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2019年5月16日(木)

“魂の殺人” 性暴力・無罪判決の波紋

“魂の殺人” 性暴力・無罪判決の波紋

今年3月、名古屋地裁岡崎支部が出した判決に波紋が広がっている。19歳だった娘への性的暴行の罪に問われた父親に無罪が言い渡されたのだ。背景にあるのが、刑法で定められた犯罪の要件。2年前の法改正の前に議論されたが要件は改正されず、性犯罪被害の当事者などからは、「実態とあっていない」という批判があがっていた。番組では、法改正について議論した法律家などメンバー12人に緊急アンケートを実施。今回の判決をどう受け止めているのか聞くとともに、「魂の殺人」と言われる性暴力被害者の声を伝える。

出演者

  • 山本潤さん (実父からの性暴力被害者、一般社団法人Spring代表理事)
  • 宮田桂子さん (弁護士・「性犯罪の罰則に関する検討会」委員)
  • 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)

同意していないのになぜ?焦点となったのは…

番組の中で、性被害に遭われた方が気分が悪くなるような場面があるかもしれません。あらかじめお伝えします。

性暴力に反対するデモ
「私たちは黙りません。黙りません。」
「これは本当に許しがたいことです。」

今、性暴力に対する怒りの声が各地に広がっています。きっかけは、今年3月に出されたある判決でした。実の娘に性的暴行をした罪に問われた父親に対する裁判。娘が性交に同意していなかったとしながらも、無罪を言い渡したのです。

合原:望まない性行為を強いられていたにもかかわらず無罪となった今回の判決。根拠となったのが、刑法が定める「抗拒不能(こうきょふのう)」という要件でした。

「被害者が抵抗できない心理状態」を意味する「抗拒不能」。判決では、「必ずしも抵抗できない状態だったとは認められない」と判断したのです。日本の刑法では、今回のような性暴力が有罪になる要件として、「同意がないこと」、そして「抗拒不能」の2つが必要とされています。海外では、同意がないだけで罪に問える国もある中で、なぜ、日本は「抗拒不能」を要件としているのか?NHKは、かつて撤廃の議論を行ったメンバーにアンケートを実施。判決をどのように受け止めるのか、性暴力に司法はどう向き合うべきか、尋ねました。

武田:今日は「抗拒不能」の要件は必要だという弁護士の宮田桂子さん。そして、父親から性暴力を受けた経験があり、要件の撤廃を求める山本潤さんと共に考えます。

同意していないのになぜ? “抗拒不能”めぐり…

名古屋地裁 岡崎支部で開かれた裁判。父親が、平成29年の8月と9月、当時19歳だった娘に、自分の勤め先やホテルで性的暴行をした罪に問われました。父親の弁護士は、「娘は同意していて抵抗できない状態ではなかった」と主張。

一方、検察は、「父親の立場を利用して、娘が抵抗できないことにつけ込み、行為に及んだ」と主張しました。

裁判では、今回の事件に至るまで、娘が父親に支配されていく過程が明らかになりました。殴る蹴るの暴行は、小学生のころから始まり、中学2年からは、性交を強いられるようになりました。「やめて」と言ったり、服を脱がされないように押さえたりしましたが、望まぬ性交は頻繁に繰り返されました。高校卒業後は、学費や生活費を返すよう父親に求められたことで、経済的な負い目を感じるようになり、さらに追い詰められていきました。

合原:今回の裁判を担当した、鵜飼祐充裁判長。判決の中で、娘が同意していなかったことは認定しました。しかし、刑法の要件をもとに、娘が抵抗できない状態だったかどうかについて、厳格に判断したのです。

裁判長の判断は、どのようなものだったのか。

裁判の判断理由
「事件の前に、大きなあざができるほどの暴行はあったものの、性交を受け入れざるをえないほどの恐怖を感じさせるものではなかった。」

さらに…。

裁判の判断理由
「弟や友人に被害について相談したり、一人暮らしを検討していたことなどから考えると、父親に逆らうことがまったくできない心理状態だったとは言えない。したがって、父親の強い支配による従属関係にあったとは言いがたく、心理的に著しく抵抗できない状態だったとは認められない。」

こうして無罪を言い渡したのです。

“実態わかっていない” 現場からの叫び

今、無罪判決に対する波紋が広がっています。名古屋市内の病院にある性暴力被害者のための支援センターです。

電話:「出血するようなことがあって、ということですね。」

専門の看護師やソーシャルワーカー、医師、支援員たちが24時間、相談に対応しています。

相談に来た女性
「怖くて、次の日、全然動けなくなっちゃって。」

この日行われた会議では、無罪判決に対して、疑問の声が相次ぎました。

性暴力救援センター 日赤なごや なごみ 片岡笑美子センター長
「これ(判決)を聞いて『父親は子どもに性的なことをしていいのか?』って、逆に認めている感じが受け取られた。」

「いまの(社会)背景をおさえた上での判決とは全く感じられなかった。」

「同じことが繰り返されるような気がして、不安な部分がある。」

実は性暴力は、上下関係につけこまれて起きるケースが少なくないといいます。このセンターが過去3年間に対応した253件のケースです。父親や祖父などの親族。職場の上司や学校の教師など、上下関係にある人からの被害はおよそ3割に上っています。

20代の女性のケースです。就職活動中に被害に遭いました。加害者は、内定している企業の60代の経営者。ほかの社員もいた食事会の後、部屋に連れ込まれ、突然「服を脱げ」と怒鳴られました。女性は恐怖のあまり、言われるがまま、性交を強いられました。

合原:上下関係があると、なかなか抵抗しづらい。

性暴力救援センター 日赤なごや なごみ 片岡笑美子センター長
「力関係があるから(嫌だと)言うことで、仕事を辞めなければいけないのではないか、そのあとの人間関係が悪くなったらどうしようとか、そういうことをすごく皆さん感じる。」

このセンターでは、無罪判決が出たことで、声を上げても無駄だと感じ、諦めてしまう被害者が増えることを懸念しています。

性暴力救援センター 日赤なごや なごみ 片岡笑美子センター長
「『じゃあ、どういうものが有罪になるの?』というのが本当の気持ち。長期的な被害を受けたにもかかわらず、それが無罪になる。(相談する方も)『無罪?もう相談できない』と受けとめられると困る。」

1つの無罪判決が呼んだ、大きな波紋。「抗拒不能」の要件、あなたはどう考えますか?

なぜ無罪に?判断の分かれ目 “抵抗”とは

ゲスト 山本潤さん(実父からの性暴力被害者、一般社団法人Spring代表理事)
ゲスト 宮田桂子さん(弁護士・「性犯罪の罰則に関する検討会」元委員)

武田:性暴力被害の当事者として、山本さんは、今回の判決をどういうふうに受け止めていらっしゃいますか?

山本さん:12歳から性的な被害を受けながら、そして、父が娘に同意のない性交をしたということが裁判で認められながら無罪になったことは、本当にありえないことだと思っています。このようなことは、社会が決して許してはいけないことではないでしょうか。

武田:VTRの中で、「ほかの被害者の方が相談に行けなくなるんじゃないか」「声を上げられなくなるんじゃないか」という声もありました。この判決の影響は大きいと考えますか?

山本さん:私のようなケースでは言ってはいけないのではないか、すごく冷たく扱われてしまうのではないか、そのように思う方はとても多いと思います。

武田:VTRの中で、「子どもに性暴力をすることを認めているような印象を受ける」という声もありました。この判決をどう見ればいいんでしょうか?

宮田さん:そもそも刑事裁判の判決というのは、この人に刑罰を与えるのが妥当か、この人は有罪か無罪か、そして与える刑はどんなものかを決めるものです。そして、刑罰という、ものすごく大きな制裁を与えるものですから、国が「この人は真っ黒だ」ということを立証しなければなりません。ですから、灰色であるという場合も無罪になるんです。道徳的に正しいから無罪になるとか、そういうものではなく、検察官が裁判官に「これは黒だ」ということを印象づけることができなかったから無罪になるんです。

武田:つまり、今回の事件で父親が行ったことを、裁判で認めたというわけでは必ずしもない。

宮田さん:行為は正しいと認めたのではない。罰することができないという判断があったと思います。

合原:日本の刑法で性暴力が有罪になる要件は、大きく言いますと、こちらの2つになります。1つ目が「同意がない」。そしてもう1つが「抗拒不能」つまり、抵抗するのが著しく困難な状態だったことです。

この抵抗できない状態にさせる手段というのが、「暴行・脅迫」、あるいは「酒や薬」、そして「精神的な支配」によるものなんです。

武田:今回のケースは「精神的な支配」に当たるわけですね。

合原:ちなみに海外ではどうかと言いますと、抵抗できない状態かどうかを問わずに、同意がなかったことだけで罪に問える国もあります。例えばイギリス、カナダ、そしてドイツやスウェーデンでも、最近、法律が改正されました。

武田:今回の裁判所の判断は、「同意がない」という要件については認めました。一方で、「抗拒不能」の要件を認めずに無罪となったわけですけれども、こうした要件を求める今の司法の在り方を、被害者の皆さんはどういう思いを持つのでしょうか?

山本さん:先ほど宮田さんがおっしゃったように、罰することができないということですね。今回も「同意がない」ことは認められた。しかし、抵抗できる状態だったのにしなかったというふうに言われてしまったわけです。そう言われることは、被害者にとっては、司法から「あなたは被害者ではない」と否定されるように感じて、とてもショックなものです。どうして抵抗できなかったことを証明する必要があるのか。「同意がない」ということで、海外のように罪に問えるようにしてほしいと思います。

武田:そもそも、抵抗すること自体とても難しいことなのではないかと思うのですが、なぜ、こうした要件があるんでしょうか?

合原:それは、「確実に同意がなかったと言えるケースだけを処罰するため」とされています。もし、この要件がない場合、宮田さんは次のような問題が起きる恐れがあると指摘しています。1つ目が「えん罪」。例えば、同意の有無だけが問題になりますと、その時は同意をしていたのに、あとになって被害者が「同意していなかった」と訴えた場合、えん罪の恐れが生まれるということなんです。

武田:だから、この「抗拒不能」という要件が必要だと。宮田さん、これはどういうことなんでしょうか?

宮田さん:「抗拒不能」の要件というよりも、同意そのものがかなり厳しく証明されなくてはいけないという部分も含めてなのですけれども。性犯罪の被害者として被害を申告する人の中には、例えば、自分のパートナーに、ほかの人との性関係がばれてしまった、あるいは、その人との関係を解消したくなったということで性被害を訴え出ているケースもあります。ですから、同意がなかったと言っている人が、そう言っているというだけで処罰される場合には、えん罪が生まれる可能性がある。そこでスクリーニングをしていく作業は必要になります。

武田:虚偽の申告じゃないというスクリーニングをしていく必要があると。

宮田さん:しかも、抵抗できない状態だという要件を加えることによって、「誰が見ても、これは犯罪行為だ」というコンセンサスというか、皆さんからの了解が得られる。「社会から見ても、これは非難すべき行為だ」と言えるということです。

合原:そして理由の2つ目が、「犯罪の立証が難しくなる」。被害者の「同意していなかった」という証言だけでは十分な証拠になりません。例えば、暴行や脅迫を受けていた、あるいは精神的な支配を受けていたことを証明すれば、同意がなかったことを示しやすくなるということなんです。

武田:「抵抗できない状態である」という要件があるからこそ、同意の有無を証明しやすくなるとは、どういうことなんでしょうか?

宮田さん:「同意がない」と被害者の方がおっしゃっているだけでは、証明にはならないというふうに海外の国々でも扱われています。つまり、さまざまな事情から、その方どうしの関係であるとか、性行為に至る経緯であるとか、さまざまな状況から、同意があったかどうかが判断されるんです。「同意がなかった」という主張を、検察官が的確に組み立てることができなければ、無罪になってしまうということです。つまり、検察官の選択肢がものすごく広がるということのために、かえって、裁判を維持していくことが難しくなる可能性があります。

武田:抵抗できない状態かどうかという要件がなくなると、検察官が、それとは違う何かで事実を組み立てていかなくてはいけなくなる。

宮田さん:その通りです。「誰から見てもこの人は同意がなかったと言えるでしょう」ということを言わなければならないということです。

武田:ということなんですが、山本さんはどういうふうにお感じになりますか?

山本さん:えん罪というのは、決して起こってはいけないことで、それは殺人であろうが、性犯罪であろうが変わりはないと思います。その時に、適切に捜査がされたとか、事実認定が正しくされたとか、そういうことが問題なのであって、同意がない性行為が性犯罪になるというルールが作られたからといって、えん罪が増えるというのは、論理としておかしいのではないかなと思います。あと、同意ということについてなんですけれども、やはり性行為に至る過程というのは、確実に立証していかなければいけないもので、どういう状況でその行為が行われたのか、そして、それが同意のあるものなのか、ないものなのかというのは、事実認定を正しくする必要があると思います。その時に、海外では、性暴力をどのように判断するのかにおいては、同意の有無と、相手との対等性の有無、上下関係があると、そこで「イエス」と言わざるをえないような状況もありますし、また、そこで強制性があったかなかったかということを見ながら、同意の有無を判断していくことになります。

武田:同意があるかないかということだけでも、ちゃんと2人の間の関係性などを細かく見ていけば、それは立証が可能だということですね。

山本さん:対等な関係であるのかということですよね。性暴力が行われる現場では、やはり対等でない関係があるからこそ、被害者を下として、言うことを聞かせて、物のように扱うことができるということがあります。

合原:抵抗できない状態という要件については、2年前の刑法改正の議論の際、撤廃を求める声もありましたが残されました。改めて実態に合わせて改正を求める声が上がっています。

“抵抗などできない” 被害者の訴え

今週、山本さんたち被害者の団体が、法務省などを訪れ、要望書を提出しました。

その中で抗拒不能の要件について撤廃を含めた見直しを要望。抵抗できたように見える状況でも、抵抗できない場合があると訴えました。支配関係の中で起きる性暴力。そもそも抵抗する意思さえ奪われるのだと言う女性が取材に応えてくれました。40代のユミさん(仮名)。義理の父親から長い間性暴力を受けてきたといいます。

合原:いつごろから?

ユミさん
「幼稚園ぐらいの時に、父が布団に入ってくるところまで覚えてるんです。『ああ父が迫ってくるな…』までは覚えてるんですけど、その後は真っ暗で何も覚えてないです。」

日常的な暴力や暴言によって、ユミさんは逆らえない意識を植え付けられていきました。

ユミさん
「(父に)『俺はお前の何なんだ?』って言われたことがあって、殴られてる最中に。『お父さんです』って言った時に『違う。俺はお前の教育者だ』って言ったんです。」

合原:抵抗しようと試みたとか、そういう記憶も?

ユミさん
「ないです。もう抵抗…、父に対して抵抗というのはもうないですね。もう、浮かばない。」

4人家族だったユミさん。逆らうことで家庭が崩壊してしまうのではないかという恐れも抵抗できない理由の1つでした。

ユミさん
「父親の気持ちを損ねないように、父親が気持ちがいいように存在してるのが私の普通だった。それが身を守るすべ、生きていくすべだったので。」

ユミさんは性暴力を受けている間、自分の心と体の感覚を閉ざすようになっていたといいます。ユミさんのカウンセリングを担当している専門家は、こうした反応は、強いショックや恐怖から身を守るためのもので、性暴力被害者の多くに起きることだといいます。それが、他人からは相手の行為を受け入れていると誤解されてしまうのだと指摘します。

女性と子どものライフケア研究所代表 長江美代子さん
「あまりにつらいので意識を切り離す。体と心を切り離す。痛みもよくわからないとか、被害に遭っているときに、被害に遭っている自分を上から眺めている自分がいたり、嫌な思いをせず短い時間で(被害に)耐えられるように頑張っている。その方法を使って、頑張って生き延びるわけなんです。」

つらい記憶を20年以上封印し続けたユミさん。PTSDと診断され、今も働くことができません。

合原:どういうことを、いちばん伝えたいですか?

ユミさん
「いちばん身近な身内がそんなひどいことをする所で育っていて、そういう被害に遭ったら、どういう状態になるのかというのを、もっと人間というものを知ってほしいなと思います。」

被害者が訴える刑法の見直し。このあとスタジオで考えます。

刑法改正 必要か?不要か?

合原:実は来年(2020年)刑法改正から3年になるタイミングで、見直しが必要かどうか議論される見通しです。こちらの方々が、前回の改正の際に議論をした法務省の検討会のメンバーなんですが、改めて、改正が必要と考えるかどうか、アンケートを行いました。

そのうち、宮田さんを含む6人から回答がありました。このうちの4人は、今も「抗拒不能」の要件は「存続すべき」と回答しました。

先ほどの議論にあったような、えん罪の可能性などを踏まえた上で、「裁判官や捜査機関の教育によって、適切に対応できるはず」「裁判所は『抗拒不能』という言葉の意味を広く解釈しており、そうした運用に任せるべきだ」。つまり、裁判官が適切に判断しているということなんです。
一方、2人が「抗拒不能」の要件は「撤廃すべきだ」と回答しました。

その理由として、「こういう判決が出ている以上、個々の裁判官の判断に委ねるのは問題がある」「抵抗することができないという、精神医学や心理学の知見を踏まえてほしい」と挙げています。

武田:刑法をもう一度見直すべきかどうかについて、「裁判所は『抗拒不能』を幅広く解釈している」とありましたが、これはどういうことでしょうか?

宮田さん:先ほど、「支配関係のある方が抵抗できない」「被害者はそういうような例がある」ということがVTRで紹介されていましたが、例えば、医師と患者、あるいは宗教者と信者の関係であるとか、あるいは就職をさせてやると言っている人であるとか、あるいは親に嫌われると思って関係に及んだり、先生に逆らえないと思って関係に及んだ例についても、実は幅広く「抗拒不能」の要件の中に含めている。

武田:そういう事例があるわけですか?

宮田さん:あるんです。

武田:今回の一件は認められなかったけれども、実は、ほかの事例では幅広く認められていると。
山本さん、いかがですか?

山本さん:このような無罪判決が出ながら、このまま存続の状態でいいと法律家の方が思っていること自体、私にはよく理解ができないです。

武田:理解できないとは?

山本さん:納得できないですし、言ってみたら、この状態でいいと言われてるように感じて、とても苦しいですね。

武田:今回の判決は大きな波紋を呼んでいますが、ほかにはたくさん、そうじゃない例があるんだということですが、この1件だからこのままでいいと考えるのか、1件でもあってはならないと考えるのか、宮田さんはどう思われますか?

宮田さん:この事件はまだ地裁の判決なんです。検察官は控訴しました。まだ高裁や最高裁の判断があります。これが本当に不当な結果になるのかどうかというのも、被害者の目から見た不当な結果になるのかどうかもまだ分からないと思います。

武田:もう少し見極める必要があるということですね。

これ以上被害者を生まないために

武田:傷ついた被害者を救い、あるいはこれ以上、被害者を生まないために何が必要なのかを2人に書いていただきました。ひと言ずつご覧いただこうと思いますが、まずは宮田さん、「刑法の改正よりも、まだやることがある」。

宮田さん:刑法の中では救われない被害者がいます。証拠がないとか、さまざまな形で。ですから、被害者対策はもっと別な形のもの、被害者の生活支援などももっと図られるべきだと思います。

武田:そして山本さんは、「まずは法改正を」ということですね。

山本さん:やはり、このような判決が出ないためにルールを見直していく必要があると思います。そして、性暴力を受けた被害者が、性犯罪として認められるような日本になってもらいたいと思っています。

武田:宮田さんは、そのためにも被害者の支援策の充実とか…。

宮田さん:そうですね。むしろ性教育とか、社会の常識が変わらなければ、裁判官は、「これは同意がある」と考えてしまうということです。


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