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2017年11月21日(火)
ツイッターCEOが語る “つぶやき”の光と影

ツイッターCEOが語る “つぶやき”の光と影

ツイッター社のジャック・ドーシーCEOが来日、NHKの単独インタビューに応じた。神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件で、“SNS社会の闇”を指摘されたツイッター。さらに、今、差別的な書き込み“ヘイトツイート”が相次ぎ、ツイッター社への抗議も発生している。もはや「公共空間」となったツイッター。ドーシーCEOは、「表現の自由」と「規制」の狭間でどんなビジョンを示すのか?徹底インタビューで迫る。

出演者

  • ジャック・ドーシーさん (ツイッター社CEO)
  • 武田真一 (キャスター)

ツイッターCEOが語る “つぶやき”の光と影

「『死ね』『出て行け』『いなくなれ』。つらいです、苦しいです。ツイッター社の皆さん、どうか助けてください。」

ツイッター上にあふれる、在日外国人などへの差別、ヘイトツイート。ツイッター社に対して、今、削除を求める声が相次いでいます。
神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件。ツイッターで若い女性を誘い出した容疑者は、海外で「ツイッターキラー」と報じられています。
影響力が拡大する一方、課題も浮かび上がるツイッター。その生みの親でもあるCEOが来日。テレビカメラの前で、初めてインタビューに応じました。

ツイッター創業者 ジャック・ドーシーCEO
「ツイッターが問題を引き起こすことも確かにあります。それでもツイッターを改善し、それによって、世界を良い方向に向かわせることができると信じています。」

次々と新たなコミュニケーションツールが登場し、人間関係が変化するSNSの時代。人々の無数のつぶやきの中の、光と影を見つめます。

座間“9人遺体”事件 悪用されたツイッター

9人の遺体が遺棄された、座間市の事件。白石隆浩容疑者は、ツイッターの特性を利用して、女性に近づいていました。
ツイッターには、無数のつぶやきの中から自分の関心に沿ったものを探す、検索機能があります。キーワードを入力すると、その言葉が入ったツイートが選び出されます。これに返信することで、つぶやいた本人と匿名でやり取りすることもできます。ツイッターの利用者数は、およそ4,500万人。

ほかのSNSと比べ、匿名で利用する人が多いのが特徴です。知人には話せないようなことも、知らない人であれば、気軽にやり取りできます。こうした空間で、容疑者は匿名アカウントを使い、被害者に近づいたと見られます。

“ヘイトツイート”急増 追いこまれる人びと

匿名性によって助長される問題はそれだけではありません。急増する、ヘイトツイートです。在日外国人などに対する差別や、危害を加えるという書き込みが後を絶ちません。ツイッタージャパンの前に集まったのは、およそ100人。

ヘイトツイートを紙に印刷し、あえて目に見えるようにして、削除するよう訴えました。

「見るもおぞましいものだと思いますけれども、これが現実なので、ぜひご覧になっていってください。」

1人の在日コリアン3世の女性がマイクを手にしました。

在日コリアン3世の女性
「私にとってのツイッターは、花芽が出たら、うれしくて、つぼみが膨らんだら、うれしくて、花が咲いたら、うれしくて、大切な人たちに知らせたくて、夜空に月が見えたら、それがうれしくて、それをツイートする。その心豊かな、大切なコミュニケーションツールでした。それが今は『死ね』『出て行け』『殺せ』『ゴキブリ』『いなくなれ』。毎日ツイッターの通知が来ると怖いです。つらいです。苦しいです。ツイッター社の皆さん、どうか助けてください。」

4年前にツイッターを始めた女性。今は利用するのも怖くなり、使うことはできずにいます。女性のツイートに対して、差別的な書き込みが行われ、拡散していったといいます。

在日コリアン3世の女性
「ツイッターはツイッターの特性で、来たものが、書かれたものが拡散していきますから、止めることができませんから。バスや電車で端末を操作している人がいると、『この人があれを書いた人かもしれない』というふうに怖くなったりしました。」

こうした現状に、ツイッタージャパンでは危機感を強めています。笹本裕社長です。会社の前で行われた抗議活動を、インターネット中継を通じて見ていました。

ツイッタージャパン 笹本裕社長
「僕自身も海外に生活を幼少期していて、自分自身も向こうで、また帰国して、差別的なことを言われたりとか、実態があるので、ある意味、当事者として、あのデモを拝見していました。」

しかし、ヘイトツイートを一律に削除することは、一企業の対応では限界があると感じています。

ツイッタージャパン 笹本裕社長
「ヘイト自体は残念ながら、僕らの社会の一つの側面だと思う。それ自体がないものだとしてしまっても、実際にはあるわけですから、それ自体を認識しなくて社会が変わらなくなるよりは、それはそれで、ひとつあるということを認識して、社会全体が変えていくことになればと思います。」

ツイッターCEOが語る 座間“9人遺体”事件

ゲスト ジャック・ドーシーさん(ツイッター社CEO)

ツイッターの創業者、ジャック・ドーシーCEOに、初めてカメラの前で話を聞くことができました。

直面する課題に対応するため、日本を訪れていました。ツイッターを悪用した座間市の事件について聞きました。

事件についてご存じですか?どうお感じになっていますか?

ドーシーさん:その話を聞いて、とても残念で悲しいです。ツイッターが健全に使われるように、責任を持って見守らなければなりません。今回のケースでは、ツイッターが「公共の場」であり、誰でも見られる事実を知ることが大事です。困っている人を早く支援者につなげて、助けてもらえるようにすべきです。ユーザーが「自殺したい」といった言葉をつぶやいた場合、他の人の働きかけで思いとどまるようにしてほしいのです。すべての事件・事故を防ぐことはできません。どんな技術を持っても、それは不可能です。それでも何か改善できることがないか、さまざまな観点から検討しています。

ほかのSNSとの違いとして、ツイッターは匿名で投稿できる。そのことはユーザーの使い方に、どう影響している?

ドーシーさん:私はツイッターはSNSだとは思っていません。SNSは友達・家族・クラスメート・同僚を探すツールですが、ツイッターは全く違います。ツイッターでは「関心」によって、誰かとつながるのです。関心を持ってツイッターを使うことで、面白い人たちと出会うことができます。彼らと会話することもあれば、ただフォローする場合もあります。これがツイッターとSNSの大きな違いで、この点でツイッターはユニークなのです。SNSと違い、知り合いを探すツールではない。本名は重要ではないのです。

その上でドーシー氏は、ツイッターの匿名性にも大切な意味があると語ります。

ドーシーさん:ツイッターは匿名なので、自由に話せますし、自分の正体がばれるのが怖くて発言できなかったり、その発言のせいで、政府から処分を受ける人も使うことができます。これまで「アラブの春」などでは、人々が、その正体を知られることなく、匿名で政府やリーダーに対して疑問を投げたり、デモを行いました。匿名性はツイッターのユーザーにとっては、とても重要なことです。「ツイッターはこういう風にしか使えません」と制限したくありません。どんな意見に対しても開かれた場であり、どう使うかはユユーザーに任せたい。

ツイッターに規制? 事件再発をどう防ぐ

ツイッターを悪用した、座間市の事件。今、国は再発防止のため、ツイッターに対する規制なども検討しています。

菅官房長官
「ツイッターの規制等でありますが、各省庁の取り組みをしっかり検討した上で、再発防止策を1か月めどに取りまとめたい。」

こうした中、ツイッター社は、安全に利用してもらうため、ルールの変更を進めています。今月(11月)、自殺や自傷行為の助長を禁止することを明記しました。必要とするユーザーに、相談先の情報を伝えることもあるとしています。また、ヘイトへの対策として、攻撃的、差別的なアカウント名の利用を禁止することに。ドーシー氏は、国に規制されるのではなく自助努力で対処していきたいとしています。

ドーシーさん:すべての人がツイッターを通して言いたいことを言えて、考えていることを発信できるようにしたい。それは私たちの仕事です。確かに、嫌がらせや悪用、人を傷つけるような使い方が増えている。取り組みを進めていますが、必ずしも、うまくいくとは限りません。私たちも時には間違えることもあれば、問題が生じることもある。ただ、同じ間違いは繰り返しません。大事なのは、世の中に対して、私たちのロードマップを広げ、考え方や問題に対する取り組み方、その優先順位などをわかってもらうことだと思っています。

“ヘイトツイート” “表現”と“規制”のはざまで

インターネットやSNS上にあふれる差別的な書き込みに対してはどうすればいいのか。
去年(2016年)国は、ヘイトスピーチをなくすための新たな法律を施行しました。しかし、インターネット上のヘイトについては、対策が打たれていないのが現状です。言論や表現の自由と、規制との両立は容易ではないからです。
こうした中、独自の条例を作って踏み込んだ対応を始めたのが、大阪市です。インターネット上の書き込みを、大学教授や弁護士らが審査し、ヘイトだと認められれば、運営側に削除を要請するというものです。しかし、これまでに行われた20回の審査で削除されたケースは、わずか5件。条例の適用は大阪市内に限られ、場所が特定できないものは削除できないからです。市の担当者も、ひぼう中傷の対象になる恐れがあるとして、匿名でインタビューに応じました。

大阪市 担当者
「ネット空間に流れているものは、大阪市に関係あるかどうかというと、非常に判断というのが難しいところもある。国全体として、何らかの対応をお願いしないと、自治体としては、これ以上は無理だと考えております。」

一方、法務省は、ネット上のヘイトの規制は考えておらず、啓発活動を続けるとしています。
ネットやSNSに詳しい、ジャーナリストの津田大介さんです。

規制に向けたEUの動きを、日本も参考にするべきだと考えています。

ジャーナリスト 津田大介さん
「(EUでは)ネットに書き込まれたヘイトスピーチを見つけた場合、(事業者に対し)24時間以内に削除しなさいと。その時にヨーロッパの場合は、削除にあたって、反差別で活動している、人権活動をしている団体があるので、そういう団体と連携してくださいと。実際に取り組みも始まっていて、一定の成果を上げている。一線を越えた差別表現というものは、言論(の自由の対象)ではない。これが多くの人の目に触れることで社会がどうなるのか。これに対して、明確にノーを突きつけていかないかぎり、次の段階、実際に影響された人が犯罪に走ることにつながっていくと思う。この段階で、きちんとこの問題に対処できるのかが、我々の社会がどうなるのかという分水嶺(れい)、岐路に立っていると思う。」

ツイッターCEOが語る “つぶやき”の原点とは

影響力が拡大する中、多くの課題に直面するツイッター。ドーシーCEOが、オフィスの壁を見せてくれました。ツイッターの原点がここにあると言います。

ドーシーさん:これは東京の風景です。

季節の移ろいに目を留めた人々の何気ない、つぶやきの数々。それらを壁に刻んだといいます。

ドーシーさん:ツイッターの多くが「世界」ではなく、極めて私的な、身近なことのつぶやきなのです。人々の「素顔」がここに現れているのです。

今から11年前、世界で初めてつぶやかれたのが、このツイートです。

“いま、僕のツイッターを立ち上げたよ。”

これをつぶやいたのが、ジャック・ドーシー氏でした。10代のころから、エンジニアとしてアプリの開発に携わってきたジャック青年。ツイッターを生み出したとき、今のような形で利用されるようになるとは考えていませんでした。

ドーシーさん:世界はどんな仕組みで「動いて」いるのか、私は世界を発見することにとりつかれていました。ツイッターを立ち上げたときには、とてもシンプルなものを目指していました。それは人々の興味や行動を調査するという単純なアイデアでした。そのときには、今のような使われ方をするとは、夢にも思っていませんでした。

自分たち企業側が、ネット上で人々の関心を探るという当初のアイデアは変貌していきます。いつしかツイッターは、ユーザー同士が自らの関心を基に結び付き、互いに自由な意見を発信する場となっていったのです。

ドーシーさん:ネットワークが広がってユーザーが増えると、面白いことが起きるようになりました。みんなが、全く違う畑の人たちや、会ったこともない人たちをフォローするようになったのです。中でも日本は、アメリカに次いで最も早く拡大したマーケットでした。日本人は、ツイッターにすごく共感してくれました。SNSや、今ある人間関係に縛られる必要もなくなりました。何かに興味があれば、ツイッターで検索して、誰でもフォローすることができる。ユーザーが増えるにつれて、ツイッターの可能性はどんどん豊かになっていったのです。

トランプ大統領も次々に… 政治と“つぶやき”の関係

ツイッターは今、政治にも大きな影響を与えています。半世紀以上前、政治の在り方を変えたのは、テレビの出現でした。ケネディ大統領を誕生させたのは、初のテレビ討論だったと言われています。以来、政治家にとって、テレビは有権者と向き合う重要なツールとなってきましたが、トランプ大統領は、既存メディアと距離を置き、4,000万人を超えるフォロワーに、一方的にツイートしています。

トランプ大統領のツイート
“壁”の代金を支払わないなら、メキシコとの首脳会談は中止だ。

トランプ大統領のツイート
(性的少数者の)トランスジェンダーの人たちは、軍で働くことを認めない。

政治家が自分の考えを、いつでも好きなときに、直接国民に届けられる現代。大統領のつぶやきがそのままニュースとなり、世界を揺るがしている現状を、ツイッターの生みの親はどう感じているのでしょうか。

ドーシーさんは、トランプ大統領の政策を支持していますか?

ドーシーさん:一般的には「ノー」です。移民政策に関しては、特にそうです。アメリカの移民を減らそう、または排除しようという考えには反対です。しかしリーダーの本音を直接聞くことは、内容がどんなことでも、とても大事だと思います。一人一人考え方も、伝え方も違いますから。私たちツイッターは、その内容がなんであれ、そうしたリーダーたちの声を、世の中に届けるマイクでありたい。

トランプ大統領がツイッターを強力なツールとして、どちらかというと国民を分断する、あるいは世界を分断する方向に進めていると感じる人が多いと思うが?

ドーシーさん:人々を分断する考え方や、誰かがのけ者になる政策には強く反対します。いま地球上の人間は、環境問題のような共通の課題に直面しているわけですから、国の隔たりを越えて、みんなで協力すべきです。こういった場面でこそ、ツイッターは役に立つのです。ツイッターは私たちが一つの惑星に共存していることを再確認させてくれるツール。みんなが同じ状況下にあるわけですから、団結して同じ問題に立ち向かっていく必要があるのです。

ツイッターCEOが語る “つぶやき”の未来

インタビューの最後、ドーシー氏は、ツイッターが持つ新たな可能性について語りました。

ドーシーさん:私は楽観主義者です。人類の未来はとても明るいと考えていますし、未来に直面するであろう問題は、人々の手で解決できると考えています。そしてツイッターには、そのためのコミュニケーションの場となってほしい。人類が進化するためには、私たちが抱える課題について議論し、その問題が重要なのかそうではないのか、理解する必要があります。そうすれば、正しい方向にエネルギーを向けられます。私は、ツイッターは世界がよくなるための不可欠なツールだと思っているし、同時にそれが唯一のツールではないということもわかっています。私たちはベストを尽くしますし、ユーザーが世界をよくするために、ツイッターを利用して団結したいと考えているならば、その手助けをしたいし、支援していきたい。

ツイッターは、どんな意見にも開かれた場であるべきだ。そう語るドーシーさんは、自らの理想と現実のはざまで苦悩しているようにも見えました。社会の映し鏡となっている無数のつぶやき。それとどう向き合い、未来につなげていくのか。考え続けていきたいと思います。