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2020年4月15日(水)

新型コロナ ビッグデータで感染拡大を防げ

新型コロナ ビッグデータで感染拡大を防げ

新型コロナウイルスが猛威をふるい、人々の行動が制限される中、SNSを用いて人々の健康データを集め、その分析結果をもとに、次の対策につなげるプロジェクトが日本で始まっている。LINEユーザーに行った体調アンケート2500万件の結果をもとに、国や自治体の対策を支援。さらに自治体ごとに「自宅待機してください」「すぐに受診してください」など、ユーザー1人1人に合ったアドバイスをする仕組みも整えている。厚労省クラスター班や自治体と連携し、これらのデータを分析するのは、慶應義塾大学医学部・宮田裕章教授。NHKではパンデミックが起きる直前から、宮田教授と共に世界各地で「データ医療の最前線」を取材していた。そこには、「遠隔診療」「アプリを使った経過観察」など、人類が未知の病に立ち向かうためのヒントが溢れていた。落ち着いた日常を取り戻すために、私たちひとりひとりの健康データがどう役に立つのか。医療の未来のあり方を考える。

出演者

  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学 医学部 教授)
  • 安田菜津紀さん (フォトジャーナリスト)
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

新型ウイルス ビッグデータで感染拡大を防げ

ビッグデータを活用した新型コロナ対策に、いち早く取り組んだのが神奈川県です。

神奈川県 黒岩祐治知事
「新型コロナウイルス対策パーソナルサポートへのご登録をお願いし、相当のデータが蓄積されています。」

システム作りを担ったのが、宮田さん。
全国8300万のユーザーがいるLINEを活用したプロジェクトです。

宮田さんは日本で感染が始まった直後から、データを用いた対応が遅れていることに危機感を募らせていました。

宮田裕章さん
「4月になっても収まっていなかった時の(判断)根拠を政府が今、持っていない。」

宮田さんが重視したのは、行政とIT企業が連携する仕組み作りです。
ユーザーはLINEで健康情報を入力。それを管理するのは神奈川県です。集まったビッグデータを分析。発熱者が増える傾向にある地域や予想されるリスクなどを割り出し、県は対策を講じます。

さらに、ユーザーには一人一人の状況に合わせた医療や生活の情報も届きます。健康情報を提供する人が増えるほどビッグデータの精度が上がり、結果として、ユーザー 一人一人への支援内容も充実するのです。集めたデータは新型コロナ対策のみに使われ、終了後にはすべて破棄するとしています。

宮田裕章さん
「情報を入力していただきながら、ひとりはみんなのためになるだけではなくて、そのデータを使いながら、ひとりを支えていく。」


横浜に住む、竹本真紀さん。
3月下旬に急な発熱で自身の感染を疑い、このサポートを利用しました。

LINEサポート利用者 竹本真紀さん
「自分ではいろいろ調べて、コロナじゃないと思っているけれど、それでも心配で、一生懸命 手がかりを探して、LINEの友だち登録をしてみた感じです。」

外出を控え、病院には行きづらかった竹本さん。体調を入力すると、すぐに新型コロナに関連する症状はないと回答が来ました。

翌日に熱は下がりましたが、今でも体調を確認する連絡が届いています。

LINEサポート利用者 竹本真紀さん
「神奈川県で定期的にLINEというツールを使って、送ってくれるっていうのは ありがたいです。」

利用者は、登録されている医師にLINEで相談することもできます。

LINEサポート 登録医師 太田陽子さん
「いま、相談が来ています。熱と頭痛がありますっていう。」

耳鼻科医の太田陽子さん。
これまで600人以上の相談に応じています。

LINEサポート 登録医師 太田陽子さん
「お母さんに感謝されることが多いですね。小さい子どもを抱えて病院に行くこと自体が、今の感染の拡大があるので、ハードルが高いので、相談してよかったって言ってくださることが多い。」

現在、このシステムには300人を超える医師が登録しています。


3月中旬。
ほかの自治体でもサポートシステムの導入が進んでいました。

宮田裕章さん
「今日から愛知が入ってくるんです、データとして。一番期待しているのは、エリア全体で潜在的にどういうリスク者がいるかってことですよね。」

このころ政府が把握していた感染者の数は、大きく増えてはいませんでした。

安倍首相
「一定程度、持ちこたえているのではないか、というのが専門家の皆さんの評価です。」

3月下旬の3連休を迎えると、各地で桜が開花。街に人々が行き交い、楽観視する動きが広がりました。この様子に、宮田さんは危機感を募らせていました。

宮田裕章さん
「いま日本が持っているデータは、陽性になった人のデータしかないんですよね。発熱者がどれぐらいいるかっていうのがデータとしてないんです。実態を明らかにしながら、ロックダウン以外の方法を模索して、ここは大丈夫、ここはダメ、みたいな。その時もやっぱりデータがないと、そこにはアプローチできない。」


3連休から1週間後。
集まった10万件を超えるデータを分析すると、気になる結果が浮かび上がりました。発熱者数の急激な増加です。分析チームに緊張が走ります。

宮田裕章さん
「オーバーシュートかどうかは、ここからのデータだけれども、増加傾向は間違いなくある。」

発熱者の数が、そのまま新型コロナの感染者というわけではありません。しかし、データの急激な変化は何を示しているのか。

分析チーム
「重症な人とか熱が出る人ほど出てくる(回答する)と。それは、どう考えても右上がりの結果を表しますよね。」

宮田裕章さん
「うん。」

分析チーム
「うーん、難しいな。」

4月1日。
データを分析した宮田さんは、神奈川県庁で会見に臨みました。
まず示したのは、陽性患者の数と発熱者の割合を表したデータ。2つのデータには相関関係が見られたのです。

ここに人の移動量を表すグラフを重ね合わせると、もうひとつ傾向が見えてきました。3連休での移動の増加に比例して、その後、発熱者の割合も増えていたのです。

神奈川県 黒岩祐治知事
「これを見ていただいて、皆さんの行動に結びつけていただくことに つながっていけば、最悪の状態を防げると思います。」

徐々に、市民の行動に変化が表れ始めます。3月終盤から4月にかけての神奈川県での人の移動は、特に買い物や駅の利用で大きく減っているのです。

宮田裕章さん
「少しでも油断をしたら、あれだけ大きな被害を受けたイタリアでも、自粛が緩んだ瞬間 また死亡率が上がっています。そういった長い期間で戦い、向かい合うなかで、どのようにしていけばいいかということを、われわれの持っている情報データを使って一緒に考えていくことが不可欠になると思います。」


武田:データでウイルスと戦う、宮田さんに徹底的に聞いていきます。宮田さん、よろしくお願いします。まず緊急事態宣言から1週間、まだ収束の兆しは見えませんけれども、今の現状にどんな危機感を抱いていらっしゃいますか。

ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学 医学部 教授)

宮田さん:強力なロックダウンを行ったフランスでも減少傾向は見られたんですが、期間を延長しました。やはり各国、出口がなかなか見えないと。中国、韓国も一歩も油断していませんし、WHOは、ワクチンは少なくとも1年かかるというふうに言っています。各国の状況を見ると、たとえ1回オーバーシュート、医療崩壊して、多くの人が亡くなったとしても、第2波、第3波がやってきて、また経済や人の命をぼろぼろにしていくんですよね。この長い期間の中でわれわれは、このウイルスと対じし続けなくてはいけない。非常に緊張した状況が続いていくと思います。

栗原:非常に注目を集めている、宮田さんが進めている仕組みですけれども、改めて整理していきます。このシステムは「厚生労働省が行う全国調査」と、「22の都道府県が行うパーソナルサポート」の2段階に分かれているんです。全国規模の調査では「熱がありますか」などの簡単な質問に答えることで、熱がある人がどれぐらいいるのか、国が全体状況を把握して、そのデータをもとに対策を考えていきます。また、この自治体が行うサポートでは、例えば、だるさの症状がある方はスマートフォンの中でボタンを押しますと、すぐにこのように新型コロナ受診相談窓口の連絡先が知らされるんですね。

こうして一人一人の状態に適した行動をとるように、LINEのメッセージを直接送って促していくサービスなんです。

武田:宮田さん、今回、4日間以上発熱した人が2万7000人に上ったこと、また、職種によって発熱の割合が違っていたことなどが分かってきましたけれども、これまでに何が見えてきましたか。

宮田さん:このデータは、いわゆる発熱が続いたからといって直ちに陽性ではありませんし、間接指標という限界があります。本来は、より多くの人にPCR検査や抗体検査をするということが正しいデータを取るやり方なんですが、精度やコスト、時間もかかると。それをやっていると、今の日本に間に合わない部分があるので、間接指標であったとしても、まず日本の概観を把握すると。これで何が見えたかというと、例えばグーグルのデータだと、日本人の自粛って土日は休んでいたんですが、平日は皆さん、一生懸命仕事をしていたんですよね。木金と特に歓楽街に行く割合が上がっていったと。LINEのデータで確認できたのが、そういった営業職の方や接客を伴うサービス業の方の発熱が非常に高くなっていたと。かつ、そういったエリアに発熱者が集積していると。

つまり、いわゆるそういった穴が開いた状態での自粛ではなくて、ちゃんと新型コロナウイルスに対応した形で、われわれは働き方、あるいは過ごし方を考えていかなくてはいけない。こういう結果が、見えた部分の1つですね。

武田:そういったデータから、私たちが暮らしの中、社会の中のどの部分の生き方を変えていけばいいのかという戦略も立てやすくなるということですね。

宮田さん:そうですね。働き方の何が感染リスクを広げるのか。あるいは、何がそうじゃないのかということを確認しながら、踏み出すことができると思います。

栗原:宮田さん、もう一つが、一人一人のサポートという部分なんですけれども、今回37.5℃以上の高熱が4日以上続く方がおよそ2万7000人いると。非常に強い不安を抱えて過ごしていると思うんですけれども、こうした一人一人の不安に応えるものになるんでしょうか。

宮田さん:ここは、やはりわれわれが一番大事にしている部分で、新型コロナウイルスは刻一刻と状況が変わっていって、例えばにおいとか、あるいは、ある薬が危ないんじゃないかと、いろいろな情報が飛び交う中で、日本感染症学会と連携をしながら、正しい情報を正確に伝えると。そして、その必要な情報も、ハイリスクな人なのか、高齢者なのか、あるいは症状がすでに出ている人なのか、これから予防していく人なのか、一人一人重要な情報というのは違ってくるので、そういった状況に合わせてお伝えしていくということが、すごく大事になるのかなと思います。

武田:そして、フォトジャーナリストの安田さんにも加わっていただきますが、安田さんは、この調査をどのようにご覧になりましたか。

ゲスト 安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)

安田さん:こうして蓄積されたデータというのが命を守る上での生命線の一つになっていくと思いますし、だからこそ緊急時なんだから、たくさんの人たちが協力しようというふうに思っていると思うんですけれども、ただ、一方でLINEのようなプラットフォームのいちユーザーとしては、緊急時ほど慎重にならなければいけない面もあるのではないかと感じています。例えば、私たちが提出した個人情報というのは、年金データのように漏えいはしないんだろうか、そこに企業が関わってくるということによって、そのデータが恣意的に使われないだろうか、第三者的なチェック機能だったり、監視機能というのがしっかりとそこにあるんだろうか、そのあたりの周知というのは、宮田さん、いかがですか。

宮田さん:ありがとうございます。全国調査のほうはLINEがデータを集めるんですが、厚労省と協定を結んで、公的な目的、あるいは厚労省が定めた目的以外では使わないと。一定期間後はデータを破棄するということで、いわゆる営利目的には全く使えないようになっています。もう一つ、都道府県のパーソナルサポートは行政が業務の一環でデータの所有、管轄をして、LINEさんはデータを一切触らないと。こういう中で行っています。このデータを使うというときには、やはり信頼というのが非常に重要になるんですよね。データは使ってもなくならないんですけど、1万人の患者さん(のデータ)があれば、1人もよりよい治療を受けられる。あるいは予測ができる。これが1万、10万、100万となってくると、全体で分かることも大きくなってくるので、この産官学の中で信頼できるデータ活用を、いかに作っていくかということがとても重要だと考えています。

武田:社会のためにもなるし、一人一人のためにもならなきゃいけない、それがフェアなデータの使い方だということですね。

宮田さん:はい。

武田:感染爆発が起きて、医療機関にかかれない患者さんが今後、数多く出てくる、いわゆる医療崩壊をどう防ぐかが、今の喫緊の課題になっています。そうした中で、日本でも進められようとしているのが、離れた場所からテレビ電話などを活用して医師の診断を受ける、遠隔診療です。それを進めていく上で期待されているのが、やはりこれもビッグデータの活用。最先端の海外の事例を、宮田さんとともに取材しました。

新型ウイルス ビッグデータで遠隔医療

AIドクター
「症状を教えてください。」

「ひどい腹痛です。」

AIドクター
「お気の毒に。一緒に原因を突き止めていきましょう。」

イギリスで急速に普及している「AIドクター」。病院に行かなくても、最初の診断をしてもらえます。

AIドクター
「(痛みは)断続的ですか?」

「断続的で食後にひどくなります。」

腹痛を訴える男性には、AIが痛みの度合いや期間を質問。AIは、蓄積した疾患のビッグデータから、どんな病気かを絞り込んでいきます。

AIドクター
「現在も禁煙していますか?」

「はい。」

生活習慣や過去の病歴についても質問し、さらに分析。
すると、開始からわずか3分。

AIドクター
「いただいた情報から可能性のある病名を突き止めました。おそらく、胃食道逆流症か消化性潰瘍です。早急に医者の受診をお勧めします。」

イギリスでは、現在80万人が利用。病院から離れていてもスマホやパソコンで診療が受けられ、国の保険も適用されます。2月には、ヨーロッパでの感染拡大に先駆け、新型コロナ専用の診断プログラムも追加しました。

バビロンヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「患者は24時間365日、スマートフォンでアクセスできます。医師に会う必要はなく、AIに相談するだけで解決できることもたくさんあります。私たちは、人々の医療へのアクセス方法を変えたのです。」

医療費が、ほぼ無料のイギリス。軽い症状でも人々が病院に頼るため、受診できるまで最大2週間かかることもあります。AIドクターが最初の診断を担うことで病院に駆けつける人を減らすことができ、今回の新型コロナ対策でも医療の現場を支える存在になっているといいます。

開発を行ったのは、創業わずか6年のベンチャー企業。このAIドクターは、ある医療テストで人間の医師を上回る成績を出しています。

診断データが増えるほど精度は上がっていきます。

バビロンヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「ビッグデータを用いた医療は、今のような集団感染が起きたときこそ本領を発揮します。AIドクターを使えば、対面による感染リスクを減らしてサポートができるのです。」

宮田裕章さん
「そのためには医師や患者だけでなく、政府との連携も重要ですよね?」

バビロンヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「世界中の国がAIドクターを導入するまで、それほど長い時間はかからないでしょう。どのような国の規制があろうと関係ありません。」


一方、新型コロナで肺炎を発症した場合など、継続的な治療を行う際にもビッグデータの活用が期待されています。
アメリカで薬物依存の治療に使われているAIアプリです。

臨床医 ケビン・ムーアさん
「このアプリのおかげで、途中で治療をやめてしまう患者が減りました。確実に効果を上げています。」

治療に長い時間と、きめ細かな観察が必要な薬物依存。それを遠隔で効率的に進めるのが、このアプリです。患者はアプリを使って毎日、怒りや孤独感など、自分の感情を数値で入力します。

そのデータはリアルタイムで集計され、医師が離れていても患者の状態を常に把握できるのです。

元患者 コリーンさん
「最初はアプリと聞いて、本当に効くか不安でした。でも、1日たった10分、治療プログラムを行うだけです。苦しむ私を医師がデータで見ていてくれます。このアプリを開くことで、自分の気持ちを整理し、落ち着くことができます。本当に助かっています。」

ピアセラピューティクス CEO コリー・マッカンさん
「ビッグデータを使った医療は、継続的な治療が必要とされる疾患にとても大きな効果があります。この仕組みは、さまざまな病気や依存症の患者に応用していくことができます。医師の診断の効果を最大化したいのです。」


世界各地で広がるビッグデータを活用した遠隔医療。それを支えるインフラともいえるのが、膨大なデータの置き場所を企業に貸し出すクラウドサービスです。世界最大のシェアを持つアマゾン。世界に張り巡らされたネットワークを使い、企業はどこからでも簡単にデータにアクセスできます。さらに、AIも自社で独自に開発。膨大なデータを吸収したAIが数百万の企業を支えています。

アマゾンウェブサービス シェズ・パートヴィさん
「例えば、GE(ゼネラル・エレクトリック社)の画像診断ビジネスでは、レントゲンが撮影されると同時にAIが画像を分析し、問題点を教えてくれます。さらに私たちが開発したAIが患者との会話もしてくれます。私たちの使命は、顧客のニーズに徹底的に答え、すべての人類の健康を支援することです。患者がどこにいてもデータを活用できれば、それが、さらなる臨床効果の改善につながるのです。」

新型ウイルス ビッグデータで感染拡大を防げ

武田:今の ひっ迫した医療現場を見てみますと、こうした技術が少しでも役に立てばという思いが禁じ得ないのですが、安田さんはどのようにご覧になりましたか。

安田さん:例えば、AIドクターのような技術というのが、不安定な問題を抱える国、地域も生かせないのかということは見ていて感じたところです。これまで取材をしてきた紛争地であったり、特に難民キャンプの中なんかは、非常に過密で出入りが自由にできないところもあって、医療もぜい弱でというふうになると、その中で感染が広がらないのかということが、いま非常に懸念されているんですね。かつ、医療的な情報が届くインフラというのも乏しいので、例えばイラクでのケースだったんですけれども、がんというのは人から人にうつるんだという誤解が広まってしまって、実際に小児がんになった子どもが育児放棄をされてしまうというケースもあったんですね。一方で、難民の人たちは情報を得られるか得られないかが自分たちの命を左右するということもよく知っているので、そのためにスマートフォンを持っているという方も多いんですよね。だからこそ、それを生かして、医療とつなげられないかだったりですとか、ぜい弱な地域での生かし方というのは、宮田さん、いかがですか。

宮田さん:まさに今、新型コロナウイルスに関して、世界各国は第1波、第2波をそれぞれの国で封じ込める形で戦ってます。ただ、これが次のフェーズですね。例えばアフリカで大きく広まってしまうと、それが第4波、第5波となって、また世界に大きな危機をもたらすと。そのときにアフリカをサポートするということは、各国にとっても非常に不可欠なんですよね。もうすでに先ほど紹介があった、バビロンヘルスが200万人、ルワンダという国で使っているんですが、先進国がまさにコロナウイルスとの危機に直面しているんですが、ここで集めたデータを使って、今度、検査が高額であったとしても、症状やスマホのデータからアフリカの人をサポートできないかということを、今、ロックフェラー財団の関連者、取り組みとも連携して、協力を進めているような状況です。

栗原:世界各地で新型コロナウイルスに対して、ビッグデータの活用方法が模索されていますけれども、その注目の事例の1つとして台湾があるんです。
天才プログラマーとしても有名な、若きIT大臣、オードリー・タン氏が中心となって、当局による積極的な情報公開や行政と民間の橋渡しを行っています。例えば、これはマスクの在庫がリアルタイムで確認できるアプリです。

どこに行けばマスクが手に入るのか、一目で分かるんです。そして、ポイントは民間のITエンジニアが、公開されたマスクの在庫データをもとに僅か数日で開発。無料で公開されています。こうした取り組みによって、100を超えるコロナ対策のアプリやサイトが民間の手によって生まれているんです。

武田:安田さん、私たちのデータがこの危機を乗り越える強力なツールになろうとしている中で、気に留めておかなくてはならないことは、どのようなことだと考えますか。

安田さん:こういったデータの活用に関しては、私たち自身が当事者性をより意識するということも求められてくると思うんですね。例えば、ビッグデータの活用にしても、それが私たちのものであり、私たちのためのものである、ということ(を意識すること)だと思うんですよね。だからこそ、それが適切に活用されているのか、そして、適切に管理されているのかということを当事者の1人として見届けていく、向き合い続けていくということがより求められてくるのではないかというふうに思います。

武田:宮田さん、データを使ってどう戦っていきますか。

宮田さん:各職種が同じように活動再開するということは、これから難しいですが、データを見ながら、まさにこの非常事態宣言の中でどう立ち上がるか。それを今、まさに考える時期なのかなというふうに思います。

武田:今後も期待しています。ありがとうございました。