたといいます。

チョン・セヒョン氏
「北朝鮮のあの侮辱的な態度は許せませんが、それは韓国が北朝鮮と話し合ってきた約束を果たせなかったからです。原因は、何事もアメリカの決済がなければ進められないという構造にあります。アメリカを説得して、韓国が主導で物事を進められる環境を作らなければなりません。」

秘められた戦略とは?

ヨジョン氏の存在感を示した今回の爆破。実は、内部では着々とその準備が進められていたという見方があります。

元公安調査庁 坂井隆氏
「率直に言って、今回驚くことが多いですね。」

公安調査庁で30年にわたり北朝鮮の分析を行ってきた、坂井隆氏です。朝鮮労働党の機関誌「労働新聞」から、この機にヨジョン氏の権威を一気に高めようとする北朝鮮の思惑が読み取れるといいます。

坂井隆氏
「キム・ヨジョン氏のこの談話というものが、非常に権威のある文献といいますか。」

北朝鮮で連日開かれていた、韓国を非難する抗議集会について書かれた記事。そこには“集会でヨジョン氏の談話が朗読された”と記されていました。多くの人民の前で、キム委員長以外の談話が読み上げられるのは異例のことだといいます。

坂井隆氏
「北朝鮮の場合は、昔から首領制といいますか、トップだけが偉い。それ以外の人は何か権威を持つということが非常に厳しく制限されていて、他の人の文章を誰かが読み上げるとか、そういうことが行われているのが今回の動きのすごく特徴的な一つの側面。」

ヨジョン氏は現在、政治局員候補。党の中核組織である政治局内では、高く見積もっても序列19位だといいます。

ところが紙面では、本来、最高指導者にしか使わない「指示」や「指導」といったことばが使われていました。

坂井隆氏
「例えばこういう会議があって、副総理の誰それがこういうことを指示しただとか、そんなものが出たかといえば、恐らくそういう書きぶりで報道されたことは無い。それくらい言葉に気を遣っているわけですから、そういう中でこういう会議を開いて何かを指示をしたということを、彼女に関して用いたことは意味がある。」

ヨジョン氏の異例の扱い。坂井氏は、紙面を通じて国民にヨジョン氏の権威を強く認識させようとしているといいます。

坂井隆氏
「彼女の存在感を国内外にアピールしようというところ、そういう狙いは間違いなくある。トップ対トップの最後の手打ちみたいなところは、やっぱりトップ(キム委員長)が出て行くと。それまでのいろいろな事前の細かい丁々発止のやりとりは下にやらせるというのは、組織上、自然な役割分担。」



政権内で大きな力を持ちつつあるヨジョン氏。韓国国防省は、今週、実質的なナンバー2の役割を果たしていると分析しました。
ロー・ダニエル氏は、ヨジョン氏の権威拡大の背景には、キム委員長の健康問題もあるのではないかと見ています。

政治経済学者 ロー・ダニエル氏
「中国の研究者などによれば、一般の人は買えないキム委員長専用のたばこのブランドがあるのですが、それを1日に4箱、つまり1日80本吸っているとのことです。韓国の医師たちが、キム委員長が足を引きずったり、数歩しか歩いていないのに息が上がるといった映像から、健康状態を分析したことがありますが、心臓や循環器の血管系統に何らかの病気があると結論づけました。ですから長期的な目で見たとき、万が一に備える意味でもヨジョン氏を表に出して鍛えておくべきという戦略的な判断があるのだと思います。」

国家安保戦略研究所のナム元所長は、キム委員長には3人の子どもがいるとされますが、まだ権力を移行するには若過ぎるため、ヨジョン氏の存在が重要になってくるといいます。

元国家安保戦略研究所 所長 ナム・ソンウク氏
「キム委員長の息子は10歳程度。自分に何かあったとしても、あと10年は跡を継げません。その空白を埋められるのはヨジョン氏しかいないのです。」

キム委員長は今?

ヨジョン氏の動向を世界中が注視する中、キム委員長はどうしているのか。
かつてCIA・中央情報局に勤め、その後も北朝鮮情勢の分析を続けてきたブルース・クリングナー氏。アメリカのシンクタンクが公表した直近の衛星写真などから、キム委員長の思惑の一端がくみ取れるといいます。
この建物はICBM(=大陸間弾道ミサイル)も収容できる規模で、来年(2021年)早々にも稼働できると見られています。

「正面突破」を宣言し、水面下で核開発を進めていると見られる北朝鮮。その動きをアメリカにちらつかせ、譲歩を引き出そうとしていると見ています。

元CIA分析官 ブルース・クリングナー氏
「製造施設が拡張され、核やミサイルの増強を図っています。シンガポールでの米朝首脳会談以降に生産した核物質の量は、少なくとも核弾頭10発相当になるとみています。ほかにもミサイルの発射装置をはじめ、さまざまな施設を拡大している兆候があります。つまり、計画は間違いなく加速しているとみられています。」

ヨジョン氏の存在感を高め、戦略的に動く北朝鮮。その真意についてスタジオで徹底解説します。

内部で何が起きているのか

武田:きょう6月25日は、朝鮮戦争勃発から70年の節目です。韓国のムン・ジェイン大統領はソウル近郊で行われた式典で先ほど、「朝鮮戦争終結のため北も大胆な努力を」と述べました。一方、北朝鮮国営メディアはきのう(24日)、キム委員長が南北の境界付近での軍事訓練を再開することなどの軍事計画を保留したと伝えました。
ソウルの高野支局長に聞きます。強硬な姿勢を見せていた北朝鮮が一転、軍事計画を保留したというこの一連の動き。韓国政府はどう見ているんでしょうか?

高野洋支局長(ソウル支局):先ほどの演説でムン大統領は、軍事計画の保留を含め、最近の北朝鮮の動きについては一切言及しませんでした。また北朝鮮側の意図を分析中で、今後への影響を避けるため言質をとられないようにしたと見られます。
ムン政権は、北朝鮮による軍事計画の保留で、このまま緊張緩和に向かうと楽観的に捉えているわけではなく、韓国軍も警戒を緩めていません。といいますのも、北朝鮮はあくまで軍事計画を「保留」しているだけで、「撤回」はしていないからです。北朝鮮としては韓国の対応次第で、計画を実行に移そうと思えばいつでもできる状態にあります。

そもそもヨジョン氏は、キム委員長から与えられた権限を行使して、関係部署に次の段階の行動を指示しました。それに基づいて軍が示した計画を、トップのキム委員長が保留にするという、自作自演とも言える流れです。このため、韓国側の出方を見極めながら揺さぶりをかけようと、あらかじめ練られたシナリオに従って緊張のレベルを調節しているのではないかという見方が、ここ韓国では強いんです。

武田:ここ数年の朝鮮半島を巡る動きですけれども、2年前、ムン大統領とキム委員長の南北首脳会談が行われたのに続いて、アメリカのトランプ大統領とキム委員長との、史上初の米朝首脳会談も行われました。しかし、この米朝会談は去年(2019年)、事実上決裂。ことしに入り新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、先週、南北の共同連絡事務所が爆破されました。
北朝鮮政治が専門の礒﨑さん。この2年前の融和ムードから一転状況が悪化しているように見えるんですけれども、何が起きているのでしょうか?

ゲスト礒﨑敦仁さん(慶應義塾大学 准教授)

礒﨑さん:背景には、北朝鮮にたまりにたまった不満ですとか、いら立ちというものがあるんですね。つまり、これだけ米朝首脳会談、南北首脳会談と会談を重ねて非核化を約束したのに、進んでないじゃないかというふうに日本側は思うわけですけれども、北朝鮮はそう考えないわけです。北朝鮮側は、これだけ会談を重ねたのに、経済制裁の解除どころか緩和も得られていない。そういった、いら立ち、怒りを、まずはぶつけやすいムン・ジェイン政権にぶつけてきたというのが今回の流れです。

武田:そんな中で存在感が高まっているヨジョン氏の今の立ち位置を、どう読み解けばいいのか。礒﨑さんが重要だと考えているのが、「労働新聞」に掲載された一連のヨジョン氏の談話です。談話が掲載されたのは、いずれも1面ではなく、2面です。さらに、ヨジョン氏に尊敬語が使われていないという点もポイントだといいます。キム委員長の場合は通常、必ず太文字になっていて、その表現も「党の委員長であられる」といった尊敬語が使われています。一方、ヨジョン氏の場合は「党の第1副部長である」という表現に終始しているということなんですが、これは何を意味するのでしょうか?

礒﨑さん:キム・ヨジョン氏は、台頭はしています。注目はされていますけれども、しかし明確に区別されているということですね。現時点では、あくまでも韓国を口汚く批判して、そして不満をぶつける役割を担っている。あくまでもキム・ジョンウン体制下の中の役割分担である。そこでキム・ジョンウン委員長は温存されているというのが今の段階。キム・ヨジョン氏を、現時点では過度に評価すべきではないと考えております。

武田:北朝鮮が描いている一連の戦略の一部を、今担っている段階ということなんですね。

礒﨑さん:そのとおりです。まだ明確にキム委員長のことばが出てきていないので、どういった大きな絵を描いているのかというのが読みにくい状況です。

武田:今後はどうなっていくんでしょうか。専門家は、朝鮮労働党創立75年、そしてアメリカの大統領選挙といったこの先の動きに注目すべきだといいます。

元CIA分析官 ブルース・クリングナー氏
「北朝鮮は、アメリカ大統領選挙に向けた行動をとると思われます。トランプ大統領に対して影響力を持っているつもりでいるので、制裁緩和などの反応を引き出そうとする可能性があります。注目すべきは10月10日、朝鮮労働党創立75年の記念日です。北朝鮮は重要な記念日に行動することが多いとされているので、国内外でサプライズ的なことをやって、大統領選に影響を及ぼそうとするのではないでしょうか。」

元国家安保戦略研究所 所長 ナム・ソンウク氏
「中期的にはSLBM(=潜水艦発射弾道ミサイル)とICBMを発射して、アメリカへの圧力を高める戦略をとると思います。つい先日、駐ロシア北朝鮮大使が“核戦争”という単語を使いました。これは『アメリカが圧力を加えるなら、また核実験を行う』という予告です。」

武田:今後、北朝鮮はミサイル発射なども含めた新たな動きを見せる可能性があるということなんですが、韓国政府はどう対応していこうとしているんでしょうか?

高野支局長:残る任期が2年を切ったムン政権にとって、最優先課題に掲げてきた南北関係の改善はいわば金看板でして、やすやすとおろすわけにはいきません。4月の総選挙で与党が圧勝した国会において、南北協力の再開に向けた法整備を進め、何とか“レガシー”を残したいという思いが強くあります。しかし、今回の事態では北朝鮮に南北間の連絡ルートを遮断された上、大統領特使の派遣も拒否されました。食糧などの人道支援や新型コロナウイルス対策を巡る協力を呼びかけても、北朝鮮側の反応はないままです。
そもそも北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、南北協力は非核化の進展と歩調を合わせるべきだとする同盟国アメリカの意向を無視して、韓国が独自に制裁の緩和や解除に動くのは容易ではありません。冷戦構造が残る朝鮮半島で韓国が単独でできることには限界がありまして、アメリカと北朝鮮の歩み寄りに望みを託すほかないのが現実です。
手詰まり感が漂うムン政権。南北関係がこれ以上後退しないよう管理するのに苦慮する局面が続きそうです。

武田:韓国は手詰まりの状態。アメリカも大統領選挙や新型コロナウイルスの対策で手いっぱいという状況だと思うんですけれども、今後の朝鮮半島情勢、礒﨑さんはどんな点に注目されていますか?

礒﨑さん:もし米韓がこのまま難しいとなりますと、やはり中国に注目せざるを得ないんですね。最近キム・ジョンウン政権は、中国へ急接近しているように見受けられます。香港問題において、この問題は中国の内政問題であると全面的な支持を表明しているんです。これには伏線もございまして、実は11年ぶりの南北首脳会談の直前、2018年の3月にはキム・ジョンウン国務委員長が電撃的に中国を訪問して、その後も連続で5回ほどの中朝首脳会談を行っているんですね。悪化していた中朝関係を、この2年間、決定的に改善させて、中国を一種の保険と考えてきたように思います。

武田:その中国が今後、北朝鮮の動きをどう見ていくのか、後押しするのかどうかという点が注目ですね。

礒﨑さん:南北関係、米朝関係というものが悪化したとしても、全面的な衝突を避けるためには中国の力が必要だということ。そして党の中央軍事委員会、予備会議は開かれましたが、間もなく本会議が開かれてキム・ジョンウン委員長が何を語るか注目すべきだと考えます。

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