クローズアップ現代

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2018年6月20日(水)
“都市直下地震”露(あら)わになったリスク ~大阪震度6弱で何が~

“都市直下地震”露(あら)わになったリスク ~大阪震度6弱で何が~

大阪を襲った震度6弱の地震。現地からの最新情報を交えながら、あらわになった「都市型災害」のリスク、地震発生のメカニズムに迫る。エレベーター数万基が緊急停止し、160基以上で人が閉じ込まれる被害が続出。そして、渋滞や交通機関の麻痺が多くの混乱や帰宅困難者を生み出した。番組では少女の命を奪った“ブロック塀”がなぜ放置されてきたのかも徹底検証。各地に危険なブロック塀が多く存在すると見られていることも分かってきた。

出演者

  • 河田惠昭さん (関西大学特別任命教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

混乱が次々と連鎖した… “都市直下地震”で何が

一昨日(18日)、地震によって大混乱に陥った大阪。取材を進めると、混乱が混乱を招く「負の連鎖」で、都市機能が奪われていった実態が明らかになってきました。

午前7時58分、最大震度6弱の地震が発生。そのとき、1人の女性が出勤しようとエレベーターに乗り込んでいました。緊急停止したエレベーター。ボタンを押しても反応しなくなり、そのまま閉じ込められました。

閉じ込められた女性
「気が動転していて、エレベーターが落ちたらどうしよう。」

道路では、異変が始まっていました。いち早く捉えたのは、大阪中心部で営業するタクシー会社です。280台の車両に取り付けられたGPSから、かつてない道路の状況が刻々と伝えられていました。

タクシー会社 配車担当 田中幸俊さん
「どこもかしこも全部渋滞で、大停滞という状況だった。まったく動いてないですよね。」

午前9時。通行止めになった高速道路から、大量の車が一般道にあふれ出していたのです。

タクシー運転手
「渋滞というより、走らない状態。」

この未曽有の渋滞によって、都市が機能不全に陥っていきます。
閉じ込められた女性。救出に向かった車は渋滞に巻き込まれ、救いの手は一向に届きませんでした。「外部の情報が分からない」。女性は恐怖心を募らせたといいます。

閉じ込められた女性
「怖いということと、緊急車両のサイレンの音と、ヘリコプターの音だけしか聞こえなかった。まわりがどういう状況か把握できなかった。」

エレベーターに閉じ込められる事態は、関西の5府県で300件余り起きていました。
広がる混乱。さらに、鉄道の乱れが拍車をかけました。午後1時の新大阪駅。時間を追うごとに、構内に人があふれていきました。

東海道新幹線は12時50分に運転を再開。大勢の客が新大阪に到着しました。ところが、新大阪に接続する地下鉄は、線路設備の損傷のため再開できる状態ではありませんでした。

大阪メトロ 大西誠安全推進課長
「安全の確認が最優先事項なので、時間を要したことについては一定のご理解をいただきたい。」

地下鉄に加え、在来線もストップしていたため、新幹線を降りた乗客たちが行き場を失ってしまったのです。

関西大学 安部誠治教授
「新幹線の運転再開の時間と、在来線・地下鉄の再開時間から大きなタイムラグが発生したことで(人の)滞留が発生しているわけです。」

新大阪駅を出ようとする人々がタクシーに殺到し、駅周辺はさらなる渋滞に。そして、道路の渋滞が…。鉄道の再開を遅らせる悪循環に陥っていきました。

JR西日本 来島達夫社長
「線路設備の点検に着手をしたところ、予想以上の渋滞に巻き込まれて、なかなか現地にたどり着けない。巡回そのものに時間を想定よりも要した。」

午後1時半、エレベーターに閉じ込められた女性のもとに、ようやく業者が到着します。地震から5時間半後のことでした。

閉じ込められた女性
「やっとここから解放されるというか、助かったというか。その気持ちだけでしたね。」

その後も、新大阪駅に滞留した人々が道路へと移動を始めるなど、都市ならではの混乱が続きました。

関西大学 安部誠治教授
「一定の人が密集して歩き出すと転倒が起こったりするので、やはり安全上は望ましくない。大量の人が滞留するという現象が起こってしまって、非常に都市機能がまひしてしまったのが大きな今回の特徴だと思います。」

“都市直下地震” 露(あら)わになったリスク

ゲスト河田惠昭さん(関西大学 特別任命教授)

武田:今回の地震を大阪で経験された、都市災害研究の第一人者の河田惠昭さん。都市で地震が起きますと、さまざまなことが連鎖し合って、混乱が広がっていくという実態が改めて浮かび上がったわけですけれども、今回の災害の特徴をどうご覧になっていますか?

河田さん:都市で起こった災害というのは、23年前の阪神・淡路大震災で、神戸の被災地がそうなんですね。ところが、都市というのは、時間的にどんどん変化している。ですから、同じ地震の規模で起こっても、そこから出てくる被害は変化すると考えなければいけないので、過去の教訓がそのままでは生かされないということがあって、常時それが変化するという形で対応するしか方法はないんですね。ですから今回、発生した被害の内容を精査して、それを少なくするにはどうしたらいいかということを、我が事として考えていただくということですよね。

武田:阪神・淡路大震災や東日本大震災を経て、さまざまな想定をしてきたはずなのに、なぜ今回、十分な対応ができなかったのでしょうか?

河田さん:それは、基本的には自分の身にふりかかってくると考えていなかったということですよ。ですから、大阪で震度6なんていう地震は、今おられる方は経験してないわけで。ですから、今それが起こるとどうなるかというのは、全く考えずに生活していたところをやられたということですよね。

武田:こうした地震による混乱、どこで起きてもおかしくありません。今回起きたマグニチュード6.1と同規模の地震は、全国で頻発しています。ここ5年で発生したマグニチュード6.0から6.5の地震は、実に80回にも上っています。

今回起きた渋滞や、駅や道路に人があふれるということを防ぐために、私たち一人一人はどう行動すべきだったんでしょうか?

河田さん:ラッシュアワーのときに地震が起こったというのは、初めてのケースなんですね。ですから、(今回)起こった現象は、実は初めて経験しているわけですから、すぐにそこから教訓を見いだすことは難しいんですが、「自分が巻き込まれたらどうするか」ということを、まず一人一人が考えるということですね。ひと事と思ってはいけないので、自分が例えば電車の中に閉じ込められたらどうするか、地下鉄に乗っていたけれども、外に出なければいけなかったらどうするか、これを考えていただく。というのは、一人一人が抱えている事情が全部違うんですよね。

武田:例えば、不要不急の外出を控えるとか、企業に協力を求めるといったようなことも必要だったと?

河田さん:ですから例えば、8時の地震ですからね、これから企業に行かなきゃいけない人と、いろんな用事が入っている人がいるわけですから、その時点で、会社に行くべきかどうか考えていただかなくてはいけない。今回の地震では、会社からそういう指令が出たというのはないんですよね。ですから、安否確認はやってるけれども、会社から「もう今日は出社しなくていい」などというのが、早い時点で出てるというのがなくて、かなり時間がたってから「もう今日は営業やめます」というような情報が出てきてるんですね。

武田:そういうことも事前に考えておくべきだったということですね。地震から3回目の夜を迎えた現地には、田中キャスターが行っています。

大阪 震度6弱 現地では今…

田中:一昨日、震度6弱を観測した大阪府茨木市にある住宅街です。今日(20日)は一日中、雨が強くなったり弱くなったりを繰り返しています。こちらの住宅はご夫婦2人で暮らしている家なんですが、壁の一部が剥がれて、住んでいる方みずからが、このようにブルーシートを張って、修復をされています。

家の中の様子も伝えてほしいと、許可をいただきましたので、お邪魔させていただきます。
お風呂場、タイルの一部が剥がれています。今後、修理が必要です。

この地域、実はまだガスが復旧していません。ですから、車で15分ほどの所にある娘さんの家に行って、お風呂に入っているということです。
また食事も、ガスがないためにレトルト食品などをコンビニエンスストアで調達しています。

ガスは来週土曜日までに復旧する見込みだということで、こうした状況が続くのは大きな負担となっています。
この地震の影響で、壁も大きく亀裂がたくさん走っているという状況です。

この家に住む井上さんご夫婦です。今、どんなことが一番不安ですか?

井上まさ子さん:余震ですね、いつまで続くのか分からないので。また大きいのが来るんじゃないかと心配です。

田中:夫の利彦さんはこの地域で民生委員をされていて、地震の直後から、担当する家々を確認して回られているということですが、何が今、気がかりですか?

井上利彦さん:この辺りは高齢者の方が非常に多い地域なので、今、特に1人暮らしの高齢者の方、地震後の生活が若干気になるところですね。

田中:大阪府内では、孤立しがちな高齢者の方々の安否を確認しようという活動も地震直後から続けられています。

高齢者を支援する団体です。地震後、緊急で一人暮らしの高齢者などを、安否確認を兼ねて回っています。こちらの女性は足腰が悪く、1人で買い物に行けずにいました。女性の健康状態を確認したスタッフは、このとき、併せてペットボトルの水なども届けました。

タウンスペースWAKWAK 岡本工介さん
「ぜひ食べてください。」

女性
「ありがとうございます。」

タウンスペースWAKWAK 岡本工介さん
「何か持って行ったときに、見守りと安否確認ができる。実際に足を運んで声を聞かせてもらって、こっちも安心しますし、行けて良かったなと。」


田中:見通しの悪い夜、さらなる地震の不安もあります。家族の方々、そして周りに住む方々どうし、声を掛け合って、少しでも不安を減らしていきましょう。

武田:今回の地震では、ブロック塀が倒壊し、小学4年生の少女の命が奪われました。ブロック塀については、過去の地震を受けて、建築基準法の施行令で基準が強化されてきました。にもかかわらず、なぜ悲劇が繰り返されたのでしょうか。

ブロック塀倒壊で今回も… なぜ教訓が生かされない?

40年前に起きた宮城県沖地震。

「今後の地震では典型的に出てきたのが、このブロック塀の倒壊なんです。7歳の坊やがたまたまこの近くで遊んでいるときに、ドサッと倒れてきて亡くなった現場です。」

ブロック塀の倒壊によって9人が死亡。その多くが、塀のそばで遊んでいた子どもたちでした。
3年後、国は法令で基準を強化。新たに造る場合、鉄筋を数多く入れ、高さを2.2メートル以下に制限しました。さらに、補強のための控壁の設置が義務づけられました。

しかし、ブロック塀倒壊による犠牲者は、その後も相次ぎました。阪神・淡路大震災ではおよそ2,500か所でブロック塀が倒壊。少なくとも14人が死亡しました。さらに、一昨年(2016年)起きた熊本地震でも、1人が亡くなりました。基準を満たさないなど、危険なブロック塀が放置され、悲劇を生んできました。

「小学校の横のプールの壁が、完全に道路側に落ちています。」

今回、高槻市で倒壊したブロック塀。高さは全体で3.5メートル。基準を1メートル以上超え、控壁もありませんでした。

高槻市教育委員会
「当該塀は、建築基準法上、適合しないものであると。設置当時、どのような経緯でこの塀の仕様が決定されたか、こちらについては現在不明でございます。」

教育委員会は、法律に基づく定期点検が行われていたかどうかも分からないとしています。ずさんな管理が続いた結果、危険性に気付かず、今回の事故が起きたのです。
長年、調査を続けてきた最知正芳教授。倒れた塀が、人の命を奪うおそれがあることを認識すべきだと指摘します。

東北工業大学 最知正芳教授
「責任の所在を明らかにするというのが、現実的な第一歩になるんでしょう。自分の塀は何とかしなきゃ、まずそういう発想を持っていただく、それを実行していくということじゃないでしょうか。」

危険なブロック塀は、今も各地に存在しています。ブロック塀の安全性を診断する資格を持つ、小林徹さん。個人や自治体などの依頼を受け、ブロック塀の強度を調べています。

ブロック塀診断士 小林徹さん
「ここに控壁がありますね。」

およそ40年前に建てられたブロック塀です。

ブロック塀診断士 小林徹さん
「一番端の奥のほうに控壁があるだけで、控壁の数が足りないです。ということは、これは安全ではないです。
これがもし倒れてきたことを想像してみてください。小さなお子さんを傷つけるだけでなくて、緊急の道路であったりとか、救急車が入らなくてはいけないときに、これ(倒壊したブロック)があるから入れない。」

小林さんたちは、こうした問題を是正するよう、国や自治体に働きかけてきました。しかし、対策を後回しにする自治体が少なくないと感じています。

ブロック塀診断士 小林徹さん
「これを教訓にできなかったら、たぶんダメですよ。今まで何度も何度も繰り返してきて、幼い命が亡くなっているんだから、これで誰も動かなかったら、日本なんてダメです。」

“都市直下地震” 教訓を生かすために

武田:こうした建築基準法に適合しないブロック塀を、もっと強く強制的に撤去させるといったような対応というのはできないのでしょうか?

河田さん:いわゆる違反をしても、罰則規定がないんですよね。ですから、ブロック塀の持ち主も、まさか人の命を失うとは、深刻には思っておられないと思うんですよね。ですからそれは、やはり深刻に思っていただく必要がありますから、罰則規定を設けるとか、もっと自治体が例えば補助金をつけるとかして、それを推進するとか。全国の自治体で補助金を出している所もあるんですよ。ですから、そういうことを皆さんに知っていただいて、やっていただく。

それと、もうすでに登下校の道の途中に、ブロック塀のある所は通ってはいけないんですね。だから遠回りになっても、そういう危険を避けるということを子どもたちに知ってもらわないといけない。それがやはり緊急にやらなくてはいけないことですよね。ですから、登下校時の通路の診断をして、避ける努力をしていただいて、早急にブロック塀の補強をしていただく。持ち主が、わが家、わが社だけで被害があるんじゃなくて、関係のない人が命を落とすことにつながっているという深刻さをもっと理解していただくということですね。

武田:都市の直下で起きた今回の地震。その意外なメカニズムが少しずつ分かってきています。さらに、次の地震へのリスクも見えてきました。

どの断層が動いた? 地震のメカニズムは

今回の地震。震源の周辺には「有馬‐高槻断層帯」「生駒断層帯」「上町断層帯」という3つの大きな活断層があります。

大阪大学 廣野哲朗准教授
「ちょっと見えなくなりましたね。ちょっとすぐそこまで走って。」

大阪大学の廣野哲朗さんは昨日(19日)、断層のずれが地表に現れていないか調査しました。

これは、熊本地震の際、地表に現れた断層の痕跡。こうした場所を探し、地震を引き起こした断層を特定することは、今後の地震活動を予測するうえで重要な手がかりになるといいます。しかし、今回の地震では、断層の痕跡は見つかりませんでした。

大阪大学 廣野哲朗准教授
「特に擁壁(ようへき)ですか、傷が認められないので、地表まで破壊は到達していないというのは確認できますね。」

断層のずれが地表に現れていないことから、廣野さんは、今回の地震はまだ知られていない伏在(ふくざい)断層が動いた可能性があると指摘します。

大阪大学 廣野哲朗准教授
「今まで見つかっていなかった場所でも、活断層が活動して大きな被害が生じたのは、やはり伏在断層の怖さ、危険性かなと思います。」

地震で“ひずみ”に変化が 今後のリスクは?

今回の地震が、ほかの活断層に影響を及ぼす可能性があると考える研究者もいます。東北大学の遠田晋次教授は、地震のデータを使って解析を行いました。白い板で表現されているのが、断層です。今回の地震によって、それぞれの断層のどこに、どのくらいの力がかかったのか色分けされています。

生駒断層帯に比べ、有馬‐高槻断層帯と上町断層帯には、広い範囲で赤や黄色が目立ちます。これは、より大きな力が加わり、地震が起こりやすくなったことを示しています。遠田さんが特に懸念するのは、大阪の中心部を貫く上町断層帯です。国の想定ではマグニチュード7.6の大地震が発生し、最大で震度7の揺れが大阪の各地を襲うとされています。

東北大学 遠田晋次教授
「(上町断層帯に)新たな力が加わると、明らかに動きやすくなると。いったん動いてしまうと、ひずみが全体的にたまっていますから、全体が大きく動く可能性もある。改めて地震に対する備えを見直していただきたい。」

“都市直下地震” 教訓を生かすために

武田:私たちは、これまでの経験にとらわれずに地震に備える必要があるということですけれども。最後に、今回の地震の教訓として、心に留めておくべきキーワードを書いていただきました。

河田さん:「縮災」という言葉を挙げてるんですが、実は「減災」というのは、漠然と被害を小さくするというだけなんですね。「縮災」というのは、具体的にどうやって被害を小さくするかという、その知恵がここに入っているということなんです。地震はいきなり起こる。いきなり起こったときに被害を小さくするということは、不可能なんですね。ということは、事前にどういう対策をやっておくかということが実は大切なわけで、地震が起こったときに、どこがやられるかということは分かっていますから、そこをじゃあ、復旧・復興するのにどうするか、被害を小さくするにはどうするかということを考えていただくと。その準備をやっていただくだけで、起こったときの出発が非常に早くなるということで、そういう過程でどこに問題があるかも分かるんですね。

武田:具体的に私たちの身近なところで、例えば?

河田さん:例えば、地下街がある。今まで地下街が被害を大きくしたことはないので、だけど「起こらなければ分からない」ではなくて、そういう所にきちっと評価をしていただくということが、とても重要だということですね。

武田:現地では、まだ余震とみられる地震が続いています。また、雨で地盤が緩んでいる所もあります。不安を抱えながら3回目の夜を迎えています。暮らしの立て直し、そして次への備えを急がなくてはなりません。