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2018年10月30日(火)
あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜

あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜

番組では保険や投資信託などの金融商品をめぐって相次ぐトラブルを取り上げてきた。こうした中、国や業界団体の間でも、対策が始まっている。AIで契約時の会話をスクリーニングし不適切な営業を防ぐという最新技術。契約件数よりも、顧客との長期的な信頼関係の構築を重視するという証券会社。現役世代の要望に丁寧に耳を傾け「売りたい商品」ではなく「顧客が必要な商品」を販売するという地方銀行。長引く超低金利時代、私たち消費者は金融機関とどう向き合い、資産形成に資する金融商品をどう見極めればいいのか、考える。

出演者

  • 山崎元さん (経済評論家)
  • 永沢裕美子さん (良質な金融商品を育てる会世話人)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

あなたの資産をどう守る? 超低金利時代の処方箋

保険や投資信託などの金融商品を巡るトラブル。番組でも繰り返し取り上げてきました。

金融トラブルを体験した男性
「母はわからないんですよ。(金融機関は)いいようにお年寄りにつけこむ。」

大手銀行、地方銀行、生命保険会社など、さまざまな金融機関が関わっていました。番組には、契約者や金融機関の職員などから1,000件以上の情報が寄せられ、現在もトラブルはなくなっていないといいます。

今年5月 40代・男性
“80歳の母親が通帳を記帳しに行ったところ、その日のうちに1,000万円の投資信託を契約。取り消しを求めると『それはできない』と言われた。”

今年8月 50代・男性
“認知症の70代の母親が、1,000万円の外貨建て保険に加入。リスクなどまったく理解していなかった。”

先行きが不安な低金利の時代に、私たちは金融機関とどう向き合っていけばいいのか考えます。

武田:金融商品を巡るトラブル。どこまで広がり、金融機関はどう対応しようとしているのか。そして、私たちはどう防げばいいのか、しっかり考えたいと思います。
まずは、番組に届いた新たな事例と、トラブルを防止するための取り組みについてご覧ください。

トラブルを防ぐ取り組みも

番組に新たに寄せられたのは、全国で3,000万件以上の契約を結んでいるJA共済に関する情報でした。保険と同じ仕組みの共済を巡り、利用者に不利益な契約が結ばれているというのです。

みずから不適正な契約に関わったと話す、現役のJA職員が取材に応じました。

現役JA職員
「果たしてこれがお客さんのためだったのかという契約も、多々ありました。デメリットをそんなに言わず、メリットを推していって。」

この職員が行っていたのは、もともと契約している共済を新たなものに切り替えさせる手法。新たな契約のメリットを強調し、本来もらえるはずだった満期金がなくなるデメリットを説明しないことがあるといいます。

現役JA職員
「毎年毎年のノルマがなんとかなる数字だったものが、もう今ではよっぽど頑張ってもちょっと厳しいなというのがあって。お客さんには申し訳なかった。」

JA共済連では、その内部資料で、デメリットなどを告知しないこうした行為を禁止しています。
私たちが取材した今回のケースについては「承知していない」としたうえで、「仮に不適正な事案があれば、適切に対応する必要がある」と回答しています。

さらに、不適正な事案について、すでに対策を強化しているとして取材に応じました。

JA共済連 調査広報部 課長 川村晃司さん
「私どもはこういったラブレッツという(携帯)端末を使いまして…。」

利用者に不利益な契約が結ばれないよう、万全を期して導入したのが、この端末だといいます。

ここに利用者の情報を入力することで、必要な保障額をより具体的に理解できるようになり、過剰な契約を防げるといいます。契約を結ぶ際には、掛金や満期の払い戻し金がどの程度あるか、いつ保障がもらえるのかなどについて、最低3回は確認作業を行います。

田中
「(高齢者などには)ひとつひとつ理解してもらうのがすごく大変だと思う。」

川村晃司さん
「しっかりお客様とひとつひとつ確認しながら説明することができる。そういったコンプライアンスの観点からも、非常にいい機能だと感じています。」

また、契約を進める職員が不正を働かないよう、監視する仕組みも整備したといいます。

川村晃司さん
「入力した痕跡、ログが残りますので。」

この端末には、どの項目をどのくらい時間をかけて説明したのかがすべてデータとして記録されています。そのデータはJA共済連内の不正を監督する部署に共有され、契約期間が不自然に短くないか、金額が大きすぎないかなどの点をチェックしているといいます。

川村晃司さん
「利用者本位の保障提供をしっかりとするのが我々の使命ですから、当人だけじゃなく複数人で、しっかりと確認していくのが目的です。」

ゲスト山崎元さん (経済評論家)
ゲスト永沢裕美子さん (金融審議会委員・良質な金融商品を育てる会 世話人)

田中:JA共済連によりますと、現場にタブレット端末を導入して以来、年間3,000件以上あった苦情が2割ほど減少したといいます。また、取材に応じたJA職員が語った「ノルマが厳しい」という点について、JA共済連は「承知しておらず、不適正な事案があれば適切に対応する必要がある」と回答しています。

武田:金融庁の審議会委員を務め、金融トラブルや紛争の解決にも関わっていらっしゃる永沢さん。やはり消費者の声をお聞きになっていると思いますが、トラブルが相次いでいるという実感はありますか?

永沢さん:金融トラブルというとお金持ちの方のものというふうに思われがちなのですが、実際には、ごくごく普通の方、特に私の印象では、一人暮らしの高齢者の方が1,000万円、あるいは2,000万円というような、かなり大きな規模で投資信託や保険を契約されて「こんなはずではなかった」というケース。それから特にトラブルになっているのが、お盆やお正月にご家族、お子さんが帰省されて、「お父さん、どうしてこんなの買っちゃったの」というようなところから、子どものために買ったものなんですけれども、そこでトラブルになって発覚するということが増えていると実感しております。
90年代の後半に金融ビッグバンがあって、それまで私たちに身近な銀行などで、投資信託や保険を売るようになってきていますので、より多くの人がこういった投資性の商品に触れるようになっていることも、トラブルが増えている一因ではあると思っています。

田中:先月(9月)、番組では銀行、生命保険会社、証券会社など、全国およそ170の金融機関に緊急アンケートを実施。そして154社から回答を得ました。質問項目としては「金融機関による不適切な営業に対する認識」「日銀の緩和政策による影響」などについて尋ねました。
例えば、日銀の低金利政策については、87.5%が「経営上、影響を受けている」と答え、その理由としては「収益の悪化」、そして「低い貸し出し金利による競争の激化」が挙げられていました。そして収益が悪化する中、87%が保険や投資信託の販売などによる手数料ビジネスを拡大している実態も明らかになりました。

武田:銀行、証券、生命保険など、金融機関で働いたご経験もある経済評論家の山崎さん。いろいろな背景がありそうですけれども、山崎さんはこのトラブルが多発する要因、どうお考えになっているのでしょうか?

山崎さん:やはり運用商品の販売の手数料というか、収益が高すぎることがあるのだと思いますが、それとともに、今、金融機関の経営悪化のスピードが、想定以上に速い。これはビジネスがうまくいっていないということ、例えば、いい貸し出し先がないということに加えて、日銀の低金利(の影響)もあるということですね。ですから、それで手数料ビジネスに拍車がかかっています。
例えば、預金を1,000万集めて、それを住宅ローンで貸したとして、例えば金利が1%で、せいぜい10万円、ずいぶん手間もかかるわけですが、例えば、投資信託が1,000万円売れると、販売手数料が3%だと30万円入る。それから残高があるかぎり、運用管理の手数料が1.5%ほどあるので、また15万円ぐらい、これを運用会社と販売会社とで分け合いますけれども、収入になるということで、こちら側で収益を稼ぎたい、ここで稼ぐともうかるんだということで、力が入っているということがあります。
ただ、低金利という話は出てきていますけれども、じゃあ、例えば低金利が終わって、貸し出しがもう少し収益を得られるようになったからといって、今の運用商品の手数料ビジネスの収入を放すかというと、そういうことではないと思いますね。ですから、そもそも手数料の水準が高すぎるということ、それからアドバイスなどといったサービスに見合ったものになっているのかどうなのか、それが合ってないということに根本的な問題があると思います。

武田::では、トラブルをどのようになくしていけばいいのでしょうか。最新の技術を使ってトラブルを防ごうとする、新たな取り組みを取材しました。

あなたの資産をどう守る? トラブルを防ぐ取り組み

田中
「こちらの会社では、金融機関の不正防止にAI・人工知能を活用しようという取り組みを進めています。」

人工知能によるデータ解析が専門のこの企業では、金融庁やメガバンクなどと協力して金融機関の不正防止に取り組んでいます。

田中
「電話をしている記録が残っているということですね?」

これは、金融機関の社員と客が交わした会話を記録した音声データや報告書です。社員が作成した報告書の中から、AIが問題のあるやり取りを検知します。

FRONTEO 三邊達也さん
「例えば(客が)『いつまで持っててもつまらないから』とか、『新しいものが好きだから、この投資信託にしようかな』とか。」

例えばAIがはじき出したのは、報告書の中で客が語ったとされる「いつまで持っていてもつまらない。新しいものが好き」という表現。社員は問題ないと報告したものでも、AIは「客の購入動機があいまいで、トラブルに結び付く可能性が高い」と判断しました。

また、家族から「頭の体操になると言われた」という高齢の客の言葉は、一見、家族と合意が取れているように見えても、実際はそうでないケースが多いとAIは判断しました。

田中
「これをAIが読み取って、“これはリスクがあるぞ”と判断しているということですか?」

三邊達也さん
「人工知能はキーワードを使って検知しているのではなく、言葉のニュアンスであったり、文脈を中心に検知をしていきます。」

田中
「具体的なキーワードがなくても、意味を理解してくれるということ?」

三邊達也さん
「そうですね。」

今年(2018年)5月、金融庁のサポートを受け、銀行や証券会社が参加して行われた実証実験では、人間だけでやっていたときに比べ、チェックの時間が42%短縮し、問題の検知数は2倍になったという結果が示されています。

三邊達也さん
「ある程度決まった不正であったり、リスクのパターンというのがありますが、そこはある程度AIに任せてしまい、本当に人間にしかできないところは、これまで以上に人間が時間をかけて対処できるようになる。」

超低金利時代 あなたの資産をどう守る?

武田:AIを使った不正防止の取り組み、これは本当に効果があるのでしょうか。どう評価されますか?

永沢さん:AIの可能性というのは、私にはちょっとまだ今の段階では分かりかねますけれども、先ほどのビデオを見るかぎりは、やはり人間では認識できないような不適切なセールスパターンというのも捉えてくるようでもあり、その可能性に私は期待したいと思います。何よりも、金融機関のほうもこういったものでトラブルを減らしたい、防止したいという取り組みを、新しいチャレンジとしてされていることは、一つ評価しておくべきだと思っています。
ただ、ここで申し上げたいことは、先ほど、山崎さんから高い販売手数料の話が出ましたけれども、こういったことをやっているから、高い販売手数料が正当化されるというようなことは、あってほしくないなと思っております。やはりコストを下げていくという取り組みは、金融機関には常にしていただきたいと思います。

田中:このように不正防止の取り組みは始まりましたが、金融庁はさらに踏み込んで、金融機関に対し、顧客の資産形成を推進するべきだとしています。先月、公表された金融庁の方針によりますと、一般に長期の所有が資産形成につながりやすい投資信託の平均保有期間が短期化していることや、リスク性商品の販売額が決算時期に増加していることなどを指摘。実際、大手銀行や地方銀行などで投資信託を保有している顧客の46%が損失を抱えていることが、金融庁の調査で明らかになっています。

 

武田:顧客のニーズに本当に合った営業活動になっているのか、まだ少し疑問がありますけれども、改めて顧客本位で、なおかつ利益を上げるというビジネスモデルが求められているということなんですね。

山崎さん:顧客本位で顧客の資産が育つような、そういう例えば手数料水準でないと、ビジネスとして継続可能でもないし、栄えていくこともできない。それはもともとそういうことだし、原理原則として正しいことだと思います。それを言っていることは、金融庁としていいことだと思うんですけれども、ただ、経営の心がけをもうちょっとちゃんとしなさいとか、あるいはその人事評価の体系を見直せとかというようなことだと、ちょっと小手先の対策だと思うんですね。やはりそもそも金融商品の手数料を下げる、あるいは一人一人の顧客からどれぐらい手数料を取っているのかということ自体を数値化して、監督できるようにする。手数料はどれぐらい取っています、これはサービスに見合っているかどうかということを顧客が分かるように、例えばレポートさせるとか、そういう仕組みをきちんと作っていくことを通じて、もう少しやらないといけないと思いますね。

武田:金融業界を取り巻く環境が変わる中で、金融機関の役割を大きく見直す取り組みも始まっています。

あなたの資産をどう守る? 超低金利時代の処方箋

番組のアンケートに対し、「お客様本位の営業体制の構築を促進している」と答えた金融機関があります。
大和証券が取り組んだのは、顧客と向き合う営業部の人事評価基準の変更です。契約の件数よりも、顧客から預かった資産をどこまで増やすことができたかを示す、「預かり資産高」を最優先の基準に据えたといいます。かつて、「短期的な売買で手数料を稼いだ」「不必要な商品を売った」などと批判を受けた、苦い経験があったためです。

預かり資産高が増えることが、顧客の満足につながっているかを確認する取り組みも始めたといいます。

「こちらが今、弊社で取り組んでいるNPSのアンケートになります。」

これは、金融商品を購入した顧客に対して、今後、家族や友人に大和証券を勧めたいかなどを尋ねるアンケート。顧客との長い信頼関係こそが会社の利益を生むと考え、導入しました。

アンケート結果は現場の職員にフィードバックされ、組織内で共有。評価が10段階で8を下回るケースは、上司とともに改善策を検討することになっています。

「お客様からの具体的なコメントとしては、『自身の投資意向、ニーズの把握をもう少ししてほしい』と。」

大和証券 執行役員 高塚峰生さん
「かつては本当の意味でお客様に選ばれる、寄り添うような体制が不足していた部分もあるのではないかと。お客様と長い時間軸で接点を持つことによって、お客様からの紹介案件が増えてきている。」

人口減少に苦しむ地方都市で、顧客との関係重視が生き残りにつながると、新たな取り組みを始めた金融機関もあります。秋田市に本社のある、北都銀行の頭取・斉藤永吉さんです。10年前から、数字や効率を最優先する銀行の常識を見直す経営を進めているといいます。

北都銀行 斉藤永吉頭取
「お客様というよりも目標がすべてであって、そういう銀行の常識みたいなものがあったけれど、転換をしなければいけない。」

まず変えるべき常識は、保険の販売方法でした。銀行内に保険相談専門の窓口を設置。予約制で、夕方や土日祝日にも対応できるようにしました。高齢者よりも、保険を必要とする現役世代のニーズに応える取り組み。契約に占める割合は6割を超えています。

「いらっしゃいませ、おはようございます。」

相談は1回2時間、それを3回、丁寧に繰り返すのが基本。専門のアドバイザーが将来の希望や不安を丁寧に聞き取り、「売りたい商品」ではなく、「必要な商品」を提案しているといいます。

北都銀行 ライフプランアドバイザー 平川桂さん
「お車もお好きですしね、使い道ができたときには、解約してお使いいただくのも可能ですよ。そのときのリスクとしては…。」

解約による元本割れなど、リスクについてもしっかり話し合い、無理な販売をしないことを鉄則にしているといいます。

保険の契約者(30代・会社員)
「全然関係ないところで保険の営業があると、ちょっと反発してしまう。納得いくまで丁寧に説明していただけたので。」

一人当たりに時間をかけるこの方法では、対応できる客の数が減り、業績が悪化するのではないかという不安が当初はありました。しかし実際には、結婚、出産など、ライフステージが変わるごとに顧客が新たな契約を求め、人口が増えない中、毎年およそ3,000件前後の新規申し込みが生まれているといいます。

北都銀行 ライフプランアドバイザー 平川桂さん
「お客様が欲しいもの、お客様の不安を取り除くためのコンサルティングをしているので、お客様に感謝されることもすごく多くなった。お客様にとっても自分にとっても、よかったと思います。」

個人向けビジネスで無理をしないためにも、銀行の本業とも言うべき事業者向けの融資の常識も見直しました。
2年前に完成した、地元企業が経営するバイオマス発電所です。北都銀行が中心にまとめた106億円の融資によって、スタートしました。これまでは、十分な担保がない企業には高額の融資は困難でしたが、事業そのものの収益性を精査したうえで、貸し出しすることにしました。去年、この事業の経常利益は1億6,000万円。今後、地元に4,700人以上の雇用が生まれると期待されています。

これまでの常識を見直してきた北都銀行。現在の年間利益は20億円余り。赤字に陥る地方銀行が増える中、堅実な経営で注目され始めています。

北都銀行 斉藤永吉頭取
「お客様との信頼関係を結びつけるためのビジネスモデルなので、私は継続性にやっぱり価値があると思いますので、それは必ず将来に返ってくるものだと思う。」

田中:番組が行ったアンケートにも、顧客との関係を見直す新たな取り組みが数多く寄せられました。十六銀行や西日本シティ銀行でも、ご覧のような取り組みが行われています。

武田:トラブルに遭わないために、私たちは何ができるかということなのですが、山崎さんには、金融商品を選ぶときのポイントを挙げていただきました。

山崎さん:「年間0.5%以上、トータルの手数料で」ということですが、それ以上払うのは高いという、まずそういう感覚を持ってほしいし、保険のように、手数料の分からないものはまず避けるということですね。いい例としては、金融庁が今、推進している「つみたてNISA」で取り上げられているような商品は、良心的なものが多いです。つみたてNISAの商品で手数料の安いもの。それから相談する場合に、商品を購入する相手と、相談する相手を別々の人にすることが大事です。

武田:そして、永沢さん。

永沢さん:トラブルに遭った場合に、「金融ADR」という制度が新たに作られています。裁判を諦めてしまうという方は、ぜひこちらの制度を検討していただきたいと思います。

武田:紛争を解決する機関ですね。

永沢さん:それから消費者も「金融リテラシー」を身につけることと、さわさりながら高齢者は教育では救えないので、やはり社会全体で高齢者を守る仕組みを作っていくことは必要だと思っております。

武田:金融機関には顧客本位で利益を上げる、その新たな道を本気で追求してほしいと思います。