クローズアップ現代

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2018年1月29日(月)
“ドラレコ”革命  ~危険な運転を炙り出せ~

“ドラレコ”革命 ~危険な運転を炙り出せ~

ドライブレコーダーが捉えた決定的瞬間が、事故の真相究明につながるケースが相次いでいる。さらに“ドラレコ”の進化は「危険運転をするドライバー」や、「事故が起きやすい場所」の傾向を明らかにしようとしている。映像に加え、自動車の挙動を場所や時刻とともに記録しているためだ。番組では、研究機関と共同で“ドラレコ”が記録した膨大な走行データを独自に分析。危険運転の実態に迫り、命を守るためのヒントを探る。

出演者

  • 川崎希さん (タレント)
  • 大慈彌雅弘さん (日本交通事故鑑識研究所代表)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

ドライブレコーダー革命 真実刻む決定的瞬間

このあと、衝撃の瞬間が…。

観光バスに乗用車が直撃し、60代の男性が死亡。事故の一部始終を目撃していたのは、ドライブレコーダーでした。
前の車に対する執ようで危険なあおり運転。アクセルやブレーキの踏み間違いで、突然、前の車が。万が一、事故に巻き込まれた時、その瞬間を記録するドライブレコーダー。去年(2017年)、あおり運転による死亡事故が相次いで以降、販売台数が急増。累計200万台以上が普及しているとみられています。

自動車用品店 店員
「3か月か4か月ほどお待ちいただいている状況。」

ドラレコは社会を変える可能性も秘めています。映像や運転データを集約し分析することで、交通事故の意外な要因も明らかになってきました。ベテランドライバーが陥っていたある運転の癖とは。身近な道路に潜んでいた盲点とは。
あなたの運転は大丈夫ですか?ドラレコ革命の最前線です。

“ドラレコ”革命 危険な運転をあぶり出せ

ゲスト川崎希さん(タレント)

最近、すごく高性能なドラレコを車に付けたそうですね。

川崎さん:そうなんですよ。去年の3月に、主人がふらふら、どこか遊びに行ってないかなっていうのが心配になりまして、それで、車内も車外も360度録画できるドライブレコーダーを付けました。

小さい時に事故に遭った経験もある?

川崎さん:私が小学校2年生の時なので、約20年くらい前に車にひかれまして、その時はドライブレコーダーって普及してなかったので、自分が何で事故に遭って、どのタイミングでひかれたとか、気付いたら地面にいたので、全然分からなかったんですけど、もしもドライブレコーダーが普及した今に映像が残ってるんだったら、自分が悪かったのかどうかも分からないので、1回、被害者の立場で見てみたいっていうのがありますね。

そのドライブレコーダーが記録した事故の瞬間をちょっと見てみましょう。子どもが道路を横断しようとしたら…。

川崎さん:すごいスピードですね。

怖いですよね、間一髪でした。そしてこちらは、青信号の交差点に車が突っ込んできたという状況です。

川崎さん:すごく危ないですね。

こうしてあらゆる映像が残るという時代になっているわけなんですけれども、このドラレコの映像が、交通事故の捜査で決定的な証拠となったケースがあります。

ドライブレコーダーが捉えた事故の真実

一昨年(2016年)福岡県で起きた交通事故。交差点でミキサー車と軽自動車が衝突し、軽自動車に乗っていた男性が死亡しました。

この事故で命を奪われた、田﨑俊佑さんです。


「パパ、ただいま。」

妻と2人の娘が後に残されました。

妻 田﨑由香理さん
「みんなで遠出しようとか、しょっちゅう主人が話していたので。会いたいです。子どもたちの成長を一緒に見たいです。」

ミキサー車を運転していた60代の男は事故のあと、こう供述しました。

“信号は青だった。”

信号無視はしておらず、責任の一端は田﨑さんにあったかのように主張したのです。しかし、その供述は虚偽であることが明らかになります。

交差点にいた別の車のドライブレコーダーが、事故の一部始終を捉えていたのです。交差点を右折しようとした田﨑さんの車に向かってきたミキサー車。その時、信号の色は赤でした。

警察がドライブレコーダーなどの解析を進めた結果、交差点に進入した時の速度は時速70キロを超えていたことが分かりました。動かぬ証拠を突きつけられた男の供述です。

“本当のことを話します。私は嘘をついていました。事故の状況を見せられて、嘘がバレていることが分かった。”

過失を認め、最も重い危険運転致死の罪で懲役7年の刑が確定。ドライブレコーダーが田﨑さんの無実を証明しました。

妻 田﨑由香理さん
「主人が何も悪くないと分かったのがドライブレコーダーだったので、ドライブレコーダーがなかったらと考えたら相手の刑も変わってきているかと思うと、本当に恐ろしい。」

“ドラレコ”が捉えた事故の真実

ゲスト大慈彌雅弘さん(日本交通事故鑑識研究所代表)

ドライブレコーダーで分かった真実、いかがでしたか?

川崎さん:すごく痛ましい事故だったと思うんですけど、もしも第三者の視点のドライブレコーダーがなかったら、加害者の方の証言だけだと、もしかしたら被害者の方にも非があったかのような証言があったので、家族の方も、すごくもやもやした気持ちがあったと思うんですよね。でも、第三者の視点のドライブレコーダーを解析してみたことによって、被害者の方に落ち度がないと思うと、家族の方はそれだけでもちょっと浮かばれたような気がするし、自分が付けてなくても、他人の事故のそういう証拠として役立つこともあるんだなって、この事故を見て思いましたね。

大慈彌さんは5,000件以上、交通事故の鑑識にあたってこられたということですが、ドラレコの普及で、この捜査や調査はどういうふうに進化したのでしょうか?

大慈彌さん:今まではっきりしなかったことが、ドライブレコーダーで映像という形で捉えることによって、事実がそのままはっきり捉えられるというのが、ドライブレコーダーのいちばんの強みと思います。
私どもがやっている鑑識というのは、事故が起きたあとのタイヤ痕だとか、車の変形や破損状況だとか、そういうものを基本にして、事故の真実を鑑識という形で皆さん方に伝えていたんですけれども、おのずから限界がございまして、先ほど放映されたビデオなどを見ても分かるとおり、信号の問題というのは時間的な流れのものですから、あの事故も、例えばトラックが3秒ぐらい遅かったら起きなかったとか、そういうことは今までやってた手法では分からない、もうドライブレコーダーしかないということですね。

実は大慈彌さんは、日本で初めてドラレコを開発した方でもあるんです。これがまさに、その最初の試作機なんですが。

川崎さん:なんかすごく手作り感がある。

大慈彌さん:まさに手で作った。簡単に説明しますと、これ(前に突き出ている部分)がカメラで、これがちょっと古い、今から20年ぐらい前なんですけど、記録媒体。映像をこれに記録するということですね。

開発のきっかけは、遺族の方の声だったそうですね。

大慈彌さん:遺族の方というのは、先ほどのビデオにもありましたように、大切なお父さんだとか、それからお子さんがおありだと。要するに、大事な方が亡くなったことに関して、本当に真実を知りたいという心の叫びみたいなのを、私、たくさん経験しまして。私たちがやってることで何か真実を捉える方法はないかなと、そうしたらもう映像しかないかなということで、素人ながら、こういう手作りで開発したということですね。

“ドラレコ”革命 データが語る事故の真実

鎌倉:ドラレコといいますと、カメラで映像を記録するというイメージがありますが、実はそのほかにも車の速度やGPS情報、急ブレーキ、急ハンドル、急発進など、あらゆる走行データを記録する機能があるんです。今、ドラレコに記録されるデータを分析することで、交通事故がなぜ起きるのか、その原因を探ろうと、研究が始まっています。全国のタクシー会社や運送会社、一般ドライバーなどから提供される膨大なデータが、個人を特定しない条件の下、研究機関などに集められています。
今回、NHKは研究機関と共に、事故やヒヤリハットに至った10万件以上の走行データを分析しました。すると、意外な事実が明らかになったんです。まず、速度です。30キロ以下の低速で起きていたケースが57%ありました。さらに道路の状況を見てみますと、52%が見通しのいい道路で起きていたことが分かったんです。

一体なぜなんでしょうか。さらに分析を進めますと、経験を積んだドライバーが陥りやすい、ある運転の癖が見えてきたんです。

“ドラレコ”ビッグデータ 浮かぶドライバーの盲点

ドライブレコーダーに記録された映像を研究している、東京農工大学です。タクシー会社などから提供された60万件の映像を分析したところ、意外な発見が。
見通しのいい道路で、スピードが出ていないにもかかわらず起きた事故です。

東京農工大学スマートモビリティ研究拠点 大北由紀子主任研究員
「ドライバーはまず、左を見て右も見て、目で(歩行者を)捉えてるはずなんだけれども、歩行者と衝突をする。」

左右に視線を送るドライバー。しかし、目の前の歩行者と接触してしまいました。

昼間の見通しのいい道路でも。ドライバーは、周辺の状況を何度も見ていました。経験を積んだタクシードライバーにもかかわらず、同様のケースは多数見つかりました。

東京農工大学スマートモビリティ研究拠点 大北由紀子主任研究員
「目に入っているはずでも、見落としをしているとしか思えない。視野に入っていても、うまく認識できないことがあると示すデータ。」

なぜ、こうした不可解な現象が起きてしまうのか。交通事故のメカニズムを研究している東京大学大学院の小竹元基准教授に、映像をさらに分析してもらいました。

東京大学大学院 小竹元基准教授
「“操作の先行”だと思います。『もう大丈夫』という“思い込み”で発進している。」

小竹准教授が注目したのは、ドライバーがアクセルを踏んだタイミングでした。交差点にさしかかりブレーキを踏んだドライバー。まず、左を確認。次に右を見ます。その直後、右を見たままアクセルを踏んでいました。

目の前の歩行者に気が付いた時には、すでに接触。安全確認が終わらないうちにアクセルを踏んだことが、事故の原因だったのです。運転に慣れたドライバーだからこそ陥りやすい心理だと指摘します。

東京大学大学院 小竹元基准教授
「本来は安全確認をしてから状況を判断して行動を起こす。“操作の先行”はそれを全部省いてしまう行為。『大丈夫だろう』という思い込みが習慣という形になって、1つの事故を引き起こしている。」

“ドラレコ”ビッグデータ ドライバーの盲点

運転の慣れや思い込みによる操作の先行は、どんな心理によるもの?

大慈彌さん:
まず人間というのは、見てるようで見てない。それと、認識しなければ、目は見てても頭に入ってないと、やっぱり操作に移れないわけですね。われわれはそれを「心の脇見」と言ってますけれども、要するに脳が脇見してる。判断しなきゃいけない脳が脇見をしてて、正確に操作の方がいってないというのが、操作の先行になるんじゃないかなと思いますね。

ベテランドライバーでも陥ってしまう現象、どうご覧になりましたか?

川崎さん:私も去年、子どもが生まれて、いつか1人で子どもが横断歩道を渡る日が来ると思うと、すごく怖くてたまらないんですけれども、でも歩行者側から考えると、車を運転してる人って、すごいプロだな、だから私は歩いても大丈夫っていう気持ちがあったんですけど、こういう映像を見ると、車の人は見てるようで見てないから、歩行者側が気をつけなきゃっていう、歩行者側の勉強にもなる映像だなと思いましたね。

事故を起こしやすい心理を浮かび上がらせたドラレコ。さらに、ドライバーに安全運転を促すシステムにも活用されています。

“ドラレコ”革命 あなたの運転が変わる

福岡市の運送会社です。配送を担当しているドライバーの新坂桐香さん。車につけていたドライブレコーダーが、危険な運転を検知していたことが分かりました。

「危険挙動ということで、18件ありました。残念ながら、うちのドライバーの中でいちばん多かった。このことに関して、どう思います?」

シティーアクト ドライバー 新坂桐香さん
「すごく情けないって思います。」

新坂さんのドライブレコーダーの映像です。カーブでもスピードを落とさず制限速度ぎりぎりで走っていたため危険な運転と判定されました。

事故につながりかねない急ハンドルや急ブレーキも。改善しない場合、懲戒処分もありうると伝えられました。

シティーアクト ドライバー 新坂桐香さん
「ハンドルが荒いんですかね。あとはブレーキが遅いと。今まで20何年そういう運転をしてきたと思うと、最低でもこの仕事で運転する時はきちんとした運転をしようって、まず思いました。」

ドライブレコーダーで危険な運転を検知する、この仕組み。開発したのは大手保険会社です。ドライバーの運転を点数化し、契約先の企業に情報提供しています。
新坂さんの場合、69点と低い評価でした。ドライバーの点数が向上し事故が減った場合、企業が支払う基本保険料は最大で30%ほど削減されます。

損害保険ジャパン日本興亜 リテール商品業務部 杉本光祐リーダー
「ドライブレコーダーがあることによって、各種センサーでひとりひとりの運転者の運転の行動・運転のデータ・特性、これが全てとれますので、保険料が削減になるというところがモチベーションになり、ドライバーの方々に対する安全運転の啓もう活動にも使っていただける。」

ドライブレコーダーに問題点を指摘された新坂さん。運転中、カーブが連続する山道にさしかかりました。ブレーキをこまめに踏んで減速。ハンドルは丁寧に操作していました。この日、うれしいことがありました。

「表彰状。安全運転評価第3位、新坂桐香殿。よく頑張られました。」

危険な運転は検知されなくなり、点数は20点ほど上がりました。

シティーアクト ドライバー 新坂桐香さん
「ドライブレコーダーは私の運転の癖を教えてくれるので、お守りであり、監視役です。」

“ドラレコ”革命 あなたの運転が変わる

鎌倉:この会社では、事故の件数を5分の1に抑えることができたうえに、保険料も40万円以上安くすることができました。ほかにも、ドラレコを使ったサービス、こんなものがあります。例えば高齢のドライバーの走行データから、認知症の兆候をつかむ。事故があった時には自動的に救急車を呼ぶといったサービスのほか、居眠りや脇見運転を検知して、警報を鳴らすシステムの開発も進んでいるんです。

ドラレコが、いわばいろんなことを教えてくれる世の中になったが?

川崎さん:同乗者がいなかったりすると、教習所を卒業したあとって自分の運転を誰も指摘はしてくれないと思うんですけど。でも、ドライブレコーダーが教えてくれることによって、自分は急ブレーキが多かったんだとか、知るきっかけになりますね。

“ドラレコ”があぶり出す 危険な場所とは

鎌倉:さらにドラレコは、道路の危険な場所の改善にも活用されているんです。こちらの赤い点は、ドライバーが急ブレーキを踏んだ場所を表したものです。ドラレコのセンサーが検知したもので、全国でおよそ35万か所に上ります。

こちらは新潟市の日和山地区です。国土交通省などが114か所の急ブレーキ箇所を特定。すぐ近くに学校があるため、子どもたちがいつ事故に巻き込まれてもおかしくない状況だったんです。

そこで新潟市が警察と協力し、30キロの速度制限を設け、注意看板や標識を設置。朝の時間帯には交通規制も実施しました。その結果、車の平均時速が下がり、急ブレーキ地点は30か所減少したんです。

“ドラレコ”革命 事故のない社会へ

ドラレコを活用して、道路の危険な場所の改善にもつながる可能性があると。どんな意義がある?

大慈彌さん:ドライブレコーダーの映像というのは、人と車と道路、この3つを同時に録画してくれてるわけですよね。そうしますと、総合的に、今までは事故が起きた所の箇所を、ポイント的にただ事故多発地点ということで捉えてたんですけれども、ドライブレコーダーの映像を見ますと、どういう事故がどういう形で起きたのかっていうところまで分かるわけですね。だから非常に対策がつけやすいんじゃないかなと。ただ、多発地点というひと言でいうんじゃなくて、どういう事故がどういう形で起きたっていうのが、ドライブレコーダーの映像で如実に分かるんじゃないかなと思います。

具体的に多発という言葉の裏に、どんなデータがあるかが分かるようになったということですね。

大慈彌さん:そのとおりです。

ドラレコでこうした映像や情報が共有されることで、安全は飛躍的に高めることができると思うんですが、一方で、プライバシーをどう守るのかといったような、新たな課題も湧き上がってくると思うんですけれども、開発者という立場で、このドラレコがもたらす社会の在り方を書いていただきました。

大慈彌さん:私が今まで5,000件近く、交通事故の解析をしたんですけど、なかなか真実を伝えるっていうのは難しい。その真実がゆがめられないために、ドライブレコーダーっていうのは、非常に役に立つものではないかなと思いますね。

ドラレコによって、ほかの車もそうですけれども、自分もちょっと注意しなきゃいけないという気持ちにもなりますよね。

川崎さん:やっぱり、いろんな車にドライブレコーダーがあると、もし事故を起こしても、今までは証言を、例えばうそをつけば免れていた方も、映像がちゃんと残っているので、うそをつけないという社会になっていくと、より安全な運転を皆さんしていくんじゃないかなと思いますけどね。

いろんなものが映るということに関して、ちょっと抵抗はないですか?

川崎さん:私はあまり抵抗ないですけど、やっぱりちょっと映りたくないっていう方もいるとは思いますね。

ただ、やはり命を守るためにはドラレコが必要?

大慈彌さん:いろいろとプライバシーの問題だとか、肖像権の問題とかがございますけど、命には代えられないんじゃないかなと私は思っております。

やはり異論はあると思いますが、ぜひそういう方向で活用できるように、社会の側もきちっと使いこなすということが必要になってくるかもしれませんね。

大慈彌さん:そのとおりですね。

交通事故で亡くなる方は、毎年3,000人以上に上っています。事故はなぜ起きるのか。人間はどう行動するのか。ドライブレコーダーによって記録された膨大な映像やデータに、まだまだ多くのヒントが眠っているのではないかと思います。それを生かして、命を守るということにつなげられるのか、私たちは問われていると思います。