クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
2018年12月10日(月)
“最期の医療”その時 家族は…

“最期の医療”その時 家族は…

あなたは、家族と「いざ」という時の話しをしたことがありますか?家族が突然倒れ、その後延命治療を受けるかどうか、医師から説明を受けた時、あなたは冷静に対応できますか?「人生の最期」はどんな医療を受けたいか、誰にとっても簡単に想像できることではありませんし、家族で気軽に話し合えるテーマでもありません。だからといって、何もしないでいいのでしょうか?この番組をご覧になれば、何から始めればいいのか、その手がかりがほんの少し、つかめるかもしれません。

出演者

  • 東尾修さん (元プロ野球選手/野球解説者)
  • 東尾理子さん (プロゴルファー)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

家族の延命治療 あなたが選択を迫られたら…

もし、あなたの家族が、延命治療を受けるか選択を迫られたらどうしますか?
神奈川県の救急病院で、ある家族がその事態に直面していました。1週間以上、意識がない状態が続いている、89歳の男性です。食事中に突然意識を失い、救急搬送されてきました。妻の節子さん(仮名)は、医師から、今後意識が戻る可能性はきわめて低いと告げられました。

医師
「呼びかけたり、たたいたりしても、意識がよくないのは変わりがない。」

この日、家族は今後の治療について選択を迫られました。

医師
「口に管がいま入っています。ただの細いチューブです。なので、気管切開といって、喉(のど)に管をする処置に変えてあげないと危険が伴ってしまうことがある。」

生き続けるためには、喉に穴を開けて人工呼吸器をつける「気管切開」を行う必要があると告げられたのです。一方で、男性のように高齢の場合、人工呼吸器をつけても、多くは意識が戻る可能性は低いと説明されました。

「いろいろな治療の決定とかを、僕らはご家族に委ねないといけない。ご家族に決めてくれと言うしかないんだけれど、いちばん(決めるの)は奥さまだと思いますので。」

節子さんは、突然突きつけられた重大な選択に戸惑っていました。

妻 節子さん
「主人はこのベッドです。」

夫と60年連れ添ってきた節子さん。5年前、東京から温泉地の近くに移り住み、2人で穏やかな老後を過ごしていました。夫はどんな最期を望んでいるのか―。悩んでいた時に思い出したのが、夫の終活ノートでした。

「葬儀は家族3人だけで行ってほしい」。死後のことや財産分与について、細かく記されていました。しかし、自分が倒れて回復の見込みがなくなった時、どのような治療を受けたいかは全く書かれていませんでした。

妻 節子さん
「元気でそのまま老衰で死ぬと思っていたんじゃないかな。生かしてほしいと思うけど、(夫の意思が)何にも分かんないじゃね。」

結局、節子さんは自分だけでは決められず、医師と相談して延命治療を受けることを選びました。

「難しいね。(生かされるのは)体だけですものね、本人は。」

その判断がよかったのかどうか、今も答えは出ていません。

たとえ患者本人が延命治療を希望しないと意思表示していても、いざという時に迷う家族も少なくありません。
東京・八王子市に住む、近藤茂代さんです。94歳の母親が末期がんで余命わずかと診断されたため、病院から自宅に連れて帰り、みとる準備をしていました。

近藤茂代さん
「亡くなる前日ですね、たい焼きまで食べて。」

母親も、「人生の最期は自宅で過ごし、家族に見守られて死にたい」と話していたといいます。茂代さんは、容体が悪化しても病院に運ばず、自宅でみとると母親と約束していました。

「『延命措置は嫌だ』って。そのときがきたら、自然な形で最期を迎えるって。」

ところがある朝、母親が意識のない状態で見つかり、動転してとっさに119番通報したのです。

「冷たくなっていたならば諦めて受け入れるんですけれど、なにせまだ温かくて。慌てて救急車呼んじゃったんです。」

茂代さんが迷い始めたのは、救急隊が到着し、激しく心臓マッサージを始めた時でした。このままでは病院に運ばれ、母親が望んでいなかった延命治療につながるのではないか。茂代さんは、救急隊員に搬送をやめるようお願いしました。

「(搬送を)『やめてください』って、(救急隊の)腕を引っ張ったと思います。」

そこに、母親の病状をよく知る主治医が駆けつけ、救急搬送の必要がないことを説明。その結果、自宅でみとることができました。いざという時の対応をもう少し考えておけばよかったと、茂代さんは感じています。

「やはり人間というのはいざとなると、頭で考えていることと、出る行動は違っちゃうんです。(母は)死を受け入れているのに、それを娘が邪魔しちゃったのかなって。」

家族の“最期の治療” あなたが選択を迫られたら

ゲスト東尾修さん(元プロ野球選手・野球解説者)
ゲスト東尾理子さん(プロゴルファー)

武田:東尾修さん・理子さん親子にお越しいただきました。最期、娘の立場で、理子さんはどうご覧になりましたか?

東尾理子さん:こうしようって決めてらっしゃったんですよね。でもやっぱり慌てて救急車を呼んでしまったというのを聞いて、いざという時は、そうなってしまうのかなと思ったんですけれども。実際、親子でまだ話したことがないので、そこに本当にいく、全然手前だなと思いました。

武田:突然選択を迫られるわけですよね、家族は。あの現実を、どういうふうにご覧になりましたか?

東尾修さん:まあ、僕自身が意識がはっきりしていたらいいんですけれども、その時はこう答えられますけど、どういう状態か分かりませんので、やっぱりそこはちょっと判断しづらいですね。

鎌倉:いざという時、やはり家族も皆さん迷われているわけなんですけれども。VTRで、救急搬送を呼んだけれども、やっぱり本人の意思を思い出して断ったという女性がいらっしゃいましたよね。実は、そのように119番通報したにもかかわらず、蘇生や搬送を断るケースというのが今、全国各地で相次いでいます。消防庁が初めて行った調査では、去年(2017年)2,000件に上っているんです。

どういうことか?普通、家族が倒れたら救急車を呼びますよね。

理子さん:すぐ電話します。

鎌倉:呼んでしまいますよね。そうしますと、救急現場では当然、心臓マッサージなどの必要な救命措置を行うんです。ただここがポイントで、高齢者の場合は、仮に一命を取りとめても、意識が戻らないまま本人の望まない延命治療につながる。ここからがその延命治療の入り口になってしまう可能性があるために、家族がここで判断に迷うケースが、今これだけ相次いでいるということなんです。

武田:あらかじめ、その延命治療を望まないと決めていても、こういうことになってしまうということなんです。

あなたは家族と話してる? “最期の医療”

武田:そもそもお2人は、人生の最期について話し合ったことがないというふうにおっしゃっていましたが、本当ですか?

修さん:全くないです。

武田:全くないんですか?

修さん:ええ。

武田:なぜ?

理子さん:何かこう、きっかけがない…。聞いたら悪いのかなという遠慮もやはり…。

武田:子どもの立場からは、なかなか「お父さん死んだ時どうする?」とは…。

理子さん:「どうやって死にたい?」というのは、聞けないですよね。

修さん:ただ若干、やっぱりこう年齢60過ぎて70近くなった時というのは、自分の中で意識はしてます。やはり自分より若い人、同じような年代の人が亡くなったりすると、自分もだんだんそういうことを考えさせられますよね。自分の気持ちの中で。

武田:でもそれは、お嬢さんには?

修さん:言ってません。

武田:言いづらいですか?

修さん:タイミングは…何なんでしょうかね?いい機会になった、今日は。

鎌倉:では、皆さんはどのように考えているのか。日本人の死生観に詳しい、第一生命経済研究所の小谷みどりさんは、このように指摘しています。

第一生命経済研究所 小谷みどり主席研究員
「例えばどんな死に方したいかというと、多くの人は『ポックリ死にたい』と言う。なぜポックリ死にたいかというと、亡くなる過程が苦しみや痛みがあるんじゃないかとか、家族に迷惑をかけるんじゃないか、つまり死ぬことを考えたくない。“終活”と言われるようになって、多くの日本人が死について考えるようになったと言われているけど、実は“死に方”について考えているわけではない。」

武田:本当に考えているかどうかということを、厳しく問われているわけですが…。

修さん:何か意識はさせられますけれども、死に方までは、ちょっとまだ…。

理子さん:死んだあとをどうしようということは、少しは意識するけれど…。

武田:その瞬間はなかなか、皆さん考えられないということなんですよね。その最期の医療についての話し合い、実は多くの人が、いざ重い病気にかかって初めて話し合っているというのが実情なんです。そしてそのことは、本人や家族にとってさらに大きな負担になっています。

“最期の医療”難しい選択 病床で迫られた家族は…

千葉県にある救命救急センターです。
先月(11月)、病床で重い判断を迫られている家族がいました。永井功司さん・81歳。そして、妻の孝子さんです。功司さんは脳梗塞を患い療養を続けていましたが、重い感染症にかかって容体が急変。点滴でなんとか命をつなぎ止めていました。家族みんなと仲がよく、何でも話していたという功司さん。しかし、脳梗塞を患ったあとも、人生の最期についての話だけは避けてきたといいます。
夫の容体の急変に動揺していた孝子さん。その時、医師から、万が一の際の治療について話を切り出されました。

医師
「マッサージをすることで、止まった心臓がまた動き始める可能性もありますし、そういったことはしてほしいとか、されたくないとか、お考えはあります?」

医師の問いに、病床の功司さんとどう答えを出せばいいのか、孝子さんは悩んでいました。心肺が止まる事態になった場合、人工呼吸器をつけて延命するかどうか、孝子さんは、夫の気持ちを初めて聞くことになりました。

妻 孝子さん
「お父さん?(症状が)うんと悪くなっちゃって、お父さんは考えることも何もできない、そうなったときに、息だけでもしていたい?機械つけていいの?」

功司さんの本心が十分に分からず、孝子さんの気持ちは揺れていました。

妻 孝子さん
「機械だけで呼吸だけしているという状態では、私は見ていたくない。でもこういう状態になっちゃってから『お父さん、人工呼吸器つけないよ』とかは言えないし。もっと元気な時なら自分も話せただろうなと思うけど。」

弱った夫を前に、自分の考えを伝えるべきなのか、孝子さんが迷っていた時でした。

永井功司さん
「100まで…。」

妻 孝子さん
「ん?」

永井功司さん
「100まで息していたい。」

妻 孝子さん
「うん、分かった。何でそんなにお父さんは前向きなの?」

永井功司さん
「みんなのことが心配だから。」

妻 孝子さん
「頑張るんだもんね?ありがとうね。」

医師
「心臓が止まってしまった時には、すべて積極的にやらせてもらいます。」

功司さんの意思を聞き、可能な治療は全て行うことを決めました。

妻 孝子さん
「(夫は)すごく何事も前向き。本人がそうしたいと言うなら、全部やっていただきたい。」

“最期の医療” 病床で決断する難しさ

武田:最終的にご本人がこういう結論をなさったわけですけれども、家族としては判断が難しいですよね。

理子さん:「元気なうちに話しておきたかった」とおっしゃられてたのが、なるほどなと思いましたね。弱った夫に対して、自分の気持ちをストレートに伝えられない…。やはり意見を交換したかったのかなというふうに受けとめました。

武田:やはりちゃんとこれは話し合っておかないと…。

修さん:そうですね。ああいうふうに前向きにいられたらいいなと思うし、1つ何かがこう、気持ちの中であるでしょうね。残ってるものって…何か、目標とか。私はそういう意味では孫がね、1つの基準として…いくつまでとか、何歳になったらとか。例えば長男が、高校野球行って甲子園行ってくれたらなという、ひそかな夢でもあるので。その1つは、自分は何歳だなという、まあそういうことをいろいろ考えていますね今はもうね。

鎌倉:だそうです。

理子さん:みたいですね。

鎌倉:初めて聞かれましたか?

理子さん:初めて聞きました。

鎌倉:厚生労働省の最新の意識調査で、人生の終末期の医療について「家族などとどのくらい話し合ったことがあるか」という質問に対して、「全く話したことがない」と答えた人は、55%です。

武田:皆さん同じなんですね。

鎌倉:そして「詳しく話し合っている」という人は、わずか2.7%にすぎなかったんです。

こうした中、医療機関では、医師も加わって元気なうちから最期の医療を話し合おうとする取り組みが始まっています。

“最期の医療”あなたの選択は? 患者の意思を“書面”に

全国に先駆け、最期の医療について聞き取りを行っている病院です。外来患者も含め、75歳以上の全員が対象です。

亀田総合病院 総合内科部長 八重樫牧人医師
「例えば、急に心臓が止まって息が止まって、死んだ状態になったときの話です。」

仮に心肺が停止した場合、人工呼吸器は望むかなど、患者の希望を確認しています。

患者
「自分は、延命はしてもらわなくていいと思っています。具合が悪くなっても、女房ももういないし、子どもたちに迷惑かけることもあれなんでね。」

患者の意思を記す事前指示書。考えが変われば書き直すこともできます。本人の意識がなくなった場合、誰に治療の判断を委ねるかも記入します。

患者
「自分がしっかりしているうちに決めておけば、ベストなんじゃないですか。」

亀田総合病院 総合内科部長 八重樫牧人医師
「重要なのは、ご本人の価値観をなるべくわかるように話をすること。(書面に残すことは)本人のためにもなりますけど、ご家族のためにもなるんです。」

家族と話すきっかけは…

病院では、地域も巻き込んで取り組みを進めています。
地元の集まりで紹介したのは、「もし余命がわずかだったら」と想定したカードです。専門医が監修した36枚のカード。「機器につながれていない」「呼吸が苦しくない」「望む治療やケアをしてもらえる」。さまざまな価値観が書かれています。

手札と場のカードを交換しながら、自分が大切だと感じるものを手元に残します。最後に残したカードについて、その理由をみんなの前で発表します。

参加者の男性
「やっぱりこれ(『痛みがない』)。痛みがないのが、いちばんいいよ。」

参加者の1人、川畑いさ子さん。このカードを使って、家族と最期の医療について話してみようと考えました。夫と、近所に暮らす息子の家族にも声をかけました。

川畑いさ子さん
「縁起でもない話っていうか。余命わずかな想定で、自らの価値観を考え、みんなで話し合う。」

息子
「俺なんかいやだな、こういうの。話すのいやだな。こういうこと話すの、なんか。」

家族は突然、“死”について話をすることに少し戸惑っていました。実は川畑さん、いざという時の夫の考えが気になっていたものの、これまで話す機会がありませんでした。カードの交換が始まると、徐々に真剣な表情に。

川畑いさ子さん
「じゃあ終わりました。」

夫が選んだのは、「最期は家族と一緒に過ごしたい」というものでした。


「わかんないけど、何とかなるというなら、延命措置、人工呼吸器つけたりしてもいいけど、九分九厘だめですよというなら、もうやってもらわなくてもいいです。」

川畑いさ子さん
「九分九厘なら、楽にはしてあげたい。わたしの時もそうしてもらいたい。」

最初は抵抗を感じていた息子も…。

息子
「こういう話ができてよかったのかなと思います。こういう機会がないと、こんな話をすることはないと思うので、良かったなと思います。」

人生の終わりをどう迎えたいか。川畑さんは、孫が成長した頃、再びみんなで話をしたいと考えています。

家族の“最期の治療” あなたが選択を迫られたら

武田:そのカードをお2人にも選んで頂きました。まず修さんが、「痛みがない」「家族の負担にならない」「いい人生だったと思える」。

そして理子さんは「いい人生だったと思える」、これは同じですね。「誰かの役に立つ」「私が望む形で治療やケアをしてもらえる」ということですけれども。理子さん、これは共通してるものもありますし、お互いに初めてご覧になったんですよね。いかがですか?

理子さん:私はこの「誰かの役に立つ」というのは、臓器提供などをできればやってほしいなという思いが昔からあるので、そこを最後、もし可能なものがあったらやりたいなという意味でも、最期、自分が望む治療ケアをというのを含めましたね。

修さん:もし使えるんだったら、僕それも今はっきり言っとくし、言いたいし、なかなか自分で判断できない状態になっていると思うので…。

理子さん:もう書いてサインもしているしね。

武田:理子さんは、お父様のをご覧になって、いかがですか?

理子さん:どう?

修さん:やっぱり最期っていうのは、やっぱりこう、どうしても「ああ」とそういうのを思って…逝きたいなっていう…。

理子さん:「いい人生だった」と思うためには、どうしてあげればいいんだろうとか。

武田:「家族の負担にならない」というのがありますけれども。

修さん:それはもう皆さん、そう思うだろうし。

武田:でも、ちょっとぐらい負担になってもと…。

理子さん:思いますね。やっぱり急だったら…そこで本当に延命を望まないって言っていても、こっちが心の準備ができてなかったらどうしても…ねえ。…と思ってしまうところも。

鎌倉:納得できる最期を迎える上で、お互い家族にとって大切なことなんですけれども、やはりこれは繰り返し話し合うこと。それから人って、健康状態に応じて考え方が変わりますよね。医師が加わることも大事ですし、それをさらに書面に残すということ。これで確実に本人の希望の治療につながるというポイントがあります。

武田:まだまだお2人、これからいろいろなことが人生あると思います。繰り返し語り合うということが、やはり大事だということなんですけども。

修さん:そうみたいですね。自分の健康状態を見て、それは感じましたね。どういう状態なのかというのも。

理子さん:そうですね。主人も父の年齢に近いので、家族全員で話す必要がありますね。

武田:親子だけじゃなくて、石田(純一)さんも含めて。

理子さん:主人の意思もあると思うので。

武田:考えないといけないですね。

理子さん:帰って話そうね。