クローズアップ現代

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2018年11月14日(水)
“孤独死サバイバル” 50代から備える

“孤独死サバイバル” 50代から備える

40~50代の現役世代に、孤独死への不安を感じ、備えようという“孤独死サバイバル”が広がっている。一人暮らしの人だけでなく、家族がいても「熟年離婚したら一人」「子どもに面倒を見てもらえない」と不安に感じる人が少なくない。専門家は、健康でネットワークを作りやすい40~50代のうちにどう備え始めるかが大きなカギと指摘する。現役世代の孤独死からの“サバイバル術”を徹底的に見ていく。

出演者

  • 財前直見さん (俳優)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

40・50代の終活に新たな動き “いざというときのために”

女優の財前直見さん、52歳。

今、自分の死に向けた準備、「終活」を始めています。70を超えた両親と12歳になる息子の4人暮らし。2年前、財前さんは死に備えた独自のノートを作りました。

女優 財前直見さん
「(息子の)凛太郎が20歳のときに私が60歳で。」

上の段に書き出したのが、自分の年齢と、そのときの息子や両親の年齢。

下の段には、息子が成人するまでの必要なお金や、両親の介護費用、そして年金の収入や生命保険についても書いています。

自分が1人になったとき、生活費に困らないようにするためです。

女優 財前直見さん
「若くても、いつ何どき何があるか分かりませんから、そういうときのために(ノートを)作った方がいい。」

さらに、別の紙には…。

女優 財前直見さん
「事故にあったとき、亡くなったときの連絡先。このノートのこと知らせてありますとか、家族がラインでグループになっていますとか。」

いざというとき、周囲が困らないよう、必要な情報をまとめました。

財前さん
「(大きくなったら)じいじの車を乗る?最初。」

財前さんの父親
「新しいのがいいよな、新品の方が。」

財前さん
「ぶつけるよ。ママの乗る?」

「終活ライフケアプランナー」の資格も取得。ふだんから地域の高齢者の相談に乗るなど、つながりを作っています。

財前さんの父親
「わし、125歳まで生きる。」

財前さん
「125歳まで生きるの?」

将来は1人で死を迎えることになると考える財前さん。体が元気な今のうちから備えておきたいといいます。

女優 財前直見さん
「両親が亡くなって、息子が結婚してお嫁さんと違うところに住むとなると1人になりますよね。いずれは1人になるかもしれない。なるべく迷惑をかけたくない、というのが前提にあるので。」

40・50代の終活に新たな動き 孤独死の不安 サバイバル術

自分の死をどう迎えるか考える、終活セミナー。今、40代・50代の現役世代が数多く参加しています。

講師
「人間は自然に死んでいくんです。」

参加者が抱く不安の1つが「孤独死」です。

セミナー参加者
「自分が1人なので、将来亡くなるとき、どういう死に方をするのかな。」

セミナー参加者
「いつ、自分もどうなるか分からないと思っているので。」

誰にもみとられず、死後、何日もたって発見される孤独死。高齢者だけでも、年間2万7,000人に上ると見られています。

孤独死に陥らないよう、家族とは違う新たなつながりを今から作っている人がいます。

フットケア店の客
「寝てしまいそう。」

フットケアの店を経営する、澤野ともえさん、43歳、独身です。

「待ち受けは何の写真ですか?」

“ゆるい家族”代表 澤野ともえさん
「“ゆるい家族”という関係性を作っていきたい方々です。」

澤野さんが結成した、通称“ゆるい家族”。メンバーは西日本各地に住む人たちです。

“ゆるい家族”代表 澤野ともえさん
「『絶対結婚するぞ、するものだ』だったのですが、そのプレッシャー、テーマを外したことによって、1人で生き続ける可能性があると、自分が気付いた。誰とも接していなかったら、『助けて』というときも誰にも届かない。」

(“ゆるい家族”メンバーの交流会)

澤野さん
「よろしくお願いします。」

この日はメンバーが集まった交流会。結成当初は同世代の独身の集まりでしたが、今は世代を超えて15人ほどになっています。何かあったときに支えあう関係を目指しているのです。メンバーは常日頃から、互いに安否確認をしています。

“ゆるい家族”代表 澤野ともえさん
「『大丈夫?みんな大丈夫?』と、ここで言い合っている。」

9月、台風21号が襲った際にも盛んにやり取りが行われました。

“ゆるい家族”代表 澤野ともえさん
「普段のライフラインが止まったりすると、途端に人間は生きていけなくなる。そのときに存在を感じるとか、励ましの言葉だけでも、つながっているんだな、大丈夫とか、少し落ち着く。」

“ゆるい家族”ができて4年。将来は、互いに近所に住むことも考えるような関係になっています。

“ゆるい家族”のメンバー
「みんなで協力し合いながら住むのもいいよなと思っている。」

澤野さん
「もし何か体力に自信がなくなったり、すぐ声をかけ合える存在が欲しいと思ったら、絶対そういう環境は。」

40・50代の終活に新たな動き 家族がいても孤独死の不安

孤独死への不安を抱いているのは1人暮らしの人だけではありません。今回、大手情報会社と共同で行ったアンケート。家族がいる人で、孤独死が不安だと答えたのは57%に上りました。

ウェブディレクター かつきさん
「こちらは集めた資料です。」

夫と2人暮らしをしている、ウェブディレクターのかつきさん、52歳です。

3年前、同世代の友人が病気で倒れたことをきっかけに、自分の死について考えるようになりました。夫は年上のため、将来、自分1人で死を迎えるのではないかと不安を抱いています。

ウェブディレクター かつきさん
「主人が年上っていうことと、基本的に女性の方が長寿ということなので、自然の摂理みたいなところから考えると、1人になる可能性は高いので、いつ、誰にも発見されないっていうこともありえるかもしれない。」

1人暮らしの高齢者は介護施設などに入れない可能性があります。支払いを担保してくれる保証人がいなければ、受け入れてくれないケースがあるのです。そこでかつきさんは、体が元気な今のうちに、医療や介護の体制を整えようとしています。3年前から高齢者の暮らすシェアハウスでボランティアを始めたのです。

「32週、9か月目に入りました。」

看護師
「逆子になったら言って。逆子体操、教えてあげるから。得意よ、逆子体操。」

ここで介護や医療の専門家とつながりを作り、困ったときに助けてもらえる関係を目指しています。将来的に、この施設に受け入れてもらうという選択肢も生まれたといいます。

ウェブディレクター かつきさん
「自分で自分のことがなかなかできなくなったとき、地域の力を借りることになるので、実際、地域の姿に今のうちに触れておくのが、すごく大事なのかなと思います。」

40・50代の終活に新たな動き “孤独死サバイバル”

ゲスト 財前直見さん(俳優)

武田:ずっとうなずいていらっしゃいましたけれど、皆さんのお気持ち、やっぱり分かりますか?

財前さん:やっぱり見つけてもらえなかったらどうしようっていう不安は、常について回ると思いますね。

武田:財前さん、まだ現役バリバリでいらっしゃいますけれども、終活を始められたきっかけは何だったんですか?

財前さん:きっかけは、元旦那さんのお母様が亡くなられたときに、何が大事なもので、何が捨てていいものなのかという区別がつかなかったことで、今、もし自分が死んだら、70過ぎた両親と小学生の息子が、私の後処理ができるのかっていう発想になったときに、これはたぶんできないなっていうのが、そもそものきっかけでした。

鎌倉:孤独死への不安ですけれども、VTRで出てきたアンケートによりますと、家族がいてもいなくても、その不安というのはあまり変わらないことが分かったんですね。配偶者や子どもがいない人の場合、不安を抱いているのは63%。一方、配偶者や子どもがいる人であっても不安というのは57%に上っているんです。

その40代、50代の現役世代が抱く死への不安なんですが、取材を進めていきますと、2つの不安があると感じました。1つは、今おっしゃいました「孤独の中で死にたくない」ですね。もう1つが、「死んだ後、人に迷惑をかけたくない」という思いだったんですね。財前さんもVTRの中で「迷惑をかけたくない」というふうにおっしゃっていたんですけれども、そんなに死ぬときに迷惑ってかけたくないものですか?どうですか?

財前さん:必ず迷惑はかけるんです。だけれど、それを必要最小限にしておきたいなっていうことですね、私の場合は。

鎌倉:最小限にする?

財前さん:結局、最期は書類とお金に追われてしまうので、そうなると、悲しんでいる余裕もなくなってしまいますし、何がどこにあるかって探すことから始めますよね。そういう無駄をなくすことっていうので、1冊のファイルにしているんですけれど。

武田:そのファイルをほかの方にも勧めていらっしゃるそうですけれども、どんな項目があるのか、ちょっと見せていただけますか?

財前さん:まず、一般的にあるエンディングノートですと、割と死に直結する内容が多いんですけれども、私の場合は「お母さんレシピ」、というと「あっ、お母さんのあの味が食べたい」って、復活させたいときってあるじゃないですか。そういうときに、お母さんの味をちょっと聞いておけば、コミュニケーションツールにもなりますし、自分が思い出の味を再現することもできるので、これはあったほうがいいかなというふうに思って作りました。

武田:そして、もう1か所はこちら。

財前さん:これは、エンディングノートというと、お父さん、お母さんたちのほうが作らなきゃ、なんで作ってくれないのっていう気持ちがもちろんあると思うんですけれど、そうじゃなくて、自分たちが聞いちゃおうっていう。お父さんに聞いちゃおう。

武田:インタビューシートみたいになっていますね。

財前さん:はい、インタビューシートになっています。

武田:「延命治療はどうしたい?」とか。

財前さん:一応聞きたいこと、大事なことも、ちゃんと聞いておけば安心かなって。

武田:「生まれ変わったら何になりたいですか?」とか「未来の地球はどうなっていると思いますか?」という質問もありますけれども、これはなぜ?

財前さん:やっぱり、ちょっと緩いところも入れておかないと、一応笑いも入れておかないと、なんかね、大事なとこだけ聞くのも失礼かなと思って。でも、いろいろ聞いていくうちに、知らなかったお父さん、お母さんの話が出てきますので、そういう感じで聞いていただけると、「あっ、そっか」って、新たな両親像みたいなものが自分の中に生まれるんじゃないかなと思っています。

鎌倉:そして、番組でも今回、視聴者の皆さんに、孤独死の不安を乗り越えるためのアイデアを募集しました。「人に迷惑をかけたくない」という40代1人暮らしの女性は、7LDKの古い家と蔵、ガレージをすべて取り壊して小さな平屋を建てるという大胆な整理を40代のうちに行ってしまった。

財前さん:早いですね。

鎌倉:一方、孤独の中で死にたくないという人からは、元朝日新聞の記者で、53歳独身の稲垣えみ子さんの実践はというと、「町がわが家計画」というものです。家の中での生活を、あえて完結しなくすることで外に出歩くようになって、これで人とのつながりが生まれたそうなんですね。例えばガスを止めることで、銭湯に行くようになったり。

武田:えっ、ガスを止めちゃうんですか?

鎌倉:あえてね。

財前さん:料理は?

武田:外で食べるんでしょうね。

鎌倉:本を買うのをやめてブックカフェに行ったりしているそうですよ。

武田:こうやって人とのつながりの機会を持つということなんですね。
終活に詳しい小谷みどりさんからのアドバイスなんですけれども、身元保証人になってくれたり、見守りを行ってくれる会社やNPOと契約をして、こういった所を利用するという方法です。自分が意思表示できなくなったときに、希望する医療や介護に結び付けるための「メッセンジャー」となる人が必要だというふうに言うんですね。
実はこんなデータがあります。孤独死した人のうち59歳以下の現役世代が、実に4割に上るという調査があるんです。

1人暮らしをしている現役世代の中には、孤独死を、今、目の前にある不安として感じている人が少なくありません。

孤独死 目の前にある不安 現役世代に何が?サバイバル術

この日、特殊清掃の業者が訪れたのは、孤独死をしていた50代の男性の部屋です。

特殊清掃士
「ご遺体の頭の部分がここにありまして、体がここで、足がこう曲がったような感じであったんです。」

死因は、がん。発見されたとき、死後1か月以上がたっていました。男性は結婚して子どももいましたが、離婚をきっかけに孤立していたといいます。

特殊清掃士
「誰にも助けてもらえず、体が衰弱していって、最終的にはこんな形で亡くなったんだなと思うと、言葉にならないですね。」

いつ孤独死してもおかしくない。万が一のため、40代から備えている人もいます。清掃の仕事をする、さおりさん、40歳。独身です。9年前、両親を介護するため、勤めていた会社を辞め、実家に戻りました。その後、両親は亡くなり、現在は1人暮らし。地域に知り合いもほとんどいません。病気を患っている、さおりさん。もし自宅で倒れても、誰にも気づかれないのではないかと、不安を抱いています。

さおりさん
「倒れたり何かしても、誰かが救急車を呼んでくれるわけでもない。孤独死は全然、自分にも身近にあるなといつも思っている。」

さおりさん
「ここです。」

去年(2017年)先祖代々の墓を閉じる“墓じまい”をしました。自分が死んだときには永代供養してもらうよう、すでに契約を結びました。さらに、家の中の物を減らし、小さな家に引っ越す“家じまい”も。せめて、物に埋もれて孤独死をしたくはないと考えているのです。

さおりさん
「突然何かあったときに、あのときにやっておけば良かったと後悔しながら死んでいくのも嫌だし、片がついたことで、ずいぶん気持ち的に楽になったし、万が一、ずっと1人で無縁仏になることはこれでありません。」

鎌倉:取材を進めると、死を見つめることで生き方を見直すことにつなげている人たちにも出会いました。

40・50代の終活に新たな動き 死を見つめ生き方見直す

半年前、家族と別居し、1人暮らしを始めた、康子さん、57歳です。

仕事をしながら2人の息子を育て上げた康子さん。しかし、夫や、その親族との関係に悩んできました。このままでは、孤独を感じたまま死を迎えるのではないか。康子さんは、自分の思いを終活ノートで整理しました。そして、家族との関係に縛られずに、人間関係を作り直したいと考えるようになったのです。

康子さん
「孤独とか居場所がないと、そのレベルではなく、無理してたんだろうなって。そこから逃げだしたいという。」

新たな人間関係を作りたいと、20年近く働いていた会社も辞めることにしました。今、自分で起業したいと、若い人に交じって職業訓練校でパソコンの資格取得に励んでいます。ファイナンシャルプランナーの資格も取った康子さん。今までと違うつながりが生まれています。

康子さん
「もし踏み出さなかったら、閉ざした状態の決まりきった知り合いの中でいただろうなと思うので、まだ何か月ですが、寄ってくる方がいらして、こういう出会いもこれからもっとあると思うので、そこを楽しもうと思っています。」

思い切った行動に出たことで、死への向き合い方が変わったという人がいます。映画監督の関口祐加さんです。

夫とは離婚し、専門学校に通う息子は離れて暮らしています。

「おばあちゃん。」(映画「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル」より)

同居している母親は認知症。9年間、在宅介護を続けてきました。将来、母親が死んだら自分一人になり、病院で延命治療を受けながら、孤独に死んでいくことは避けたい。関口さんは、自分の最期は自分で決めたいと考えるようになりました。

映画監督 関口祐加さん(61)
「母がいて、この人をどう最期までみてあげればいいというのは、すごく大きかったので、『自分はどう死んでいけばいいんだろう』と考えた。」

関口さんは59歳のとき、スイスを訪れました。訪問したのは、治る見込みのない末期がんの患者などに自死ほう助という形で安楽死を行っている施設。この施設では、患者は家族に見守られながら死を迎えていることを知りました。そして、安楽死を行うスイスの団体に登録。実際に安楽死を選ぶかは決めていませんが、不安はやわらいだといいます。

映画監督 関口祐加さん
「少し落ち着いたりするのかもしれない。最期はここに行けばいいんだと。持っていても、必ずしもそれを使うわけではなくて、持ってるがゆえに使わなくていいっていうね。そこはすごく、今まで考えていなかったので、そこにも勇気づけられた。」

(息子と歩く関口さん)

関口さん
「このちょっと先に馬の公園があって、馬ににんじんをね。覚えてない?」

関口さんは、自分が最期をどう迎えたいのか、息子に話しています。

関口さん
「一番すてきなのは、あなたにちゃんとお別れが言える。『私の息子になってくれてありがとう』とかさ。」

息子 先人さん(19)
「なるほどね。すごい、母ちゃんらしくていいと思う。」

関口さん
「応援するって言ってくれたのは、うれしいです。」

“孤独死サバイバル” “死”から生き方を考える

武田:死を意識して、どう生きるかを考える。まだ時間のある現役世代だからこそできることですよね。

財前さん:そうですね。みんな必ず最後は死ぬんだっていうことは前提にあるので、それを受け入れた上で、今どう生きるか、これからもし100歳まで生きるとしたらどうするんだっていう。今、現役だからこそ、もうちょっとお金の計画も立てていられるし、両親にも優しくしていられるし、もうちょっとコミュニケーションを取ってもらいたいなって、私は思っているんですけれど。

武田:お金と時間の計画を立てていくということも、まだまだできるということですよね。
ただ、それでも孤独死に不安を感じる人もいると思うんですけれども、どう乗り越えていけばいいんでしょうか?どう考えたらいいと思いますか?

財前さん:やっぱり自分が孤独なんだっていう思い込みをしているかもしれないじゃないですか。だから、もう少し自分を愛してあげたりとか、もうちょっと人を頼るとか、そういうことも必要なんじゃないかなと思います。

武田:迷惑をかけたくないという。

財前さん:その気持ちは分かるんですけれど、でも、何であのとき言ってくれなかったの?っていう友達もいるじゃないですか。やっぱりそういう友達とも外に出て会話をしてみるということが大事なんじゃないですかね。

武田:死を思い、生を見つめ直す。

財前さん:今を生きる。

武田:私もちょっとやってみようかなという気持ちになりました。

財前さん:皆さんも試してください。