クローズアップ現代

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2018年11月27日(火)
復旧できない… 災害多発時代 あの被災地は今

復旧できない… 災害多発時代 あの被災地は今

地震、豪雨、台風…今年、日本各地で災害が相次ぎました。その被災地に足を運んでみると…。大阪北部地震で被害を受けた地域では、今も多くの家の屋根にブルーシートがかかったまま。被害の多くは、行政からの支援が比較的少ない「一部損壊」。収入の限られた高齢の世帯などでは、修繕の費用を工面できないのです。さらに、建設業界では、各地の災害への対応に追われ、少ない人材の奪い合いに。必要な工事も遅れがちです。災害が多発する時代、人々の生活再建に何が必要なのか、考えます。

出演者

  • 菅野拓さん (人と防災未来センター 主任研究員)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

相次ぐ災害 各地から悲鳴 人手足りず 復旧進まず

あの被災地のいまを、知っていますか?

鎌倉
「岡山県真備町です。4か月がたちましたけれども、住んでいる人の姿がほとんど見えないんですね。今も、こうして家は全部開け放って、生活が戻ってきていないということを感じます。」

今年(2018年)多発した災害。全国の被災地で建設業者が不足し、生活再建が進まない共通の悩みを抱えています。

真備町の被災者
「要はゴーストタウンですね。みなさんが期待と希望をもって、ここに戻って来られることを願っていますよ。」

地元だけでは人手が足りず、この職人は大阪から。全国で次々と起こる災害の復旧に追われているといいます。

大阪から来た職人
「宮城県にも行ってたんよ。もうずっと行くんよ、地震のところを、津波のところを。」

大阪北部地震の被災地。ここでも職人が足りず、5か月たっても家の修繕が進んでいません。

高槻市の工務店 経営者
「日本全国にひどい被害があるんでしょうけど、職人の取り合いというか。歯がゆいなという形ですね。」

被災直後に殺到するボランティアも、次々と新しい被災地へ。

ボランティアセンター職員
「一気にボランティアが、西日本豪雨の支援のほうに移ったと。」

被災者からは、悲痛な声が上がっています。

被災者
「忘れられるじゃないですけど、だんだんそっち(別の被災地)優先になってしまうのかな。」

「もう復興しているねって、逆に思われるほうが不安。」

武田:災害が相次ぎ、新たな被災地が次々と生まれる中、復旧が思うように進まないという現実。去年(2017年)の九州北部豪雨や、一昨年(2016年)岩手県を襲った、豪雨災害の現場でも見えてきています。こちらは、過去5年間で、国が激甚災害に指定した被災地のある道府県です。その数、実に29に上ります。

こうした各地で、復旧を阻む壁となっているのが、高齢化や人手不足など、私たちの社会が抱える構造的な課題です。

今もブルーシートのまま… 半年たつのになぜ?

今年6月、震度6弱を観測した大阪北部地震。死者は6人、5万5,000棟の家屋に被害が出ました。被害の99%は行政の判定で比較的軽微とされる「一部損壊」でした。

地震から5か月。通常は1週間程度で終わる屋根の修繕ができず、ブルーシートで覆われた家が今も目立ちます。自宅が一部損壊と判定された、高槻市に住む西田孝さん、69歳です。2階部分の損傷が激しいといいます。

西田孝さん
「ひびが入っている。」

あちらこちらの壁に、亀裂が走ったままでした。
シートで屋根を覆ったものの、雨漏りで床が水浸しになってしまうといいます。

「こんなに濡れたということですか?」

西田孝さん
「ここ(天井)も腐ってきてます。かびが生えてきてます。」

地元の工務店に修理を依頼したところ、工事は数か月待ち。費用は1,000万円以上かかると告げられました。

西田孝さん
「うわーっと思って。これは、どないしようかなと思って。」

しかし、一部損壊の家に対する公的支援は限られています。国の支援制度では、全壊・半壊で家を建て替えた場合、最大300万円が支給されます。一方、一部損壊は支援の対象となっていません。高槻市は独自に最大5万円を支給していますが、あとは自己負担になるのです。

西田孝さん
「ほんだらやっぱり、お金いりますやん。家を建て替えて、お金出して、今後は老後。どないしようかなと思って。」

一部損壊でも復旧が難しい現実。その背景にあるのが、建設業界の深刻な人手不足です。地元で工務店を営む、細越昇さんです。工事を担う下請けの職人が見つからず、これまで15件しか修繕できていません。まだ40件は手付かずだといいます。

工務店 社長 細越昇さん
「待ちますという方まで全部終わりきるのは、早くて1年、私は2年3年はかかると思っている。」

想定外だったのは、地震の3か月後に起きた台風21号でした。地震直後、細越さんは大阪の堺や奈良から職人を集め、屋根の修繕などにあたっていました。しかし、台風21号で職人の地元が被災。その結果、それぞれの地元の工事に回ってしまったため、人手を確保できなくなったのです。知り合いの業者などのつてを頼って職人の確保に努めていますが、メドは立っていません。

細越昇さん
「またお願いすると言ったら、ちょっと厳しい感じですか。何か月もだめ?」

「自分の地元も大事という形で、職人の取り合いといいますか。自分の地元を守るために帰るのは、もちろん正しいと思うんです。もうしょうがないなという状態ですかね。」

ボランティアが必要なのに…

さらに被災地を悩ませているのが、関心の薄れです。大阪北部で唯一活動を続ける、ボランティアセンターです。高齢の被災者に代わって、壊れた屋根をブルーシートで覆う活動を続けています。しかし、今、ボランティアの不足に悩まされています。シートは劣化するため、定期的な張り替えに人手が必要ですが、十分に活動できないといいます。
6月の地震の直後、ボランティアは急増。一時、1日あたり700人を超えました。ところが3週間後、西日本豪雨で状況が一変。現在は10人程度に減っています。

茨木市社会福祉協議会 ボランティアセンター 佐村河内力さん
「一気にボランティアが西日本豪雨の支援のほうに移ったと。屋根の作業はまだまだありましたし、一般的なニーズもまだまだあったんですけどね。」

被災地から悲鳴 “もうええわ…” あきらめる人たち

今、高齢者など収入が限られている人たちが、家の修繕を次々とあきらめ始めています。
1人で暮らしている坂口友子さん、82歳です。瓦が大きくずれたため、ボランティアにブルーシートを張ってもらい、しのいでいます。

「雨漏り?」

坂口友子さん
「雨漏りしてんだ。もうええわ思うてな。」

畳はいつも湿っているため、かびが生え、天井や柱にも広がっています。しかし、坂口さんの家は一部損壊のため、行政からの支援はほとんどありません。収入は月10万円の年金のみ。修繕せずに、このまま暮らしていくしかないといいます。

坂口友子さん
「150万円か200万円かかる言わはんねん。それまでどうなるか分からへんから、ブルーシートで。それまた今度お金が要るけれども、せやけどそんなんな、私だけやから、もうええわ思うて。あんまり子どもにもな、言いたくないねん、私も。なかなかうまいこといかんわ。」

人手足りず 復旧進まず

武田:人手不足と社会からの関心の低下、多くの被災地に共通する悩みです。西日本豪雨の被災地、岡山県倉敷市真備町に鎌倉キャスターがいます。

鎌倉:被災から4か月がたった真備町です。夜になりますと、ご覧のように明かりがほとんどなくて、真っ暗な闇に包まれています。私が今、お邪魔しているこちらのお宅も、平屋建ての天井まで浸水の被害に遭ったそうです。今夜は、ご主人の前田さんにお越しいただいています。少し中を見せていただけますか。この平屋建ての天井のぎりぎりまで、水が入ってきたそうです。

今はもう枠組みだけになっていますけれども、前田さん、この家はどうされる予定ですか?

岡田地区社会福祉協議会 会長 前田光男さん:もう今のところは、新築をやろうと思っております。

鎌倉:となると解体をしなければいけませんが、解体も人手不足でかなり順番待ちと聞きました。

前田さん:そうですね。私の場合は、204番という順番になっておりますので、来年(2019年)の2月ぐらいに解体工事に入ると思います。

鎌倉:実際、戻ってくるのはもう少し先になりそうですが、そんな中、前田さんはご自身で積極的にイベント活動を通じて地域のつながりを保とうとされているそうですが、いかがでしょうか?皆さん、戻ってきそうですか?

前田さん:やはり8割の方が今、他のほうに行かれていますけれども、そのうちには皆さん、帰ってこられるんじゃないかと思っております。

鎌倉:戻れない、あるいは戻らないというふうにおっしゃってる方は、どんなことを言われているんでしょうか?

前田さん:やはり高齢者ということで、いろいろな資金面とか、そういうのがありまして、「考える」という方が大勢おられます。

鎌倉:戻りたいという気持ちを皆さんお持ちですけれども、やはりそこには人手不足や、個々の家庭の資金の問題もあり、難しい現実に直面しているようです。

武田:住まいの修理や建て替えも今はままならない。暮らしの立て直しにすら踏み出せない。被災者の皆さんのそうした状況、なんとかならないものかという思いがします。その復旧を阻んでいる、建設業者の深刻な人手不足。技術者や職人など、建設業界の労働者は、最も多かった1990年代に比べて、187万人減少しています。

それに加え、取材からは、地元の業者に大量の工事が集中し、インフラの復旧すら進まない実態が見えてきました。

なぜ?相次ぐ“工事延期”

去年7月に起きた九州北部豪雨。300か所以上で土砂崩れが発生。40人が犠牲となりました。川が氾濫した大分県日田市・鶴河内地区。被災から1年以上たった今年9月に、ようやく護岸工事が始まりました。川の側に暮らす女性は、雨が降るたびに不安を募らせてきたといいます。

川の側に暮らす女性
「やっとここを始めただけですね。(豪雨の時)そこに一軒家があったのが流れた。雨が降ると怖いね。」

日田市内には、手付かずの場所が至る所に残っています。この道路は今月(11月)末に復旧工事が終わる予定でしたが、応急措置を施したままになっています。

市が今年度発注した道路・河川の復旧工事は69件。このうち17件について、業者から工事期間の延期が申請されていることが、今回の取材で分かりました。

建設業界に詳しい、日本総合研究所の山田英司さんです。人手不足による工事の遅れは、全国の被災地共通の悩みだといいます。

日本総合研究所 理事 山田英司さん
「建設会社の現場監督、統括している監督が、かなりひっ迫している状況。建設工事というプロジェクトをマネージする人間がいないので、工事がスタートできないことが結構ある。」

人手不足に悩む日田市の建設会社が、苦しい現実を知ってもらいたいと、取材に応じました。1キロメートルにわたる護岸工事を行っています。通常、この規模の工事では、測量や進捗状況を監督する社員が6人必要ですが、4人で対応しています。

「結構長い距離ですけど、4名で…。」

建設会社 現場監督 坂口康祐さん
「大変ですけど、やらなくちゃしょうがないですね。若干遅れ気味な状況ですね、今は。」

さらに、排水溝を造る専門の技術を持った職人を確保できず、この場所では3週間にわたって作業が止まっています。この会社では、他県から業者を雇い、対応してきました。しかし、交通費や宿泊費は会社の負担となるため、経営を圧迫しています。

建設会社 社長 河津龍治さん
「(人手が)不足してくると、どうしても経費がかかってしまいますよね。われわれとしては、もう人手が足りないとか言ってられない。できる限りのことをやっていますね。」

さらに、復旧工事が遅れる背景には、大量の工事を地元の業者だけで担っている実態があることが分かってきました。日田市では、市の発注する工事は原則的にすべて市内の72社が受注してきました。復旧工事で仕事が急激に増えた今も、この72社が対応しています。この会社でも、今年度15件の復旧工事を受注しました。近年、公共工事が減る中で生き残るためには、市が発注する工事はなんとしても確保しなければならないといいます。

河津龍治さん
「無理をして受注しているというのはありますよ。無理して受注してます。そうしないと、日田市の業者だけではだめだ、全県下(の業者)でいけとなる。われわれも、急いでやらなきゃいけないのと、ちょっとこれは後回しにしてもいいんじゃないかというのは、(日田市と)協議しながら、われわれとしてもやっているんですけどね。」

“災害多発時代”被災地の悩み 復旧をどう進める?

ゲスト菅野拓さん(人と防災未来センター 主任研究員)

災害が相次ぐ中、どう復旧を進めていくのか。全国の被災地を調査している菅野拓さんに話を伺いました。

武田:住宅の修理であるとか、インフラの復旧の現場で本当に深刻な人手不足があることが浮かび上がってきました。

菅野さん:被災地が増えてきて、昔であれば社会の対応力があったんだと思うんですが。例えば少子高齢化といわれたりしますが、なかなか社会自体が、対応する力を蓄えていない状況になっているんだと思いますね。高度成長期には、いっぱい職人さんもいたと思うんですが、今だと、道路をどんどん造っていくという時代ではありませんので、何か壊れたものを戻すのは難しいと。

武田:今回の大阪北部地震の被災の特徴、一部損壊の住宅に住まざるをえない人たちが暮らしを立て直せないという現状も見えてきました。

菅野さん:少し前であれば、どちらかというとそういう家を戻せないというのはごく限られた人たちの問題で、例えば高齢であったりとか、障害があったり、収入が少なかったり、そういう人たちの問題だったのですが、そういう層が増えている。ずっと支援が入らずに、生活を取り戻すまでに時間がかかってしまうと。ある種、かぜをこじらせたような形で、もっと生活再建が難しくなっていく。

注目の取り組みが…

被災者の生活支援。菅野さんが注目しているのが、鳥取県の取り組みです。2年前、震度6弱の揺れで1万5,000棟余りの住宅が被災しました。今、ほとんどの住宅が修繕を終えています。県は、国が支援の対象としていない一部損壊の被災者に対して、積み立ててきた基金から最大30万円の支援金を出したのです。

鳥取県 平井伸治知事
「一部損壊に手を入れないと、ほとんどの住宅が(支援の)対象外になる。災害の住宅復興を、鳥取県全体で思い切ってやってみようということになった。」

さらに県は、修繕に当たる人手の確保にも力を入れました。地震の直後、屋根の修理に奔走した地元の建設会社。県外から、ひとつきに延べ200人の職人を集めました。県は、その職人の宿泊費の一部を補助したのです。

建設会社 清水雅文さん
「年間でいうと何百万ですから、これ(支援金)があるとないとでは大きな違いだったと思います。」

それでも、270戸の住宅の修繕が進んでいません。その多くは、年金暮らしの高齢者や生活が苦しい世帯です。県は4月から、生活再建に何が必要か、個別に相談に乗る取り組みを始めました。

鳥取県職員
「すみません。決まったですかね?修繕。」

住民
「やって頂けたらええなと思っているんですけども、経済的によう出さんけ。」

鳥取県中部地震復興本部 西尾浩一事務局長
「もう打つ手がないか、もしかすると解決できる課題があるんじゃないかと。一つ一つ確認しているところですね。」

どう向き合い どう対応? “災害多発時代”の復旧・復興

武田:自力では立ち上がれないまま見過ごされているような高齢者、あるいは、所得が低い人たちがいることが分かってきました。こういう人たちをどうサポートしていけばいいのでしょうか?

菅野さん:平時の仕組みをうまく使うということなんだと思います。困窮してしまったり、仕事を失った方へのサポートを行うような、行政の窓口や支援団体がいたり、そういった活動をしていらっしゃる方は、地域の中にいろいろいるはずなんですね。そういったことを組み込んでいくというのが、1つの大事な発想だと思いますね。

人も財源も限られる中で、私たちは災害多発時代とどう向き合えばいいのか。菅野さんは、巨大土木工事を中心とした旧来型の復興は限界に来ていると考えています。住民の命と生活を守るために、不可欠なものは何か。優先順位をつけて対応すべきだと指摘します。

菅野さん:東日本大震災の対応のようなレベルの復興は、おそらく、今後の災害ではできないものだと思います。すごく多額のお金を使いますし、そんな資源というのはおそらく日本にはなくなってきて、今までの形の土木工事を主体としたような復興という作業は、もう今後は難しくなってきている。道路を造ってインフラを造ったとしても、人の生活が戻らなければ、そこはゴーストタウンのようになってしまう。そういった形の復旧とか復興の進め方ということではなくて、さあどこからやろう、どこを残そう、そういったある種、限られた資源をうまく使うような仕組みを作っていかなければならない。

武田:社会の対応力が低下する一方、当たり前のように起こる異常気象と自然災害。私たちには今後、どういった備えが必要なんでしょうか。年末に放送する特番で、さらに深掘りしていきます。災害の動画や情報を番組のホームページにお寄せください。皆様との共同取材による調査報道です。ぜひご参加ください。