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2017年10月31日(火)
ナイトタイムエコノミーが日本を救う!? ~観光立国・新戦略~

ナイトタイムエコノミーが日本を救う!? ~観光立国・新戦略~

今や日本を訪れる外国人の数は世界上位!でも消費金額は、世界で「50位前後」という厳しい現状…というわけで盛り上がっているのが「ナイトタイムエコノミー」。外国人観光客の「終電が早くて遅くまで楽しめない!」「文化・芸術を夜楽しめる場所がない」という不満に応え、夜に和太鼓ショーや能を開いたり、街に「夜の観光大使」を置くなどして、夜間の消費を増やそうという動きです。「治安が乱れる」「働き方改革に逆行」など懸念もある中、外国人であふれる渋谷の街角から、ハロウィンの夜にお送りする生中継!

出演者

  • デービッド・アトキンソンさん (日本政府観光局・特別顧問/元金融アナリスト)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

ナイトタイムエコノミー 外国人観光客をつかめ

今、東京・渋谷の道玄坂にいるんですけれども、今や風物詩となった、このハロウィーンイベント。仮装していらっしゃるので、皆さん、ちょっと分かりづらいんですけれども、外国人の方の姿もちらほら目に入ってきます。
この渋谷のハロウィーンですけれども、1日におよそ7万人の人々を寄せ集めるという、空前絶後のナイトタイムイベントに成長しているんですね。去年(2016年)は、参加者のおよそ4割が外国人の観光客だったそうなんです。
今日(31日)のテーマは、このように夜の市場を活性化させることで、日本の経済を盛り上げていこうという「ナイトタイムエコノミー」です。

2020年に向け、観光立国を目指す日本。

外国人観光客
「東京タワー!」

海外からの旅行者も5年間で4倍近くに増え、2,400万人に。世界16位にまで上昇してきました。ところが、旅行者1人当たりの消費額は世界44位に低迷。オーストラリアのわずか3分の1です。

どうすれば、外国人の消費を増やすことができるのか。その強力な打開策として注目されているのが、夜の経済「ナイトタイムエコノミー」です。
ナイトタイムエコノミーって、どんなものなのか。果たして日本に根付くのか。一緒に考えましょう。

ナイトタイムエコノミー 外国人観光客をつかめ

今月(10月)下旬、取材班は突撃取材を敢行しました。
外国人観光客は、夜の東京をどう過ごしているのか。131人のナイトタイムに密着しました。

「ついていってもいいですか?」

外国人観光客
「ごめんなさい。」

夜8時。

「ここで何をしてるんですか?」

イタリアからの観光客
「歩くくらいしか、やることがないんだよ。」

浅草で出会ったのは、イタリア人のミュージシャン2人組。浅草は東京一の観光名所と聞いて、期待に胸を膨らませてきましたが、観光客はまばら。参拝時間も終わっていたため、写真を撮ることしかできませんでした。お腹が減った2人。しかし、8時過ぎのこの時間、商店街はすでにどこも閉まっていました。

イタリアからの観光客
「もっと遅くまで開いていれば、観光客は助かるのに。」

さまようこと1時間。ようやく店を見つけました。焼きそば、天ぷら、たこ焼きなどを一気に注文。どうやら少し急いでいるようです。

イタリアからの観光客
「すごくあつい。」

食事時間は、わずか30分。ほかの店の料理も楽しみたかったそうですが、終電を気にしてあきらめました。

イタリアからの観光客
「もうホテルへ戻る時間だ。でも駅までの道が、わからないんだ。」

この日の夜使ったのは、2人合わせて2,500円でした。

ナイトタイムエコノミー 先進地・ロンドンの成功

さみしい限りの日本の夜ですが、実は世界では今、ナイトタイムが巨大な市場に成長しているんです。
ナイトタイムエコノミーの先進地イギリス・ロンドンです。深夜3時にも関わらず、街には人がいっぱい。外国人観光客も多いんだそうです。

ミュージカルは夜8時と、遅めの開演。美術館でも夜12時近くまでイベントが行われます。芸術を楽しみながら、お酒も飲めるんですって。

「飲みながら文化を楽しめるなんて、最高の夜だわ。」

ナイトタイムエコノミーの原動力になっているのが地下鉄です。去年から、金曜と土曜は朝まで夜通し運転しています。

「とても便利よ。遅くなっても帰宅できるの。」

国を挙げてナイトタイムエコノミーを推進した結果、ロンドンの夜の経済規模は4兆円にまで成長。新たな雇用も生まれ72万人が、夜働いています。

ナイトタイムエコノミー 外国人観光客をつかめ

日本の夜には何が足りないのか。番組に協力してくれた外国人の皆さんに教えてもらいました。

イスラエルからの観光客
「ミュージカルが見たいけど、外国人の大人でも楽しめるショーがないですね。」

ドイツからの観光客
「昼は観光して、夜は食事以外にも何かアクティビティーに参加したい。夜は伝統的なショーがあれば見てみたい。」

娯楽が足りないという声が多いようですね。
外国人観光客は、日本でどれだけ娯楽にお金を使っているのか。実は、消費額全体のわずか1%。欧米では10%を超える国もあるのに比べると、もの足りない数字です。

深夜1時の秋葉原。スイスの空港で働く3人の男性に出会いました。

スイスからの観光客
「予算に上限は決めてないよ。」

終電後もナイトタイムを満喫したい3人。まだまだ楽しめるものがあるはずと、探し回ります。

スイスからの観光客
「あの店(メイド喫茶)に行ったのですが、女性がみな学校の制服を着ていて、それには興味が無いから出てきたところです。」

結局入ったのは、飲み放題付きのカラオケ。30分で1人900円でした。

深夜2時。目立つのは、若い観光客です。実は、日本を訪れる外国人観光客の65%が30代以下なんです。

オーストラリアからの観光客
「コンニチハ。」

オーストラリアから来たというカップル。いつも夜通し遊ぶそうですが、日本では適当な店がなく、路上で時間を潰していました。

オーストラリアからの観光客
「メルボルンのナイトライフはすごいわよ。クラブは5時までやってるの。ずっとよ。」

オーストラリアからの観光客
「すべてが24時間7日間。」

オーストラリアからの観光客
「最高のナイトライフがある街よ。」

この日も朝6時まで遊ぶつもりだそうですが、果たして店は見つかるんでしょうか。

オーストラリアからの観光客
「カラオケって書いてあるの?」

「ちがいます。アダルト向けの店。」

ナイトタイムエコノミー 外国人観光客をつかめ

ゲスト デービッド・アトキンソンさん(日本政府観光局・特別顧問/元金融アナリスト)

元金融アナリストで、日本政府観光局の特別顧問も務める、デービッド・アトキンソンさん。
外国人観光客にとっての日本の夜をどう思う?

アトキンソンさん:割と海外に比べてつまらないものだと思います。
(どういう点がつまらない?)
夜遅くまで電車動いていませんし、コンサートにしても、スポーツにしても取れない、もしくは会員じゃないと入れないとか、回数自体が非常に少ないとかですね、やはり皆さん、真面目に働いていますので、ナイトタイムエコノミーというのが、ほとんど存在していないようなものだと思います。

逆に、外国ではどんな楽しみがある?

アトキンソンさん:例えば、夜遅くまで美術館、博物館が開いているとか、劇場が9時から始まるとか、コンサートがロンドン市内、例えばもう何百も毎日のようにありますので「今日、何をしようか」ということで、逆に非常に困るぐらいまで選択肢が多すぎます。

日本が観光立国を目指す上で、今なぜ、ナイトタイムエコノミーの充実が求められている?

アトキンソンさん:そもそも観光立国の最大の目的は、日本経済を活性化するためのものになっています。それは、これから日本人の数がどんどんどんどん減っていきますので、経済というものは、人間の数かける所得ですので、人間が減れば稼がないとどうにもならないものになります。そういう意味では、ナイトタイムを外国人観光客が来ていますので、夜稼ぐ機会も作るということは、意味です。

田中:このように外国人の方からは厳しい評価もある日本のナイトタイムですが、そんな中、何とかチャンスをつかもうという動きも出始めています。ある旅行代理店で外国人に人気だというナイトツアー。一体、何が人気の秘密なのか、探ってきました。

訪日外国人に大人気 驚きのナイトタイム

田中:外国からの方が多〜い。

こちらは、食事をしながらロボットやダンサーによる華やかなショーが楽しめる、ロボットレストランです。巨大な力士ロボット。迫力ある大蛇。夜10時ごろ開演のレイトショーも大にぎわいです。入場料は飲食代別で8,000円。年間12万人の観客のうち、8割以上が外国人です。

外国人観光客
「信じられない。超きれい。」

日本ならではの文化やテクノロジーを、言葉が分からなくても味わえるイベントが人気だそうです。さらに、こんなディープなツアーも好評。

「ここはゴールデン街です。」

新宿の歓楽街や小さな飲み屋が並ぶ横丁。観光客には入りづらい場所を丁寧に案内します。

外国人観光客
「いい雰囲気だよね。もっと、ここで飲みたいよ。」

「ホストクラブです。お金持ちの女性が若い男性と楽しむ所ときいています。」

「秘密のプライベートの場所。つまりラブホテルです。」

ツアーの価格は、2時間5,900円です。

外国人観光客
「狭い路地が面白かった。自分たちだけじゃ来られないしね。」

外国人観光客
「大都会の角を一つ曲がったら、エネルギッシュな別世界があったよ。」

訪日外国人に人気 ナイトタイムエコノミーとは

外国の方々は、日本でどんなものを見たり、体験したりしたいのか?

アトキンソンさん:外国人観光客は、そもそもどういう人なのかということを理解する必要あると思うんですけれども、観光客というのは暇な人なんです。
(暇な人?)
暇な人。予定がない、友達がいない、仕事が明日ない、そうすると、そういう暇潰しのお付き合いというのは一番の目的になっていますので、夜も空いていますので、その夜の暇潰しお付き合いが一番のポイントになります。

夜の暇つぶしのお付き合い、たくさんの選択肢があると思うが、例えばアトキンソンさんの体験の中で、こんなことをやったら面白かったということはある?

アトキンソンさん:今の例にありましたように、例えばゴールデン街もあります、新橋もあります。この前、東京国立博物館で夜の映画の上映もやりました。これも大変な人気でした。
(博物館で映画の上映?)
映画の外ですね。あとはビアガーデンをやったりとか、いろんな日本に来ている間、特別にこれがすごいなという所でなくてもいいんですけれども、やはり暇なので、日本に来て楽しかった、おもしろかった、刺激的でしたというものであれば、いろんな選択肢が考えられます。

外国では、博物館や美術館が夜遅くまでやっているという話もあったが、そういう何か特別なことではなくて、営業時間を少し後ろにずらすというアイデアもある?

アトキンソンさん:例えば博物館、美術館で夜遅くまで開けて、なおかつそこでワイン飲みながら展示物を見るとか、そういうこともありますし、さっきの例にありましたように、夜遅くまでいろんな文化体験とか、そういうことができると喜ばれます。

番組では事前に、このナイトタイムの充実を求めるか、アンケートを行いました。その結果、例えば「うるさくて眠れなくなる」という66歳の女性。「夜に事件や事故が増えそうだ」という57歳の男性。「街が汚く、臭くなるのではないか」という46歳の女性など、反対意見がむしろ多かったんですよね。
今日、ハロウィーンで盛り上がりを見せているこの渋谷も例外ではありませんで、街の風紀が乱れるということで、心配して、早々とシャッターを閉める店も多いそうなんです。ナイトタイムエコノミーを推進していく上で、地域の人々の理解をどう得ていくのか。先進地のイギリスでは、さまざまな工夫をしているようです。

ナイトタイムエコノミー 先進地・イギリスの秘策

ナイトタイムエコノミーで成果を上げているイギリスですが、最初からうまくいったわけではありませんでした。市民から「治安が悪化するのではないか」「ゴミが放置され景観を損ねないか」など、不安の声が相次いだのです。
5年前、政府は新たな対策の導入を決めました。「パープルフラッグ」という認定制度です。

紫の旗は「安心して夜遊びできる街」と、国がお墨付きを与えた地域。認定されれば、初めての外国人観光客も訪れやすくなるということで、各地でフラッグの獲得合戦が繰り広げられています。
パープルフラッグの認定を目指し、街の改革に取り組んでいるロンドン郊外のクラップハム。かつて、市内有数の治安の悪さで知られていました。地域からの苦情にどう対応していくか。ナイトタイムを推進する団体が中心となって毎週、対策会議を開いています。

「監視カメラをチェックして、警備と密に連絡をとろう。」

「クリスマスに向けて犯罪が増えるので、対策を強化していきましょう。」

ナイトタイム推進の団体 ジェレミー・キーツさん
「地元の住民から本当に多くの苦情が寄せられました。それを改善するために、私たちは立ち上がったんです。」

パープルフラッグに認定されるためには、犯罪率を減らし、治安を改善すること。飲み過ぎた人への適切な健康対策を取ることなど、7項目の厳しい評価をクリアすることが必要です。クラップハムの街では、非番の警察官などが警備ボランティアを組織し、夜の9時から朝5時まで見回りをするようにしました。

警備ボランティア
「トラブルはないですか?」

「大丈夫です。おかげさまで盛り上がってますよ。」

警備ボランティア
「何かあれば連絡ください。」

犯罪率は2年で半減。さらに、酔っ払った客を介抱する場所を設けることで、救急車の出動回数を減らすことにも成功しました。また、バーやクラブだけでなく、未成年や家族連れでも楽しめるレストランやカフェも増やしました。

「街はすっかり明るくなりました。週末はものすごくにぎやかです。」

ナイトタイム推進の団体 ジェレミー・キーツさん
「クラップハムは『週末に行きたい街』として知られるようになりました。われわれの任務は、このまま安全を保つことです。近いうちにパープルフラッグを獲得する自信があります。」

世界の常識!? ナイトタイムエコノミー

田中:ロンドンでは、市が去年、こんなユニークなポストを作りました。

「私が初代ナイト・ツァーのエイミー・ラメよ。」

田中:ナイトタイムを誰もが安全に楽しめる施策を推進するナイト・ツァー「夜の皇帝」を任命したんです。実は、こうした夜の行政ポストを置く動きは世界中で始まっています。オランダのアムステルダムでは、去年、ナイトメイヤーサミットが開かれました。ニューヨークやパリ、シドニーなど、世界26か国の都市から夜の皇帝や夜の市長が集まり、どのようにナイトタイムエコノミーを進めていくのか、地域の理解をどう得ていくのか、議論が交わされました。例えばアムステルダムでは、廃校となっていた学校を、ナイトクラブや夜まで営業しているレストランに改装。地域ににぎわいをもたらしました。さらに、こちらのナイトクラブでは、営業していない昼間の時間帯を、住民に開放しています。

絵画の展覧会やヨガ教室など、さまざまな地域活動ができるようになったと、住民に喜ばれているそうです。また、先ほどのナイトメイヤーサミットには、日本から渋谷区も参加しました。渋谷区でも去年、夜の大使が任命されています。地域の理解を得るために、ハロウィーンなどのイベントが終わった朝に、店のオーナーや客が街を清掃する活動も行っています。

ナイトタイムについて、地域の人に理解してもらうためには?

アトキンソンさん:簡単なことを言えば、いろんなそういうマイナスのところを全部丁寧に聞き出して、それに対して、丁寧にそれを解決することは、肝心のことの1つです。ゴミが落ちていれば、翌日は全部きれいに掃除をしてあげるとか、そういうことは大事だと思います。
(それでも納得してもらうことは、なかなか難しいとも思うが?)
さっきの話にありましたように、これから日本人の現役の世代が半減していきますので、このままにしておきますと、経済が大打撃を受けます。外国人観光客というのは、誰にとっても、どの国にとっても迷惑な存在です。その迷惑を上回るくらいの、それ相応の対価をもらって初めて成り立つ観光戦略ですから、稼がないと、こういうことはやっても意味がないですから、稼ぐことが大事です。

ナイトタイムエコノミーの推進が、私たち日本人自身の暮らしを変えることもある?

アトキンソンさん:先ほど申し上げたコンサートであっても、スポーツイベントであっても、博物館、美術館、いろんな所が夜遅くまでオープンして、いろんな機会が増えることは、外国人のためにもなりますけれども、日本人も同じように楽しめますので、お互いにいいことがあるような、非常に経済にとってもプラスですし、皆さん、一人一人の人生が豊かになって、楽しいものに変わっていくことが一番期待されるところです。

さあ、ハロウィーンで渋谷の街、盛り上がっていますけれども、こうした風景のどこかに観光立国・日本を開く鍵があるのかもしれません。じゃあ、われわれも行きますか?

アトキンソンさん:行きましょう。