クローズアップ現代

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2018年4月10日(火)
“中国化”するアフリカ 習近平の“一帯一路”はいま

“中国化”するアフリカ 習近平の“一帯一路”はいま

3月に国家主席に再選された習近平国家主席。圧倒的権力を掌握し、2期目となるむこう5年間、中国を率いることになった。その習近平国家主席が力を入れているのが、中国とアフリカ、ヨーロッパをつなぐ巨大経済圏構想「一帯一路」の実現だ。いま中国はアフリカへの進出を加速させ、現地での影響力を急速に拡大させている。去年8月には東アフリカのジブチに海外ではじめての基地の運用を開始。さらにケニアやエチオピアに鉄道を敷設し、物流の大動脈を築くとともに、国の安全を支える基幹システムも輸出、国造りそのものに深く関与しはじめている。中国の狙いはどこにあるのか? アフリカの現場に密着する。

出演者

  • 川島真さん (東京大学教授)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

“中国化”するアフリカ 習近平の狙いは?

12億の人口を抱え、最後のフロンティアともいわれるアフリカ。ここで今、ある国の存在感が急激に増しています。

「我很好。你爸爸妈妈好妈?(私は元気です。ご両親は元気ですか?)」

中国語を学ぶ人たちが急増。ケニアの都市部では、中国から導入した強力な監視システムで街全体の治安を維持。さらに、中国にとって国外初となる基地もアフリカで運用を開始。今、アフリカで急速に中国化が進んでいるのです。
中国が目指すのは、アメリカを超える超大国。政治・経済面で、アフリカ54か国と密接な関係を築いて、世界に新たな秩序を打ち立てようとしています。

中国 習近平国家主席
「中国が世界でより中心的な役割を果たしていく。」

アフリカを覆い尽くそうとする中国の波。2期目に突入した習近平の中国。その世界戦略に迫ります。

習近平の中国 「超大国」への道

3月に国家主席に再任された習近平氏。中国で開幕した63の国と地域が参加する国際フォーラムで、「今日(10日)中国は大国の役割を担う」「新型国際関係を構築する」と宣言しました。その習近平氏が、外交方針の要として掲げているのが「一帯一路」と呼ばれる政策です。

鎌倉:一帯一路は、中国とヨーロッパやアフリカを陸路と海路でつなぎ、巨大な経済圏を作り上げようとする構想で「21世紀のシルクロード」ともいわれています。そして、その最前線となっているのが、アフリカです。

今、中国は、一帯一路を通じて、経済的な協力関係だけでなく、中国の考え方、社会システムを、アフリカに広げようとしています。

“中国化”するアフリカ “一帯一路”はいま

中国の一帯一路においてアフリカの玄関口に位置するケニア。10年間でGDPが倍増。急速な経済発展を遂げています。
中国が3,000億円以上を融資し、去年(2017年)5月には、首都ナイロビと東部の港を結ぶ鉄道が開通。

周辺6か国に延ばす構想も挙がっています。今、ケニアで進められる国家プロジェクトの半数近くを、中国企業が請け負っているといわれています。

ナイロビ市民
「中国がケニア市場を支配しています。以前はアメリカが大きな影響力を持っていましたが、最近は中国の投資が目立ちます。」

リポート:戸川武(国際部)

アフリカが中国への依存を強めているのは、経済だけにとどまりません。国のシステムにも、中国式が広がっています。
20年前にケニアに進出した、中国の通信大手「ファーウェイ」です。

今回、外国メディアとして初めて、内部の取材が許されました。オフィスで働く400人の社員の半数は中国人です。インターネットの通信網の構築。さらには、国民の6割が利用し、ケニア経済を支えている電子マネーのシステムなどを提供しています。

“中国化”するアフリカ 広がる監視システム

ファーウェイ・ケニア 徐亮広報部長
「これは当社のセーフシティシステムです。」

今、ファーウェイは「セーフシティ」と呼ばれる国の治安維持のシステムの導入を進めています。ケニアの2大都市に1,800台を超える4Kの高画質カメラを設置。その映像を警察がリアルタイムで監視します。システムには最新の顔認証技術が使われ、個人が特定できるといいます。

ファーウェイ・ケニア 徐亮広報部長
「中国では上海、南京、広州など、多くの都市でセーフシティは導入されています。」

こうした監視システムは、中国が世界をリードする技術です。設置されたカメラは、世界最多の1億7,000万台ともいわれ、いわば監視社会を築き、治安を維持しています。中国式の社会システムそのものをケニアに導入しようというのです。

ファーウェイ・ケニア 徐亮広報部長
「監視システムのおかげで中国に来た旅行客は『世界で最も安全な国だ』と言うでしょう。私たちはこの分野で経験豊富なプロなのです。」

監視システムの導入を決めたのは、2013年に就任したケニヤッタ大統領です。

実はケニヤッタ大統領、過去には選挙を巡って暴動を引き起こし、対立候補の支持者を死亡させたなどとして国際的に批判されていました。こうした中、手を差し伸べたのが中国でした。ケニアにさまざまなシステムを提供。貿易額は倍増し、最大の貿易相手国となったのです。

ナイロビ大学 サミュエル・ニャンデモ博士
「ケニアの指導者は政権を守るために、欧米ではなく中国を選びました。中国はそれに乗じて、ケニア経済に食い込んだのです。」

セーフシティのシステムは、ケニア政府による治安維持を大きく後押ししています。
これは不審な挙動を繰り返していた男をカメラが捉えた映像。

警察はすぐに捜査員を派遣し、不法滞在者だと判明しました。

ケニア 情報通信技術庁 ロバート・ムゴ長官
「私たちは中国の事例をみて、同じようになりたいと思いました。急速な発展に成功した中国から多くのことを学びたいのです。」

一方で、カメラで得られる個人情報などの膨大なデータをどう管理するのか、法律はありません。安全を提供する代わりにプライバシーを脅かしかねない政府のやり方ですが、これまで目立った反対の声は上がっていないといいます。

市民
「カメラがあるほうが安心です。プライバシーは気になりません。」

市民
「中国は犯罪から私たちを守ってくれています。監視されたってかまわないわ。」

ファーウェイは今、アフリカ12か国にセーフシティを拡大。欧米とは異なる価値観で経済や安全を最優先させる中国式がアフリカに浸透しています。

“中国化”するアフリカ 受け入れの背景は

ゲスト 川島真さん(東京大学教授)

鎌倉:一帯一路を通して、関係を深めていく中国とアフリカ。経済面では2000年には1兆円ほどだった中国のアフリカとの貿易額。2014年には、およそ23兆円にまで増加しました。

その後は原油価格の下落などで金額は減りましたが、取り引きの量は変わっておらず、依然として、強い結び付きを保っています。
こうした経済面だけでなく、文化面でも中国の影響力は強まっていまして、例えば、中国政府が中国語を広めるために国外に設立している学校「孔子学院」は、アフリカで39か国54か所に上ります。さらに、中国の放送事業者がアフリカの30か国以上に拠点を置いて、中国のニュースやドラマも見られる事業を展開しています。住民に衛星放送のためのアンテナや受信機を無償で提供していて、視聴者はアフリカ全土で1,000万人以上とも言われているんです。

中国の政治や外交に詳しい川島さん。
アフリカの中に、経済援助のみならず、社会システムや、あるいは文化まで中国式を受け入れている国があるというのは、どういうこと?

川島さん:中国がアフリカの国に寄り添うように、自らを途上国であると言っている点もあるんですけれども、やはり中国のアフリカへの支援については、この2点ですね。

中国のアフリカへの援助、支援というのは、やはり先進国のようにいろんな手続きを経ずに、かなり速いスピードでやってくれるわけですね。利子は高いんですけど、条件を付けない。西側の国は民主化とか、人権でいろいろ言うわけですが、それが出てこないわけですね。そうした意味で、アフリカの方からすると中国を選ぶ。この問題は、やはりアフリカの方に目線を置いて、なぜアフリカが先進国じゃなくて中国を選んでいくのかという観点で見ると、この辺が大事かなと思いますね。

ケニアの例で言うと、政治的、社会的に不安定な状況を中国がついた?

川島さん:それは、もう1つの要素ですね。つまり、今でもアフリカではやはり先進国、欧米の力は強いんですけれども、例えば政治的に混乱をする、あるいは人権弾圧があると、アメリカ等の国々は、ちょっと支援を控えるわけですね。そうすると、そこに中国が入っていって、孤立しているアフリカのある国の政権を助けるっていう、その隙間に入り込んでいくという、そういう面も中国にはありますね。

こうした中国側の攻勢に対して、アフリカの人々の間で反発のようなものはないのか?

川島さん:アフリカの方から当然、反発出てきます。例えば中国と関わる非常に多くの日用品ですね、服とかそういうのがどんどん入ってきますので、アフリカのそういう産業はやられてしまいますね。それから、チャイナマネーが入ってきますので、政治的な腐敗でありますとか、あるいは選挙への介入ともいわれます。ただ、そうではあっても、全体的にはまだ中国が選ばれているのかなという感じがしますね。

一方で、中国側の思惑、新型国際関係を構築すると言われているが、アフリカを取り込もうとする狙いは?

川島さん:やはり今お話があった、習近平の言っている経済関係をもとにして、ウィンウィンを作り、そしてパートナーシップを作るという新型国際関係、それにやはり実験の場所ですね、それでアフリカで支援を得て、そして世界へ展開していく、もちろん一帯一路前提ですけれども、そこでやっていこうという大きな思惑。そこに安保でありますとか、あるいはエネルギーの問題も入るかなという印象がありますね。

実は、その中国ですけれども、アフリカに対する経済援助、長年続けてきました。その実績を背景に、ここにきて政治や外交にまで影響を及ぼそうとしています。

“中国化”するアフリカ 強まる外交攻勢

中国は外相の新年最初の訪問先として、28年連続でアフリカを選んできました。
今年(2018年)訪れたのは、人口20万の島国サントメ・プリンシペ。台湾との外交関係を断ち、一昨年(2016年)中国と国交を結んだ国です。会談で、サントメ・プリンシペ側は「インフラ建設をはじめ、さまざまな分野で中国企業を歓迎する」と述べました。
アフリカの国々は中国か台湾のいずれかと外交関係を結んでいます。2000年の時点で、台湾と関係を結んでいたのは8か国。

それが今、次々と中国にくら替えし、残ったのは2か国だけとなっています。その1つが、スワジランドです。独立以来50年間、台湾と外交関係を結んできました。今この国で、中国からの圧力が強まっているといいます。
国王のムスワティ3世。12人以上の妻を持ち、「ライオンキング」と呼ばれる絶対的君主です。

その主治医の1人を務めるのが、台湾の医師。最高権力者の命を預かるほど、強い結び付きを作ってきました。

国王の主治医
「医療活動の成功は、外交関係を安定させるものだと思います。」

しかし今、この国に中国が国交を結ぶよう、水面下で動いていると、台湾の外交官は明かします。

台湾 駐スワジランド 陳経銓大使
「中国がスワジランドの政治的立場を変えようと、アフリカの国々を通じて、説得を試みています。『中国と国交を結ぶとメリットが大きい。あれもこれも建ててくれた』と言うのです。」

経済力をテコに、政治でもアフリカに大きな影響を及ぼす中国。一帯一路の先に描くのは、超大国としての姿です。

中国 王毅外相
「中国とアフリカの関係を一帯一路という翼でより飛躍させる。」

中国“一帯一路” 目指すのは「超大国」

経済力によって、政治・外交面でも自らの意思を通そうとする手法。これは、一帯一路を目指す中で、こうしたことは増えている?

川島さん:私もスワジランドに行くことがありますけれども、スワジランドも、あの地域の国々の中で、あそこの国だけが中国から大きな資金を得ていないわけですね。それにプレッシャーを感じてしまう。台湾は非常によくHIVの問題もフォローしているんですけれども、スワジランドが中国と関係を持っていないということで孤立した感じがあるというのがあるかもしれませんね。それから、やはり経済力をテコにして、中国の政治的な思惑を受け入れないならば、ある製品を輸入しないぞと。フィリピンの時、バナナがありましたけれども、そういうことをいうこともありますし、またある時は、お金を貸し付けて、先進国であれば、相手の返済能力に合わせて貸すところを貸しすぎる、より多く貸して、返せない場合に何か担保を取る、資源であったりとか、何か政治的条件でもって、借金を棒引きにするといったようなこともやるようになりつつありますね。

そういう状況が今、一帯一路を作る中で至る所で生じている?

川島さん:例えばスリランカであれば、港湾の経営権を得るとか、ラオスなどでは資源でありますとか、そうしたものが貸し付け、つまりローンの代わりに物を得るようになってきているという傾向がありますね。

鎌倉:一帯一路の海の道、こちらの赤いラインをご覧ください。中国が安全保障上重視するシーレーンとも重なります。南シナ海からマラッカ海峡を抜け、インド洋、そして地中海に至るルートをつなぐために、港や拠点を確保しようとしています。その要衝の1つが、東アフリカのジブチです。

中国軍はここに、初めての国外基地を建設しました。中国の狙いは何か、基地を取材しました。

初の国外基地 中国の狙いは

リポート:味田村太郎(ヨハネスブルク支局)

東アフリカに位置する人口90万の国、ジブチ。中国軍が基地の運用を始めたのは、去年8月のことです。一体、どんな基地なのか。その全貌はベールに包まれていました。基地の周りを回っても、万里の長城を思わせる分厚い外壁に阻まれ、内部をうかがい知ることはできません。

「ものすごい広さですね。」

離れた高台から観察すると、敷地内には、司令部が入ると見られる建物や、ヘリコプターの格納庫と見られる建物の屋根が確認できました。基地の記念式典を取材した地元ジャーナリストに話を聞くことができました。

地元ジャーナリスト
「あ!という感じです。基地はとても大きかったです。彼らはジブチで道路や港も建設しています。中国はジブチから世界に向かって、積極的に活動を広げようとしているようでした。」

中国が基地を置いた目的は何か。4,000人ほどが駐留するアメリカ軍は、ジブチの地政学的な重要性を指摘しています。

アメリカ軍レモニエ基地 ラコーレ司令
「ジブチは世界中に活動を展開できる戦略的に重要な位置にあるため、この基地は安全保障上の大きな役割があります。」

中国は基地の目的について、周辺海域での海賊対策や救援など、国際貢献のためだとしています。一方で専門家は、一帯一路を進める中国が基地を軍事拠点にしようとしているのではないかと指摘しています。軍事専門家のシム・タックさんです。

タックさんは、独自に入手した衛星写真で基地を解析。1,000人以上が長期駐留できる兵舎や、巨大な武器貯蔵庫と見られる施設から、軍事的な狙いが読み取れると指摘します。

軍事専門家 シム・タック氏
「この地下貯蔵庫には大量の弾薬や、巡航ミサイル、対艦ミサイルなど、非常に能力の高い兵器を格納できます。こうした武器は、普通は海賊対策には使いません。中国がこの基地を平和維持だけではなく、軍事活動を支援する目的にも使う意図がうかがい知れます。」

去年11月、中国軍はジブチで実弾を伴った大規模な訓練を実施しました。アメリカの軍事専門家は、中国がインド洋からアフリカへのシーレーンを確保するとともに、世界各地での自らの権益を守る意思を示していると指摘します。

アメリカ軍事専門家 ザック・クーパー氏
「中国はいま、自国の周辺だけでなく、世界中により大きな影響力を持つために活動範囲を広げています。アメリカのように世界中に軍事力を誇示したいと考えており、ジブチの基地はその第一歩なのです。」

“一帯一路” 「超大国」目指す中国

アメリカの専門家はこのように言っているが、川島さんは、この一帯一路の安全保障上の意味をどういうふうに読み解いている?

川島さん:確かに、彼らの言うとおりかなと思いますね。中国、確かにこのジブチというところに基地を持っている。それはソマリアの海賊や、PKOの展開のためにあるんだということになっているんですけれども、先ほども申し上げた、借金の話でいうと、ジブチの人に金を貸し付けしすぎている段階にありまして、何か担保を取るのかという、そういうようなことも考えられています。そのほか、ジブチに至るこのルートに、いくつかの港湾の経営権を取っていて、シーレーンといいますが、軍の道も含めて確保されているような印象を受けるわけですね、モルディブも入っていますけれども。

要するにインドはおもしろくないわけですが、ただ、このスリランカの港にしても、どこにしても、軍事利用をたくさんしているというところまではいっていないわけで、今のところはそういう可能性は十分にあるけれども、顕著に見られているわけではないという気がします。またもう1つ、中国の場合には、軍事というよりも、安全保障の面で、エネルギー、特に原油を安定的に中国に供給するために、パキスタンから中央アジアへ抜けるルートと、ミャンマーから入る、ここにパイプラインを作ろうとしていますね。これもまた、中東やアフリカからの原油を確保しようという、そういう安全保障の考慮かなというふうに思いますね。

こうして世界中に中国式の価値観を広めて、新たに生まれようとしている超大国。私たちはどう向き合えばいい?

川島さん:やはり1つは、日本という国から見ると、いろいろ見えるんですけれども、中国の経済というのは、世界にどんどん広がっています、第2位ですから。軍事は世界第3位でして、経済の方が先行しています。ただ、東アジア、我々のこのエリアで考えると、経済と軍事が一致してくるんですね。ですから、軍事と経済がともにきている、この感覚、パーセプション、認識は、遠い所の国にはあまり感じられない。遠い方の国には、経済が先に来ますので、とても平和裏にやっているように見えるわけです。そこが難しいところですね。

こうして世界のパワーバランスが今、大きく変わろうとしている中、この新たな現実を見据えていくことが今、必要だと感じます。