クローズアップ現代

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2018年12月5日(水)
外国人労働者127万人 共生をどう進める?

外国人労働者127万人 共生をどう進める?

深刻な人手不足に直面する日本で、急速に進む外国人労働者の受け入れ。今やその数は127万人(去年)を超え、10年で2.5倍以上になった。こうした中、共生をめざした様々な取り組みが始まっている。2人に1人が外国人という地域の団地では、住民自身が試行錯誤を繰り返し、近隣トラブルを減らしている。ある建設会社では、外国人労働者の要望に丁寧に応え、500万円を超える年俸を支払うという将来設計も検討、優秀な人材の確保につとめている。最先端の現場に共生のヒントを探る。

出演者

  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

外国人労働者 10年で2.5倍超 地域も企業も…共に暮らすには

住民の2人に1人が外国人。ここは、埼玉県にある巨大団地。

自動販売機には…。

「この自販機面白いんです。ここに中国のものとか、これなんか、おかゆとか中国関係のものとか、韓国のものがあって、自販機も“多文化”化している。」

今、外国人材の受け入れを拡大する法改正の議論がヤマ場を迎えています。しかし、国内にはすでに多くの外国人が。この居酒屋チェーン、アルバイトの3人に1人が外国人です。ベトナム人の店員、接客から料理の説明まで何でもこなします。

来店客
「ぼくはハノイとサイゴンにいました。」

ベトナム人の店員
「そうですか。いつからですか?」

来店客
「3年くらい前。」

新人の指導役も任され、店には欠かせない存在です。

ベトナム人の店員
「必ず聞いて、おちょこ何個ですか。」

新人
「おちょこ何個ですか。」

日本で働く外国人労働者は、今や127万人。この10年で2.5倍以上に増えています。全国の市区町村の8割で外国人の住民が増加しています。

新宿では、新成人の2人に1人が。地方都市でも急増。5人に1人が外国人という町も出てきています。しかし、外国人が多く暮らす地域では、差別をあおる落書きが見つかるなど、課題も浮き彫りになっています。いまや、外国人がいなければ立ち行かなくなりつつある日本。課題を乗り越え、共に生きていくためには何が必要なのでしょうか。

武田:外国人材の受け入れ拡大を巡って国会で議論が行われていますが、そもそも、今や日本で働く外国人は127万人余り。先ほどもありましたとおり、10年で2.5倍以上になっているんです。

田中:外国人の占める割合が高い上位50の市区町村を見ていきますと、日本で一番外国人の割合の多いのは、北海道占冠村。外国人の比率は5人に1人で、観光施設で働く中国や韓国、台湾の従業員が多く暮らしています。

武田:続いて関東にいきまして、突出している所があります。群馬県の大泉町。外国人の比率は18%で、全国2位。電機メーカーや自動車メーカーの工場、その下請けの中小企業で働く日系ブラジル人とその家族が数多く住んでいます。

田中:そして、茨城県鉾田市です。農業の現場で働く中国人やベトナム人が多い地域です。20代から30代の住民の5人に1人が外国人だということなんです。

武田:これだけ増えている外国人と共に暮らすということはどういうことなのか。地域で何が起きているのか、取材しました。

住民の半分が外国人の団地 “共に暮らす” 現場で何が?

埼玉県川口市にある芝園団地。都心まで30分という立地に加え、家賃も手ごろです。10年ほど前から中国の人たちの人気を集めるようになりました。この団地で暮らす、会社員の岡崎広樹さんです。

ボランティアで自治会の役員をしながら、住民同士の交流会を毎月開いています。岡崎さんが暮らし始めたのは4年前。日本人と外国人との交流はほとんどなかったといいます。そのころ、交流会を始めるきっかけとなる出来事がありました。団地の中のいすやベンチに差別的な落書きを見つけたのです。

自治会役員 岡崎広樹さん
「さすがにこれを見たときは、ちょっとまずいなと思いました。ご覧になった人は、子どもを遊ばせて不安になるとか、そういう話を当時聞いていたので。」

岡崎さんは、文化の違いによる摩擦も感じていました。夜遅くなっても、声を上げて遊び回る子どもたち。岡崎さんのもとに苦情が来ることがあったのです。そこでこの春、自治会では中国人向けのパンフレットを作成しました。

“20時から21時以降、外での遊び声や騒ぎ声は控えましょう。”

“階段や玄関前に私物やゴミを放置しないようにしましょう。”

中国人の住民
「暗黙のルールなんですから、言われなければなかなか分からない。あらかじめ明文化して、見て、こうかなというのが一番いいかなと思います。」

少しずつ改善されてきた団地の環境。自治会に参加する外国人も増えてきました。しかし今、壁に直面しています。団地に新たな外国人が次々に入居してくるのです。日中は仕事をしながら、帰宅後に自治会活動をしている岡崎さん。ルールを周知し続けなければならないことに限界を感じています。

自治会役員 岡崎広樹さん
「終わりがないな。見知らぬ隣人をお迎えして、人間関係を築いていくこと自体は、時間もかかるし、労力もいるので、寝るのも夜1時とかですから、1時、2時くらいまでそういうことをいろいろやりながら、やることの大変さはあるし、私自身もどこまで続けられるかという気もします。」

川口市では、芝園団地以外でも外国人の割合が急速に増えています。JRの沿線を中心に10%を超える地域が広がっています。

市の窓口には、外国人からの問い合わせも多数寄せられるようになっています。ゴミ出しのルールや税金、社会保障など、日本の制度に対する戸惑い。相談は多岐にわたります。市は、常勤の通訳スタッフも配置していますが、今後、外国人が増え続ければ対応が難しくなるといいます。

川口市 多文化共生係 川田一係長
「言葉も分からない、制度も分からないってなかで困って、どこへ行けばいいか、そもそも分からなくて、こちらにいらっしゃる方も当然いらっしゃいますので、きついといえば、きついですが、これでやっていくしかないのかなと対応しています。」

外国人労働者 10年で2.5倍超 現場が訴える悩みや課題

武田:急増する外国人への対応。住民も自治体も、このままでは限界が近づいていると感じている実態が見えてきました。多くの自治体が同じような壁に直面しています。外国人の割合が高い上位50の自治体に、独自のアンケートを行いました。

田中:このアンケートの結果、3割の自治体が「外国人への対応が追いつかなくなっている」と答えました。その課題として最も多く挙げられたのが、「多言語化への対応」です。全体の8割の自治体が回答しました。例えば「多言語に対応した窓口がない」ですとか「行政情報のすべてを全言語で伝えるのは難しい」などといった声です。

武田:東京の新宿には、132の国と地域の外国人が暮らしているということでしたから、すべての言語に対応するというのは相当難しいことですよね。

田中:そして、課題で次いで多かったのが「生活支援」です。「ゴミ出しのマナー」や「騒音などの近隣トラブル」、そして「町内会や自治会への加入の問題」などが挙げられました。もう一つ、「防災情報の伝達」も課題のようです。「津波のない国から来た人も多く、避難の必要性が伝わらない」という危機感を訴える声もありました。これは命に関わる問題ですよね。

武田:一昨年(2016年)の熊本地震、それから今年(2018年)の大阪北部の地震では、言葉の違いや知識の不足から、避難所やライフラインに関する情報が届かなくて混乱するというケースもありました。外国人に防災について知ってもらうこと、情報をいかに伝達するかということ、非常に重要です。

田中:そしてもう一つ、多くの自治体からある問題について、切実な声が寄せられました。「外国人労働者の子どもに関する問題」です。年々増えていく外国人労働者ですけれども、その127万人余りのうち、日系人や専門分野を持つ高度人材などは、家族と共に日本で暮らすことができます。そのために、外国籍の子どもも5年間で3万7,000人増えていまして、今年は21万人に上っているんです。

武田:外国人労働者の子どもの支援のために、対応に追われている現場を取材しました。

5人に1人が外国人の小学校 現場の格闘 努力しているけど…

多くの工場が集まる福井県越前市。日系ブラジル人を中心に外国人が急増し、およそ4,300人が暮らしています。外国人の増加で大きな影響を受けているのが、地元の小学校です。全校児童355人のうち79人、5人に1人が外国人です。父親が電子部品工場で働くため、6月に来日した日系ブラジル人の一家。息子のヴィクトル・ナカギシくんは地元の小学校に通っています。ブラジルでは飛び級で1年上の学年で学んでいたヴィクトルくん。

ヴィクトル・ナカギシくん
「これは、ブラジルの学校で(成績で)1番を取ったときにもらったメダルだよ。」

しかし、日本語がほとんど話せず、言葉の壁に直面しています。
この日、理科の授業を受けたヴィクトルくん。授業中、外国語で意思疎通ができる教員はいません。

教師
「なんて言ってる。ちょっと困ってる?」

授業はたびたび中断。その都度、比較的日本語が得意な児童が通訳をします。ヴィクトルくんの理解はなかなか進みません。

「今日の授業はどうでしたか?」

ヴィクトルくん
「つまらなかった。」

同級生
「ダメだよ、そんなこと言っちゃ。」

ヴィクトルくん
「何でダメなんだよ。」

同級生
「“楽しかった”って言わなきゃ。」

ヴィクトルくん
「楽しかった。つまらなかった。」

リポート:藤田陽子(NHK福井)

授業についていけない外国人の子どもたちにどう教えるのか。日本語の習得状況に応じて、学校は国語や算数を個別に教える特別クラスを設置しています。ヴィクトルくんは毎日3時間ほど、この教室で基本的な日本語の読み書きを学んでいます。外国人向けの教科書がないため、学校では教材を独自に作成しています。算数で使う言葉をまとめて表にしたり、物語の訳を載せたりするなど、できるかぎりの努力をしてきました。しかし、配置されている専属の教員やスタッフは7人。毎月のように外国人児童が増え続ける中、ふだんの授業の支援までは手が回っていません。

日系ブラジル人の専属スタッフ
「人手が足りないので、(全ての)教室に支援できる人、先生がいたらいい。」

専属のスタッフを増やす上で課題となるのが予算の確保です。現在いる7人のうち、国や県が支援する人件費は2人分だけで、残り5人は越前市の負担です。人件費は3年間でおよそ2倍に急増。越前市では、これ以上の負担はできないといいます。

越前市 奈良俊幸市長
「教育の問題をはじめ、生活全般にわたる対策が必要になりますので、(外国人を)受け入れる自治体を支えていただく。こういったことが国に求められると考えています。」

学校の授業についていきたいと、勉強に励むヴィクトルくん。しかし、日本での生活が半年となった今も孤独を抱えています。

ヴィクトルくん
「自分と同じ言葉をしゃべる人がいないから(ブラジルが)恋しくなる。ブラジルではたくさん友達がいて、いつも一緒だったのに、日本ではいつもひとりぼっち。」

増える外国人の子ども どう支援するのか?

武田:福井県越前市のような外国籍の子どもの増加は、このように全国的な傾向になっているんですね。

外国人の子どもといいますのは、実は義務教育の対象ではありませんが、基本的に自治体は受け入れています。ただ、先生を配置するための予算の大半は、地元の負担になるため十分に追いついていないというんです。結果として、教育現場にしわ寄せがいっているんです。このままでは学校に行きづらくなってしまう子どもが増えていく可能性もありますよね。

田中:実際に学校から遠のいてしまう、行っていないのではないかと見られる不就学の外国人児童や生徒が1万人近くいるのではないかという推計もあるんです。子どもたちへの適切な支援は、早いうちに解決しなければならない大きな課題です。

武田:そして地域だけではありません。外国人労働者を雇っている企業の側も大きな課題を抱えています。「技能実習生の失踪」、去年(2017年)は過去最多の7,000人余りに上りました。「長時間労働」、中には月140時間の違法な残業を強いていたケースもありました。そして「低賃金」。最低賃金を大きく下回る、時給400円で働かされていたケースが明らかになりました。外国人を安い労働力と考えているようでは、もはや優秀な人材は確保できない。彼らの立場になって考え、いかに共生していくのか、試行錯誤する企業もあります。

外国人労働者 10年で2.5倍超 “共生”へ…課題を乗り越えるには

20人あまりのお年寄りを受け入れる、兵庫県の介護施設です。

4人の外国人を雇っていますが、人手不足が続いています。そこで、理事の石橋正子さんは、新たに採用する技能実習生に期待を寄せていました。ところが厳しい事態に直面しました。ベトナム人6人に内定を出したものの、全員から辞退されたのです。大変な日本の介護の現場ではなく、ほかの国を選んだのではないかと、石橋さんは考えています。

介護施設「杏の里」 理事 石橋正子さん
「まさかみんなが来れなくなるというのは、夢にも思っていなかったです。親御さんが、もう反対されたんじゃないかというのも伺いました。」

何とか人材を確保したい石橋さん。今、力を入れているのは、直接現地に足を運ぶことです。特に重視しているのは、親への説明。待遇面に加え、同僚の人柄や寮の設備など、安心して働ける環境を強調しました。さらに、現地から戻った後も電話でやり取りし、日本で暮らす上での不安に答えようとしています。

石橋さん
「一番心配ということは何かな?」

電話:現地の通訳
「日本に実際行ったら、日本人と話したときにうまくいくのかなとか、言葉はすごく心配していると思う。」

石橋さん
「通じるかどうかね。」

介護施設「杏の里」 理事 石橋正子さん
「すごくみなさん来たいと思ってくださっているのでよかったなあと、気持ちが変わっていないので安心しました。」

日本人と同じ給与のレベルで外国人を迎え入れようとしている企業もあります。都内にある建設会社の専務、川端顯善さん。

およそ30人のベトナム人技能実習生を受け入れています。現場では、作業員の2割以上が外国人です。

リアル建設 専務 川端顯善さん
「必要な存在ですね。なくてはならない。できれば長くいて欲しい。」

実習生は、SNSなどで待遇面の情報を頻繁にやり取りしています。残業代が出ない、職場環境が悪いといった情報は母国にいる若者たちにも瞬く間に広がります。

リアル建設 技能実習生
「ほかの会社と比べて、私たちの会社はまだいい方だね。」

危機感を持った川端さんは、待遇改善に力を入れてきました。来日4年目で、残業代を含めて月給38万円。日本人社員と同水準です。法律が改正されれば、キャリアアップの道も検討しています。長期間継続して働くことで、年収は国内の労働者の平均を上回る500万円以上とする計画です。さらに…。

リアル建設 技能実習生
「娘です。」

母国で暮らす家族への配慮も考えています。

リアル建設 専務 川端顯善さん
「家族が来られなくても、1年に2回3回、帰って家族に会えれば、(日本に)残ってもいいよと。」

有給休暇に合わせて、里帰りの渡航費を負担することも考え始めています。

リアル建設 専務 川端顯善さん
「人間対人間で、日本人と同じように接するという。日本人の私たちから近寄っていけば、彼らも接してくれますし、彼らの本音を聞いたものに対して、会社がどう向き合うかということ。」

武田:これからさらに増えていく外国人に対して、私たちはどう向き合っていけばいいのか、専門家に聞きました。

首都大学東京 丹野清人教授
「あそこはだめだよというような情報が伝わると、たちまち人は集まらなくなりますから、そこをどうするのかというのは、本当に難しいかじ取りだと思います。選んだ人がきちんと責任をもつ。国が責任をもつのでもいいし、企業が責任をもつのでもいいと思うんです。選んで入れた人が責任をもつ。そういうものを位置づけて、国の中で制度設計していくことが必要。」

武田:外国人は単なる労働力ではなく、私たちがこの地域で共に暮らす隣人です。外国人材の受け入れを拡大する議論が行われている中、地域や企業、そして教育の現場で見えてきた課題にどう取り組んでいくのか。私たちも行政もその覚悟が問われています。