クローズアップ現代

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2018年9月6日(木)
あす告示 自民党総裁選の舞台裏

あす告示 自民党総裁選の舞台裏

総理大臣を事実上決める自民党総裁選。安倍首相と石破元幹事長の一騎打ちの戦いは、7日の告示を前に “安倍優勢”となっている。背景に何があるのか?舞台裏を密着取材!

出演者

  • NHK記者
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

自民党総裁選 異例の始まり…

武田:あす(7日)告示される自民党総裁選挙。今日(6日)未明の北海道の地震を受けて、あすから3日間は選挙活動を自粛することになりました。総理大臣を決めることにもなる選挙は、異例の形で始まります。

自民党総裁選 舞台裏にカメラ密着

安倍総理大臣が優勢とされる自民党総裁選挙。現場で何が起きているのか。カメラは、この2か月、戦いの舞台裏に密着してきました。

今週月曜。都内のホテルに自民党の国会議員が次々と現れました。安倍総理大臣を支持する陣営が開いた集会。党内7つの派閥のうち5つの派閥を中心に代理を含めて340人余りが集結しました。

安倍首相
「あと3年、人生をかけて、全力をかけて、子どもたちに、孫たちの世代に美しい伝統あるふるさとを、そして誇りある日本を引き渡していくために、頑張り抜いていく決意でございます。」

国会議員票405票のうち7割を固め、残りの党員票405票でも攻勢を強めています。

一方、一騎打ちの戦いを挑む石破元幹事長。

石破元幹事長
「未来は過去の延長線上にはありません。わが日本国が直面する大きな課題に対応していくためには、日本の設計図を書き換えていかなければいけない。」

党員票でうねりを起こし、巻き返しを図りたいと地方を精力的に回っています。

森友学園や加計学園を巡る問題などをきっかけに、安倍内閣の支持率は一時「支持」と「不支持」が逆転。先月(8月)も政権への評価がきっ抗する中、総裁選はあす告示を迎えます。

なぜ“優勢”? 安倍陣営の内幕

「安倍の次は安倍」と繰り返し、安倍3選の旗をいち早く振ってきた二階幹事長です。7月上旬。地元、和歌山県で開かれたパーティーで早くも党員票の掘り起こしに着手していました。

二階幹事長
「自民党は何をなすか、それぞれの立場から一歩一歩ご協力を。」

会場に用意されていたのは、安倍総理大臣のステッカーが貼られた色紙。参加した党員に安倍総理大臣への支持で結束するよう促していたのです。

吉井和歌山県連幹事長
「和歌山は安倍首相で固まろうと。大きな勝利をおさめたいと思っております。」

この日、県連の幹事長が地元の企業を訪ねていました。

吉井和歌山県連幹事長
「木下さんのところは350人ほどの党員がありますし、安倍さんに投票してもらえるように依頼して頂けませんか。」

建設会社社長 木下英文さん
「こちらこそよろしくお願いします。頑張ります。」

支持拡大を求められた木下英文さん。社員60人を抱える建設会社の社長です。この5年、公共工事の増加などで売り上げは倍増。正社員も10人以上増やしました。

建設会社社長 木下英文さん
「アベノミクス以来活況で、まだ数年は忙しい。」

地元の景気や雇用が上向きつつあるという木下さん。安倍政権の継続が望ましいと考えています。

建設会社社長 木下英文さん
「(いまの政治には)問題もいろいろありますし、納得のいかないこともたくさんありますけれども、安倍さんでしていただく以外ないのかな。」

圧勝を目指す安倍陣営。無派閥から陣営の幹部に加わった菅原一秀議員です。地元日程の合間を縫って、陣営の仲間と連絡を取り合う菅原氏。態度が未定の議員への働きかけを強めています。

無派閥 菅原一秀衆院議員
「先生のご担当のみなさん(応援集会への)出席どんな感じかなと思って。先生のグループだけで10人。それと?」

無派閥 菅原一秀衆院議員
「ちょっとしたことで、がらっとムードが変わったりすることもある。数は力というように、それも6年間、せっかくの実績があるわけだから、安倍総理が活躍する、その基盤をしっかりいま作る。」

この1年、予算委員会の筆頭理事を務め、最前線で安倍政権を支えてきた菅原氏。森友学園や加計学園を巡る問題で国会が紛糾する中、厳しい世論を肌で感じてきました。

無派閥 菅原一秀衆院議員
「政治への信頼回復のために、どうあるべきか。」

ただ、自民党の中では、アベノミクスや外交の実績を考えると、安倍総理大臣の続投が望ましいという意見が大勢を占めていったと言います。

無派閥 菅原一秀衆院議員
「世界の国際情勢が変わる中で、日本がリーダーシップを発揮するときに、ひとつの国内的な課題があって、しかもそれが法的な問題はない。もっといま日本にとって大事なこと、安倍総理、安倍政権がやらなければいけないということを、たぶん自民党の議員は感じていたんだと思う。だから次の総裁選があるから足引っ張ろうとか、そういった小競り合いはすることはなかった。」

立候補表明を鹿児島で行うなど、地方を精力的に回る安倍総理大臣。党員票でも石破氏を上回るため、地方議員や支援者との懇談を繰り返しています。

安倍首相
「もっともっと地域が夢がある地域になるように、われわれも力を入れていきたい。」

全国各地で連日集会を開く安倍陣営。支持を広げる難しさに直面する議員もいます。岸田派に所属する当選2回の大西宏幸議員です。大西氏は当初、派閥を率いる岸田政調会長の立候補に強い期待を抱いていました。

岸田派 大西宏幸衆院議員
「どれだけ干されたとしても、岸田会長に出てもらいたい気持ちは変わらない。」

しかし、岸田氏は立候補を見送り、安倍総理大臣への支持を表明。大西氏の支持者からは、党内が安倍支持へと雪崩を打つ現状に厳しい声が上がっています。

自民党員
「弱いもんいじめやっているんやから、どっちみち勝負あった。自民党って人材いないんかなというのがいまの思い。まともな人おらんのかな。」

岸田派 大西宏幸衆院議員
「人材はいっぱいいるんですけど、ただ単に(時が)満ちてなかったり。」

自民党員
「干されるとかな、民主主義やからな。言いたいことはきちっと言って、よくしていこうというのが民主主義。数の力だけやもん。」

安倍総理大臣への投票を呼びかけるよう、派閥の幹部から頻繁に指示を受けている大西氏。

岸田派 大西宏幸衆院議員
「何でもおっしゃってください。手足として頑張ります。」

岸田派 大西宏幸衆院議員
「(岸田氏が)熟慮に熟慮を重ねた結果であるので、これは岸田文雄会長の考え方にわれわれは合わせていかないといけない。次の総裁選挙に生かすように僕ら努力しないといけない。」

この日も後援会の幹部に対して、派閥の今後のためにも今回は安倍支持で結束してほしいと理解を求めました。

岸田派 大西宏幸衆院議員
「安倍首相がずっとやってきたことの果実が満ちる時でもある。」

後援会の幹部
「(安倍政権)『長いな』というイメージは持っているし、長きによるいろんな膿(うみ)も出てきている。」

後援会の幹部
「何が課題として一番最優先的に取り扱うべきかという議論が足らない。」

岸田派 大西宏幸衆院議員
「われわれ(岸田派)の考えていることもプラスアルファして主張していただくよう(安倍首相に)申し上げていますので、その部分を踏まえて、ご意見を言わしていただきます。」

巻き返しは? 石破陣営の内幕

一方。

「フレー、石破ー!」

安倍総理大臣との直接対決に臨む石破元幹事長。この2年、政府や党の要職を離れ、全国各地の視察や講演に力を入れてきました。

6年前の総裁選挙で、他の候補を圧倒した党員票を足がかりに支持を広げる戦略です。森友学園や加計学園を巡る問題では、時に安倍政権の姿勢を批判してきた石破氏。立候補表明で掲げたのは「正直、公正」というキャッチフレーズでした。

石破元幹事長
「現政権がどうのこうのではなく、私自身、正直でありたい、公正でありたい。いまの政権は公正だね、正直だね、そういう思いを持ってもらわなければ、政治はその役割を果たすことが出来ない。」

ところが、石破氏の姿勢に対し、陣営に加わった竹下派の幹部から不満の声が上がりました。

竹下派 吉田参院幹事長
「相手を攻撃するという個人的なことでの攻撃は、非常に私は嫌悪感を感じている。」

劣勢をどう挽回するのか。先週、石破派の幹部が集まっていました。安倍総理大臣との政策論争の機会が陣営が求めていたほどには確保されず、対策を協議していたのです。

石破派の幹部
「公開討論は2回だけ、街頭演説は持ち時間15分。これで1国の総理大臣を決めるというのは。」

石破派の幹部
「総裁選の期間中、(安倍首相が)外遊されるのは本当に残念。」

石破派の幹部
「討論する機会が減らされている分、訴えるとか、ウェブ使ってとか、特に街頭ですね。その期間は特に地方も含めて。」

石破陣営で選挙戦の広報戦略を担う平将明議員です。

47都道府県それぞれに向けたビデオメッセージを作成するなど、インターネットでの発信に力を入れています。

石破元幹事長
「大分県のみなさま、こんにちは、石破茂です。」

石破派 平将明衆院議員
「お金もっとあったら、いろんな郵送したり電話かけしたりとか、各都道府県ごとに集会やったりとか出来るんですが、うちは国会議員も人数少ないし、お金もないし、人もいないので。」

組織的に動く安倍陣営に対し、個人のつてを頼って地方を回り続ける石破陣営。

石破派の幹部
「よかったら、ナマ石破さんですよ。」

「頑張ってください。」

「地方創生」を柱に掲げ、地道に政策を訴えることで活路を見いだそうとしています。

この地域で農業を営む本多孝雄さんです。過疎化によって担い手不足が進むことに危機感を抱いている本多さん。石破氏のこれまでの姿勢に共感し、一票を投じようと考えています。

農家 本多孝雄さん
「去年もうちの村にも足運んでもらっているし、やっぱり地方のことはよく分かってると思う。ちょっと厳しいのかなと思うけれども、そんな中でも、あえて手を挙げているという中では、頑張ってもらいたいという気持ちはあります。」

石破派 平将明衆院議員
「(党員票は)幹部をおさえたから、全部おさえたということには当然ならない。われわれは一人ひとりにちゃんと訴えかける、一人ひとりにちゃんと情報が届くようにする。まずはそこを丁寧にやる。」

あす告示 自民党総裁選の舞台裏

武田:総裁選はあす予定どおり告示され、立候補の受け付けが行われます。ただ、災害対応を優先するために、あす予定されていた立ち会い演説会や共同記者会見は延期され、本格的な論戦は週明け以降となる見通しです。

田中:安倍総理大臣が国会議員票405票のうち7割の支持を固める中、焦点となっているのが、同じく405票の党員票を巡る戦いです。6年前はこの党員票で、石破さんが40の都府県で最も多くの票を獲得。安倍さんを大きく引き離しました。今回、安倍陣営はこの党員票で少なくとも過半数を獲得したいとしています。勝敗のみならず、その勝ち方が政権の求心力にも大きな影響を与えることも予想され、注目されているんです。

武田:政治部の吉川さん、今回、安倍さんがこの国会議員票で圧倒的に優勢になっている背景は何なのでしょうか?

吉川衛記者(政治部 与党キャップ):まずは現職優位ということが挙げられます。これまで現職の総裁が選挙戦に臨んだのは9回あります。このうち8勝しておりまして、ほとんどが圧勝でした。次に160人超という数字です。これは安倍総理大臣の下で初当選した議員の数なんです。実に党内の4割に上ります。またポスト安倍を味方につけたということもあると思います。岸田政務調査会長や野田総務大臣は、今回立候補せずに、安倍支持に回りました。人事で処遇をして取り込みを図ってきたということが功を奏したと言えると思います。さらに野党への転落を経験して、党内で結束を重視する雰囲気が強まっているように思います。石破さんのように、異論を唱える議員に後ろから鉄砲を撃つなという声も、たびたび耳にしました。

武田:そして、焦点は党員票。この情勢はどうなっているのでしょうか?

吉川記者:党員は100万人を超えますので、なかなかふたを開けてみないと分からないというのが正直なところです。今回、安倍総理大臣は地方議員と懇談を重ねていることに加えまして、党の有力な支持基盤である業界団体の幹部と直接面会して要望を聞くなど、異例とも言える対応を取ってきています。ただ、陣営内でも、6割を取るのはなかなか難しいんじゃないかという声も出ていまして、組織を使って、引き締めを図っている状況です。一方、石破さんは、“握手した数しか票にならない”というのが口癖なんです。6年前の総裁選挙のあと、全国1700余りの市町村のうち、400の市町村を訪問し、握手を重ねてきたと、自信をのぞかせています。陣営では党員の意識は一般の世論に近くて、国民の間に少なからずある安倍政権に対する不満を取り込めるのではないかと期待しているんです。

武田:今後、本格化する論戦にどう臨むのか、両陣営の幹部に聞いてきました。

安倍陣営に問う 論戦にどう臨む?

武田
「まずは安倍陣営です。連続3期目の当選を目指す今回の選挙戦。何を重点に訴えていきますか?」

安倍陣営 甘利明選対事務総長
「かつて日本はアメリカとともに世界のけん引役だった、特に経済を中心に。そのポジションを取り戻そうと。外交では、日本の総理大臣がこれだけ存在感を示した例は戦後一度もない。トランプ大統領も、他の人が言うならどうかと思うが“シンゾウが言うなら耳を傾けよう”となる。いま世界は非常に難しい状況。この人の言うことなら耳を傾けようという人がいなくなったら、世界はバラバラになってしまう。その事実を党員や国民のみなさんに理解してほしい。そうするための選挙戦だと思う。」

武田
「『森友』『加計』問題で低下した信頼の回復を課題としてあげる声や、長期政権への懸念を示す声もある。」

安倍陣営 甘利明選対事務総長
「説明の手順等で丁寧さを若干欠いたことが、誤解を拡大した点もあるかと思う。安倍首相は自身に『丁寧に』『謙虚に』毎日言い聞かせてやっている。これは理解をもらえると思う。安倍晋三候補者の実態と、一部国民の感じている印象とのかい離を埋めたい。政治家安倍晋三像がちゃんと伝わるように、この選挙戦の間に努力していきたい。」

石破陣営に問う 論戦にどう臨む?

武田
「続いて石破陣営です。6年間実績を積んだ安倍総理に挑戦をするということになる。何を重点に訴えていくか。」

石破陣営 鴨下一郎選対副本部長
「安倍さんの実績は認めた上で、これから3年、このままの政策でいいのか。こういうことに国民のみなさんも疑問を持ち始めているところがある。アベノミクスは前半は成功したが、地方、中間層のサラリーマンのみなさん、こういう人たちまで行き渡っているかどうか。トランプ大統領と安倍さんは非常に親しい。これはメリットもあるが、場合によると友情と国益にそごを来すこともあり得る。日米同盟は大事だが、トランプ大統領との距離は明らかに安倍さんと違う。」

武田
「国会議員の支持では、現在大きく水をあけられている状況だが?」

石破陣営 鴨下一郎選対副本部長
「総裁選挙は議員のものでも党員のものでもなく、結果的には総裁になった人が総理大臣になるわけだから、国民全体のもの。国民のみなさんに訴え、世論を作り、党員のみなさんにも考えてもらい、議員も国民のみなさんの声を聞いてもらう。地域をまわっていて『石破頑張れよ』と言ってもらえる方もたくさんいる。必ずいい結果が出ると確信している。」

あす告示 総裁選の焦点は?

田中:今回の当選者の任期は、2021年9月末まで。仮に情勢のまま、安倍総理大臣が3選しますと、来年(2019年)8月には佐藤栄作を抜き、戦後最長。11月には桂太郎を超え、戦前も含め、憲政史上最長となります。

武田:争点は、まず安倍政権の評価になると思いますが、もう一つ、憲法改正についても両者の考えには隔たりがありますね?

吉川記者:安倍総理大臣は、憲法に自衛隊の存在を明記することに強い意欲を示しています。次の国会に自民党の改正案を提出できるよう取り組み、早期の発議を目指すと訴えています。一方、石破さんは、憲法改正を目指す立場には変わりはないものの、自衛隊の明記には緊急性はないとしているんです。それよりも、参議院選挙の合区の解消ですとか、大規模災害に対応するための緊急事態条項の新設を優先すべきだと主張しています。

武田:総理大臣を決めることにもなる重要な選挙であるということは言うまでもないんですが、今回の選挙、特に注目すべき意義にはどんなことがありますか?

吉川記者:来年、平成も終わり、新しい時代を迎えることになります。人口減少や少子高齢化が進み、財政や社会保障といった、待ったなしの課題が山積しています。まさにポスト平成のあるべき日本の姿について、議論を深めていけるのかということがまず注目されると思います。また、かつてない長期政権が視野に入る一方で、国民の政治や行政に対する視線というのは厳しいものがあります。政治への信頼を取り戻す糸口をつかめるのかということも問われることになると思います。

武田:5年以上にわたる政権運営を、自民党自身がどう総括し、日本の将来像をどう描くのか。論戦にしっかりと耳を傾けたいと思います。