クローズアップ現代

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2018年5月9日(水)
ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~

ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~

いま、日本各地で行き場を失ったプラスチックごみが山積みになっている。今年1月、中国政府は突然、これまで世界中から受け入れていた資源ごみ、プラスチックごみの輸入を禁止したためだ。これまで、輸出するペットボトルごみの7割以上を中国に送っていた日本。第3国に輸出する企業、国内処理に奔走する企業など、待ったなしの取り組みが進められているが、課題も多い。消費者や企業に突きつけられた課題とは、リサイクル社会の実現には何が必要か、考える。

出演者

  • 劉庭秀さん (東北大学 大学院国際文化研究科 教授)
  • 原田禎夫さん (大阪商業大学 公共学部 准教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

ペットボトルごみがついに限界!?〜世界に広がる中国ショック〜

ついに限界!?毎日のように消費され、何気なく捨てられている「ペットボトル」。飲み残したままだったり、ほかのごみと混ぜて捨てたりしていませんか?こうしたごみが、パンクするかもしれません。
日本で増え続けるプラスチックごみ、実に年間900万トン。それが今年(2018年)に入って突然行き場を失う事態に。

廃プラ輸出業者
「廃プラの業界では、それはもう大変ですよ。」

きっかけは中国。これまで世界中から受け入れていた資源ごみを、突然、輸入禁止としたのです。

中国 廃棄物研究者
「ゴミを中国に輸出して、自分の国を綺麗にしても、中国が汚れます。この先も、輸入禁止の解除はありえません。」

一体なぜ?そしてこの先どうなるの?私たちの暮らしに迫る危機を追跡します。

ペットボトルごみ 世界で大混乱が…

資源ごみの輸入禁止。今、世界中に中国ショックが広がっています。

英BBC
「イギリスのリサイクル社会に深刻な打撃です。
中国はもうこれ以上、こうしたごみを受け入れない、と拒否したのです。」

ヨーロッパ各地では、行き場を失ったプラスチックごみが、たまり続ける事態に。韓国では、ついに大都市の街中に、プラスチックごみがあふれ出しました。

韓国KBS
「ご覧の通り、ペットボトルのようなプラスチックのごみが、そのまま残っています。」

回収しきれない、と言う業者と住民の間で、トラブルにまで発展しています。

そして日本では。
まだ私たちの暮らしに影響は出ていないものの、輸出できなくなった廃プラスチックが、全国各地で、たまり続けています。
中には、今年1月からたまり続けたものが、飽和状態に近づきつつあるところも。

廃プラ輸出業者
「中国に行くはずだった商品が、止まっている。3段も4段もたまっている。」

広がる中国ショック。その震源地では、一体何が起きているのか。今年に入って、港の風景は一変したと言います。資源ごみを輸入してきた業者の倉庫からは、去年まであふれかえっていた、外国製の廃プラスチックが消えました。

「中国の政策変更で輸入は?」

廃プラ輸入業者
「(廃プラは)ほとんどなくなったね。」

“資源ごみお断り” 中国で何が?

きっかけは中国政府が突然打ち出した新たな方針です。

中国 李克強首相
「海外ごみの輸入を厳しく禁じる。水がきれいで空が青い中国を築いていかなければならない。」

30年以上続けてきた、国策の大転換でした。実は中国では、急速な経済発展の一端を、資源ごみが支えてきました。資源不足に悩む中国は、海外から資源ごみを輸入し、リサイクルする方法を選びました。特に先進国が消費した膨大な廃プラスチックは、石油原料よりはるかに安い、貴重な資源だったのです。中国の輸入量は、年々増加。

2000年代に入ってからは、200万トンを突破し、ついに、世界の廃プラスチックの6割を輸入するまでになりました。

しかしそれは、中国国内に、深刻なひずみを生んでいきました。環境汚染です。汚れた状態で輸入される廃プラスチックをリサイクルするには、手作業による分別が必要でした。人件費の安い農民が、丁寧に仕分け、汚れを洗い落とします。

その時に出る汚泥や、洗浄に使う薬品の多くが、川などにそのまま流されていました。
リサイクル業者が集まる村の、土壌や水質を調べた専門家がいます。大学で環境政策を研究する、杜歓政さんです。調査では土壌から鉛や水銀などの物質も検出されました。

同済大学 循環経済研究所 杜歓政教授
「この村で栽培した野菜や果物が汚染され、川の魚も全滅しました。環境の回復までには何十年もかかります。代償はあまりにも大きすぎます。」

こうした事態に、さらに輪をかけたのが、国内で生じる大量のプラスチックごみです。経済環境が変わり、みずからも、世界有数のプラスチック消費国となった中国。自国のプラスチックすら持て余すようになった今、環境汚染を引き起こす海外の資源ごみはもはや受け入れられない、と輸入禁止に踏み切りました。

中国科学院首席研究員 蒋高明さん
「この先も、輸入禁止が再開することはありません。長い時間をかけて、中国政府が議論して決めたことです。この決定は、揺るぎないものです。」

ペットボトルごみ限界!?世界に“激震中国ショック”

ゲスト劉庭秀さん(東北大学大学院国際文化研究科教授)
ゲスト原田禎夫さん(大阪商業大学公共学部准教授)

田中:世界に広がる中国ショック。北米では、回収業者の団体が、緊急声明を発表。アメリカの3分の1以上の州に影響が出ていて、処理しきれない廃棄物があふれている所もあると訴えています。また、EUは緊急対策を打ち出しました。域内で出回るプラスチック容器などを、2030年までにすべて再利用、またはリサイクルできるものにする計画です。

そして日本、ペットボトルの消費は、90年代半ばから、右肩上がりで増えています。

今のところは、中国の輸入禁止直前に、駆け込み輸出をしたため、問題は表面化していませんが、パンクするのは時間の問題だといわれています。

世界のごみ問題に詳しい劉庭秀さん。ごみのリサイクル、僕は進んでいるんだと思っていたんですが、こんな大変なことになってたんですね。何故なんだ、という思いを禁じえないんですけれども。

劉さん:今までの廃棄物のリサイクルは、中国への依存度が高かったといえます。国内では資源として需要がなく、汚いものが、中国の人なら、資源として受け入れてくれたということがありまして、巨大なリサイクル市場である中国が、一気に廃棄物の輸入を止めてしまうと、廃棄物資源は行き場を失ってしまう、ということになります。

そしてもうひと方、プラスチックごみの問題を研究している、原田禎夫さん、私たちまだこの身近にこの問題の深刻さ、ちょっと感じることができないんですけれども、原田さんご自身はどういうふうに感じてこられたんですか?

原田さん:今、急速に世界で大きな問題になっているのは、海のプラスチック汚染ですね。これ、実は陸から流れ出したごみがほとんどですが、中でも象徴的なのが「ペットボトル」です。先ほどの資料にもありましが、実は日本でも90年代半ばから、急激にペットボトルの消費が増え、それに併せて、海や川のごみも、ペットボトルだけは伸び続けている、増え続けています。私も学生と一緒に調査をしていますが、回収したごみで、とにかく一番多いのはペットボトルです。全国のNPOや市民の皆さんと一緒に行った調査では、日本中の川に、少なくとも4,000万本のペットボトルが落ちている。そういうことも明らかになりつつあります。

これ、リサイクルはやってるんですよね。

原田さん:リサイクルもしていて、80%以上の回収率を誇ってはいるのですが、それ以上に、消費のペースが伸びていると。ですから本数で見ると、回収しきれてないごみが、環境中に流出しているということです。

世界が大混乱 “中国ショック”の波紋

田中:こうしたペットボトルなどの廃プラスチックですが、日本の輸出先の7割は中国です。世界で最も多く中国に送り出していて、その量は年間100万トン、東京ドーム3杯分の量です。

これが今後、宙に浮くことになるんですが、今その新たな受け入れ先として、浮かび上がっているのは、東南アジア、タイ、ベトナム、マレーシア、そしてインドネシアなどです。そこで今、何が起きているんでしょうか。

“中国ショック”の波紋 どうなる日本の資源ごみ

中国ショックの余波を受ける、タイ。今年に入り、海外から持ち込まれる廃プラスチックの量が急増しています。日本から訪れた業者もいました。大阪で廃プラスチックを輸出する会社を経営する、平良尚子さんです。

これまで中国に輸出してきたものを、今後は、タイのリサイクル会社に買い取ってもらいたい、と考えています。受け入れてくれそうな所があると、必ず確認するのが施設の環境対策です。

リサイクル工場 サンスン・トリヤナンタクンさん
「1日あたり5,000リットルもの水を回流させています。タイでは、こんないい設備を持つところはありません。」

中国ショックの引き金となった、環境汚染。タイで同じてつを踏まないためにも、慎重な進め方が大事だと、平良さんは考えています。

廃プラ輸出業者 平良尚子さん
「ちゃんと責任をもって汚染処理、残渣(ざんさ)まで処理できるかどうか、それをやっていかなかったら、海外でも迷惑をかけると思います。かけるんだったら、いつかストップされると思います。」

今後、行き場を失った廃プラスチックが、さらに持ち込まれた場合、タイは受け入れられるのでしょうか。

タイ公害監視局長 スニー・ピヤパンポンさん
「それほど量が多くないうちは、受け入れも可能ですが、どんどん増えてしまうと、タイの処理業者の受け入れ能力を超えてしまいます。難しいと判断をした場合は、受け入れの制限を議論しなければならないと思います。」

ペットボトルごみ限界!? どうする日本

劉さん、東南アジアも中国のように、いずれは限界が来るんじゃないかとも思うんですけれども、どうなんでしょう?

劉さん:中国への輸出が止まれば、当然、その資源の需要のある所、東南アジアの諸国に流れることになりますけれども、東南アジアのリサイクルのマーケットの規模とか、業界の状況を考えると、いずれ、流れも止まってしまうということが予想されます。

実際にそういった動きはあるんですか。

劉さん:ベトナムが受け入れをしてましたが、すでにベトナム政府が規制をするという動きがありますし、さらにタイも、この夏に、新たな方針を出すということがいわれています。

さらに、もっとほかの国に持って行くというようなことはできるんでしょうか。

劉さん:当然、もっと貧しい国、リサイクルの需要がある所に、物が流れることは予想できますが、輸送のコスト、環境問題を考えると、そういった動きは容易ではないということが言えるかと思います。

田中:中国が受け入れを禁止した今、国内でのリサイクル技術の向上が求められています。しかし、そこにはいくつもの課題があります。

ペットボトルごみ限界!? リサイクルの壁

プラスチックのリサイクルは、膨大な手間とコストがかかっています。公共施設や、オフィスなどから毎日集められる、大量のプラスチックごみ。その多くは分別されず、汚れたままです。

リサイクル会社 西脇誠之さん
「飲み残しが入っているものとか、いろんなものがありますので。」

質の高いプラスチック製品にリサイクルするには、まずは、空き缶や鉄くずなど、ほかのごみと分別。

リサイクル会社 西脇誠之さん
「そうですね今日入ってきたものでこういうスプレーですとか。」

さらに、プラスチックの種類ごとに、きめ細かく分けなければなりません。

こうした手間とコストは、多くの業者にとって負担でしかないのです。では、ほかのごみと混在したままのプラスチックは、どう処理するのか。多くは古紙や木くずと混ぜ合わせて、固形燃料に変え、リサイクルしています。

固形燃料工場 下別府正樹さん
「石炭とほぼ同等の熱量を発することができます。」

中国ショックを受けて、この工場でも「廃プラスチックを引き取ってほしい」という希望が急増。ところが、固形燃料の生産はそれほど増やせないのが実情です。現在、固形燃料の6割は、国内の製紙工場で使われています。しかし、ペーパーレス化や出版不況のあおりを受け、需要は頭打ち。しかも、ほかの業界では、固形燃料の利用はそれほど広まっていません。

固形燃料工場 下別府正樹さん
「中国に流れていた分を受けてほしいという声は、非常に多く声をかけていただけるようになりました。ただ、受け皿がないために応えることができないというのが、非常に、心が痛いところではあります。」

こうした状況を、どうすれば根本から変えられるのか。専門家はこう指摘します。

神戸大学大学院経済学研究科 石川雅紀教授
「リサイクル市場に、もっと多くの企業が参入してきて、いろんな新しいアイディアで、技術開発をすれば、可能性はあるんだと思います。」

ペットボトルごみ限界!? 解決の切り札は…

中国ショックを逆手に取って、動きだした自治体があります。宮城県では、中国の資源ごみ受け入れ禁止を受け、県の担当者がリサイクル業者などを訪ねて回っています。今後、事業を拡大し、より多くの廃プラスチックを受け入れる意思がある企業には、補助金も出します。

宮城県担当者
「ビジネスチャンスかなと。これだけの技術があれば産業廃棄物の方に共通の技術がいっぱいあると思う。乗り出さないんですか?」

リサイクル会社
「それは計画はしていまして、相談もいろいろ始めているところなんです。」

いち早く県の補助金を利用し、新たなリサイクル技術の開発に乗り出した企業もあります。この会社では、種類の違うプラスチックを混ぜて、質の高い素材に再生する技術を研究しています。これまで、種類が混在する廃プラスチックは、リサイクルする際、品質や強度が安定しませんでした。そこで、混ぜ合わせる配合や、つなぎとなる添加剤などの実験を繰り返しました。最近、ようやく品質が安定するようになりました。処理に困っていた、大量の廃プラスチックも、住宅建材や、ガーデニング用品など、幅広い商品に使えると意気込みます。

リサイクル会社 麦谷貴司さん
「行き場がなくなったものが、果たして物が悪いのか。難しいからやらなかっただけで、本当は品質の良い原料に生まれ変わることができるんです。」

宮城県環境政策課 菅原正義さん
「今回を機に今まで県外、あるいは国外に流出していた廃プラスチック資源を、県内で循環利用して、それが宮城県の経済の活性化につながると。そういう方向に、県としては進めていければと考えています。」

ペットボトルごみ限界!? どうする日本

田中:このリサイクル、日本の現状はどうなっているのか。私たちが出すごみは、家庭から出るものと、飲食店やコンビニ、オフィスなどを通じて出るものがあります。このうち、家庭から出るものは、近年、分別回収が定着してきたこともありまして、多くがリサイクルに回され、新たな製品に生まれ変わっています。問題は、飲食店やオフィスなどから出るものです。こちらは分別が徹底されていなくても、業者が回収し、海外に輸出されてきました。そのために多くが汚れていたり、ほかのごみと混じり合ったりしていて、リサイクルを難しくしているんです。

東北大学の劉さんは、先ほどの、宮城県の取り組みにも関わっていらっしゃいますが、分別されていないごみをリサイクルするということが、技術的には可能になってきている。こうしたことを進めていけば、解決するということなんですか?

劉さん:宮城県の場合は、中国の政策をいち早くキャッチをして、いろんな情報を提供したり、あるいは技術開発に補助金を出したりしてますので、そのへんの取り組みは、非常に評価ができると思います。
ただし、技術開発といっても、せっかく作ったものの需要がなかったり、あるいは焼却炉を造った場合、住民反対によって、非常に長い時間がかかってしまうことは予想されます。

つまり、全てをこれで解決するということには、やはりならない?リサイクルだけでうまくいく、ということにはならないと?

劉さん:やはり技術だけでは解決できないものが、たくさん残ると思います。

残った部分はやっぱり焼却しなければいけないけれども、それも難しいということ?

劉さん:焼却炉を造るには、やっぱり10年以上の時間がかかったり、住民反対をどう解決するか、という問題が残ってしまいます。

原田さんは、飲食店やオフィスから出る汚れたもの、これをどう解決すればいいのか、ヒントは何かあるんでしょうか。

原田さん:ヨーロッパに調査に行ってますと、例えばペットボトルにはデポジット制度というのがあります。預け金という仕組みですが、ペットボトルドリンク、飲料の価格に、日本円でいうと5円、10円といったような預かり金を上乗せして販売をして、そして飲んだ後にお店に持って行くと、自動の返金の機械が置かれています。そこに入れると、お金が返ってくると。なおかつ、この機械の中で、きちんと缶、瓶、あるいはペットボトルにきちんと仕分け、また、中に飲み物が中に残っていると、それを自動ではねたりします。空っぽにしてから入れてくださいと。こういう仕組みを、細かく作っていくことが大事だと思います。また、技術革新が非常に進んでおりまして、膨大な手間とコストを大きく引き下げながら、良いことをする人には補助金、そして悪いこと、例えばポイ捨てをする人にとっては、デポジット料金(=預かり金)を放棄することになりますから、罰金のような仕組みになるわけです。ですので、ヨーロッパ諸国は高い回収率を維持してます。

いずれにしても、状況は待ったなしだと思うんですけれども、劉さん、私たちどう意識を変えていけばいいんでしょうか?

劉さん:われわれは今まで、リサイクルをすればなんとかなるという、リサイクルを信じ過ぎていた、というところがあります。実はリサイクルの仕組みですとか、流れに関しては、あまり関心がなかったと思います。われわれができることは、ごみを減量する、リデュースですね、それからリユース、あるいは修理をして長く使う、リペアとか、リサイクル以外にも、われわれができる選択肢はたくさんあるかと思います。今までは、リサイクルに頼りすぎる社会を作ってしまったので、今度はもっと循環型社会のあるべき姿を考える必要があるかと思います。

原田さんは?

原田さん:もう一つは、消費者の私たちが声を上げる。ある大手のスーパーで、有料化していたレジ袋を、無料にキャンペーンしたところ、消費者の皆さんが、「私たちが努力してるのに、なんてことをしてくれるんだ」と、声を上げてそのキャンペーンは取りやめになったということを聞きました。消費者は今、簡単にインターネットなどで声を上げられますし、声を上げたり、あるいは、清掃活動に参加いただいて、まず現場を見ていただく、そういったことを広めていただければなと思います。

私たちの側から声を上げていくことで、社会や企業が変わるということなんですね。私自身、家庭ごみの分別には努めていたつもりなんですが、それで本当にうまくいっているというふうにも思い込んでもいました。こうした意識が今回のような世界的な混乱を招いているんだとしますと、私たちの生活スタイルや考え方を、今すぐ変えなければいけないと、今日は思いました。