クローズアップ現代 メニューへ移動 メインコンテンツへ移動
2020年1月22日(水)

あなたの仕事が変わる!
“超プレゼン術”の極意

あなたの仕事が変わる! “超プレゼン術”の極意

新年を迎え、新たな気持ちで仕事や学業に向き合うみなさんに、プレゼンの極意を伝授!経営トップが新商品発表の場面でステージに上がりプレゼンするのは、もはや当たり前。しかし、相手にものを伝えるのが苦手という人は、若手から管理職まで半数以上にのぼるというデータも。そうしたなか、現役世代に「プレゼン力」の技術と精神を伝え続けるのが、髙田明さん。テレビショッピングでは、商品の情報や価格を伝えるのではなく「視聴者の生活を豊かにするアイデア」を語ることで人気が爆発。いまは、プレゼンのノウハウを伝授してほしいと、各地の講演会に引っ張りだこだ。番組では髙田さんと武田真一キャスターが、自らが磨いてきた「伝える技術」を披露。すぐに実践できるプレゼン術の極意を伝える。

出演者

  • 髙田明さん (通販会社創業者)
  • 石井光太さん (作家)
  • 武田真一 (キャスター)

明日から使える!超プレゼン術

ゲスト 髙田明さん(通販会社創業者)

髙田さん:皆さん、伝えたつもりになっていませんか? 伝えたつもりは、伝わっていません。「伝えた」と「伝わった」は違うんです。伝わって初めて皆さんの思いが人に届いたと言えるという、非常にコミュニケーションで大事な伝える力について、きょうは語ってみたいと思います。

続いて、武田アナウンサー、お願いします!

武田:私のプレゼンの極意は、心の底から思っていることだけを口にする。アナウンサーと言いますと、その場で思いついたことをぱっと何でも話せるというふうに思っていらっしゃる方が多いと思うんですけれども、私は何度も何度も考えて、心の底からこうだと思ったこと以外は口に出してはいけないというふうに思ってるんです。心の底から思っていることであれば、少々言いよどんでも大丈夫。逆に、心の底から思っていないと視聴者の皆様の心の底まで届く言葉にはならないと思います。

武田:きょうは髙田明さんと、そして、おこがましくも私が皆さんの役に立つ、プレゼンの極意をお伝えするという番組を、解説委員も務める片岡ディレクターが企画しました。

片岡:まず、髙田さんのプレゼンの技術を私なりに盗んでまいりましたので、ご覧ください。

明日から使える!髙田明さんのプレゼンの極意

毎年200件以上の講演依頼が殺到するという髙田さん。「夢持ち続け日々精進」と題したこの日の講演を片岡ディレクターが密着取材し、プレゼンの極意に迫りました。

髙田 明さん
「いろんなことでビジネスも人生も、浮き沈みもありますけれども、自分が今、今を頑張って変える。今を変えれば明日が変わり、明日が変われば、絶対にあさってが変わるんです。あしたを変えずに、5年先、10年先の不安の中に生きちゃだめだっていうことを僕は言いたいんです。どうでしょうか、この話。今を生きるんです。今を生きるこれが一番です。」

片岡:髙田さんは、原稿を見ないで、さらに映像や画像も、一切使わずに、自分の心の中にある言葉だけを伝えようとされていますね。


次に注目したのは、髙田さんの体を使った表現です。

片岡:左手で少し小さなジェスチャーをとっているんですが、ジェスチャーをする位置が、基本的には上半身、頭に近いところでジェスチャーをされています。つまり、見ている人の注意を髙田さんの顔から外さないという効果があると思われます。


髙田さんの話術にも、こんな技を見つけました。

髙田 明さん
「皆さん本当に、今を生きるってことは」
「今を生きる。」
「今を生きる。」
「今を一生懸命生きて」
「だから、本当に今を生きるとか」

片岡:髙田さんは「今を生きる」というキーフレーズを何度もおっしゃってます。

本当に伝えたい言葉は、何度も繰り返す。この日「今を生きる」という言葉を、90分の講演で20回使いました。

さらに、髙田さんらしさを感じたのが、この極意です。

髙田 明さん
「まったく気持ちの持ち方で、どんな仕事でも、どんな役割でも、最高のものと思える瞬間が人間にはあるんじゃなかろうかって思いませんか、皆さん?」

片岡:髙田さんはやっぱり観客に呼びかけるんですね。思いませんか?というふうに。呼びかけられることで、話を聞いている方の参加感、一体感がぐんと高まってきます。

髙田 明さん
「女性の皆さん、どう思われますか?」

(拍手)

片岡:また呼びかけましたね。呼びかけて拍手がかえって来るという、このコミュニケーションのルールが、もう完全に今、成り立ちました。


片岡:なんか、偉そうに分析してしまったんですけど、呼びかける。あれって、髙田さんが冒頭にプレゼンされた「『伝えた』と『伝わった』は違う」という極意に基づき、「伝わりましたか?」っていうふうに聴衆に呼びかけているんですね。それに対して聴衆は、そこまで聞いた髙田さんのお話を頭の中で反すうして、確かに伝わりましたよと、拍手で返している。つまり、髙田さんは自分が話すときに、必ず聞いてる方に話が伝わったかどうかを確かめながらお話しされてるなっていうのを、すごく感じましたね。

髙田さん:そうですね。テクニックの前に、僕は伝えるってことで大事なのは人を感じる心。これは結局、伝える相手がいるわけですよね。テレビショッピングというのは全然見えない相手と、10万、20万の人と話をしてるわけですよね。それを感じる心っていうのは、そこにいる人と会話をしてるっていう気持ちを持つこと。

武田:ああ。

髙田さん:私は武田アナウンサーの「クローズアップ現代+」とか、いろんな番組を拝見していちばん思うのは、やっぱり、すごく人の話を聞きながら自分の言葉を発してるんですよ。そして、僕は手でジェスチャーしますよね。指がしゃべってて、体がしゃべってるんですけど、よく見てください。武田アナウンサーは目がしゃべってます。

武田:目ですか?ええ?時々石井さんが長くお話になってるときに、もうそろそろ時間ですよって目でやることはありますけれども…。ちょっと持論がありまして、アナウンサーというのは堅牢な水道管でなくてはならないというふうに思ってるんですね。ふだん、情報をなるべく、いわば真水のような状態で、視聴者の皆さんにそのまますっと、アナウンサーの存在なんか意識しないぐらいのレベルで届けるというのが理想的だと思ってるんですが、でも、時々やっぱり、振り向いて聞いてもらいたいっていうときがあるんです。そういうときに、髙田さんは身ぶり・手ぶり、あるいは相手の反応を確かめてというふうにおっしゃいましたが、私は太字ゴシック体の声を使う。

片岡:太字ゴシック体?

武田:太字ゴシック体の声を使う。例えばですね。「Uターンラッシュで大渋滞です」とお伝えしたとします。そうなんだと思うだけじゃないですか。そうじゃなくて、「Uターンラッシュで大渋滞です」というふうに、声を張るだけじゃなくて、難しいんですけど、太字のゴシック体で声をくっきりさせながら伝えると振り向いてくれるんじゃないかとかですね。ニュースの原稿を読みながら、いろんなそういう工夫したことがあるんですけれども、いかがですかね。

髙田さん:それは共通項がありますね。僕はものをプレゼンするときに、声を強く言ったり、強く言いっぱなしじゃだめなんですけど、弱くとか、高く言うだけじゃだめで、ちょっと落としてみる。「1万9800円」と言ったら、「安いでしょう?」って、この瞬間の高低の差によって自分のお値段を伝える。そして、間(ま)の取り方。間がいちばん大事というのは、人を感じる心がいちばん大事っていうところにつながるんですよね。間をちょっと置くだけで相手に問題を投げかけられるんです。例えばですね、カラオケがあります。「このカラオケ1800曲の曲が入ってるんですよ。いやいや、使うのは簡単です。赤白黄色の線をテレビにつなぐだけでいいんですよ。値段ですか?1万9800円!安いでしょう? 金利もこちらの負担です」という、この間の取り方で売り上げって5倍変わるんです。間を取った瞬間に、一瞬、コンマ1秒でも考える間を与えてるんですよ。

片岡:間のあいだに考えるんですね。「価格は」と言われた瞬間に、なんぼやろうと思って。

髙田さん:「1万9800円!(間) 安いでしょう?」ってこういった瞬間に、「ああ本当に髙田さんが言うとおり安いな」と。

ゲスト 石井光太さん(作家)

石井さん:伝わったというのは、僕は単なる情報伝達をするということではなくて、相手の心を揺さぶることによって、相手の何かを変えることだと思うんですね。例えば相手の心を揺さぶるというのは、何か文章を書いたときに、それによって、ドキドキしたり、わくわくしたり、ぞっとしたり。そうするとどうなるかっていうと、読んでる人っていうのはそれによって何かが変わるんですよ。この変わったところで初めて、その人に、読者にとってカタルシスが生まれる。このカタルシスこそが読者が求めているものであったり、あるいはこちらが伝えたものによって、何かが生まれる、変わっていくってことだと思うんですね。

片岡:なぜきょうプレゼンの話をやってるかというと、こんなデータがあるんです。これは経団連の調査なんですが、企業が新卒採用のときに何をいちばん重視するかというデータです。このいちばん上の赤い線。コミュニケーション能力なんです。16年連続で1位なんです。

片岡:これだけ重視されてるにもかかわらず、就職を控えた大学生のコミュニケーション能力を調べてみると、半数以上は、自分はコミュニケーションが苦手だという意識を持ってるんです。

片岡:実は何年か前に、ある大学生が髙田さんからプレゼンの指導を受けたことがあるんです。その若者を今回取材することができたんです。

髙田さん:ええっ!?

髙田明さんから学んだプレゼン術

大手IT企業に入社して2年目のエンジニア・杉井雄汰さん。以前、髙田さんからプレゼン指導を受けたことがあります。

この日杉井さんは、会社を代表して、合同企業説明会での学生に向けたプレゼンを任されていました。

杉井雄汰さん
「やっぱりその熱量を、いかに自分自身が持っているかというので、相手に伝わるかどうかが決まるというのが、一番髙田さんから教えていただいた中で、心に響いているので、そこは大切にしたいなと思います。」

杉井さんが、髙田さんからプレゼンの指導を受けたのは、4年前。大学生の頃です。

髙田 明さん
「伝えたい、買っていただくためにこんないい商品を使ってほしいという思いが強くなればなるだけ、人ってこう情熱が中にこもってきて、それを出していくんですよ、言葉として。どうしたら伝わるかなっていつも考えていたら自分の中のものを出せるようになってきます。」

髙田さんから出された課題は、地元の野菜の魅力を、5分でプレゼンするということ。

杉井雄汰さん
「今回皆様に紹介したいものは、その会津の伝統的な野菜のひとつである余巻きゅうりと呼ばれるものです。とにかく僕はこれを皆さんに食べてほしいです。」

伝えたいことがあふれる杉井さん。話をまとめきれません。杉井さん、持ち時間の5分を大幅に超えてしまいました。

髙田 明さん
「ま、とにかくですね、ちょっときついいい方をしたら、もうくどい。たくさんある情報の中に、10あったらね、時間がないときには、この中の3つだといったらここに絞っちゃうとかね。そういうやり方を少しプレゼンの仕方を考えたらね、ぐっと変わってくる。」

髙田 明さん
「いいよね、この涙がね。一生懸命やったからね。こういう人がうまくなっていく。」

あれから4年、果たして杉井さんのプレゼン力は?そして持ち時間の5分におさめることができるでしょうか。

杉井雄汰さん
「皆さんこんにちは。今日お伝えしたいこととして、就職先を選ぶ決め手というのは何でしょうか?自分自身はこれが決め手です。技術力、世界規模、そして自己実現ができるというこの3点がすごく重要だと思って私は就職をしました。まず技術力なんですけれども…」

4年前髙田さんに教えてもらったとおり、伝えたいポイントを3つに絞ってプレゼンしました。

杉井雄汰さん
「…なので皆さん自身、いま技術力は一般の人と比べてあると思います。その技術を使ってどう実現していくのか、どういう世界を作っていくのかという志を…」

入社後の仕事がどう社会貢献につながるのか。学生たちが知りたがるポイントを最後は熱をこめて語りました。気になる時間は・・・見事5分以内。

この日プレゼンした26社のうち、杉井さんの会社への入社に意欲を示す学生が一番多い結果となりました。

気をよくしている杉井さんに、いきなりですが、髙田さんへのプレゼンをお願いしました。時間は30秒です。

杉井雄汰さん
「髙田さん、本当にお世話になりました。髙田さんに最後に言われた一言をきっかけに、自分はいまも前に進めています。それは、『私が30歳になったころに、もう一度杉井君と会いたいな』ということをぼそっと耳元でささやいていただいた、あの瞬間から自分の人生というのは、ここで失敗をしたんだというんじゃなくて、新たなチャレンジを始める日だということを実感しました。髙田さんもずっとおっしゃってましたが、失敗なんてない、ずっとチャレンジし続けることで成功につながる、私はそれを信じて、これからも前に進んでいきます。ありがとうございました。」

少し時間をオーバーしましたが、髙田さん、いかがですか?


髙田さん:いやあ、成長してますね。これ、30歳どころか、来年でも会いたいですね。

片岡:実はですね、杉井さん、髙田さんから教えを受けたあと、それを自分のものにしたいということで、大学の単位を早々に取り終えて、家庭教師の営業のアルバイトを始めたんです。最初は全然営業成績が伸びずに、どうしたもんかということで、営業の先輩について回ったところ、相手の問題を聞いて、それならばこういう対応ができますよという相手の立場に立った営業をしてる。これは髙田さんから教えてもらったことだということに気づいて、4か月で、なんと、売り上げ4倍、社内で成績1位になったという話なんです。

髙田さん:へえー。これはいちばん大事な、伝え方の中に、ことで、自分の言い分だけを言ってもだめなんですね、営業でも何でもですね。お客さんが何に困っているかという、お客さんの目線に自分が近づけるか。人を感じるっていうのはそこだと思うんですよね。例えば、ボイスレコーダーってよく使われますでしょ?

片岡:はい、会議のときとか。

髙田さん:今、会議とおっしゃいましたね。だめなんです。会議だけじゃ。

片岡:だめですか?

髙田さん:それでは一般の方には買っていただけない。私が売り始める前、ボイスレコーダーは40万台から50万台が日本全国の年間の販売台数だったんですけど、私がやったとき、1年間で30~40万売れました。

片岡:髙田さんの会社だけで?

髙田さん:はい。どうしたかって言いましたら、伝え方を変えたんですよ。例えば、共働きの方が今多くて、子どもさんは学校から3時ぐらいに帰ってくる。お母さんは5時に帰ってくる。そうしたらボイスレコーダーの中に、「おやつが冷蔵庫に入ってるよ」と入れて、お母さんの声を聞かせるんです。そうしたら、子どもさんは安心してお母さんの声で2時間待っていられるとか。あるいは高齢化社会ですが、「夜中にあれをやらなきゃいけない」って思いだしたら、電気をつけてメモを取るよりも、横にちょっと置いてポンと押して音声で録音してくださいと。そうしたら忘れ物をしないで済むような。買い物に行くときでもちょっと、何と何と何を買ってということをボイスレコーダーの中に入れられますよと伝えることで、ボイスレコーダーの魅力っていうのが100倍ぐらいふくらみました。それで年間に30万台、40万台が売れてきたっていうことがありました。

片岡:髙田さんは、ある種のイノベーターなんだなっていうのを強く感じますね。イノベーションを起こす人ですね。イノベーションというのは技術革新とよく言われるんですが、そうではなくて新結合、新たなる関係性を見つけて市場を作るってことなんですが、まさにそれをされてきた。プレゼンの中にもそういう新しい発見のようなものがあるかないかで、「この人おもしろい話してるわ」っていうふうに、ひきつけられるかどうかっていうのが決まるということなんですかね。

髙田さん:本当におもしろいのは、イノベーションっていうのは、何も新しいことをやることだけじゃないんですよね。当たり前にやってることを、視点を変えて見ることによって、その商品が新しいものに変わってくるっていう世界がいっぱいあるような気がするんですね。でも、それを決めつけてるのは自分たち自身なんですね。それを変える発想を自分の中に持つ力をつけていかなきゃいけないっていうことかもしれませんね。

武田:今、新しい使い道だとか、その商品の本当の魅力っていうのを、みずから考え抜くという作業が大事なんだっていうのがすごく勉強になりましたけれども、杉井さんは自分の会社の魅力を3つのポイントに絞ってプレゼンされてましたよね。すごく成長しているところだと思うんですけれども、私はそこが難しいといつも感じてるんです。例えばニュースの原稿を読んだりします。それは自分が書いたものでも、取材したものでもないことが多いんですけれども、そういうときでも、このニュースの中で何がいちばん大事なの? とか、現場で何を感じたの? とかいうことっていうのは記者やディレクターと話すんですよね。それで、その現場で感じた熱量っていうのを最終的に受け継いでそれを自分なりにそしゃくして、自分の腹に落として、自分で考えて表現する。そうすると、私は言葉や伝わり方が全然変わるんじゃないかと思うんですけれども。

石井さん:僕は本当にお二人の話をお聞きして、やっぱりプレゼンに必要なのっていうのは信念と確信なのかなという風に思ったんですね。それがない人っていうのはどうするかっていうと人からもらった情報を自信がないんだけど一生懸命きれいに並べようとする、方法論で。だけど、二人の話をお聞きして思ったのが、自分でそれを発見して、そして、信念を持って人に伝える。結局、プレゼンの答えってどこにあるかというと、人からもらうわけではなくて、自分の中にあるんですよね、きっと。自分の中にあるものをきちんと見つけ出して、拾って、そして、信念を持ってそれを伝える。それが最高のプレゼンなのかなっていうふうに思いました。

武田:さまざまな商品をプレゼンしてきた髙田さん。通販会社の社長をお辞めになったあと、思わぬ商品のプレゼンにチャレンジすることになりました。その商品とは、地元長崎のサッカーチームです。

どん底のチームが再生!超プレゼン術

JリーグのV・ファーレン長崎。髙田さんが社長を務めてきたクラブです。かつて存続すら危ぶまれたチーム。それが去年の暮れ日本一を決める天皇杯の準決勝を戦っていました。

試合は3対2で惜しくも敗退。この試合を最後に髙田さんは社長を退任しました。

髙田 明さん
「どうもありがとう。ありがとうね、どうも。よく頑張りましたね。これはね、来期につながりますから、ね。落ち込まないでくださいよ。今日はね、勝ってもおかしくない試合をやりました。本当すばらしい。」

サポーター
「タカタ、長崎!」
「社長、ありがとう! 夢があったよ!」

3年前、V・ファーレン長崎は、選手に給料を払えないほどの経営難に陥っていました。選手たちの士気も上がらず、スタジアムに閑古鳥が鳴いていたその時、髙田さんが社長に就任。クラブの再建に乗り出したのです。

髙田さんがまず行ったのが「県民へのプレゼン」。得意のテレビで呼びかけました。

髙田 明さん
「皆さんの力を借りてですね、長崎の県民クラブとして絶対に長崎の地方創生に貢献できるチームになりますので、ぜひ応援お願いしたいと思います。」

さらに髙田さんは、選手をつれて積極的に町に出かけ、チームへの応援をお願いしました。

お客さん
「めずらしいですね。うれしい。いやー、もうテンション上がります。」
「私も(募金を)もう1回。」

髙田さんが社長に就任して半年後。スタンドはサポーターで埋め尽くされています。子どもから高齢者まで幅広い世代に支えられるクラブになっていました。経営も安定し、この年、J1への昇格も決めました。

どん底からのチームの再生。そこにどんなプレゼンの極意が発揮されたのでしょうか。


武田:かなりチームが低迷していて、借金もあって。雰囲気はどうだったんですか、そのときは?

髙田さん:いやあ、やっぱり暗かったですね。累計で3億円以上の赤字だったんですよ。サッカーチームで赤字3億円以上で、地方のクラブというのは本当に再建できないような状態なんですね。

武田:例えば、選手にはどんなことをおっしゃったんですか?

髙田さん:選手はとにかく、給料入るだろうか?と。倒産寸前ですから。だから選手たちには、「経営の立て直しは私が責任を持ちたい。だから練習と試合に集中してほしい」という、その言葉だけですね。そうしたら、安心してそこに集中しだしたら、本来持ってる力があるんですよ。それがぐーっと出てきた。やっぱり、気持ちを変えるっていうことは不可能を可能にできるんだという。そのためには、伝える力もすごく必要だなっていうことを感じましたね。だから、語り続けました。長崎っていうのは広島と同じ被爆県です。そして潜伏キリシタンとか迫害を受けてきた県で地方ですから、長崎っていうチームは本当に平和を語れるチームじゃないかということをみんなと話して、それを伝え続けました。

片岡:しかし、髙田さん、大きな理念を伝えるとか共有するというのは、そんなに簡単じゃないと思うんですが。

髙田さん:サッカーとかスポーツは、やっぱりすごいんですよ。今、世の中って、戦争は全然終わらないし、いろんなことが世界中で起こってて、でも、それを変えていくのは、政治の力よりもスポーツの力のほうがもっと大きいんじゃないかということを発信したかったんですね。それぐらいの思いが選手たちに伝播(でんぱ)したのかなっていう思いはありますね。だから、夏以降13戦負けなしという状態が続きまして、自動昇格を果たすことができたという。

武田:私たちもこういった番組をお伝えしながら、今起きている出来事の深い背景であったり、真相ですね。そういったものをなるべく多くの方に知ってもらいたい。そのことによって、この社会を少しでもよくしたい。よくできるんじゃないかと思ってお伝えしているんですけれども、そういった大きな、この番組、この仕事を何のためにやってるのかっていう大きなことを考えながら、それを1つ1つの表現や言葉にしていくってことは、すごく大事じゃないかなっていうふうに思ってます。でも、難しいですよね。

髙田さん:戦争も至るところで起こってて、全然終わりません。環境問題にしても非常に大きな問題を抱えてる。経済の問題でも、米中の問題とかいろんな問題を抱えてて、世の中ってこれでいいんだろうかって。それは、すべてコミュニケーションの問題で、伝えるっていうことが伝わってないんじゃないかと。私は、伝えたつもりで、国と国の問題でも、伝わったということが起きてないんじゃないかと思うんですよね。だから、常に伝わったという世界を世界中で作りだしていけば、すべての問題は解決するという。だから、きょうのテーマの伝えるっていうことはものすごく大事で、世界的な規模で人類にとって大切なことを、きょうは提唱した「クローズアップ現代+」ではないかと思います。

武田:世界平和のために、皆さんプレゼンを頑張りましょう。

片岡:なんかサラリーマンのプレゼン講座から、最後にここまできましたね。

関連キーワード