クローズアップ現代

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2020年2月6日(木)
“強いトランプ” 舞台裏の戦略~どうなる米大統領選~

“強いトランプ” 舞台裏の戦略~どうなる米大統領選~

2月3日のアイオワ州の党員集会で始まる大統領を決める長き戦い。トランプ政権の発足から3年あまり、アメリカ社会では分断が固定化し、それが大統領選挙に大きく影響しようとしている。トランプ大統領誕生以降のアメリカ社会の変容を見つめ、選挙の行方を占う。この3年、トランプ氏はさまざまなピンチに見舞われたにもかかわらず、それを乗り越え、一定の支持を集め続けてきた。今年に入って、史上3人目となる弾劾裁判まで行われてきたが、国民は罷免に「賛成」と「反対」で真っ二つ。トランプ氏が自らの支持層が求める政策を次々と実行することで「囲い込んだ」結果、分断がさらに深まり、強固な支持が崩れなくなっていると見られている。そうした中、トランプ陣営はいま注目すべき動きを見せている。僅かな票の差が勝敗を分ける接戦州を狙って、国民の数パーセントしか関心がない「シングル・イシュー」に焦点をあて、票を上積みしようとしているのだ。ターゲットの一つは「電子タバコの規制緩和」。その行方が大統領選の結果に影響する可能性まで指摘されている。取材班は舞台裏で動くキーマンに密着。戦略の内幕に迫っていく。一方、民主党内では路線対立も表面化し、候補者選びは異例の混戦が続いている。11月の投票日へ向けて戦いが始まった米大統領選挙の舞台裏をルポする。

出演者

  • 中山俊宏さん (慶應義塾大学 教授)
  • 武田真一 (キャスター)

密着!トランプ再選への知られざる戦略

今回、共和党に強い影響力を持つといわれるロビー団体のトップが舞台裏の取材に応じました。
グローバー・ノーキスト氏。
歴代の共和党政権に大きな影響を与えてきました。

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「今から選挙までは本当に忙しいよ。それが重要なことだけどね。」

活動を始めたのがレーガン政権時代。その後、保守派の政治団体を1つにまとめ上げました。
先週、ノーキスト氏はみずからが主催する戦略会議に臨みました。
その名は「水曜会」。普段は関係者しか入れないこの会議の撮影が許されました。

「票は本当に集まるのか?」

「注視しているから大丈夫です。」

全米から保守派の重鎮などが集まるこの会こそがノーキスト氏の戦略の土台となっています。水曜会では43の州で活躍するロビー団体が、いま有権者がどのような問題に関心を持っているのか報告します。中絶や銃規制の反対、減税の推進など、トランプ大統領の再選に向けた重要な政策課題を議論しています。

「同性婚や中絶も争点になっています。」

「民主党のブティジェッジ氏は、プラスチックストローを使うと温暖化の原因になると批判しますが、ストロー禁止は有権者受けが悪いです。」

ノーキスト氏は、各地で持ち上がる身近な争点をいかにすくい取れるかが再選の鍵を握ると考えています。

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「有権者は、アメリカがイラクに侵攻すべきかという大きな問題ではなく、自分の生活に影響する争点に投票する傾向があります。ふだん、どんな悩みがあり、何にいらだっているのか知ることが重要なのです。」

今、アメリカでは共和党と民主党の支持層がそれぞれ3割ほど。一方で、無党派層は4割います。ノーキスト氏らは身近な問題に争点を当て、無党派層の票を取り込もうと狙っているのです。


この団体では今、選挙の意外な争点に注目しています。
先週、アメリカ議会の一室。共和党議員の政策スタッフなどを集め、ノーキスト氏らが開いた勉強会です。

ノーキスト氏の部下 ポール・ブレア氏
「私たちは、これまで医療やエネルギーなど、あらゆる問題について調査してきました。中でもこの半年間、最も注目してきたのが『電子たばこ』の問題です。」

今、若者を中心に急速に広がりを見せる「電子たばこ」。

しかし、健康への配慮から規制すべきではないかという議論も起きています。
この日の会議では、“規制をすべきではない”と訴えました。

「電子たばこをめぐっては、自分たちの健康は自分たちで守る。その権利を保障すべきなのです。」

ノーキスト氏は、この電子たばこを巡る政策が選挙の勝敗を左右すると考えています。

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「電子たばこの愛好家は、全米に1000~1400万人います。彼らの票は見逃せません。」

ノーキスト氏らは、30以上の州で聞き取り調査を行った結果、電子たばこの規制は愛好家にとって、いま切実な問題だということが分かりました。
さらに接戦州での専門機関の調査で、愛好家の83%が電子たばこを吸う権利を守る候補者に投票することも分かったのです。

保守系ロビー団体 スタッフ
「今回勝利を狙っているほぼ全ての州で、成人の電子たばこの愛好家の数が、前回の選挙で勝利に必要だった数を超えています。」

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「トランプ大統領への最も大きな貢献は、電子たばこの問題になるだろう。」

実は、トランプ大統領は去年9月、電子たばこを規制する方針を発表していました。

トランプ大統領
「アメリカ人が不健康になることは放置できない。若者が影響を受けている。」

この状況に危機感を募らせたのが、ノーキスト氏です。
これまでの調査結果をトランプ陣営に報告し、票離れへの懸念を伝えたといいます。すると、規制の方針の発表から2か月後。トランプ大統領はこれまでの方針を撤回し、法制化への署名を見送ったのです。

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「私たちは大統領や側近に、規制に反対する資料や手紙を送りました。そして、トランプ大統領は立場を変えたのです。一部の人は批判しますが、その柔軟性こそが彼の本当の強さだと思います。」

電子たばこを巡る政策は、特に接戦州での勝敗に直結するといわれています。
前回、トランプ大統領がわずか1万票差で勝利したミシガン州。この州には、46万人の電子たばこ愛好家がいるといわれています。
その1人、ジョン・ヴァイロークさん。前回の選挙では候補者の訴える争点に共感できず、投票には行きませんでした。しかし、今回トランプ大統領の対応をみて、その考えが変わったといいます。

ジョン・ヴァイロークさん
「もし候補者が電子たばこに注目しているなら、私もその候補者に自分の票を投じるでしょう。私がトランプを気に入ったのは、彼の考えが明確なところだよ。」

トランプ大統領の再選に向け、争点の掘り起こしを進めるノーキスト氏。
電子たばこのほか、家庭で教育を行う“ホームスクールの是非”など、次なる争点に向けて動き始めています。

保守系ロビー団体 代表 グローバー・ノーキスト氏
「トランプ大統領は再選されるでしょう。彼はすべて正しいことをやっている。有権者が注目している身近な問題に狙いを定めるのがカギなのです。」

日本時間のけさ、トランプ大統領は再選に向けて大きな壁を乗り越えました。

「トランプ大統領を無罪と評決する。」

権力乱用などが問われた弾劾裁判で、無罪の評決が下されました。
4日の一般教書演説でも、再選を強く意識した発言を繰り返しました。

トランプ大統領
「アメリカにとって最高の日々は、これからやってくる。」

この場で、与党・共和党の議員は大統領再選への期待を隠しませんでした。

「もう あと4年(4 more years)」


専門家は、共和党の議員が選挙で頼れるのは、今や、トランプ大統領だけだと分析しています。

ヤングスタウン大学 ポール・スラシック教授
「ほとんどの共和党議員は、労働者たちなどの票をとれるのはトランプ大統領だけだと考えています。共和党として権力を維持し続けていくことが何よりも重要なので、選挙で敗れるリスクを負いたくないのです。」

見えてきたトランプ大統領再選への戦略。
死角はないのでしょうか。

弾劾でも揺るがない“トランプ支持”

武田:まずトランプ大統領の支持率は、就任以来、数々のスキャンダルに見舞われながらも40%前後を維持。そして、弾劾裁判をも切り抜けました。その背景には何があるのか。アメリカ政治が専門の中山さんは、共和党のトランプ党化があるとおっしゃいますが、これはどういうことですか。

ゲスト 中山俊宏さん(慶應義塾大学 教授)

中山さん:彼が大統領選に出馬を表明したときには、まさか誰も、彼が大統領になると思っていませんでしたけれども、その選挙戦を通じて自国第一主義を掲げ、支持者の気持ちをわしづかみにした。トランプ大統領は人々の不満とか怒りを刺激して、人々を感情的に動員するのが非常に得意だと思うんですけれども、そういうプロセスを通じて、誰も党内で抵抗できないような状況をつくり出していき、当初はトランプ大統領に、いわば抵抗するような勢力がいたわけですけれども、今や完全にそういう人はいなくなって、敵がいない、共和党自身がトランプ化したと思うんですね。

電子たばこで大統領が決まる?

武田:支持率を見てみますと、民主党も共和党も3割ほどで、実は無党派層が4割程度占めているんですね。ここが勝敗の鍵を握っています。その論争のテーマは何かといいますと、内政では移民問題や医療保険制度改革、外交では米中貿易摩擦や中東政策と、まさに重要課題が山積なのですが、中山さん、電子たばこのような問題で票を囲い込もうという戦略は、どう見ればいいのでしょうか。

中山さん:支持率のほうは、若干説明を要するんですけれども。これを見ると、アメリカが二大政党制じゃないように見えますけど、実は無党派層の中でもかなり民主党に寄っている人と、かなり共和党に寄っている人がいて、事実上、真っ二つに分裂している状態なんだろうと思います。そういう中で、大きな案件では支持・不支持が動かないので、まず自陣営を徹底的に固めてから、こういう小さな案件を少しずつ積み重ねていって、選挙に勝つという戦略。見るところ、トランプチームのほうがそれを着実にやっているなという感じがしますね。

武田:今おっしゃった、真っ二つに分かれている分断の固定化が、選挙戦の行方に大きな影響を与えようとしています。

分断が固定化する中…揺るがぬ岩盤支持

トランプ大統領
「最悪の魔女狩りだ。」

トランプ大統領に対する、今回の弾劾裁判。
大統領を罷免すべきか。世論調査で、国民は真っ二つに割れました。
罷免に反対した人のほとんどはトランプ大統領の支持者。白人労働者やキリスト教福音派の人たちなど、いわゆる岩盤支持層が含まれています。

なぜ岩盤支持層は揺るがないのか。大きな要因の1つが、その最大勢力である福音派が求める政策を徹底して実行してきたことです。

福音派は、アメリカ国民のおよそ4分の1を占める最大の宗教勢力です。4年前の選挙では、トランプ大統領勝利の原動力となりました。
トランプ大統領は、ことし最初の演説の場所として、福音派の集会を選びました。

トランプ大統領
「われわれは、信仰、家族、神、国家、自由のために、もう一度、歴史的な勝利を手に入れるのだ。」

福音派
「もう あと4年(4 more years)」


集会に参加していた、マリリン・ルカーノさんです。

トランプ支持者 福音派 マリリン・ルカーノさん
「この聖書は1970年代から持っているの。子どもの頃からの古いものよ。」

トランプ大統領を支持する理由は、人格や言動ではなく、政策がぶれないことだと言います。大統領は、福音派が主張する中絶への反対やイスラエル寄りの政策を進めてきました。

トランプ支持者 福音派 マリリン・ルカーノさん
「最初はトランプ大統領は傲慢だと思いました。でも、振る舞いの好き嫌いで投票するわけではありません。何をしてくれるかが大事なんです。」

ところが、弾劾裁判を巡り、岩盤支持層にほころびが見える出来事が起きました。福音派の有力誌が大統領の罷免を求める社説を掲載したのです。“大統領としてのモラルに欠ける”と批判しました。

社説を書いた マーク・ガリ編集長(当時)
「偶像崇拝的に支持してきた福音派も、弾劾された意味を理解し、支持を続けることは信仰に背くことだと気づく時なのです。」

これに対してトランプ大統領は、すかさず対策を打ち出します。
先月24日、現職大統領として初めて、人工妊娠中絶に反対する集会に出席したのです。

トランプ大統領
「歴史上、初めてこの集会に参加できた大統領であることを誇りに思う。」

トランプ支持者 福音派 マリリン・ルカーノさん
「中絶反対の集会に実際に来たのよ。すばらしかったわ。彼が大統領なのは本当にうれしいです。次の4年が楽しみよ。」


好調な株価も、岩盤支持層の維持につながっています。
ミシガン州に住む、ジーニー・ニーミスさんです。建設関連の仕事をしていましたが、今は無職。主に年金を頼りに生活しています。

トランプ支持者 ジーニー・ニーミスさん
「私は積立型年金と金に投資しています。」

トランプ大統領は、これまで法人税率の大幅な引き下げや金融機関への規制を緩和するなど、経済政策を進めてきました。低金利も相まって株価が上昇。大統領に就任した3年前の1.5倍にまでなっています。

年金などの資産価値が2倍に上昇したというニーミスさん。
こうした株高の恩恵を受ける人は少なくないのです。

トランプ支持者 ジーニー・ニーミスさん
「信じられないくらい上がっていて、とてもうれしいわ。この後もずっと続いてほしいわ。」

“分断から融和へ”躍進する民主の新星

「ピート・ブティジェッジ氏です。」

社会の分断が固定化する中、民主党候補者選びの初戦、アイオワ州で躍進したのがブティジェッジ氏です。訴えているのは「国民の融和」です。

民主党 ピート・ブティジェッジ氏
「大統領の職は称賛されるためにあるのではない。人々を融和に導き、ともに大きなことを成し遂げるためにあるのだ。」

みずから同性愛者であることを公言しているブティジェッジ氏。トランプ大統領が、移民やLGBTに排他的な政策を打ち出してきたのに対して、“すべての国民がひとつになるべき”だと訴えています。

民主党 ピート・ブティジェッジ氏
「アメリカに憎しみや排斥といった概念が入り込む余地がないことを世界に知らしめよう。」

ブティジェッジ氏を支持するヘール夫妻です。かつてはオバマ前大統領を支持し、選挙ボランティアとして活動していたという2人。ブティジェッジ氏にオバマ氏を重ね、“分断したアメリカを融和に”導いてほしいと願っていました。

民主党支持者 ジョン・ヘールさん
「トランプ大統領が誕生してから、国内の分断はより深くなりました。」

民主党支持者 テリー・ヘールさん
「私たちは分断ではなく、融和をもたらす大統領を求めています。」

民主党にとって課題となるのは、路線が大きく異なる候補者が乱立する中、党として1つにまとまれるのかということです。

民主党 バーニー・サンダース氏
「いまの異常なまでの経済格差を解消しなければならない。」

左派のサンダース氏は弱者に寄り添う政策を訴え、若者を中心に熱狂的な支持を集めています。

民主党支持者
「サンダース氏なら、富裕層ではなく、僕たちの生活をよくするために活動してくれるはずです。」

本格化する選挙戦。
支持者の間では、トランプ大統領と対抗するためには、“前回の敗戦の経験を生かさなければならない”という声が高まっています。

民主党支持者 テリー・ヘールさん
「前回の大統領選挙で、民主党は過ちを犯しました。トランプ大統領を軽く見て、クリントン氏が嫌いな人は投票しなかったのです。トランプ大統領が嫌なら、絶対に民主党の候補に投票すべきです。」

分断の固定化か、それとも融和か。
選挙戦の行方を占います。

はじまった選挙戦 ポイントは?

武田:トランプ政権誕生前から現地で取材してきた、ワシントン支局の油井支局長に聞きます。油井さん、民主党のブティジェッジ氏、躍進の背景には何があると見ていますか。

油井支局長:1つは、序盤戦に人員や資金を集中させてスタートダッシュするという戦略が、ずばり当たったことがあります。そのために、ブティジェッジ氏はアイオワ州内のテレビ広告に、主要候補者の中で最も多い7億6000万円余りもつぎ込んだと伝えられているんです。もう一つは、38歳という若さの一方で、落ち着いた話しぶりは知性と安定感を感じさせて、これがトランプ大統領とは対照的で、民主党の候補者にふさわしいという評価につながっていることもあります。その結果、同じ中道派のバイデン前副大統領への支持を奪った形なんです。

武田:一方でトランプ大統領の強みについては、油井さんはどう見ているんでしょうか。

油井支局長:よくも悪くも有言実行だと思います。過去の大統領には、例え自分の支持基盤の利益になるとしても、社会の分断を深めるような行動は控えるという不文律がありました。しかしトランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認める中東政策、関税を武器に貿易赤字の削減を迫る通商政策など、いずれも外交や経済のプロが反対してきた、いわば禁じ手とも言える行動を次々と打ち出して、支持者の心をつかんできたのです。トランプ大統領にとっての再選の鍵は、無党派層の取り込みと民主党支持基盤の切り崩しです。いわゆる岩盤支持者だけでは選挙には勝てないので、今後は黒人などのマイノリティー票や女性票を意識した選挙活動を強化していく構えです。

“分断が固定化”アメリカ社会の行方

武田:中山さんは、トランプ大統領が一定の支持を維持しているのは、「分断を政治力学に利用」しているからというふうにおっしゃっているんですが、これはどういうことですか。

中山さん:分断そのものはトランプ時代に急に発生したものではなくて、90年代ぐらいからあると思うんですね。ただ、クリントン大統領も、それからジョージWブッシュ大統領もオバマ大統領も、自分こそが亀裂を乗り越えられるんだというメッセージを掲げて選挙に臨んで勝つわけです。しかし結果として、政権が発足したときよりも終わったときのほうが亀裂が大きくなるという状況が続いてきたと。ただ、分裂はいけないと、乗り越えなきゃいけないものだと提示し、オバマ大統領なんて、まさにそれが彼の中心的なメッセージだったわけですけれども、意図せず、反オバマ勢力だったティーパーティー運動みたいなものを生み出して亀裂が非常に深くなってしまったと。その亀裂そのものを利用する裂け目が発生した現象というのが、トランプ現象なんだと思います。トランプ大統領は、もはやそのものには関心を持たずに、とにかく亀裂を使って敵をつくり出して、それを自陣営を動員するためのツールとして使っていると。そういう意味では「分断を政治的に利用」しているということが言えると思います。

武田:今後、どう進んでいくのか。こちらをご覧ください。
全米各州で、共和・民主両党の候補者選びがこの後も続きます。夏には、候補者が正式に決定することになっています。その候補者どうしの一騎打ちとなる本選ですが、11月の3日に行われるということになっています。

中山さんは、選挙戦を通じて見えてきそうなキーワードとして「あるべきアメリカ像の分裂」というふうに掲げていらっしゃいますが、これはどういうことなんでしょうか。

中山さん:まず民主党のほうから見ていきたいと思います。民主党はちょっと前までは、今回の選挙は勝てると、強い自信を持っていたんですね。それは、2008年と2012年にオバマ連合というものをつくり出して、民主党はもともと雑多なグループが集まっている政党という性格があるんですが、それを1つにまとめあげて戦えば勝てると。ただ、今の民主党の現状を見ていますと、どうもまとまれないのではないか。オバマ連合というのは、オバマ固有の現象なのではないかと不安感を感じているところだろうと思います。この、「あるべきアメリカ像」ということに関して言いますと、アメリカは常に分裂や対立はあったんですけれども、それでも漠然と、あるべき姿についてのイメージというのは多分共有してたんだろうと思うんですよ。ただ、これは特にトランプ時代に入って加速しているということは言えると思うんですけれども、その保守派のほうは、もうアメリカは変わらなくていいんだというふうな居直りがかなりはっきりと見られると。ですから保守というよりかは、もしかすると「反動」という言葉が当てはまるのかもしれない。民主党のほうは、リベラル派は多様性と政党を依然として求め続けているのですが、自分たちが正しいことをやっているという独自性が非常に強く、逆に人々が何でトランプを支持しているのかという不安感みたいなものに、全く思いをはせることができないということから、いま求める「あるべきアメリカ像の姿」が全然違うものが2つ併存しているような状態で、今のアメリカというのは事実上、分断国家みたいな状況になっているのではないかと。そういう印象を私は強く持っています。

武田:選挙を通して、その分断は埋められるんでしょうか。

中山さん:いや、今回の選挙で分断の修復は難しいと思います。