クローズアップ現代

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2017年12月14日(木)
アラフォー・クライシス

アラフォー・クライシス

給与に関する驚きの事実が明らかに!世が空前の“売り手市場”に沸く中、どの世代も月収が軒並み増加。しかし、アラフォー世代の給与だけがダウン。40代前半では、5年前に比べて2万円以上下がっていたのだ。実はこの世代間格差、就職したタイミングが大きく影響しているという。収入が低く、結婚もままならない。生計を頼ってきた親世代が高齢化し、共倒れの危機も…。アラフォー世代が直面する問題をとことん考える。

出演者

  • 藤田孝典さん (社会福祉士)
  • 飯島裕子さん (ノンフィクションライター)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

アラフォーが危ない! 給与に世代間格差が発覚

サラリーマンの皆さん!最新の調査で、給料に関する驚きの事実が明らかになりました。
世代ごとの月収を5年前と比較した結果、どの世代も軒並み上昇していたんですが、何と、35歳から44歳のアラフォー世代の給与だけがダウン。40代前半では、ひと月2万3,000円も下がっていました。

41歳
「先輩よりも、僕の方が減ってる。」

60代
「息子の年代だからショックを受けた。」

実は今、アラフォー世代では、仕事も、お金も、結婚もかつてないほど危機的な状況に陥る人が続出。

44歳
「生きていても価値あると思えない。」

特に、この世代を苦しめているのが、「7040」と呼ばれる問題なんだとか。
今夜のテーマは、「アラフォー・クライシス」。40代を襲う危機の深層に、とことん迫ります。

アラフォーが危ない! 給与に世代間格差が発覚

なぜ、アラフォーの給与が下がっているのか。
まずは、調査に当たった研究者を直撃。東京大学の玄田有史さん。30歳から49歳までの3,000人以上に、労働実態に関するアンケートを行いました。

東京大学 玄田有史教授
「最初、これ計算間違いじゃないかって。ここまで世代によって、毎月の給与に差が出ると思っていませんでしたから、衝撃的な数字でした。」

玄田さん、この理由、一体なぜなんですか?

東京大学 玄田有史教授
「(給与が)低くなっているので、氷河期世代。バブル世代に比べると、極めて大きな賃金の差がある。」

バブルのころ、大卒者の求人倍率は2倍を優に超えていました。しかし、90年代に入ると急落し、就職氷河期に突入。2000年代の半ばに回復するまで、企業の採用意欲は低迷し続けました。とりわけ厳しかった時期に就職した世代が、今、アラフォーを迎えています。

非正規でも、正社員でも、当時の影響が尾を引いているというのです。

東京大学 玄田有史教授
「一番大きいのは、日本にある『新卒一括採用』という特徴的な仕組みの影響。新卒の時点で、チャンスをいったん逃してしまうと、なかなか取り返すのが難しい。学校卒業直後だけでなく、その後、継続して困難な状況が続く。」

特に注目されているのが、たとえ正社員になれた場合でも壁にぶつかり、給与が伸び悩んでいることです。
現在、アラフォーを迎えた世代は、仕事を覚える20代のころに、スキルや能力を開発する機会に恵まれませんでした。不況などの影響で、正社員になっても、ほかの世代より研修が受けられなかったことが分かっています。

労働経済学に詳しい 樋口美雄教授
「能力開発を受けないと、キャリアアップが難しい。本人の努力も影響するけれど、同時に機会の違いの影響も強い。」

アラフォー世代には、新卒時に希望した会社に就職できず、転職を決断する人も多くいました。勤続年数を調べたところ、15年以上勤めた人の割合は、上の世代より減っていました。

東京大学 玄田有史教授
「『これは違うな』と思って転職した場合、中小企業に入ることが多かった。勤続年数は評価されますから、転職して勤続年数が短くなれば、賃金がなかなか伸びない。」

そして、昇進や昇格にも大きな壁が立ちはだかります。

「同期の数は?」

47歳
「僕ら70人、同期。」

41歳
「20人ですよ。(上の世代がいて)なかなか上にあがれない。」

40代前半で課長になった人たちの割合です。アラフォー世代は上の世代と比べ課長になれる割合が減っています。

大量採用されたバブル就職世代が上につかえ、昇進や昇格のスピードが遅れていたのです。

アラフォーが危ない!仕事もお金も将来も

アラフォー世代の中でも、より深刻な状況に置かれているのが、非正規で働く人たちです。
川崎市に住む、鈴木浩介さん、45歳。1995年、有名私立大学の理工学部を卒業。しかし、正社員としての就職がかなわず、派遣会社に登録。IT関連の7社を転々としてきました。現在は、市の臨時職員をしています。月収は手取りで15万円。20代のころとほとんど変わりません。

鈴木浩介さん(仮名・45歳)
「質素に生きてます。」

今、世の中は空前の人手不足。有効求人倍率は、バブル期超えの1.5倍。中高年の転職市場も活況です。鈴木さんも転職サイトに登録。しかし、40代を迎えても、非正規で働く自分は、そうした過熱ぶりとは縁がないといいます。

鈴木浩介さん(仮名・45歳)
「40代になってから面接にも呼ばれない。30超え、40代以降の人たちに求められるのは、マネジメントとか、部下の育成経験を求められるので、厳しい。」

鈴木さんは、教員免許を取得するため、2年前から通信制の大学で学んでいます。これだけの好景気でも、自分が民間企業で正社員として採用される望みは薄い。そこで目指したのは、深刻な人手不足といわれる学校現場。公務員として採用され、活躍したいと考えています。

鈴木浩介さん(仮名・45歳)
「男性はそれなりの所得を獲得して、社会的地位を得て、家族を持ってという人がやっぱり輝いていますよね。私もうらやましいと思います。」

国も、氷河期に就職したアラフォー世代が、給与や雇用の面で割を食う現状を、深刻に受け止めています。

厚生労働省 参事官 伊藤正史さん
「氷河期世代が40代に到達し、必ずしも正社員就労が実現していない現状が徐々に明らかになっていく中で、こうした方々に対する、より本格的な手厚い就労支援を実施していかなければ。そういう問題意識であります。」

アラフォーが危ない!仕事もお金も将来も

ゲスト 藤田孝典さん(社会福祉士)

鎌倉:こちらは、日本の世代別の労働人口です。35歳から44歳までのアラフォー世代が最も多く、労働の中核を担い、日本を支えています。この世代は、およそ1,500万人。注目すべきは、その中に383万人もの非正規雇用の方が含まれているということなんです。一番の働き盛りなのに、雇用は不安定なんです。

アラフォー世代が社会で歩んできたこの20年、日本の労働環境が激変し、社会に格差と貧困が広がった時期と重なります。大学を出て、就職しようとしたときは氷河期真っただ中、希望どおりの仕事に就けなかった人が大勢いました。20代後半になるころには、働けど豊かになれない、ワーキングプアが社会問題に。30を過ぎたころに起きたのが、リーマンショック。派遣切りが相次ぎました。そして、アラフォーになった今も、先が見えない状況が続いているんです。

生活困窮者の支援にあたっている藤田さん。
およそ20年前に負ったハンディが今も続いている。これはフェアではないと思うが?

藤田さん:かなり深刻な状況だということが分かりますね。特に努力をしなかったからそうなっているとか、怠けているからそうなっているというわけでは全くなくて、社会構造問題、雇用構造の激変という問題が背景にあるってことですね。特に男性の場合、一度就職すれば、そのうち経験を積んで、キャリアを積んで、企業内も研修してくださって、結婚、出産、そのあとはマイホームを構えてっていう、いわゆる社会人モデルっていうものがあったと思うんですね。これが、いわゆる日本型雇用といわれるものだと思いますが、これがもう根本から壊れてしまった一番最初の世代っていうような印象を持ちますよね。

鎌倉:さまざまな困難に直面してきたアラフォー世代に今、新たな危機が迫っています。それが「7040問題」。7040とは、70代の親と40代の子どもが同居生活を送ること。そこに一体、どんな問題が潜んでいるんでしょうか。

アラフォーが危ない! 新たな「7040問題」とは

田中絵美さん、44歳です。北海道の実家で、家事手伝いをしています。

田中絵美さん(仮名・44歳)
「母です。」

父は70代、母は60代後半。ともに年金暮らしです。田中さんは現在、独身。これまで、一度も実家を離れて暮らしたことはありません。

田中絵美さん(仮名・44歳)
「(親には)家を出ないほうがいいんじゃない?みたいなことを言われて、ずっと実家にいたんですけど、どこかで出とけば良かったなっていう後悔はあります。」

成人、就職した後も親と同居する独身者は、かつて「パラサイト・シングル」と呼ばれ、若者たちの間に広がりました。20代のうちは、現役で働く親の元で独身生活をおう歌できるとされていました。しかし、氷河期に非正規となったアラフォー世代の親子は今、深刻な事態に直面しています。
40代を迎えた田中さん。3か月前、非正規雇用の契約が満了。また仕事を失いました。地方では、田中さんが希望する一般事務の仕事は倍率が高く、思うように見つかりません。

田中絵美さん(仮名・44歳)
「仕事もないし、お金もないし、(実家の)外を出ても、変な宗教とかに引っかかって終わりじゃないのかな。誰かが会いたいとか言っても、こんなだし何も考えられない。」

経済的に自立するメドが立たず、1人暮らしや結婚を考える余裕はありません。

田中絵美さん(仮名・44歳)
「引き落としされているので、ないと思います。」

「9,000円も?」

田中絵美さん(仮名・44歳)
「ないと思います。」

長年、一家の大黒柱だった父親は、すでに定年退職。母親も体調不良で病院に通っています。親子の生活を支えるのは、年金だけになりました。

田中絵美さん(仮名・44歳)
「ひとりで残されたらつらい。すぐ困るんだろうな。」

最新の調査によれば、親などと同居する40代から50代の未婚女性の7割近くが、親に生計を支えられていると答えています。

親は70代で年金頼み、子は40代になっても稼げない「7040問題」。中には、親の介護に追われ、共倒れしかねないケースも出てきています。

70代の親と同居するアラフォー女性
「親は病気をして入院して、ずっと何かしら家族をみていなくちゃいけない。今は両親の年金の収入で養ってもらっている状態。年金で家族全員の生活費、医療費も工面しなくちゃいけない。」

「パラサイト・シングル」の名付け親、社会学者の山田昌弘さん。親と同居していたことで当事者たちに迫る危機が、ずっと見過ごされてきたと指摘します。

社会学者 山田昌弘教授
「40代の親は、だいたい70代。そろそろ危機が見え始める時期。世帯を分離すれば『貧困』ですけど、日本って世帯主義なんですよ。世帯主が親で収入が高いと、そこで扶養されているのは、10歳の子であろうと、40歳の子であろうと同一にみなされます。親が亡くなったとき、残された子は、どう生活していけるか。底辺に落ちてしまう可能性が高まってきている。」

アラフォーが危ない! 新たな「7040問題」とは

ゲスト 飯島裕子さん(ノンフィクションライター)

藤田さんは、この「7040問題」、何を一番心配している?

藤田さん:まず、40代周辺の方たちが、一生涯貧困、生活困窮を宿命づけられているっていう状況ですね。例えば、今も親を頼って生きざるを得ないっていう状況がありますので、親が少し介護が必要になるとか、医療が必要になるってことになると、介護離職せざるを得ないとか、少し家族の状況が変わるだけで、ご自身は低所得ですし、あるいは離職をしてしまえば、年金、自分自身がもらう年金自身も少なくなっていくといいますか、そんな状況がありますので、一生涯、いわゆる「下流老人」というような、高齢期の貧困まで想定せざるを得ないっていうような状況が生まれていると思いますね。

若者や女性の貧困について取材されている、飯島さん。
アラフォー女性の皆さんの危機を、どういうふうに捉えている?

飯島さん:アラフォーといわれる35歳から44歳の方で、非正規かつ、シングルの女性の数というのが、ここ10年余りで16万人から52万人と、非常に急増しているという状況があります。その背景を考えたときに、彼女たちが社会に出た就職氷河期なんですけれども、特に女性にとって何があったかというと、多くの女性の受け皿になっていた事務職の正規の採用が激減してしまうと。そういった事務職の正規の仕事が派遣に置き換わっていったという、そういった背景があったというふうに思います。それから、VTRに出てきた女性たちを見ても思うんですけれども、今、女性活躍であるとか、少子化対策という中で、働き、産み、かつ育てられるというような、そういった社会というものが実現されてきているような、一方で状況があります。隣の女性は子どもを産み、かつ仕事も頑張っている。けれども自分は、こういった苦しい状況にある。なぜ、こうなってしまったんだろうかというところに自己責任を感じたり、生きづらさを感じたりとか、そういった問題があるのかなというふうに思います。

鎌倉:社会から疎外感や孤立感を感じているアラフォー・クライシスの女性たち。当事者たちが自ら連携を始める動きも広がっています。

アラフォーが危ない! 「ひきこもり女子会」の試み

ひきこもりUX会議 代表理事 林恭子さん
「アラフォーね。確かに、いちばん多いんですよ。」

林恭子さん。去年(2016年)から、働けなかったり、介護で家から出られなかったりする女性たちに声をかけ、互いの悩みを共有する、ひきこもり女子会を開いています。これまで、延べ1,000人以上が参加しました。

ひきこもりUX会議 代表理事 林恭子さん
「『ひきこもり』と名のつく居場所とか集まりに、9割以上、男性しか来ない。彼女たちの孤立感や不安感、切実な思いというのは、いま非常に危機的。仕事をしている方とか、結婚している方とは会わなくなって、交友関係を断ってしまうので、孤立したまま、何年もたっている。余裕が一切ない、待ったなし。」

アラフォーが危ない! “見えない”女性の苦悩

こうした女性たちの問題が、今、出てきているのは、なぜ?

飯島さん:ひきこもりの問題は以前からありましたけれども、その多くが、将来、大黒柱になる、あるいは家族の稼ぎ主になる男性の問題として認識されてきたと。その背景で、同じように女性も困難な状況があったんだけれども問題が無視されてきてしまったと。それは、やはり女性はいずれ結婚して、男性に養ってもらうんだから問題がないという、男性稼ぎ主モデルというような言い方もしますけれども、そういった中で、社会の中でも認識されてこなかったと。かつ、当事者も家事手伝いというところに体裁が整ってしまうというところで、本人も家族も問題の深刻さに気付かないという状況の中で、社会的に孤立していってしまったという状況があるのではないかと思います。

こうして、アラフォーになっても非正規、先が見えない人たちをどう支援していけばいいのか。課題解決への取り組みを取材しました。

アラフォーを救え! 正社員を目指して

「ネクタイ、口紅、かばん、靴、大丈夫ですか?」

東京都は、30代から40代に特化した、かつてない就労支援で氷河期世代の救済に乗り出しました。

費用は無料。しかも、受講に専念してもらうため、1日5,000円が支給されるという画期的なプログラムです。従来の支援は、面接の練習やエントリーシートの添削が中心で、ほとんどの場合、期間は数日程度。一方、このプログラムは3か月間、毎日行われます。受講生たちは、企業を訪問してヒアリング。内容をまとめ、相手企業の担当者にプレゼンするなど、実践的な経験を積むことができます。

企業担当者
「プレゼンは言葉よりも映像がすごく大切。視覚を強調すると、プレゼンがいいものになる。」

20代のころに蓄積できなかった社員として働く経験。それを重ね、正社員として就職することを目指します。

東京しごとセンター 永阪彰さん
「自ら企業にアポを取る。企業に質問したり、ディスカッションしたりする。そういうシミュレーションを通して、成功体験を積み上げていく。」

これまで、およそ500人が受講し、半数以上が正社員として内定を決めています。

正社員の内定が決まった女性(40歳)
「1社内定をもらって、今度働き始めます。積極性が前よりは出たかなと思います。」

どう乗り越える? アラフォー・クライシス

鎌倉:国も今年(2017年)就職氷河期世代の雇用を改善するための助成金を新設しました。5回以上の離職や転職を繰り返す35歳以上の人を正社員として採用した企業に、最大60万円を支給します。また、横浜市でも去年から非正規雇用で働く35歳以上の独身女性のための講座を始めました。キャリアカウンセラーの錦戸かおりさんによりますと、「アラフォー世代は、就職や転職で何度も失敗し、自信が持てない傾向がある。そのため、支援にあたっては、自己肯定感を高めることが重要だ」と話しています。

この負の連鎖から抜け出すために、どんな対策が必要?

藤田さん:まず、社会保障を手厚くしていくということが非常に重要ですね。政府、自治体が、先ほどのように、給付型、生活費を支給して、職業訓練を行ったりとか、あるいは資格取得をお手伝いしたりとか、あとは困っている方で、住宅の家賃が高いっていう方もたくさんいらっしゃいますので、住宅手当を企業に代わって社会保障として入れるとか、そういったものをやっぱりやっていくっていうことと、個人的にできることとしては、例えば「受援力」という言葉があるんですけれども、援助を受ける力ですね。これは、早めに困ってるんだっていうこととか、早めに助けてくれということを、さまざまな制度とかサービスがありますので、そこに結びついてもらいたいなというふうに思いますね。

社会の側は、どう受け止めたらいい?

飯島さん:自己肯定感が大事ということは、もちろんその通りだと思うんですけれども、一方で、社会の方が彼らを肯定してこなかったという現実もあると思うんですね。なので、まずは社会の仕組みを変えていかなければいけない。具体的には、例えば履歴書に空白期間があるであるとか、それから非正規経験があると、非常にマイナスになってしまって、非常に評価されないとか、そういったところも変えていくということが必要ではないかというふうに感じます。
(転職を繰り返していても評価していくと?)
それも何かの経験になっていると。

このアラフォー世代、今、社会を担う中心となっています。彼らの危機は、社会全体の危機につながりかねません。世代を超えて、今、考えるべき問題だと思いました。