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2019年6月25日(火)

「夫婦の会話」を科学する ~不満解消の秘訣は!?~

「夫婦の会話」を科学する ~不満解消の秘訣は!?~

「もっと相手と話をしたい」「どんなことを話せばいいのか」…番組で夫婦の会話についての悩みを募集したところ、数多く寄せられた切実な声。どうすれば、悩みを解決できるのか?脳科学、言語学、AIなどの知見を生かして6組の夫婦の会話を徹底分析した。そこから見えてきたのは3つのポイント。「話題」や「話し方」、「仕草」を変えることで、会話の満足度が向上し、夫婦の絆も深まるというものだった。

出演者

  • 金田一秀穂さん (杏林大学特任教授 日本語学)
  • 野末武義さん (明治学院大学教授 家族心理学)
  • 伊藤勇二さん・理加さん、木村寛さん・未来さん (実験に協力した夫婦)
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

夫婦の絆を強くする“意外な会話”

夫婦の会話に不満があるという人は、4割以上。
今回、番組で実施したアンケートでは、結婚10年から20年で夫婦の会話の満足度が最も低くなることが分かりました。

まず、どんな話題が夫婦の絆(きずな)を強めるのか。夫婦の会話をもっとよくしたい。そう考える6組の夫婦が、会話の解析に協力してくれました。30~50代、結婚5年から21年の夫婦です。

6組の夫婦には、東北大学が関わるベンチャー企業が開発した「脳センサー」をつけてもらいました。計測するのは背内側前頭前野の血流量。他人とコミュニケーションをとる時に活発に働くとされ、「心の脳」とも呼ばれる部分です。最新の研究で、お互いの気持ちを思いやるなど、共感が生まれた時に、脳活動の波形が同じタイミングで上がったり下がったりすることが分かってきました。

脳センサーの開発に携わった、東北大学の川島隆太教授です。波形が相関関係を示している時、夫婦の脳が共鳴し、絆が強まっているのではないかと考えています。

東北大学 加齢医学研究所 川島隆太教授
「心と心がつながっているときには、この心の脳、お互いの脳の活動が同じように上がったり下がったりする。」

では、どんな会話で夫婦の脳は共鳴し、絆は強まるのでしょうか。
6組の夫婦に、「きのう何をしていたか」「愚痴(ぐち)」「相手に直してほしいこと」など、5つの項目について5分間ずつ会話してもらいます。

結婚して11年の木村さん夫婦です。3人の子育て中の木村さん夫婦。

木村未来さん
「あれ?コップ出した?」

木村寛さん
「出した、子どものだけね。」

未来さん
「分かった。」

互いに忙しく、ふだんの夫婦の会話は1日10分程度だといいます。

寛さん
「言わなくても分かるだろうと、ついつい言葉足らずになったりして、お互いにすれ違いがあって、急にドカンとけんかになってしまうことがあるので。」

木村さん夫婦に、「愚痴」について話をしてもらいました。

未来さん
「強いていうなら、歩夢くん(長男)だよね。口が悪い。」

寛さん
「口が悪い。」

未来さん
「でも、たまに甘えてくるの超かわいいんだけど。」

寛さん
「ギャップ。」

愚痴に関する会話をしていた時の、2人の脳の波形です。赤い部分は、互いの意見に共感し、波形が同じタイミングで上下し脳が共鳴している状態です。全体的に赤は少なく、愚痴に関する会話では2人の絆はそれほど強まらなかったようです。

ところが、「相手に直してほしいこと」をテーマに会話してもらうと…。

寛さん
「瞬間湯沸かし器なところが、ちょっとね…。」

未来さん
「でもすぐに、ひゅーってなるじゃん。」

寛さん
「そこに俺たちがついていけないんだよ。いまどっちなんだろうって。急に怒ったり、急に優しくなったり。」

脳の波形が一致する赤い部分があちこちに出てきます。愚痴に関する会話に比べ、赤い部分は1.7倍以上になっていました。

こちらは、結婚して13年の伊藤さん夫婦です。2人暮らしの伊藤さん夫婦。周囲からはいつも仲がいいねと言われますが、ふだんの会話はやはり1日10分程度だといいます。

伊藤理加さん
「この人は家に帰ってきて、すごくくつろいで、それはそれで楽しんでいるんでしょうけど、私としては楽しくないわけで。なんかしゃべることないの?って。」

伊藤さんの、きのう何をしていたかをテーマにした会話です。

伊藤理加さん
「散歩し終わったあとに、普通にごはん食べて。」

伊藤勇二さん
「普通にね、はいはい。」

理加さん
「あなたはほら、飲みに行くって言ってたから。でも週末食べるごはんの仕込みもあるし。」

勇二さん
「いろいろやっててくれたわけね。さすが。」

脳活動の波形には赤い部分があまり見られません。

しかし、テーマが「相手に直してほしいこと」に変わると…。

勇二さん
「ふたを閉めろ、ぐらい。」

理加さん
「でも最近なくない?」

勇二さん
「いやいやいや。頻繁に使うから面倒くさいのかもしれないけど。手に塗るクリームのふたとかね。」

理加さん
「あれはそうだね。あれね、形状の問題があるんだよね。」

勇二さん
「俺が日頃言っている言い訳に等しいものがあるぞ。」

波形が一致する赤い部分が頻繁に見られます。夫婦ともに、会話の内容に注意をはらい、脳が共鳴している状態です。

脳センサーを開発 NeU 長谷川清社長
「非常に似ていますよね。起こっているパターンが似通っている。素直に聞いていると思います。」

6組の夫婦すべてで、「相手に直してほしいこと」について話している時、脳が共鳴する傾向にあることが分かりました。

東北大学 加齢医学研究所 川島隆太教授
「多少ぎくしゃくするかもしれない話題でも、きちんと話をすることが、コミュニケーションをよりよくしていくための大きな一歩になる。」

夫婦げんかは長生きのもと!? 意外なデータ

夫婦の会話に関する研究が盛んなアメリカ。夫婦げんかと死亡リスクの関係について、興味深い研究が発表されています。192組の夫婦のけんかについて、「両方が怒りをあらわにする」「夫だけが怒る」「妻だけが怒る」「両方が我慢する」の4つのグループに分類。17年間にわたって追跡調査しました。その結果、どちらも怒りを我慢した夫婦は、早く死亡する割合が2倍高いことが分かったのです。

今回の解析でも、意外なことが分かりました。夫婦の会話を、声色を4つの感情に分類するAI=人工知能を使って解析。すると、通常の会話で声に喜びが含まれる割合に比べ、相手に直してほしいことの会話では大きく上回っている夫婦が多かったのです。

「けんかするほど仲がいい」を裏付けるようなデータが見えてきました。一体なぜなのでしょうか。

“直してほしいこと”がなぜ絆を強める?

ゲスト金田一秀穂さん(杏林大学 特任教授)
ゲスト野末武義さん(明治学院大学 教授)

武田:こちらは、今回の実験で、どんなテーマで夫婦の脳の働きが同じ動きをしたか、つまりシンクロしたのかということのランキングです。1位が、お伝えしたとおりお互いに「直してほしいこと」でした。

言葉の専門家の金田一さん、「直してほしいこと」、これはうちだと多分口論になってしまうんですけれども…。これが一番シンクロしたというのは意外ですね、

金田一さん:要するに、頭がいっぱい働くということだと思うんですよね。それがシンクロするか、働かないか。お互いに興味があること、直してほしいことっていうのは、お互いに考えなくちゃいけないから、一生懸命、お互いに同時に考えてするんでしょうね。

武田:一方、夫婦のカウンセリングを30年近くされてきた野末さんは、この結果をどうご覧になりますか?

野末さん:何か話したことによって分かってもらえたとか、自分が分かったという感覚が持てるかどうかというのは、とても大事だと思うんですね。あなたはこんな気持ちだったんだとか、私の気持ちがこんなふうに伝わったということがあると、多分、心の結び付きはとても強まるんだと思います。

本当はみんな“深い話”をしたい!?

栗原:こういうデータもあります。私たちはおよそ600人の既婚者を対象にアンケート調査を実施したんですが、よく話していることと、本当は話したいことの間にギャップがあるということが分かってきたんです。
こういうデータがあります。例えば、食べもののことについてはよく話しているんだけれども、そんなに話したいと思っていない。一方で、将来のことについてはなかなか話せていないんだけれども、もっと話したいと思っている。

野末さん:“大事なこと”だから話しにくいんだと思います。例えば「こういうふうにしたいんだけど」と言っても、「いや違うじゃない」っていう答えが返ってきちゃうかもしれないので、そうすると言ったこちらも傷つくし、せっかく話題に出しても余計に溝を感じてしまう危険性もあるので、そういう意味で言うと、大事な話ってやっぱりリスクを伴うんだと思います。

栗原:皆さん、いかがですか?

木村寛さん:そうですね…であれば、そういうちょっと言いづらいことでも、どんどん話していかなきゃいけないのかなと。

伊藤勇二さん:私としては、今年54歳になりまして、どちらかというと老後の方が今後開けてくる話になりますから、当然話をしなければいけない内容ではあるんですけれども。どのタイミングでそういう話をしようかなっていうのが、なかなか見いだせないようなところでしょうかね。

理加さん:そういう深い話って、片手間にする話ではないと思うので…。

勇二さん:余計改まってやろうとすると…。

理加さん:いつその時間をとるんだろうって。多分それはお互いに思ってるんだと思うんですけど。

野末さん:夫婦ってそもそも他人なので。こういう言い方はちょっと冷たく聞こえるかもしれませんけども、でも、お互いにいろいろと違う環境で育ってきた2人が一緒になるので、そこでいろんな考え方や価値観が違うのは当然だっていう、そこからスタートしないとなかなか話し合いにはならないという感じはします。

女と男で異なる情報伝達の仕組み

女性と男性では、脳の働き方が異なるという研究があります。
脳科学者のルーベン・ガー博士です。1万人の男女の脳の働きについて研究してきた、ガー博士。女性の男性では、脳内の情報伝達の仕組みに違いがあることを論文にまとめています。

人間の脳は、左脳が言語や文字を認識し、右脳は表情などを視覚的に捉える役割を担っています。会話をする際、男性は主に左脳の前後を連結させ、情報伝達物質をやり取りします。一方、女性は右脳と左脳を連結させ、情報伝達物質をやり取りします。

そのため、相手の表情などを見ながら、気持ちや感情まで理解しようと試みていると、ガー博士は見ています。

ペンシルベニア大学(脳科学) ルーベン・ガー博士
「相手は決して悪い人ではないことを理解しなければなりません。単なる性別による思考回路の違いです。」

今回、AIを使って夫婦の会話を解析したところ、夫と妻の間で満足する会話の傾向に違いがあることが分かってきました。解析に使ったのは、1万2,000を超える人の会話をもとに開発されたAIです。解析の指標となるポイントは5つ。「話題の豊富さ」や数字などの「データ」「意見を主張する理由」「具体的な説明」と「そのほか」。どのポイントがどれだけ表れたかを数値化することで、会話の内容を見える化しています。ちなみに、カリスマ経営者スティーブ・ジョブズのスピーチを解析すると、「主張の理由」が突出していることが分かりました。

ビジネスの現場では、この「主張の理由」に注目して利益につなげる試みが始まっています。
この企業では、業績トップクラスと下位の社員の営業トークを解析。「主張の理由」が多い社員の方が営業成績がいいことが分かりました。そこで、商談では「主張の理由」を強調するよう指導したところ、成功率が20%近く上昇したといいます。

フォーバル 執行役員 山脇拓也さん
「明確なデータが出ると、そういうふうに変えていくのが正解だと信じてできる。改善のスピードが上がると思う。」

“ジョブズ型会話”は妻に嫌われる!?

今回、AIを使って夫婦の会話を解析すると、妻はジョブズ型の会話を嫌う傾向が浮かび上がってきました。
夫との会話に不満を感じるという山田さん(仮名)夫婦が、「愚痴」をテーマにしたやり取りです。


「ありますか?愚痴。」


「あんまり…ないな。愚痴を言ったらキリがないときがある。おもしろくないこととか結構ある。それを自分の感情に残しておくよりは、もう次のこと考えてっていう。」

「言ってもキリがない」などと、夫は「主張の理由」を繰り返しました。
こちらは、妻が不満を感じなかった木村さん夫婦の会話です。

木村寛さん
「愚痴…。」

未来さん
「愚痴…。電車とか?」

寛さん
「電車くらいだね。今週はまだいいけど。」

未来さん
「学校、始まっていないもんね。」

寛さん
「来週学校が始まると、また(人が)多くなる。」

電車の混雑が苦痛だと言うものの、その理由は細かく話していません。

2組の夫婦の会話を、AIで解析したネットワーク図で見てみます。それぞれの丸は話題を示しています。「主張の理由」に色をつけると、妻が会話に不満を感じていなかった木村さん夫婦は全体の25%。ところが、不満を感じている山田さん夫婦は35%と、10ポイント多くなっていたのです。

さらに、先ほどの「愚痴」の会話で比べてみると、山田さんは半分が「主張の理由」になっていました。

AI会話解析技術を開発 コグニティ 河野理愛社長
「根拠(理由)なんて言わないでと、そんな話聞きたくないわと。」

栗原
「根拠(理由)いらないんですか?それがあっての説明だったりすると思うんですけど。」

武田:今回実験した6組の中で、妻の会話に対する満足度が低かった夫婦と、高かった夫婦のデータでは、満足度が低かった夫婦の「主張の理由」の割合が、ジョブズ氏と同じように多かったんです。一方、満足度が高い夫婦は少なかったんです。

金田一さん:それは当然だろうと思いますね。ビジネスの世界というのは、いわゆる「交換」の原理といいますか、損得で動いているわけです。だから得するか損するか、そういうことだけで問題になるし、それがはっきり分かればいいわけですよね。でも、夫婦っていうのは損得じゃないんですよね。むしろ「贈与」といいますか、与えること、そして与えられること。それは別に何か見返りを求めて優しくするわけでもないし…。

武田:そうですか?一斉に奥様方が…(笑)。

金田一さん:でも一応、そういう世界で、人類は20万年ずっと続けてきてるわけですから、全く違うものでなければいけないだろうと。

野末さん:「主張の理由」というのが妻にとって満足度が低いっていうのは、基本的にそれって、どちらかというと一方通行の話が多いんだと思うんですね。そうすると、いろいろな主張を言ってるんだけれども、逆に言うと相手の話を聞かないっていうことにもつながりかねないので、それが恐らく妻の満足度を下げているんじゃないか。それから主張してる時っていうのは、あまり相手の感情を気にしていたりしないっていうこともあるので、どれだけちゃんと感情を含めた会話をちゃんとできるかというのが大事かなと…。

武田:伊藤さん、奥さんはいかがですか?理由をくどくど言われると駄目ですか?

伊藤理加さん:本当にジョブズ系そのもので、それに対して割と、くどくど理由を述べているので、そんな話はいいんだと、なぜそうなったのかひと言でいいんだそれは、みたいな感じで、それがずっと続くと私がちょっと殺意を覚える時が。イラッと。

勇二さん:思い当たる節がありまして、何か気に障ることをしでかした時に、主張というか言い訳めいたことをついつい言ってしまうんですけれども、それが長ければ長いほど、より気に障ってしまうというか、素直にごめんなさいというぐらいで終わってたものが、余計なことを言ってしまったばかりに…。

理加さん:それに倍返しで。

勇二さん:火に油となってしまうケースがあったかなというふうに感じますね。

離婚する夫婦の会話 特徴的な4つの要素

年間の離婚件数がおよそ80万件のアメリカ。

夫婦問題カウンセラー ドナルド・コールさん
「“侮辱”は非常に危険な感情です。いつも顔の片側に表れます。」

夫婦問題専門のカウンセラー、ドナルド・コールさん。離婚する夫婦の会話には、4つの要素が繰り返し表れるといいます。相手に対する「非難」や「侮辱」、「自己弁護の言動」、そして会話に向き合おうとしない「逃避」です。

コールさんが指摘する「非難」は、こういう会話。


「『何食べたい?』『何とか、ちょっとね』て私が言うと、『じゃあ(それで)いいよ』て言う感じなのはどうなの?代替案すごく出さないよね。」

「自己弁護」は、この場面です。


「例えば『何食べたい?』て言われて、『じゃ仮に中華』って言ったら『嫌だ』って話が出てきて、なんでそこで代替案を私が出さなきゃいけないのかなと。」

夫婦の危機につながる4つの要素。心理学者のジョン・ゴットマン博士が、20年にわたり3,000組以上の夫婦の会話を集め、分析した結果に基づく理論です。

ドナルド・コールさん
「うまくいっていない夫婦は『あなたのせいでいつも遅れる』『なんで君はそうなんだ?』など、ネガティブな会話をしがちです。そうした夫婦が離婚などに至るかどうか、96%の確率で予測できます。」

表情 相づち…大切なのは言葉だけではない

今回、表情や相づちのタイミングなど、会話以外のポイントも見えてきました。
用意したのは、25枚のせりふのないカード。10分間でこの中から4枚を選び、せりふを書き込み、4コママンガのストーリーを作ってもらいます。

分析したのは、会話分析のスペシャリスト、八木橋宏勇さんです。

杏林大学(言語学) 八木橋宏勇准教授
「言葉を使ってやりとりをしないと成立しないタスク(課題)をお願いした。その中でどういうふうなコミュニケーションが展開されるか、それが見たかった。」

木村さん夫婦の関係はどうでしょうか?

木村寛さん
「書いてもらって。」

未来さん
「字、下手だからでしょ?」

寛さん
「そう。」

未来さん
「やっぱー、ひとりの時間はー。」

寛さん
「ギャルじゃん。大事だよね。」

未来さん
「ねえ。大事だよね。」

八木橋宏勇准教授
「こういう(何気ない)のが、すごく会話の潤滑油になるんですよね。お互いボケとツッコミじゃないですけれども、リズムが出てくる。木村さん夫婦、リズムがすごくいいですね。」

続いて、伊藤さん夫婦。

伊藤理加さん
「分かりやすいのは、80年代でディスコで、記念日にはディナーをして、みたいな感じで。これ、ここで踊っているのがあるから、そういうのとか。」

勇二さん
「料理とかも。」

八木橋宏勇准教授
「このあと、同じタイミングで左側を向きます。目線一緒ですね、動かし方。ほおづえも一緒。」

八木橋さんが注目するのは、「相づち」「語尾の重なり」「雑談」「アイコンタクト」「体の動きや姿勢」の5つです。

八木橋宏勇准教授
「ほんとに、たあいもないことは大事なんですよね。おもしろいと思ったり、すごいと思ったり、伝えたいと思って言ってくれているわけですから、それに対して共感を示すとか、きちんと対応する、反応するっていう。」

武田:すごいシンクロでしたね。

伊藤勇二さん:私もどちらかというと言葉は多い方じゃないとは思うんですけれども、それだけに、何となく向き合うような…無意識のうちにやってるのかななんていうふうに感じましたけれども。

武田:奥様としては、それはうれしいでしょうか?ああいうふうに客観的に見ると。

理加さん:そうですね。一緒にいた時間がそういうふうになっていったんだなと思うと、ちょっとうれしいっていうか、クスッていう感じで面白いなって思いました。

金田一さん:お互いに「ねっ」ってやった途端に、2人が一致する。そういう会話のしかたっていうのが、日本語の会話のとても特徴的な部分。アイコンタクトであるとか体の動きであるとか。でも、そういうのでお互いに出てしまうわけですよ。50年ぐらい一緒になった夫婦が「あ~」とか言うと「はあ」とか言ったりして、それで、わあっと全部通じちゃうようなね。あれが理想的な夫婦の会話。

武田:心理学がご専門の野末さんが、夫婦の会話のNGワードとして挙げてらっしゃる言葉がこちらです。「なんで?」「あなたいつもそうじゃない!」ということなんですけれども、これは?

野末さん:「なんで?」というのも、言い方によってだいぶ伝わり方が違うので、「なんで」が絶対駄目だっていうことでもないんですけれども、「なんで」って言いたい時って、大体相手を責めたい時が多いんですよ。言われている方は「そんなにいつもじゃない」って大体言い訳をしたくなるんですね。「この前は違った」とかですね。「いつも」っていうのは決めつけになるので、そうすると余計にまた心を閉ざすか、「いや違うじゃないか」って言いたくなるっていう。

何から始まる?夫婦円満のカギは…

武田:今日は本当にいろんな議論をしてきましたけれども、一体何から始めたらいいのでしょうか?

野末さん:どうしても自分だけ抑えてしまったり、あるいは自分の言いたいことだけ言って相手を抑えちゃったりっていうことがあって、そうではなくて、できればお互いをちゃんと大切にし合うっていうことを目指したいですね。

武田:難しいけれども、お互いに大切にし合うっていうことは、やっぱり夫婦が本当にうまくいく最大の秘訣ですよね。

木村寛さん:相手の人格を否定せずに、自分の主張も言いながら、お互い、いい関係で会話していきたいなと思います。

未来さん:私もそうですね。先ほどから聞いていて、子育てにもつながるなって思って、人格は否定しちゃいけなくて、その行為を叱るというところを気を付けて、自分の主張ばかり押しつけないように気を付けたいと思いました。

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