クローズアップ現代

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2017年11月27日(月)
サブちゃんとキタサンブラック ~知られざる日本一への道~

サブちゃんとキタサンブラック ~知られざる日本一への道~

今月26日のジャパンカップで、競馬のGⅠ最多勝利タイ記録に挑んだキタサンブラック。現役最強馬として大きな人気を集めている。しかし、当初は期待を集める馬ではなかった。オーナーの北島三郎さんが「息子」のように目をかけ、調教を担当する関係者の中には、かつて一度は人生に”絶望”しながら、自らが育てた名馬の活躍に、再び前を向き始めた人もいる。キタサンブラックの強さの秘密と、思いを寄せる人々のドラマを、独自映像を交えて描く。

出演者

  • 杉本清さん (フリーアナウンサー)
  • 優木まおみさん (タレント)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

サブちゃんと馬と人生と キタサンブラック 最強への道

去年(2016年)大けがを負い、再起を目指す、サブちゃんこと北島三郎さん。そのサブちゃんが息子とまで呼ぶ1頭の馬がいます。

武豊騎手
「すごい馬に乗せてもらったなという気持ちが強いですね。」

昨日(26日)のジャパンカップでは惜しくも3着。引退レースとなる来月(12月)の有馬記念で、G1勝利数の最多タイ記録に挑みます。決して諦めない泥臭い走りで多くの人たちを魅了してきたキタサンブラック。う余曲折の道のりには、支えてくれた人たちとの知られざるドラマがありました。

北島三郎さん
「神様が俺にプレゼントしてくれた贈り物かな。」

馬は世につれ、世は馬につれ。ご覧ください。サブちゃんと馬と人生と。


地方競馬からはい上がり、社会現象とまでなった名馬・オグリキャップ。そのひたむきな姿と重ね合わせて見られるのが、キタサンブラックです。
テイエムオペラオーやディープインパクトといったレジェンドが作り上げた、G1最多勝利。キタサンブラックはその大記録に王手をかけています。
およそ2,000頭の競走馬を抱える栗東トレーニング・センター。3年前からキタサンブラックもここで調教されています。

清水久詞調教師
「まさかここまでになるとは、正直思っていなかったですね。すごい健康で丈夫。」

生後8か月のころのキタサンブラックです。体の線は細く、注目される血統ではなかったため、なかなか買い手が見つからなかったといいます。そんな馬にただ1人、目をつけ、買い付けたのが北島三郎さんでした。

北島三郎さん
「僕は目が大好きなんですよ。特にブラックの目が好きでね。俺を買った方がいいよって目をしてた。こういう縁みたいなもの、絆みたいなものが、この馬にあった。」

たたき上げのキタサンブラック。それは北島さんの人生とも重なります。北海道の漁村で7人兄弟の長男として生まれた北島さん。歌手を夢みて上京。しかし、酒場の流しとして歌う日々が続きました。苦節9年。紅白に出場を果たしたのは、27歳の時でした。
「懸命に走り続ける競走馬と芸能人は似ている」。歌手として成功を収める中で、北島さんは200頭近くの馬のオーナーになりました。しかしG1レースで勝利する馬に巡り合うことはありませんでした。その中で、キタサンブラックだけは違いました。徹底したハードトレーニングに耐えて、強くなっていったのです。800メートルの急斜面を全力で駆け上る坂路(はんろ)調教です。多くの競走馬が1日1本にとどめるところ、キタサンブラックは時に3本も。

厳しい調教で心肺機能は飛躍的に向上しました。無名だった馬は、北島さんと共に頂点へと上り詰めていったのです。

北島三郎さん
「応援してくれる皆さんは『ブラック、ブラック』って。北島三郎よりブラックのほうが有名になってきちゃって。神が与えてくれた宝物ですな。」

ところが、北島さんとキタサンブラックに大きな試練が立ちはだかります。去年夏、北島さんは転倒してけい椎を損傷。予定していたコンサートも中止し、ステージに立てない日々が続きます。
そして、キタサンブラックも…。G1勝利を重ね圧倒的な人気で臨んだ宝塚記念。

実況
「キタサンブラック、キタサンブラック。そして外からはサトノクラウン。今度はサトノクラウンが抜け出した。」

ゴール前、まさかの失速。いつもの粘り強い走りは見られず、9着と大敗しました。激しいレースを重ねる中、疲労がたまっていたのか。

北島三郎さん
「馬も疲れているんでしょう。今日は疲れてるなと、俺に言いたかったんじゃないかな。ずっと振り返ると頑張りっぱなしで、本当によく頑張ったなって感謝してます。」

北島さんは、今年(2017年)いっぱいでキタサンブラックを引退させることを決意しました。
キタサンブラックに最高の花道を用意したい。

獣医師
「ちょっと馬場が悪かったから少しどうかなと思ってたんだけど。」

トレーニング・センターでは、調子を取り戻させるため試行錯誤が重ねられていました。疲労を取りながら慎重に負荷をかけるメニューが組まれました。北島さん自身もリハビリを続けていました。自分の歌で大勢のファンを喜ばせたい。キタサンブラックを託された騎手の武豊さん。キタサンブラックの調子と、北島さんの体調を案じていました。

武豊騎手
「北島オーナーも少し体調を崩していましたけれど、頑張ってリハビリしているという話を聞くと、喜んでもらえる結果を出したい気持ちが強くなります。」

迎えた秋の天皇賞。激しい雨が降り続き、コースはぬかるんだ状態に。

実況
「ゲートが開きました。ばらばらっとしたスタート。」

さらに、スタートで予想外のアクシデントが。ゲートに頭をぶつけて、大きく出遅れてしまったのです。先行して粘り勝ちするタイプのキタサンブラック。しかし後方に押しやられてしまいます。出遅れを挽回するため、武豊騎手は勝負に出ました。ほかの馬が避けていた、ぬかるんだ内側に進路を取ったのです。

実況
「いつのまにか、いつのまにかキタサンブラックと武豊。」

そして、一気に先頭へ。

実況
「キタサンブラック先頭、サトノクラウン、内から2番手。キタサンブラック逃げる逃げる。」

武豊騎手
「ラストは足音が聞こえてたんですけど、来ればまた伸びるタイプの馬なので、押し切ってくれると思いました。」

実況
「どうやら復活だ、王者の復活が見えてきている。キタサンブラック先頭、内からサトノクラウン。サトノクラウン詰め寄った、しかしキタサンブラック逃げきった!」

持ち前の粘り強さが復活し、ライバルをねじ伏せました。引退を間近に控え、再び輝きを取り戻しました。そして北島さんも、テレビの歌番組に本格的に復帰を果たし、次のステージを見据えています。
天皇賞の直後に開かれた祝勝会。北島さんは、歌手として走り続ける思いを新たにしました。

北島三郎さん
「私の時間も欲しいわけですよ。(本名の)大野穣の時間が欲しいなと思う時があるの。それが許されない街道へ、許されない道へ、俺は選んで入っているわけ。だから、この道で全うしたい。」

サブちゃんと馬と人生と キタサンブラック 秘話

ゲスト杉本清さん(フリーアナウンサー)
ゲスト優木まおみさん(タレント)

長年、競馬実況を担当され、競馬ファンにはおなじみの杉本清さん。北島さんとも親交があるということですが?

杉本さん:もう恐れ多いですね、そう言われると。

昨日のレースは残念だったが、何があった?

杉本さん:まあ、残念は残念だったんですけれど、だけど金メダルが銅メダルになっただけのことで、やっぱり一生懸命走って、これで十分といえばちょっとおかしいかも分かりませんけれど、よく走ってくれたと思いますよ。

北島さんのレース後のことばも聞いた?

杉本さん:やっぱり何も言うことはない、無事で走ってきてくれてよかったっていう、そのひと言だったですね。とにかく無事でっていうことですね。

競馬ファンの優木まおみさん、昨日のレースはどうご覧になりました?

優木さん:負けはしましたけど、キタサンブラックらしい、粘り強い走りを見せてましたし、気持ちが最後まで切れてない感じで、有馬記念につながったなっていう感じが、私はしたんですけどね。

北島さんは、馬主としてはどんな人?

杉本さん:まあ、どうですかね、大らかな方ですね。勝ち負けには、そんなにこだわらない。本当に楽しんでるっていう、そういう方ですね。オーナー歴は五十何年ですね。最初は春日八郎さんに勧められて馬を持ったのがきっかけ。だから、「いちず」にやってきたその「いちず」がいいんだよって、いつもおっしゃってますね。

北島さんにとってキタサンブラックという馬はどんな存在?

杉本さん:やっぱり、しょっちゅう、あちらこちらで言われてますけれど、紅白を卒業されて、さあこれからっていう時に、こういうG1を勝つ馬っていうのが、「神様から与えられた宝物」というふうにおっしゃってます。だからいつも、希望と夢を、この年にしてまた馬からもらったっていうふうに感謝されてますね。
(長い間、歌の世界で頑張ってこられて)そのご褒美といいますかね。
(人生の集大成のところで)だから、まだこれから俺はやるよっていう感じですね。

キタサンブラック 有馬記念で挑む“史上最多”

鎌倉:有馬記念に勝てば、獲得賞金史上1位となるキタサンブラック。その強さの秘密、改めてデータから読み解いてみましょう。キタサンブラックのG1レース6勝の勝ち方なんですけれども、ハナ差や、クビ差などの僅差での粘り勝ちが多いんです。歴代最強ともいわれたディープインパクトの場合は、4馬身や5馬身差など圧倒的な強さが印象に残っているんですが、キタサンブラックは、集団の前方を走り、最後まで僅差で粘りきるという勝ち方なんですね。

キタサンブラックの強さの秘密、どう分析している?

杉本さん:やっぱり心臓ですね。走る馬は、やっぱり心臓が強いんです。だから、ハードトレーニングをやっても、それに耐えられるというか。だから、だんだん鍛えれば鍛えるほど強くなっていくんですよね。さっき優木さんがおっしゃってたみたいに、最初はちょっと小さな、それほど期待されてなかったって言ったらおかしいんですけれども、それが鍛えに鍛えられて強くなってきたっていうか、そういうところに人生がダブるんじゃないかなと思いますね。

厳しい調教に耐えるだけの心臓・精神力もある?

もちろんですね。非常に素直な馬だっていうこと。その点も、騎手の言うことをよく聞きますから。

優木さんはどんなイメージを?

優木さん:そういう周りの期待に答えて、黙って頑張るっていう大和魂みたいなものを感じますし、やっぱり北島三郎さんの馬というところで、ファンを魅了する親近感がまず湧きますしね、そういうところも魅力ですよね。

馬にもいろんな性格があり、素直に調教に応じないような馬もいると聞いたが?

杉本さん:ありますよね。オルフェーブルとか、ちょっとやんちゃなタイプもいると思いますけれども、武骨で、1つ筋が通ってっていうところがかっこいいですよね。

鎌倉:キタサンブラックの人気は競馬界全体にも貢献しています。こちらは、JRA・日本中央競馬会の集客数のグラフです。東日本大震災で一度落ち込んだ集客数ですが、JRAによりますと、ここ数年は、キタサンブラックの活躍もあって、再び上昇しているということなんです。

こうして多くのファンの心を捉え続けているキタサンブラックですが、その姿に励まされて、人生の再起を図る1人の青年がいるんです。

キタサンブラックに人生の再起をかけて

ジャパンカップのあとに開かれた食事会。

北島三郎さん
「黒岩さん。」

北島さんは、キタサンブラックを支えてきた1人を呼びました。

北島三郎さん
「ずっと調教をつけてくれた。キタサンブラックをずっと乗ってきたのは、この黒岩君というジョッキーです。」

騎手の黒岩悠さん、34歳。みずからのレースのかたわら、キタサンブラックの調教を3年近く担当してきました。

キタサンブラックの調教担当騎手 黒岩悠さん
「ここまで歴史的名馬にふだんから携われるのは、僕の人生としても、ホースマンとしてもすごい幸運です。」

黒岩さんがキタサンブラックと出会ったのは、人生の大きな挫折に直面していた時でした。騎手デビュー2年目には17勝を上げ、期待を集めた黒岩さん。
しかし20歳の時、レース中に落馬。全治6か月の重傷を負いました。その後、年に1勝もできないほどの不振に陥り、レースでの騎乗依頼が激減しました。

キタサンブラックの調教担当騎手 黒岩悠さん
「ひと言でいうと、しんどかった。競馬が楽しくない。ただただこなしている感じ。自分の中で手応えもなくて。」

騎手としての仕事がない中、黒岩さんは、調教の手伝いをすることになります。そこで出会ったのがキタサンブラックでした。キタサンブラックに、スタートやコーナーの走り方など、競走馬に必要な技術を1から教えてきた黒岩さん。今では僅かなしぐさから状態を感じとることができるまでになりました。

キタサンブラックの調教担当騎手 黒岩悠さん
「気分のいい時とか、僕は歩いている時に分かるんですけど、気分いい時は耳が揺れるんです、あいつ。」

レースが近づくと、黒岩さんは、本番で騎乗する武豊騎手に調教での手応えや体調を伝えてきました。

武豊騎手
「調教に関しては、僕は全て黒岩君に任せきってますから。レースは僕がバトンタッチを受けて、しっかり乗らなきゃという気持ちは強いですね。」

誰も見向きもしなかった馬から、現役最強といわれるまでに成長したキタサンブラック。黒岩さんは調教のかたわら、その姿を目の当たりにしてきました。そして、みずからも騎手としてもう一度高みを目指したいと考えるようになりました。

キタサンブラックの調教担当騎手 黒岩悠さん
「ブラックにまたがっている時ですよ。その張りというか、いい意味での責任感、いい緊張感は得られていると思います。騎手として、なんとかしがみついてやろうと。もっと(自分が)勝たないといけない、もっと頑張らないといけないという気持ちになる方が強い。」

“最後まであきらめない” キタサンブラック ラストランへ

番組には、視聴者の皆様からもメッセージが届いています。「すぐ成果を得ようとする現代人へ、こつこつ続けることが大切というメッセージを発している」。そしてもう一方、「優勝してほしいではなく、無事に帰ってきてほしい、負けてもたたえるサブちゃんのことばがすばらしい」。なぜ今、このキタサンブラックの姿に共感する人たちが増えている?

優木さん:やっぱり、生まれながらに期待されている血統というわけではなかったキタサンブラックが大活躍する姿を見ていると、私なんかも子育てをしていて、あなたはどんな環境に、どういう所に生まれても、自分さえ頑張れば何でも夢はかなうんだよということを教えてあげたいなっていう、そういう子どもになってほしいなって思うから、そういうところが、人々に、自分を投影させて感動させるのかなと思いますけどね。

黒岩さんもキタサンブラックから力をもらって、もう一度、頑張ろうと。

優木さん:頑張ってほしいですね。

杉本さん:馬が人を育てますからね、逆にね。

キタサンブラックは、いよいよ来月の有馬記念で引退レースを迎えますが、どんなドラマが最後に待っているでしょう?

杉本さん:やっぱり血を残すというね、種ぼ馬としての大きな仕事が待ってますから、とにかく無事で回ってきてほしい。そして最高の結果がついてくれば、いちばんいいなと思いますね。その時こそスタンドと一体になって、恐らく北島さんは「祭りだ」と熱唱すると思うんですよ。最高の花道を作ってあげたいですね。夕闇迫る中山競馬場で、スタンドもみんな一緒になって、「まつり」の大合唱があって、キタサンブラックが牧場へ帰っていくと。

優木さん:伝説になりますね。

そして楽しみはそこで終わらず、これからまたキタサンブラックがどんな子孫を残して、また新しい風を吹き込むのかというところも、今後の見どころですね。

杉本さん:大きな興味ですね。

キタサンブラック自体が、そもそもは、あまり最初は血統的にあまり期待もされていなかったという。

杉本さん:今度は子どもが期待されますからね。

今度は逆に大きな期待が膨らみますし、全競馬界がどうなっていくのかという興味も湧いてきます。粘り強く走り続けて、こつこつと実績を積み上げてきたキタサンブラック。その陰には支える人たちの献身的な日々がありました。最後のレースも結果はどうあれ、全力で走りきってほしいと思います。