クローズアップ現代

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2018年5月14日(月)
“現金お断り”で暮らしが激変!? ~追跡・キャッシュレス最前線~

“現金お断り”で暮らしが激変!? ~追跡・キャッシュレス最前線~

中国で爆発的に普及したキャッシュレスの波が、いま、日本にも押し寄せている。子育て中のママが支払いに使うのはスマホ。子どもの手を引きながら「片手で」決済、ママ友とのランチでは割り勘にも使えるため、人気となっている。企業も大きな利益が見込めると、次々とスマホ決済市場に参入、普及を後押しする。一方で、キャッシュレス化が進むスウェーデンでは、「現金お断り」を掲げる店が登場、銀行は次々とATMを閉鎖している。キャッシュレスの未来はバラ色か?変化の最前線から考える。

出演者

  • 秋元才加さん (女優)
  • 岩下直行さん (京都大学教授)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

“現金お断り”で暮らしが激変!?〜追跡・キャッシュレス最前線

深夜だけのキャッシュレスコンビニ、ご存じですか?レジは無人。原則、現金は受け付けません。利用者はスマホで商品の情報を読み取り、支払いを行います。人手不足対策として試験的に始まったそうですが、お客さんの反応は。

利用客
「小銭とか出さなくていいのですごく便利です。」

現金ではなくスマホで支払い。今、キャッシュレス化が日本で急速に進もうとしています。

利用者
「画面見せるだけで(支払いが)完了するので、すごく簡単。」

背景にあるのは、世界的なキャッシュレスの広がりです。
中国では、おひねりもスマホ払い。

スウェーデンでは、多くの銀行が現金を扱わないと宣言。現金の代わりにチップを手に埋め込み、手ぶらで支払いをする人々まで登場しました。

ベンチャー企業 社長
「僕は財布も何も持たないよ。」

そして今、日本にも押し寄せるキャッシュレスの波。私たちの暮らしはどうなってしまうのでしょうか?

現金はもう要らない!?広がるスマホ決済

都内で暮らす、神戸美徳さんです。去年11月に2人目の娘が産まれました。それ以来、買い物は一苦労です。

神戸美徳さん
「(子どもが)あっちこっちに移動して、欲しいものがあったらすぐ見つけて騒いじゃう。」

子連れでの買い物を少しでも楽にしようと、今年(2018年)に入ってから、スマホ決済のアプリを使い始めました。

店員
「1,382円になります。」

神戸美徳さん
「LINE Payでおねがいします。」

スマホの画面には、自分の口座情報を示すQRコードとバーコード。レジの端末で読み取ってもらえば、即座に支払いが完了する仕組みです。

神戸美徳さん
「最近はもう、現金をほとんど使っていないです。」

「なんで使わないんですか?」

神戸美徳さん
「邪魔だし面倒。これ(スマホ)だと片手で一瞬で終わるので。」

コンビニでもスマホ決済。そして、家電量販店でも。神戸さんが現金を使わなくなった理由は、もう一つあります。以前はレシートを整理し、手書きで記録していましたが、今は、自動的に家計簿を作成してくれるのです。

そして、特に気に入っているのがママ友とのランチに使えるある機能。

ママ友
「お会計お願いします。」

友達が支払いを済ませると…。

ママ友
「2,250円だから、(1人あたり)1,125円。」

神戸美徳さん
「OK。LINEで送るね。」

スマホに金額を入力して送信ボタンを押します。同じアプリを持つ人どうしなら手数料ゼロでお金を送れます。

ママ友
「最初は美徳ちゃんに教えてもらって。想像したよりはるかに便利でした。」

神戸美徳さん
「ママ友の間だとやっぱり気を遣って、誰かが10円持ってないとかで他の人が10円多く払うとか、すごい気を遣うんですけど、これだと1円単位で全部割り勘ができるので助かってます。」

スマホ決済の利用者が増える中、今、多くの企業がこの市場に参入しています。楽天、LINE、そして先月にはNTTドコモが参入。運営会社の多くは店から売り上げの3%程度を手数料として取るため、多額の利益が見込めるといいます。

お小遣いもスマホで! 中国・広がるスマホ決済

どうすれば日本での競争を勝ち抜けるのか。キャッシュレスが広く浸透している中国を訪れたのは、LINEのスマホ決済事業の責任者、長福久弘さん。今年、すでに3回目です。QRコードを使った大手サービスの利用者は、延べ13億人に上り、来るたびに変化が感じ取れるといいます。

LINE Pay 取締役COO 長福久弘さん
「年齢層は、若い人だけが使っている感じではない。」

今回、長福さんの目についたのは、スマホ決済を使う高齢者です。スマホを操るこの男性。年齢を聞いてみると…。

スマホを使う男性
「75歳です。娘が教えてくれたんです。」

今や中国の家庭では、孫に小遣いを与えるのにも、スマホを使います。

祖母
「お小遣いあげようか?」


「うん、欲しい。」

祖父
「晩ごはん代もあげたら?」


「それも欲しい。」

こうしたやり取りを通じて、高齢世代も自然に使い方を覚えるというのです。

LINE Pay 取締役COO 長福久弘さん
「(日本でも)一番最初に使う層はある程度若年層だと思っている。そこから上と下にどんどん広がっていくのかなと思う。」

スマホ決済ならではのサービスも、訪れるたびに増えています。人だかりのあるお店に立ち寄ると。

スマホで払うと、次に一杯買えばもう一杯無料になるクーポンが送られてくる仕組みでした。

利用者
「現金で払っても、クーポンはもらえません。だから私はスマホで払います。」

店は、入手した客の情報をもとにクーポンを送っています。

店長
「これはスマホで払ったお客様の情報です。」

こうした情報をもとに、日本でもクーポンや客の好みに応じた商品を提案すれば普及が加速するのではないか、と長福さんは感じていました。

長福さんは今、スマホ決済の普及に必要な端末を安く大量に仕入れるために、中国の会社と交渉を重ねています。
日本でスマホ決済に対応する店を、現在の2万店から年内に100万店まで広げる目標です。

「日本のキャッシュレスはどんどん進みそうですか?」

LINE Pay 取締役COO 長福久弘さん
「これは間違いなく進むと思っています。」

“現金お断り”で暮らし激変!?

ゲスト秋元才加さん(女優)
ゲスト岩下直行さん(京都大学教授)

鎌倉:日本のキャッシュレス、これまでは、クレジットカードやスイカなどをはじめとした、電子マネーのカードがよく使われてきました。今伸びているのは、スマートフォンによる支払いです。お財布からお金やカードを取り出す必要がないということで、普及が進んでいます。これには、電子マネーやクレジットカードの機能をスマホに持たせたものがあります。さらに今、日本で各社が参入しているのが、中国などで爆発的に広がっている、QRコードを使った支払いです。客の利便性だけでなく、店側の導入コストも安く済むため、今後、広がる可能性があるとされているんです。

ふだんの買い物は現金という秋元才加さん。この日本に押し寄せるキャッシュレスの波、どうご覧になりました?

秋元さん:これが速くて大きい波だと、ちょっと不安かなっていう感じがします。なんでもかんでもスマホありきっていう生活になるのは、ちょっと違和感を感じますね。

スマホに、ただでさえ依存しているのに、ますますここまでかっていう感じですかね。

秋元さん:もっと(スマホを使う)時間が長くなるのかと思うと、慣れないし、ちょっと怖い気持ちもありますね。

お小遣いもスマホでぴっていう。

秋元さん:先ほどありましたけど。親御さんとかお孫さんとの団らんの間にもスマホを持っているっていうのが、ちょっと慣れないというか、変な感じしますね。

世界のキャッシュレス社会の動向を調査している、京都大学の岩下さん、日本もやっぱりキャッシュレスが進んでいくんですか?

岩下さん:これはキャッシュレスの方向に進まざるをえないと思いますし、かなり進むと思いますよ。

ただ、こういう方もいらっしゃるんですけれども。

秋元さん:まだ慣れないんですけども。

岩下さん:キャッシュレスを進めることによって、さまざまなメリットがあります。今の日本のような、キャッシュが広く普及している社会ほど、キャッシュレスのメリットがこれから出てくるような気がしますね。

やっぱりみんながメリットを感じないと、当然ですけれども、普及していかないわけですよね。企業や何かが、一気にキャッシュレスにしよう、と宣言しても、社会の納得が大事ですよね?

岩下さん:おっしゃるとおりです。北風と太陽のぐう話のように、無理にコートを脱がせようとしても無理で、だんだん、こんな良いものなんだと思って使いたがるという、その結果、使ってしまうというふうに変化していくのだと思います。

中国では、キャッシュレスの良さっていうのは、なんでこんなに広がったんですか。皆さん、認識するようになったんですか?

岩下さん:私のゼミの留学生に聞いたら、どうも「お年玉」が始まりだったようなんですね。おじいさんが孫に、スマホ決済でお年玉をあげたい。それで爆発的に拡大したんだっていう話でしたね。

さっきのお小遣いのあのシーンが、そうなんですか。もともと中国では、銀行間の振り込みとか、クレジットカードの利用はどうだったんですか。

岩下さん:もともと中国はほとんどクレジットカードは使われていませんし、銀行の口座を持ってない人が非常に多かったわけです。それがこのスマホ決済によって、初めて銀行との取り引きができるようになって、金利がついて貯金ができるとこんなにいいことがあるんだ、と感じるようになったという話です。

それも広がった一つの要因なんですね。

現金はもう要らない!? 広がるキャッシュレス

鎌倉:では、世界ではキャッシュレス、どれくらい進んでいるんでしょうか。2015年の時点で、すでに中国や欧米では、支払いの50%程度、あるいはそれ以上がキャッシュレスとなっていたのに対して、日本は20%以下にとどまっています。国の検討会では、2025年までに40%に拡大し、将来は80%を目指すとする提言をまとめています。

日本のメガバンク3行も動きだしていて、QRコード決済で規格を統一して、連携する方針を固めました。みずほ銀行は、福島県内のスーパーなどで、来月からスマホ決済の実証実験を始めようと準備を進めています。その目的は、利便性の向上に加えて、コストの削減なんです。

みずほ銀行 山田大介専務
「現金をなくすことによって、店舗の形を小さくして、現金を減らすことによって、ATMの数を減らすことによって、銀行全体の生産性を上げていく。(銀行業界全体で)あわせて1兆円くらいのコストを削減して、生産性を上げるということは可能だと試算しています。」

“現金お断り”で暮らし激変!?

キャッシュレスでコストが削減できる、例えばどういうことなんですか?

岩下さん:例えば、現金というのは盗まれてしまうとそのまま使われてしまいますから、そのために警備をしなくてはいけない、管理をしなくてはいけない、内部者不正も対策しなくてはいけないと、そういうコストが非常にかかっているというのが今、実態だと思います。

そのコストは、社会全体ではどのくらい下がるんですか?

岩下さん:簡単には計算できないですけど、もし例えば、今のクレジットカードにかかっているコストと同じくらいのコストがかかっているとすると、年間10兆円ほどあってもおかしくありません。

秋元さん:そんなに。

そしてキャッシュレス化が進んだ場合、社会はどんなふうに変化していくんでしょうか。キャッシュレスをいち早く進めている国を取材してみると、課題も見えてきました。

“現金のない社会”スウェーデンの光と影

現金がない社会とはどんな社会なのか。キャッシュレスで最先端をゆくスウェーデン。現金流通量の割合が世界で最も低い水準です。

こちらのパン屋では、去年からレジに現金を置いていません。

店長
「支払いはスマホ決済とカードだけ。現金は使えません。安全のためです。強盗が入っても大丈夫ですし、現金を数えるのは手間なんです。」

スマホ決済は国内の主要銀行が共同で開発しました。銀行はその理由を、現金を扱うをコストを削減するためだとしています。

スウェーデンの銀行 SEB キャサリン・ウーベルさん
「現金の取り引きには厳重な警備が必要です。輸送にもお金がかかるので現金を取り扱うとコストがかさみます。」

この銀行では、120の支店のうち3分の2で現金の扱いをやめ、コストを削減しました。街なかの銀行には「現金ありません」の文字。さらにはこんな表示まで。

キャッシュレスの最前線では、スマホさえ使わないサービスまで登場しています。手に埋め込んだチップをかざせば支払いが完了。すでに3,000人が利用しています。

バイオハックス CEO ヨワン・オスタールンドさん
「これは特殊な材質でできていて、人間の体内に埋め込んでも、拒絶反応が起きる心配はありません。」

しかし、急速に進むキャッシュレス化で課題も浮かび上がっています。年金暮らしのマイリース・ヨンソンさん。今の流れに不安を募らせています。ヨンソンさんは週に1回程度、銀行でお金を下ろし、手元にある現金を確認しながら買い物をする生活を続けてきました。

マイリース・ヨンソンさん
「銀行でお金をおろせば、財布に残りがいくらあるのか分かるし、日々の生活を振り返ることができます。現金の方が安心です。」

しかし、家の近くの商店街にあった3台のATMはここ数年で1つだけになってしまいました。行きつけのパン屋も現金を受け付けなくなりました。

マイリース・ヨンソンさん
「どちらの手段でも払えるようにすべきだと思います。ゆっくりと変わるべきで、変化を押しつけるのは良くありません。」

お金の流れが丸裸? 中国のデータビジネス

リポート:吉田稔(中国総局)

一方中国では、スマホ決済を手がける企業が、個人のお金の動きをデータとして利用するようになっています。スマホ決済を日常的に使うというこちらの男性。経営する料理店の仕入れ費用、およそ1万7,000円分の融資をスマホ決済を手がける企業に申し込みました。

四川料理店 店主 邢自鵬さん
「もう入金されました。1秒です。すぐ入金されるので助かります。」

実は、企業側は男性のお金に関する動きを詳細に分析しています。来店客のスマホ決済のデータも使って、店の売り上げや常連客の数を把握。さらに食材の仕入れなど、男性が何にお金を使っているかも把握。返済能力を瞬時に判断しているのです。このデータを利用した融資は、すでに7兆円に上るといいます。

スマホ決済の運営企業 沈楽さん
「データを分析すれば、利用者の人物像がわかります。データをいかに活用するか考えることが、企業が利益を上げることにつながるのです。」

個人のお金の流れを把握し、ビジネスに利用する動きは、社会全体で広がっています。中国の人たちはどのように受け止めているのでしょうか。

「大きい会社なので心配していません。社会の発展につながるものであってほしいと思います。」

「個人のことが何でも分かってしまうのは賛成できません。裸にされるような感じがして怖いです。」

キャッシュレス社会 課題にどう向き合う

鎌倉:キャッシュレスの最先端から見えてきた懸念。「高齢者が取り残されるのではないか」、それから「個人のデータが企業にどう利用されるのか不安」といったものもありました。去年12月に日本で行われた意識調査でも、賛否は分かれています。キャッシュレス社会になることに反対と答えた人のほうが僅かに多く、51%。特に女性は反対意見が多く、6割以上に上りました。

また20代、30代と若い世代も、キャッシュレスへの抵抗が強いことが分かりました。その理由なんですが、多くが「浪費しそう」、「お金の感覚がまひしそう」、さらに暗証番号が盗まれるなど、「犯罪が多発しそうだから」といったものもありました。

さまざまな懸念が出ましたけれども、秋元さんは何が一番不安ですか?

秋元さん:私自身、クレジットカードの不正アクセスの被害に遭ったことがありまして、深夜の時間にカナダから、買い物の購入しようとした形跡があるということでクレジット会社から電話があって、その時とても怖い思いをしたので、システムであったり、セキュリティーに不安が残るんですけれども。

どうですか、岩下さん、その点は。

岩下さん:VTRに出たスマホ決済のセキュリティーというのは、インターネットバンキングやクレジットカードとそんなに変わる技術を使っていないので、特にセキュリティーが破られたという話は聞かないです。ただ、もしスマホを落としてしまって、暗証番号もすぐ分かってしまったら、使わてしまいますが、それはお財布を落とした時と同じですよね。

個人でも対策しなければいけないわけですね。

秋元さん:そうですね、一緒ですね。でも、自分のデータが勝手に独り歩きするのは、それも怖いなと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。

岩下さん:もちろんそれは、勝手に独り歩きしてはいけません。今、日本の法律では、個人情報保護法によって、個人のデータを勝手に使って第三者に流してはいけないということが決まっています。ですから、実際にそういうことをやっている企業は基本的にはないはずですし、もしあるとすれば、それは自然と淘汰されていくと思います。

そうすると、消費者に分かりやすく説明をするとか、確認を取るということも必要ですね。

岩下さん:もちろん大事ですね、それは。やっぱり何にOKしたのかということを、きちんと消費者が理解して、それを把握していくことによって、不安感が薄れるのではないでしょうか。

やみくもにチェックを入れるんじゃなくて、ちゃんと理解ができるような工夫も必要ですよね。あとやっぱり、高齢の方がこぼれ落ちてしまうんじゃないかという不安もありますけれども。

岩下さん:高齢者の方々がそういうものに慣れてないのはしょうがないことですし、そういう方々に無理強いするのは、もちろん良いことではないと思います。ただ、高齢の方々も、そういうものを使うことによって、とても便利に使えるとすると、そのメリットを生かしていきたいと思う方が増えるのではないのでしょうか。そうなるように、世の中を変えていったほうがいいような気がします。

なるほど。さまざまな不安はあるんですけれども、日本のキャッシュレス社会はどうあるべきですか。

岩下さん:利用者がきちんと合意した上で、日本の少子高齢化の中での生産能力を維持していくためにも、できるかぎり生産性を上げるために、キャッシュレス化を推進したほうがいいのではないでしょうか。

キャッシュレス化でコストを下げて、その分、利便性とか安全に進んでいくと。どうですか、納得できましたか?

秋元さん:便利な部分もあるんだなと思ったんですけれども、まずは少額から、小銭の部分からちょこちょこ挑戦したいかな。まだでもちょっと、ちゅうちょしますね。

利便性やコスト削減と言う理由でキャッシュレス化が進むとしても、誰でも、どこでも、安全に使える、という点は大前提に仕組みを作ってほしいと思います。