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2020年5月27日(水)

“新型コロナ” 日本の食に異変あり!?

“新型コロナ” 日本の食に異変あり!?

新型コロナウイルスの影響は、私たちの食卓を支える生産者や流通の現場に大きな打撃を与えている。給食や外食産業の営業休止の影響で売り先がなくなり、一部の生産物は破棄せざるを得ない深刻な事態が起きている。また、コロナの影響によって海外からの技術実習生が来日できず、作付けや収穫が難しくなっている地域も。感染拡大が与える私たちの食卓への影響はどうなるのか?私たちの食の安心・安全をどう守るのか、考えてゆく。

出演者

  • 枝廣淳子さん (環境ジャーナリスト)
  • 山口 靖さん (農林水産省 大臣官房政策課長)
  • 平澤明彦さん (農林中金総合研究所 基礎研究部長)
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

“新型コロナ” 日本の食に異変あり!?

長引く学校の休校が、生産者たちに大きな打撃を与えています。

都内でコマツナを生産する専業農家・門倉周史さんです。
出荷先の9割が都内の学校給食向けでしたが、休校措置によって出荷できなくなりました。

コマツナ農家 門倉周史さん(36)
「コマツナたちは廃棄ということで。」

出荷できないコマツナはすべて破棄します。

いつ再開するともしれない学校給食に備え、常に次の種付けの準備をしなければならないためです。

コマツナ農家 門倉周史さん(36)
「出せるか分からないものをずっと作り続けているので、本当に不安のひと言だと思います。子どもを亡くしてしまうような、心が痛い作業の一つ。」


今、漁業の生産現場も深刻な事態に陥っています。
三重県でマダイの養殖をしている橋本純さんは、新型コロナによって、魚が売れない危機感を消費者に訴えています。

養殖マダイ漁師 橋本純さん(45)
「今回のコロナって、今までにない衝撃的な事件。とんでもないことが起こり始めている。」

橋本さんは地元の旅館や飲食店に加え、首都圏にも独自に販路を築いてきました。
しかし、4月以降キャンセルが相次ぎ、売り上げは半分以下に落ち込んでいます。

養殖マダイ漁師 橋本純さん(45)
「軒並みダウン。今回すべてがダメになっているのが現状。」

先月には、運送用に1500万円かけて新しいトラックも購入。“オリンピック需要”を期待していたと言います。

養殖マダイ漁師 橋本純さん(45)
「試運転も兼ねて運んだのが1回きりで、いまだかつて動いていないのが現状。」

出荷の見通しが立たない中、月のエサ代は1000万円。
魚が規格以上の大きさに育つと、買い手の手間が増えるため、売ることが難しくなると言います。

養殖マダイ漁師 橋本純さん(45)
「(出荷先の)まな板の大きさ、そこに入れるこん包の箱の大きさ、1番スムーズにいけるシステム作りが何年もなって出来上がっていたので、売りたくても売れなくなる。」

今、養殖マダイ3万5000匹が行き場を失っています。
これまで生産者として積極的に販路の確保に努力してきただけに、ショックは大きいと言います。

養殖マダイ漁師 橋本純さん(45)
「飲食向けという部分では、そこがゼロになって、ゼロに近い状態。今、1番打撃が大きいのかなって。」


外食や輸出向けに力を入れてきた和牛では、産業全体が大きなダメージを受けています。

仙台牛のブランド化を進めてきた協議会です。

仙台牛はこれまで自治体や生産者が一体となり、大都市を中心に販路を拡大。輸出にも力を入れ始めたやさき、国内外で需要が激減しました。今、和牛の価格は前年に比べ、3割近く落ち込んでいます。

「輸出で言えば、昨年、頭数ベースで比較して3割ほどに。」

「そういう部分が影響して、牛肉の枝肉相場も下落しているのかなと。」

「今回のコロナで、そういう意味では(輸出で)出ばなをくじかれた形になっている。」

仙台牛のような国産牛肉のブランド化が始まった契機は、牛肉の輸入自由化。スーパーや外食チェーンなどで、海外産の安い牛肉が出回るようになりました。そうした中、高齢化や後継者不足に悩む国内の畜産農家が生き残りをかけたのが、さしの入った霜降りで輸入牛肉との差別化を図るブランド化でした。


畜産農家 村田直利さん(57)
「芝浦で開催した大きい大会なんですけど、チャンピオン取った時の賞ですね。」

畜産農家の村田直利さんです。
就農当時はスーパーなどに流通させる安い肉牛の飼育でしたが、輸入の自由化をきっかけに高級和牛の生産に切り替えました。

畜産農家 村田直利さん(57)
「日本特有のこの和牛、これを育てていく。その道が生き残れる道かなと。」

ところが今、和牛の出荷額が かかった経費を下回る事態に陥っています。

経費の一部は補助金でまかなえますが、過去の設備投資の借金もあり、今後も続けていけるか瀬戸際の状況が続いています。

畜産農家 村田直利さん(57)
「仙台牛もだんだんブランド価値が上がってきて、単価も上がってきて、輸出等々含め、かなり期待していたんですけど、もう全部吹っ飛ぶっていう。本当に悔しい。」

生産者たちの悲痛な声。
私たちにどんな影響があるのでしょうか。


武田:日本の食料自給率は、最新の数字で37%と過去最低です。そんな中で、生産現場をコロナウイルスが直撃している現状、食への不安を感じざるを得ません。環境ジャーナリストで、持続可能な地域作りの支援を続けてこられた枝廣さん。せっかく作った食材が行き場がなくなっている現状が もったいないなと思いましたが、どうご覧になりましたか。

ゲスト 枝廣淳子さん(環境ジャーナリスト)

枝廣さん:本当にもったいないし、命にも生産者さんにも申し訳ないなと思います。規格が決まった販路というのは、何もない平時には効率的で強みですけど、こういうときには裏目に出るんだなというふうに思います。食べ物は私たちの命の根源です。これまで食べたいものが食べられるって当然だと思っていたけど、いやいやそれは当たりじゃなかった。生産と流通がちゃんと回ってこそなんだということを、みんなが痛感したんじゃないかなと思います。今、不安とともに、食べ物と自分について考える人がとっても増えている、そんなふうに思います。

武田:そして、国内外の農業政策が専門の平澤さん。今回の事態は日本の農林水産業にとって、どれくらい大きな問題だと捉えていらっしゃいますか。

ゲスト 平澤明彦さん(農林中金総合研究所 基礎研究部長)

平澤さん:日本の農業はもう長い事、貿易の自由化や高齢化で生産基盤のぜい弱化が進んできているんですね。それが、今回のことで一気に加速してしまうのではないかということを心配しているわけです。高付加価値化や契約栽培、輸出、その辺のところが打撃を受けているという様子が出ていましたけれども、これはまさに国が推進してきたところで、政策に乗って頑張ってやってきた人たちが今、打撃を受けているんですね。
この人たちは、将来の担い手として国が育成してきた方々なので、ここのところがやられてしまうと非常に先行きが心配になります。

武田:日本の農業の光という存在だった皆さんが一番大きな影響を受けているということなんですね。

栗原:そうした中で今、生産者と消費者を直接つなぐ産地直売のネット通販が存在感を増しているんです。

この通販サイトでは、新型コロナウイルスで困った生産者のためのページが組まれていまして、2500人以上が登録しています。

そうした生産者を応援したいと利用する消費者の数も右肩上がりで、15万人に上っているんですね。

養殖マグロ漁師(和歌山) 吉田龍さん
「消費者の方の声がダイレクトに届くので、そういう部分はすごい新鮮で楽しい。」

栗原:国も、こうした通販会社に送料を補助する取り組みを今週から始めています。今回出品している生産者の方に話を聞きますと、今のところ、これだけでは経営が改善するまでにはいかないけれど、新しい販売のチャンネルを持つことには可能性を感じているという声も多く聞かれました。枝廣さん、こうした生産者と消費者が直接つながる取り組みですけれども、どのように見ていますか。

枝廣さん:私も地元の熱海で、漁師さんや水産会社が大変と聞いて、仲間と一緒に海産物や干物のネットショップを立ち上げてお手伝いしています。それをやっていて感動するのは、「買ってくれてありがとう」「食べ物を作ってくれてありがとう」「ありがとう」が行き交っているんですね。このように生産者と消費者が直接つながったこと、そして、消費者が購入を通して生産者を支えることができるということが分かったことは、とても大きな可能性があると思います。今回のことをきっかけに、生産の現場の苦労や思いが分かったという声もよく聞きます。生活者にアンケートをしてみたんですね。約650人の回答者の半分近くの人が、このコロナの状況で「食べ物の入手方法が変わった」と答えています。「行き場のなくなった食材を取り寄せている」とか、「好きなお店のテイクアウトを買うようにしている」といった支援型の購入が増えている。そして、家庭菜園や米作りを始めたという自給型も増えている。こういった行動の変化は、おそらくコロナの収束後も続くのではないかなと思っています。

武田:そして、もう一方、農林水産省 大臣官房政策課の山口さんにも加わっていただきます。高い付加価値をつけて、生産する輸出に力を入れる。これは国の進めてきたことだと思いますけれども、こういった人たちが、今ダメージを受けている現状をどう受け止めていらっしゃいますか。

ゲスト 山口 靖さん(農林水産省 大臣官房政策課長)

山口さん:生産現場では、国民の皆さんに必要な食糧事情を見通して生産を日々行っています。一時的に需要が減ったから急に生産を止めるわけにもいきませんし、将来の生産のために家畜や果樹など、生産基盤をしっかり確保し続けることも大切です。いま生産現場で必要なのは、新たな販路の確保という形になります。ネット通販の取り組みですとか、先ほどの枝廣さんの取り組みは、新しい販路の確保という意味では大変重要なのはもちろんですけれども、生産者の皆さまと消費者の皆さまの“日本の食を一緒になって支えていくんだ”という共通の認識を持っていただく上で非常に有意義な取り組みであるというふうに思っています。農水省として、こういう取り組みの輪が広がるようにサポートしていきたいと思っています。また、平澤さんご指摘のとおり、今回影響を受けている方々は高品質な農産物の提供を通じて、わが国の農業をまさにけん引されている方々が数多くいらっしゃいます。わが国の農業が今、世界で評価されているのは品質の面になりますけれども、この強みを将来に引き継いでいくためにも、こうした方々の余裕が損なわれないような支援をしていく必要があると認識しています。

武田:この新型ウイルスによって、食べ物を作っても売れないという状況を見てきましたけれども、もう一つ、担い手不足で作りたくても作れないという状況も浮かび上がっています。

“新型コロナ” 食の生産現場でいま何が

アクト農場 代表 関治男さん
「3月に入る予定で、空っぽ。」

茨城県の農業法人では、中国人技能実習生が来日できず、収穫に大きな影響が出ています。

アクト農場 代表 関治男さん
「選抜したのは、こんな6人です。この子たちが待ってるんですよ、入国を。このほかに3人待ってます。」

農業法人の代表を務める関治男さんは、ことし、40ヘクタールほどの農地に1棟およそ100万円のハウス65棟を新設。規模拡大に伴って、新たに9人の技能実習生を受け入れるはずでしたが、来られなくなっているのです。

アクト農場 代表 関治男さん
「彼らなくしては、うちの経営は成り立たないというぐらいです。農業生産の一翼というか、全体を実習生の労働力に頼っている。」

もともと外国人の技能実習制度は、日本の技術を海外に移転する国際貢献を目的に27年前にスタート。農業分野においては、現在3万人以上の実習生が来日しています。

しかし、今回の事態によって担い手が不足する生産現場では、技能実習生が労働力として期待されている実情が改めて浮き彫りになったと専門家は指摘します。

日本農業経営大学校 校長 堀口健治さん
「一産地で(技能実習生が)1000人来ているが、今回400人が来日できなかった。日本人がなかなか手が挙がらないところを支えてくれている。外国人に依存する、それがこの10年、急速に増えてきた。」

茨城の農業法人の代表・関さんは、急きょ4月からハローワークで担い手の募集を始めました。

アクト農場 代表 関治男さん
「2人ほど応募があったのかな。71歳と64歳。」

応募は農業経験の少ない年配の人だったため、担い手の確保にはつながりませんでした。


アクト農場 代表 関治男さん
「これは、放棄して大きくなっちゃったコマツナを土にかえす作業ですね。」

スーパーなどの出荷先はあるものの、人手が足らないため収穫できずにいます。損害は毎月1000万円に上ると言います。

アクト農場 代表 関治男さん
「全部パーですよね。むなしいですよね。」


技能実習生の抜けた穴を、新型コロナの影響で仕事が減った人たちに埋めてもらう試みも始まっています。

軽井沢では、旅館業組合がホテルの従業員などと人手不足の農家をマッチング。10軒以上の農家で、助っととして農作業をスタートしています。

旅館の従業員
「楽って訳じゃないですけど、すぐ覚えられるし、大丈夫です。家庭菜園程度のことはやっていたんで。」


一方、実習生の代わりを見つけるのは、それほど簡単ではないという声も上がっています。

高原野菜を生産する細田龍人さんです。
レタスや白菜など 高原野菜を特産とするこの地域では、およそ500人が来日できずにいます。

野菜農家 細田龍人さん
「家族が3人で実習生が2人、計5人ですよね。3人でやるってことは(生産を)4割ぐらいは減らしていますけどね。」

入国のめどが立たない技能実習生。かといって、いまさら他の人材に切り替えるのも簡単ではないと言います。
実習生を送り出す現地の機関からは“来日が遅れても実習は継続してもらわないと困る”という声が上がっているのです。

フィリピンの技能実習生送り出し機関のスタッフ
「今、実習生たちは入国だけを待っているんですね。今年の3月から日本語の勉強もしたので、それもお金もかかりました。自分の仕事を辞めて実習をやって、お金なくなったんです。だから、どうしても短くても日本で働きたいと。」

その一方で、実習生を待つ細田さんには別の不安もあると言います。
仮に入国が認められても、入国後の感染症予防や講習で、収穫の最盛期の7月に間に合わないのではないかと危惧しています。

野菜農家 細田龍人さん
「もし6月の頭に入っても(入国しても)7月になっちゃいますね、作業にかかるのが。困りますけどね。だけど、来ないものは仕方ない。」

私たちの食の安心をどう守ればよいのでしょうか?。


栗原:外国人実習生の本来の目的は国際貢献です。しかし、そうした若者に頼らざるを得ないというのが日本の農業の一面なんですね。こちらが農業分野の実習生の推移ですけれども、この5年で2倍に増加しました。そして、去年初めて3万人を突破したんです。ところが、今回農水産業あわせて3400人が来日できずにいるんです。

この事態の対策として、政府はこうしたメニューを用意しています。観光業者との人材のマッチングや仕事がなくなった技能実習生が、農業などほかの分野に移ることを認める特例措置などを用意しています。

取材しました長野では、こうした対策、人手の確保が進んでいまして、今のところ生産量への影響はほぼないということです。

武田:こうした現状、平澤さんはどうご覧になりましたか。

平澤さん:外国人労働力がないと野菜などの生産が成り立たない。これは、実はほかの先進国もみんな共通して同じ状況になっているんです。ただし、日本はご案内のように、経済的な地位が長期にわたって低下していますので、その結果、外国の方から見ると出稼ぎ先として、労働力として来る魅力が薄れてきているというところが問題なわけです。もともと日本人の人手不足ということで始まっている話なので、なかなか替えがきかないんですよね。これからどうするかということなんですけれども、やはり処遇を改善する必要があります。もっとやりがいのある仕事をお任せして、機械化などで効率化もして、できるだけ長く支えていただけるように環境整備をしていくということが必要だと思います。

武田:山口さん、国としては、こうした現状をどう認識しているんでしょうか。

山口さん:外国人実習生の問題につきまして、ご紹介の長野県のほか、群馬県や福島県でも取り組みが進んでいます。これまで800名の方が飲食店や宿泊業からマッチングされておりまして、こういう支援の輪をさらに広げていきたいと考えています。中長期的には、わが国の農業者は2030年までに3分の1ぐらい減少してしまうんじゃないかという見通しもあります。農業を持続させていくために、外国人に限らず、女性や障害を持った方も含めた多様な人材の参画が必要なんですが、特にこの5年でみると、直近の5年間に比べて49歳以下の新規就農者が1割増加していまして、コロナ禍ではありますけれども、こうした農業体験の場を生かしながら、この流れを加速させていくことが大切だと思っています。

武田:その流れを止めてはいけないということですね。世界の食糧事情にも詳しい枝廣さん、いま国を超えた人や物の行き来が制限されています。そういった中で、このような問題が起きてきているわけです。枝廣さんは、この現状をどうご覧になりましたか。

枝廣さん:世界の食料システムは、おっしゃったとおり、人の自由な移動に支えられているというのは、今回非常に明らかになったと思います。人が移動できなくなると、日本のような国は特にもろいですね。私たちが食べている野菜など、外国人の労働者の方々に支えられていたというのは、多くの人にとって初めて知った不都合な真実だったんじゃないかと思います。この構造的な問題にどう取り組むかが今、問われていると思います。

“新型コロナ” 日本の食は大丈夫?

栗原:日本はといいますと、こうした大豆や小麦など、大事な作物を海外からの輸入に頼っているんですよね。

そこにやってきた世界的なコロナの感染拡大。世界の食糧事情にも異変が起きています。ロシアなどでは小麦の輸出量を制限するなど、自国内の食料不足への懸念から輸出を制限する国も出ているんです。


こうした中で、主要穀物の多くを輸入に頼る日本では、農林水産省が3月から商社と情報交換をして輸出国の食料供給状況を把握しています。また、そうした情報をもとに食料供給や国内の備蓄状況を発信。消費者に落ち着いた購買行動をと呼びかけています。


武田:山口さん、世界的にウイルスの流行拡大がまだ続いていて終息は見えません。入ってくる食料も、これは本当大丈夫かなという気もしますけど、日本の食糧事情の先行きをどう見ているんでしょうか。

山口さん:わが国では、ロシアからの輸入がほとんどありませんし、アメリカなどは営農や輸出も順調に行われていますので、現時点で食料の供給は問題ないと思っています。コロナに関して言えば、アメリカの食肉工場が閉鎖されて食肉の供給が滞るですとか、国連の機関が、コロナの影響で栄養失調に苦しむ方々が2億5000万人以上に増加するんじゃないかという報告もしています。こうした中で、自国で食される食料をなるべく自国で生産する、賄えないものの輸入と備蓄を安定化するということが重要だと感じています。コロナの先行きはなかなか難しいですけれども、商社の方々も含めて、さまざまな方々と情報交換を行いながら、まず的確に対応すること。あと国内の生産基盤を守るために、輸出などの取り組みが引き続き重要ですが、枝廣さんご指摘のように、生産者の皆さまと消費者の皆さまの結びつきを強めて、国産のものを大切にして、地域で活用していくような取り組みにも光を当てていくことが重要であるというふうに思っています。

武田:緊急事態宣言解除になりましたけれども、私たちは新しい暮らし方が求められています。食についてはどのように向き合えばいいのか、平澤さん、いかがでしょうか。

平澤さん:世界の食料自給については、コロナウイルス以外にも不安定な要因がいくつか出てきているんですね。豚の病気が以前から だいぶ広がっていますし、それに加えて、去年からことしにかけて、アフリカでバッタが大量発生するといったことが出てきているので、注意して見ていく必要があると思います。

武田:リスクはコロナだけではないということなんですね。最後に枝廣さん。

枝廣さん:私たちが食べ物を手に入れる方法は3つあると思うんですよね。「自分で作る」、「お裾分けでもらう」、「お金で買う」。これまでは「お金で買う」に頼っていた人が、私を含め多かったと思います。でも、これからは3つとも大事にしたいなと思います。小さくても家庭菜園はゼロよりましだし、お裾分けの人間関係を地域で作っておくこと。そして、お金で買うときも何を守りたいのか、何を支えたいのかを考えて選ぶこと。買い物は投票です。消費者にも日本の食と農を守る力があるということをもっと自覚して、行動していきたいなというふうに思っています。

武田:きょうは、皆さんどうもありがとうございました。