クローズアップ現代

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2017年8月10日(木)
くろげん+ 夏休み課外授業 親子でまなぼう!“戦争とテロ”

くろげん+ 夏休み課外授業 親子でまなぼう!“戦争とテロ”

世界では、きょうも「戦争」や「テロ」が満ちあふれている。だけど、どこか遠い話に聞こえているかもしれません。そこで、今回は「夏休み課外授業」と題して、親子で考える「戦争・テロ」の特別番組を組みました。 世界各地の子どもたちが番組に寄せてくれた絵から、子どもたちが見た等身大の戦争やテロについて考えていきます。さらに、特別講師として、ジャーナリストの池上彰さんや、自らも戦争体験を持つ、美輪明宏さんらを迎え、子どもゲストの質問に一つ一つ答えていきます。「テロと戦争はどう違う?」「なぜ戦争は繰り返されるの?」「日本には関係あるの?」 放送を見終わったあと、家族で話し合ってみませんか?

出演者

  • 池上彰さん (ジャーナリスト)
  • 美輪明宏さん (歌手・俳優・演出家)
  • 瀬谷ルミ子さん (NPO「日本紛争予防センター」理事長)
  • 鈴木福さん (俳優 中学1年生)
  • 鈴木梨央さん (俳優 中学1年生)
  • 山田瑛瑠さん (俳優 中学3年生)
  • 日本の次世代リーダー養成塾の高校生たち
  • 武田真一 (キャスター)
  • 鎌倉千秋 (キャスター)
  • 田中泉 (キャスター)

親子でまなぼう! “戦争とテロ”

ゲスト:
池上彰さん(ジャーナリスト)
美輪明宏さん(歌手・俳優・演出家)
瀬谷ルミ子さん(NPO『日本紛争予防センター』理事長)
鈴木福くん(俳優 中学1年生)
鈴木梨央ちゃん(俳優 中学1年生)
山田瑛瑠くん(俳優 中学3年生)

池上彰さん:突然ですが皆さん、2億人を超える子どもたちが紛争の影響がある国に暮らしていること、知っていますか?

美輪明宏さん:戦争で傷ついたり故郷(ふるさと)を追われた子どもたちもたくさんいます。

「くろげん+」、今夜は夏休み課外授業家族で「戦争とテロ」について考えてみませんか。

テレビやネットでは毎日のように戦争の痛ましいニュースが流れているけど、私たち、どこか遠い世界のことだと感じてしまっているかもしれません。でも現実には、多くの子どもたちが傷ついているんです。

シリアの女の子
「ハートは亡くなった弟の心臓。赤いのは弟の血なの。」

今回、戦争やテロに巻き込まれた子どもたちが、どんな経験をし、何を感じてきたのかを絵に描いてくれました。イラクの少女が描いたのは、むごい方法で殺された多くの人たちを嘆き悲しむ絵です。パレスチナの子どもは、当たり前のように周りの人が銃で撃たれる状況を知ってほしいと訴えています。
戦争が起きると、私たちはどうなるの?
なぜ戦争やテロはなくならないの?
スタジオには、素朴な疑問を持った子役のタレントたちが集合。
そして疑問に答えてくれるのは、池上彰さん。
紛争を解決するプロフェッショナル、瀬谷ルミ子さん。
少年時代に戦争を経験したという美輪明宏さん。
大事なテーマだけどいまさら人に聞けないというあなたも、一緒に「くろげん+」の課外授業をのぞいてみませんか。

今夜の「くろげん+」は、夏休み課外授業と題して、今も世界中で続く戦争とテロについて考えていきたいと思います。
みんなは戦争が起きると自分たちの暮らしや毎日がどうなるか、イメージは湧く?

山田瑛瑠くん:食料がなくなりそう。

鈴木福くん:みんなが戦争に協力しなきゃいけなくなる?

鈴木梨央ちゃん:お父さんとかも兵隊に行かなきゃならなくなるかも。考えられないけど、ちょっと怖いな。

今回は、皆さんにも戦争とテロと聞いてイメージすることを描いてもらいました。

瑛瑠くんが描いたのは授業で習ったベトナム戦争の絵。
梨央ちゃんはアメリカ同時多発テロの絵。テレビで見たんだそうです。
そして福くんはというと、爆発?飛行機?いろんなイメージが混ざってますね。
日本にいるとやっぱり戦争ってちょっと遠い話ですよね。

鎌倉:授業内容を発表します。

「“戦争とテロ”について考えてみませんか?」
1時間目は「戦争がおきるとどうなるの?」
2時間目は「なぜ争いはなくならないの?」
3時間目は「どうすれば争いをなくせるの?」
こういったことを考えていきます。

最近、ニュースでよく「中東・シリア」って耳にしませんか?
国の中で起きる戦争、つまり内戦が続いていて、多くの子どもたちが犠牲になっているんです。
「くろげん+」課外授業・1時間目のテーマは「戦争がおきるとどうなるの?」。

シリアで今何が起きているか、皆さん知ってますか?

福くん:シリアって聞いたことあるけど…。

梨央ちゃん:争ってるっていうのはニュースでは見たことあるんですけど、詳しいことはわからない。

今回、実はこのシリアの子どもたちに瑛瑠くんが会いに行ったんだよね。

瑛瑠くん:ドイツの難民施設に行ってきました。

鎌倉:まず私たちのいる日本。そこから西へずっと8,500キロ離れたシリア。でも瑛瑠くんが行ったのはそこではなくて、ヨーロッパのドイツなんですね。

どういうことか。今も戦闘が続いているシリアでは、2人に1人が住む家を奪われておよそ500万人がシリアの国の外に避難しているんです。ドイツには50万人のシリアの人たちが暮らしているわけなんです。その状態、国連は「今世紀最悪の人道危機」、つまり、人の命や暮らしが危険にさらされているとして、世界で大きな問題になっているんです。

ではどんな出会いがあったのか、VTRを見てみましょう。

“大河”子役が見た シリアの“戦争”

リポート:山田瑛瑠くん

戦争が起きると一体どうなるんだろう?僕はそれを経験した子どもたちに話を聞きに行きました。
ここは、ドイツに避難してきた人たちが生活する施設です。中庭が何だかにぎわっていました。配られていたのは、日本の漫画「キャプテン翼」でした。

シリアの人たちを支援する団体が、子どもたちを元気づけるために用意したと聞きました。夢中でサッカーをする姿は、僕たちが放課後に遊ぶ風景と何も変わらないように見えました。
施設で出会った、僕より1歳年上のマーヘルくんです。2年前にたった1人でここへやって来たんだって。

マーヘルくん(15)
「ここがベルリンで最初に降り立った場所だよ。なんて大きな街なんだと思った。」

マーヘルくんは戦争でどんな経験をしたんだろう?聞いてみることにしました。

マーヘルくん
「戦闘機がロケット弾を落としている夢を見ていたよ。目を覚まして外を見ると、本当に戦闘機が空爆していた。」

マーヘルくんのふるさと・シリアでは、激しい内戦が続いているんだそうです。
そもそものきっかけは6年前。もっと自由がほしいと、国民の間でデモが起こりました。アサド大統領はそれを軍隊で抑えようとしたため、政府に反対する人たちと争いになったんだ。そこに、ニュースでよく聞くISという過激派のグループも入ってきて、激しい内戦になったんだそうです。
家を失い、親戚3人も亡くしたマーヘルくん。国から逃げ出した難民を受け入れているドイツを目指します。海を渡る途中には何人もの人たちが溺れるのを目撃し、命の危険を感じたそうです。その後も3か月かけて3,000キロ近く歩いて、ようやくドイツにたどりついたんだ。

山田瑛瑠くん
「逃げているときや、寝たりするときは怖かったよね。」

マーヘルくん
「道やバスターミナルで寝たりもした。寒くてお腹がすいてしかたがなかった。途中で警察に2か月以上も捕まっていたんだ。怖くて悲しくて、泣いたよ。」

ドイツでマーヘルくんは、両親や弟と再会できた。今はドイツ政府の支援を受けながら暮らしています。でもふるさとには、おじいさんやおばあさんたちが残されたまま。これから先、大切な家族が無事でいられるのかどうか、とても不安だといいます。
マーヘルくんに、これからのことについて聞いてみたいことがありました。

山田瑛瑠くん
「シリアってどんなところになってほしい?」

マーヘルくん
「シリアにはもう何もない。将来、帰ることもない気がする。」

僕には想像もつかない答えでした。

■記事:ドイツ取材リポート
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/022/

子どもたちが描いた“戦争” 失った家族 傷ついた命

今回、シリアの子どもたちに会ったのは、瑛瑠くんだけではありません。

田中
「すごい人ですね。」

田中キャスターが訪ねたのは、300万もの人が避難しているシリアの隣・トルコです。

田中
「絵を描いてくれる?」

絵を描くことで、戦争を通じて何を経験し、何を感じてきたのか、話を聞かせてくれました。

11歳のファティマちゃんです。シリアで家族と住んでいた家を描きました。最後に描き加えたのが、弟でした。

ファティマちゃん
「これは弟。5年前に銃弾があたって死んじゃったの。小さかったのに。ハートは亡くなった弟の心臓で、赤いのは弟の血なの。」

笑顔の少女には、つらい経験がありました。

5歳になるマフムードくんは、かつて暮らしていたシリアの家族の様子を描きました。マフムードくんは、2年前に自宅が爆撃を受け、右足を失っています。父親と弟も亡くしました。いつしか笑顔を見せることもなくなっていったといいます。
この日は、2年間待ちに待った義足が出来上がる日でした。

田中
「人がかわったようにおしゃべりし始めて、よっぽどうれしいんでしょうね。あ、つきます。」

今、一番の望みは、義足をつけて友だちとサッカーをすることだといいます。

マフムードくん
「動いたよ!」

田中
「試しにつけてみて、どう?」

ふるさとや大切な家族を奪った戦争。その中で必死に生きていこうとする子どもたちに出会いました。

■記事:トルコ取材リポート
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/021/

1時間目 戦争がおきるとどうなるの?

最初にマフムードくんが描いたのがこちらですね。みんなどうかな?何か感じるものはある?

梨央ちゃん:ふだん私たちが描かないことを描いている。

福くん:悲しみを込めた雨かも。

そして、ファティマちゃんが描いてくれた絵がこちら。

福くん:5歳って言ってましたよね、弟は。僕も弟がいるんですけど、4歳で。4歳で死んじゃったら、本当につらいだろうな。

美輪さん:ハートからにじみ出てるでしょ、血が。きれいにハートが描かれてるんじゃなくて、周りが全部にじんでるでしょ。あれは血がはみ出してるのね。

足を失った少年を取材してくれた田中キャスターが、今、福岡にいるんです。

田中:子どもたちはふるさとを離れて、一見トルコで普通に生活を送っていたり、笑顔が戻ったりしているように見えても、実際は争いを自分たちが経験して、大好きな家族たちと離れ離れになって、心に深い傷を負っています。でも、自分たちがどんな経験をして、どんな気持ちで傷ついているのかっていうのを言葉で説明することはできないんです。ですから実は、この描いてくれた絵というのは、子どもたちのその「声にならない声」というものを発しているんだと感じました。

実際に現地で取材してきた瑛瑠くんに、皆さん、何か聞いてみたいことはないですか?

梨央ちゃん:そこにいる子どもたちは、前いた場所とまた違って、今、楽しいのかな?

瑛瑠くん:みんなドイツから他の国に行きたくないって言っていました。シリアに帰ることはもうないだろうって。

福くん:例えば、僕が内戦が起きて中国に行ったとして、そのまま帰ってきたくないって、今の状況だと日本はすごくいい国だから、でもやっぱりずっと内戦が続いたりすると嫌になっちゃうのかなって。

そもそもシリアで被災した戦争にあっている人たちが、なぜドイツにやって来ているんでしょうか?

池上さん:ヨーロッパでも、経済的に非常に貧しい国もあれば豊かな国もあるでしょ。国によって難民を「どうぞどうぞ」というのがドイツ。それに対して他の国は難民が来たら受け入れなければいけないけども、とてもその人たちを養っていけないとなると、一度ヨーロッパに入ると、「国境を越えて他の国に行ってもいいですよ」という約束があるのね。そこで入ったら「どうぞどうぞ、うちの国を通り過ぎてドイツへ行って下さい」っていう国が結構あって。

福くん:こう、受け流すような?

池上さん:そうそう。

福くん:日本にも難民の人たちが来ることってあるんですか?

池上さん:ありますね。ありますけど、遠いでしょ。ここだと歩いてこられるんだけど、日本だとやっぱりどうしても飛行機で来るというと限られるよね。

瀬谷ルミ子さん:あともう1つ、現地で大きな問題があって、難民の人たちはシリアの外に逃げることができた、まだラッキーな人たちなんです。たくさんの人たちがシリアの外に出る交通手段もないし、お金もないし、どこに行ったらいいのかという情報もなくシリアの中でまだ逃げ回っている。実は難民の人たちよりも、シリアの中で逃げている「避難民」と呼ばれる人たちの方が、数は多いんです。

紛争地の子どもと話してみよう シリアの少女と中継で

今回、戦争やテロを経験した世界の子どもたち52人から送ってもらった179枚の絵。その中に、今もシリアで暮らしている子どもの絵もあります。1人絵を描く少女の姿。描いたのは15歳のサファー・ヤーシーンさんです。

鎌倉:実は今、シリア・ダマスカスにいるサファーさんとインターネットで中継がつながってるんですよ。呼んでみますよ。サファーさん、聞こえますか?

サファー・ヤーシーンさん:こんにちは。

今、学校はどうしているんですか?

サファーさん:今は夏休みです。

瑛瑠くん:夏休みあるんですね。

サファーさんは、内戦で2回ふるさとを追われました。家族がばらばらになり、お兄さんやお姉さんとは5年以上会えていません。

福くん:今、一番楽しいことって何ですか?

サファーさん:一番楽しいのは歌うことですが、あまりうまくありません。

瑛瑠くん:歌ってみてほしいな。

何か好きな歌を歌ってもらえますか?

♪今 私の願いごとが
かなうならば 翼がほしい
この背中に 鳥のように…

サファーさん:初めて人前で歌ったので、恥ずかしかったです。

すばらしい。感動しました。

瀬谷さん:日本人のわたしより上手だ。

梨央ちゃん:今はどういった暮らしをしてるんですか?

サファーさん:私には趣味がたくさんあります。絵を描くための学校に通っていましたが、最近の状況のせいで難しくなりました。今はそこに行くこともできません。

瑛瑠くん:今の夢ってなんですか?

サファーさん:医者になりたいです。人を助けたいからです。貧しいために治療を受けられない多くの人たちを助けたいと思っています。
日本の人たちに伝えたいメッセージがあります。私たちは“あなたたちの生き方”から学んでいます。日本は(戦争で)破壊されても、そこから強く立ち上がったと聞いています。私たちはそのことを学びたい。シリアに関心を持ってくれてありがとう。皆さんと話すことができて、とてもうれしいです。

サファーさん、本当にありがとうございました。シュクラン(ありがとう)。

日本の歌を歌ってくれたね。

福くん:ほんとにすごい、なんかうれしかったですね。楽しいことを見つけて頑張っているんだなって。自分がつらい思いをしているっていう部分を見せるんじゃなくて、すごいニコニコしてしゃべってくれて、すごくうれしかったですね。

池上さん:つらい経験をしたからこそでしょうね。

美輪さん:あんまりね、つらい目にばっかり、ひどい目にばっかり、ずっとあい続けてると、平然と強くなってくるのね。だからさっき「翼をください」を歌ってくださった彼女なんか、意外と何でもなかったように強いでしょ。あの強さはそういうところからきてるのね。

瀬谷さん:やっぱり紛争地の子どもたちとかを見てて思うのは、強そうに見えるんだけど、実は強がらないともう自分の心を保てないんだよね。つらいことがありすぎて、将来の夢のことを考えないと、もうつらすぎて自分の希望が持てない。

サファーさんが描いてくれた4枚の絵。「くろげん+」では、この絵が動きだすアニメーションを作りました。

■ショート動画
http://www.nhk.or.jp/gendai/movie/

親子でまなぼう! “戦争とテロ”

ここまで世界の戦争を見てきたんだけど、なかなか日本にいるとやっぱり実感が湧かない面もあると思うんだよね。皆はこの日本で昔、戦争があったというのは知っているよね?

梨央ちゃん:学校の授業で習ったり、あと「ガラスのうさぎ」という本を読んで知ったんですけど。広島とか長崎に原爆を落としたりとか、

今「原爆」という言葉が出てきたんだけど、これはいつ落とされたか知ってる?

瑛瑠くん:1945年の…8月の…いつだっけ。いつだっけ?

福くん:15日…?

瑛瑠くん:8月の最初のほう。

今、大学生でも知らないという人が増えているんですよね。

池上さん:さすがに広島や長崎でアンケートをすると多くの子どもが知ってるんですけど、それ以外の人たちは、実はだいぶ知らないんですよね。

原子爆弾が落ちたのは、8月6日に広島、9日に長崎、そして15日は第二次世界大戦、日本が戦争に負けた。

池上さん:負けて「もう戦争しません」って日本が宣言した日。

実は美輪明宏さんは、ちょうどみんなと同じか、みんなよりもちょっと小さいぐらいの時に原爆を体験されたんです。

美輪明宏さんから子どもたちへ 私にとっての原爆・戦争

日本が戦争をしていたのは、子どもたちのひいおじいさんや、ひいおばあさんの時代。1945年の8月6日、9日、そして15日は覚えておきたい大事な日です。

中でも長崎で生まれ育った美輪さんにとって、昨日・9日は生涯忘れられない日だといいます。この日、長崎に原子爆弾が落ち、その年のうちに8万人近くが亡くなりました。
美輪さんは当時10歳。夏休みの日のことでした。

美輪さん:雲ひとつない晴れの日。それでとってもいい気持ちで、宿題の絵を描いて、ふっと出来上がって後ろに下がったんですよ。下がったとたんに、ピカッって光が。一瞬でした。“こんないい天気に雷?”と思うか思わないか、それぐらいの間。爆風がドン!バーッ!それこそ、もうそこいら辺じゅうがガタガタになって、ガラスが割れるんじゃなくて飛ぶのね。ボッ!となくなっちゃうの、ガラスが。
それで逃げて外へ出たら、なんとおじさんがね、もう全部焼けただれてて、ボロボロになってて、それで跳び上がってるの。ちょうど豆を鍋で煎ってるみたいに、ポンポン跳ねてるの。もう阿鼻叫喚で。焼けただれた人、肉がぶら下がってる人、もう頭が全部ずるむけの人、そういう人がいっぱい出てきて。そして、何かを一生懸命こうやって取ってるから何だろうと思ったら、夏だからウジ虫が湧いて、体じゅうそこいら辺ウジだらけなの。それをこう取って捨てて、またはい上がってって、それを繰り返してるの。地獄ですよ。それが戦争なの。

みんな、想像できる?

梨央ちゃん:できないです。

美輪さん:それとね、理不尽な腹が立つことばっかり。思い出してもかわいそうで涙が出るぐらいだけど、うちにホステスさんとか何人かいて、その中に、とても絵の上手なサンちゃんというボーイさんがいて、出征で兵隊にとられたのね。

当時、健康な男性は国の命令で戦争に行くのが義務でした。200万を超す人が、戦争に行って亡くなりました。美輪さんが話しだしたのは、息子を兵隊として送り出す、母親の悲しいエピソードです。

美輪さん:みんな一緒に送りに行ったんですよ、駅まで。「万歳!万歳!」って。そのサンちゃんのお母さんが、こんなちっちゃい人だけどね。私たちをパーッとつきのけて、そのお母さんが走っていって、立ってたサンちゃんの足元にパッてしがみついて、「死ぬなよ、どげんことがあっても死なないで帰って来いよ」っておっしゃったのね。そしたらそこに軍人がいたの。「貴様!なぜ軍国の母が立派に死んで来いと言わんのだ、非国民め!」って。そうして襟髪つかんでバーンと放り投げたらね、後ろに鉄柱の柱があったの。それでサンちゃんのお母さんは頭ぶつけちゃって、血がダラダラたれてて血だらけ。サンちゃんの顔を見たらねこういうふうになってて。まああの顔は何とも…私は一生忘れませんよ。

サンちゃんは戦死して死んだんだけど、最後に見た母親の顔がよ、血だらけになってね。かわいそうでしょ?もしあなたたちのお父さん、お母さん、きょうだいとか、そういった人たちが全部とられて、みんな死ぬの。もし大好きなボーイフレンドが死んだらどうする?お父さんや大好きな家族が。

梨央ちゃん、どうだった?

梨央ちゃん:“自分の大切な人がいなくなる”って自分でも考えたら、心がよくわからなくなる。

美輪さん:梨央ちゃん、とても今かわいいのを着てるわね。そういうのを着てたら、ぶん殴られるのよ。女の子がね、みんな工場に行く前にバーッと並んで、その時に女の子が、セーラー服の襟から毛糸のカラフルなのがチラッと見えたの。「貴様、淫売(いんばい)みたいな格好しやがって、脱げ!」って言われて。髪の毛持って引きずり回す、蹴飛ばす、ぶん殴る。1週間後に、その子死んじゃったの。そういうことがいっぱいあったのよ。だからね、軍閥とか軍国主義の連中に権力を持たせることは絶対だめ。

瑛瑠くん:聞きたいことがあるんですけど。失わなかったものって何ですか?

美輪さん:それは反抗心、反権力。ていうのはね、戦争前は男でもラッパズボンとか、こんな長髪の絵描きさんがいたり、そういうものが許された時代だったの。自由だった。それが全部なくなっていくの。クラシックもジャズもシャンソンもタンゴも、みんなだめ。流行歌もだめ。軍歌以外は歌っちゃならない。なぜそれがいけないんだと。ちきしょう、今に見てろと思ってたの。それが終戦後になったでしょ。私がこういう格好をしたのも、ビジュアル系を世界で初めてやったのも、「これは私の戦闘服です」って言ったの、自由のための戦闘服。「何だ女の腐ったみたいな格好しやがって」って言われても平気。

福くん:さっきおっしゃってたように、やっぱりつらい思いをしたから人は強くなれるんだろうなって。

2時間目 なぜ争いはなくならないの?

鎌倉:今回、番組では事前に全国の子どもたちに知りたいことを募集したんです。まず、こういった声が多かったんです。

“むかし戦争で大勢のひとが死んだのに、なぜ今も戦争やテロがあるのですか?”

福くん:この世界で、全部で、内戦とかも含めて、いくつくらい今、戦争が行われているんですか?

鎌倉:第二次世界大戦が終わったあとの1946年以降、世界各地で起こっている戦争を地図に示したものなんです。実は、戦争が途絶えた年は1年もないんです。
それから、最近みんなもニュースで映像を見たことがあると思いますが、フランス・パリの同時多発テロが起きたり、日本人が巻き込まれるテロも相次いでいます。この10年でテロの数は世界中で増えているんです。

そもそも「戦争」と「テロ」はどう違うんですか?

池上さん:なかなか定義は難しいんですけど、「テロ」といいますと、ある目的を持って人を殺したり、あるいは爆弾を爆発させたりして相手に恐怖を与える。テロってもともと「テラー=恐怖」という意味ですから、わざと相手に恐怖を与えて自分の主張を実現しようという試み、これが「テロ」ですよね。
それに対して「戦争」というのは、武力を使って相手を抑えこもう、自分の言うことを聞かせようということですよね。

福くん:友だちとケンカしたら仲直りできるのに、何で国と国でケンカするとそのままになって(しまう?)、しかも武力を使ったりとか。

でも、世界には100年以上にわたって繰り返し争いが起きている地域もあるんです。

鎌倉:中東のパレスチナです。どこにあるかというと、日本から西に9,000キロの地点です。

イスラエルとパレスチナ。土地をめぐって、繰り返し戦争やテロが起きてきました。この10年の間にも3回戦争が起きています。
2時間目のテーマは、「なぜ争いはなくならないの?」

鎌倉:これは、そのパレスチナに住む女の子が「悲しかった思い出」として描いてくれた絵なんです。

でも、これ悲しそうに見える?みんな。

福くん:この目の下に描かれている線が涙なのかな。

鎌倉:実は、この絵はお葬式の絵なんです。描いたのは8歳のサルサビールちゃん。この真ん中に描かれている女の子はそのサルサビールちゃんのお姉さんのファティマさんなんです。今年(2017年)の5月に、ナイフを持ってイスラエルの兵士たちに切りかかろうとしたとして、その場で撃たれて亡くなってしまったんです。

テロリストとされた少女 争いつづくパレスチナ

鎌倉
「ファティマちゃんの家族が暮らす村に入ってきました。」

16歳の少女が、なぜナイフを持ったのか。鎌倉キャスターが現地を訪ねました。亡くなったファティマさんの両親と妹たち。絵を描いてくれたのがサルサビールちゃんです。ファティマさんは亡くなる直前、手帳に言葉を残していました。そこには「イスラエル兵をナイフで刺して殺したい」と書かれていました。

ファティマさんはナイフで兵士を刺そうとしたとして、たくさんの銃弾を受けて亡くなりました。今も悲しみが続いています。ファティマさんがイスラエルに強い憎しみを持ったきっかけは、お父さんがイスラエル軍に捕まったことだったといいます。

ファティマさんの父親
「ファティマが面会に来たとき、私に強く抱きつきましたが、兵士が彼女を強く引っ張って外に出そうとしました。その時からイスラエル兵をにくむようになりました。」

なぜイスラエルとパレスチナは長い間争っているのでしょうか?70年前、もともとパレスチナの人たちが住んでいた所にユダヤ人の国・イスラエルが国連の決定を受けてつくられました。住む所を追われたパレスチナの人たちは、「もともと自分たちが住んでいた所だ!」と言って反発しました。一方、イスラエル側も「もっと昔から自分たちの先祖が住んでいた!」と言って譲らず、争いが繰り返されるようになりました。今もパレスチナは国ではなく、イスラエルに占領されたままです。移動の自由もなく、水や電気も十分に使えない不自由な生活が続いています。そうした不満が募って、イスラエルに対する暴動や攻撃につながっているといいます。
ファティマさんは争いで親戚を亡くしていました。パレスチナの人が殺される動画を繰り返し見て、泣いていたといいます。

ファティマさんの母親
「『なんで助けられないの、いつまで黙っているの?』といつも言っていました。最後の言葉は、『お母さん、私を怒らないでね』でした。」

事件のあと、ファティマさんはイスラエルに立ち向かった勇気ある女性として村じゅうからたたえられています。

「悲しいけれど、ファティマは私たちの誇りよ。」

「いつか彼女みたいになりたい。」

一方、イスラエルでは、ファティマさんはテロリストとされています。イスラエルで話を聞いてみると…。

「(パレスチナ人は)テロや攻撃をするから話したくもない人は多いと思う。」

「すぐそこでもパレスチナのテロで8人が亡くなりました。子どもをテロの恐怖の中で育てたくありません。パレスチナから子どもを守らなくては。」

亡くなったファティマさんと一番仲が良かった、妹のバラさんです。姉の命を奪ったイスラエルの事が許せません。

妹 バラさん
「なんで子どもまで殺すの?イスラエルは私たちのことをテロリストだと言うけど、あの人たちのほうがテロリストだわ。」

ファティマさんが亡くなったあと、弟や妹たちは銃のおもちゃをほしがるようになりました。

サルサビールちゃん
「イスラエルはパレスチナ人を殺すから嫌い。」

ファティマさんの弟
「パレスチナの敵だよ。」

ファティマさんの弟
「いつかお姉ちゃんを殺したやつを殺すんだ。」

子どもたちの中で憎しみが膨らんでいくことに、お母さんは戸惑っています。

ファティマさんの母親
「妹の1人はファティマのようになりたいと言いますが、私はそうはしてほしくありません。」

■記事:パレスチナ取材リポート
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/020/

みんなどう思った?

瑛瑠くん:僕には到底できないこと。(ファティマさんの)弟にもびっくりした。銃のおもちゃを持ってたじゃないですか。「ファティマを殺した人を殺してやる、復しゅうしてやる」と言ってたのは驚きでした。

鎌倉:私が実際行ってみたら、ファティマさんのおうちは本当にきょうだいみんな仲が良くて、銃のおもちゃで遊んでるけれども、あれを置いていれば普通の、みんなと同じ子どもなのね。また、お母さんは本当に愛情をたっぷり注いで、すごく愛にあふれた家庭だった、それがびっくりだったのね。

瀬谷さん:テロリストって聞いたときにイメージするのはどんな人?

福くん:ちょっと危ないというか、変な人。

瀬谷さん:さっきのファティマさんみたいな人をイメージしてた?

梨央ちゃん:しないです。

瀬谷さんはこれまで世界各地で、紛争を終わらせるために武器を捨てさせる活動に取り組んできました。

瀬谷さん:実際に私たちよく「テロリスト」って言うけど、もともとは普通の人なのね。赤ちゃんの時からテロリストだった人はいない。でもやっぱり自分の家族がファティマ産のように逮捕されてしまったり、自分と同じ民族・境遇の人がひどい目にあっていることに我慢ができない。彼女は自分の身のまわりにある理不尽なことを解決する手段を思いつけなかったのかなということだと思います。本当だったらもっといろんな解決策があって、ナイフでイスラエル兵を倒す以外の解決策があればよかったよね。

イスラエルの人たちの側から見ると、パレスチナの人たちはどう見えるんですか?

池上さん:今のような人が現れると、テロリストだと思うわけですよね。例えば、日本でも幼稚園や小学校で遠足に行くでしょ。イスラエルでは親が銃を持って警備でついてくるのね。自分の子どもたちがテロリストに襲われるかもしれない。「パレスチナのテロリストに襲われたら大変だから、自分たちの子どもは自分たちで守るんだ」と言って、銃を持って、遠足の時付き添ってくるのね。イスラエル側にするとそれが怖い。それが憎しみの連鎖ということになってくる。

争いが繰り返されてきたパレスチナ。この場所に暮らしていたという日本人の女の子がいます。
松浦はなちゃん。お父さんの仕事の都合でパレスチナの小学校に唯一の日本人として通っていました。そこである大切なことを教わったそうですが…。

ゲスト:松浦はなちゃん

鎌倉:はなちゃんは、パレスチナで暮らすってどんなことなんだろうというのを教えてくれます。暮らしていたときにびっくりしたことを、去年(2016年)作文で発表する機会があったんです。まずはその一節を、はなちゃんにここで読んでもらいたいと思います。

「パレスチナの思い出」 松浦はな

パレスチナはイスラエルの占領地です。そのためイスラエルとパレスチナの衝突がよく起こります。あまり安全ではないのですが、私はパレスチナが大好きです。
忘れられない思い出は、シャハラザード先生が話してくれたことです。パレスチナにも言い人と悪い人がいるように、イスラエルにもいい人と悪い人がいます。イスラエル人全員が悪い人ではありません。
私はイスラエル人がみんな悪い人だと思っていたのでびっくりしました。

パレスチナにいた日本の少女 先生の大切な教え

はなちゃんに大事な話をしてくれたという、シャハラザード先生を訪ねました。
はなちゃんの通っていた学校です。およそ1,000人の子どもたちが学んでいます。シャハラザード先生と、クラスメイトだった女の子たちです。

はなちゃんの元担任 シャハラザード先生
「はなはアラビア語も上手で賢い女の子でした。」

はなちゃんの元クラスメイト
「お別れの日の写真です。はなのことが忘れられないです。」

友だちは、はなちゃんから教わった歌を覚えていました。

「6さいのばらーど」
♪おんなのこです 6さいです
ようちえんでは バラぐみです
オシメしてたとかおぼえてないし

子どもたちが教科書を見せてくれました。国語の教科書には、イスラエルによる被害の様子が載っていました。

「イスラエル人が、パレスチナ人を追い出すため家を壊しているところです。」

「イスラエルの人みんなが悪いわけではない」とはなちゃんに教えてくれたシャハラザード先生。子どもたちに憎しみを持ってほしくないと考えていますが、簡単ではありません。生徒たちの日常にはイスラエルへの憎しみを生むようなできごとがあふれています。
はなちゃんのクラスメイトだったサルマちゃんです。見ていたのは、この日起きた事件のニュース。パレスチナ人とイスラエル人が銃で撃ち合い、両方亡くなったと伝えていました。

鎌倉
「おじいちゃんがあそこにいるの?これがおじいちゃん?」

現場には、サルマちゃんのおじいさんも居合わせていました。
こうした争いと隣り合わせの暮らしを送るサルマちゃん。描いてくれたのは、パレスチナの子どもが銃で撃たれる様子でした。

はなちゃんの元クラスメイト サルマちゃん
「悲しいし、怒りがわきます。だって正しくないことだから。」

厳しい状況の中で、シャハラザード先生は子どもたちに希望を持つよう教え続けてきました。

はなちゃんの元担任 シャハラザード先生
「どんな国でも、国民全員が悪いとか良いということはないでしょう。当たり前のことですよね。そのことをしっかり子どもたちに学んでほしいと思います。難しいですが、実現しなければいけません。」

なぜ争いはなくならないの?

瑛瑠くん:シャハラザードさんが不思議でならなくて。教科書でイスラエルの人はよくないと教えている人なのに、何でその中にはいい人もいるって言ったのか。

はなちゃん:シャハラザード先生もパレスチナ人なので、もちろんイスラエル人も嫌いなのですが、みんなそう思っていると戦争がいつまでたっても終わらないので、そういうことを教えてくれたんだと私は思います。

池上さん:イスラエル兵にもお父さんやお母さん、家族がいるよね?イスラエルは男性も女性も18歳になると全員軍隊に入らなければいけないのね。つまり普通の人がイスラエル軍の兵士になっているわけだ。ああやってもし殺されたら、その兵士の家族は悲しむよね。パレスチナをうんと恨むんじゃないだろうか。そういうところで、国というのと、そこにいる人たちを分けて考えるということを、多分シャハラザード先生は皆さんに教えてるんじゃないかなと思うんですよね。

梨央ちゃん:あまり分からないじゃないですか、イスラエル人のこととかも。お互いに知り合って、争いを起こすんじゃなくて、もっと交流を深めあいたいなと私は思うんですけど。

瀬谷さん:はなちゃんのパレスチナのお友だちに、イスラエルの人と会ったことある子っていた?

はなちゃん:たぶん大きくなったら、ファティマちゃんみたいに憎しみをもって検問所とかに行って石を投げたりするかもしれませんけど、でも小さいころは(あまり会ったことが)ないと思う。

瀬谷さん:もともとあるイスラエルとパレスチナの土地をめぐる争いというのは、ちゃんと政治レベルで解決はしなければいけないと思うんだけれども、もう1つ必要なのは、実際に家族を殺されてしまったり、相手のことが嫌いだっていう自分の中の問題、人間関係というのをどうしていくかっていうことだと思います。
和解とかする時って、相手のことを好きになれればもちろんいいんだけれども、自分の家族を殺した相手のことを好きになれると思う?

瑛瑠くん:それはなれないですよね。

瀬谷さん:相手がどれだけ謝っても?

瑛瑠くん:いや、なれないです。

瀬谷さん:和解というと、相手のことを許して好きにならなきゃいけないと私たちはイメージしがちなんだけど、相手のことは嫌いでもいいし許せなくてもいい。でも相手のことを暴力とか武力で何とかするのはやめよう、殺し合ったり殴り合ったりしないで同じ社会で生きていくためにはどうすればいいのか。

美輪さん:それともう1つは、戦を支援している国がこっそりいるということね。そこが、戦争が終わりそうになる、憎しみが終わりそうになると困るから、またけしかけて、悪いことをして、憎しみをあおりたてるように、かげでこっそりいろいろ仕掛けをしていると、そういうことも戦争にはありますね。そうお思いになりません?池上さん。

池上さん:平和になってしまうと、もう武器は要らないということになるでしょう。いつ戦争が起きるかもしれないとなると、最新の武器を売ることができる。それが“商売になる”ということを考える人もいるんだよね。

美輪さん:その人たちが何をしているかということを、ちゃんと目を光らせておかないといけないっていうことですよね。

3時間目 どうすれば争いをなくせるの?

ゲスト:日本の次世代リーダー養成塾の高校生たち

3時間目のテーマは「どうしたら争いをなくせるの?」
そのことを実は真剣に議論している高校生の皆さんがいるんです。ちょっと呼んでみますね。

田中:こちらでは、経済団体や自治体の支援で開かれている次世代のリーダーを養成しようというサマースクールが行われているんです。今年は14回目。「争いをどう乗り越えるのか」というのをテーマに、高校生たちが2週間にわたって合宿形式で議論を続けています。
日本人の高校生たちに加えて、日本語を学んでいる中国・韓国・タイ・マレーシア、そしてモンゴルの学生たちも参加しています。

番組でこれまで議論してきた大切なポイントの1つが、戦争が起きてしまうと未来にも憎しみが残ってしまうということだったんです。それをどう断ち切っていくのか、高校生たちはどう考えているんでしょうか?

田中:たくさんの議論、アイデアが出ました。例えば「言語を学ぶ」ですとか「世界の人と友だちになる」などの意見が出たんですけれども、中でも多かったのが、「議論の場を作る」という意見だったんですね。どうしてこういうふうに思ったんですか?

市岡広大さん:僕たち高校生がこういう場を設けて世界の情勢について真剣に議論しているということに関して、もし答えが出なくても、議論を行ったこと自体にすごく大きな意味があると思うので、僕は『何ができるか』と言われたら、議論の場を作って議論をすることがすごく大事だと思いました。

戦争をなくすには? “本気”で語り合う高校生たち

「本気で語り合うぞー!」

「お~!」

7月下旬に始まった合宿。高校生たちは、争いをなくすために立場の異なる人たちが意見を出し合うことを大事にしてきました。例えば合宿が始まった直後、高校生たちの間で議論になったのは、北朝鮮の脅威についてでした。

「午後11時過ぎに北朝鮮は大陸間弾道ミサイルを撃ったんです。」

各国の学生から、自分の国の安全を心配する声が上がりました。

日本人
「俺のお父さんが海藻に関する仕事をしていて、ミサイル撃つときに漁船にあたるかもしれないというのを毎回お父さんが危惧しているんですけども、すごい腹が立ちます。」

韓国人
「今、北朝鮮がミサイルを撃ったりしている状況じゃないですか。それで、韓国が安全な国だとは思ってないんです。」

ミサイルや核の開発を進める北朝鮮。その脅威にどう向き合うのか。国際社会にとって大きな問題となっています。

「武力で解決したほうがいいと思う人?
じゃあ、対話で解決したほうがいいと思う人?」

どうしたら争いはなくせるのか。仮に戦争が起きたら自分はどうするのか。さまざまな立場から議論が行われました。

田中:こちらの上田くんは「戦争に仮に巻き込まれたとしても絶対に自分は争いたくない」という意見なんですが、これについて他の参加者からは反論も含めて大きな議論になったんですよね。

上田竜之介さん:自分は、北朝鮮に武力攻撃などしないで、グッと我慢するべきだと考えています。もし日本が北朝鮮に反撃してしまったら、また北朝鮮から攻撃が来る。そうしたらまた日本が北朝鮮に仕返しするという負の連鎖が起こってしまって、どちらの国にも明るい未来はないと考えています。

田中:これに対して強い反応をしたのが、こちらの河野さんでしたが…。

河野瑞紀さん:人間関係とかに例えると、いじめられた側が何もしなかったら、いじめた側は“またやっていいんだ”とか“もっとやれるぞ”とか、そういう反応になってしまうことがあると思うんですよね。こんなことをしたら自分がひどい目にあうと思わせることが本当に大事だと思っています。

田中:アジアから来た高校生の人にも聞いてみましょうか。

韓国人 アン・ジョンホさん:やっぱり戦争は怖いです。僕も戦争に行きたくないと思っていますが、実際に戦争が起きたら愛国心が出て、自分の国を守ろうと戦争に参加すると思います。

鎌倉:事前に全国の子どもたちに質問を募集したんですけれども、その中でもやはり北朝鮮に関するものというのは多かったんですね。

“北朝鮮のミサイルがとても怖いです。もし日本に届いたらどうなりますか?”

“北朝鮮はなぜミサイルを飛ばすのですか?得する人はいるのですか?”

池上さん:北朝鮮はとにかくアメリカが怖くてしょうがないんですね。なのでアメリカから攻撃されないようにするためには、アメリカがもし北朝鮮を攻撃したら、逆にアメリカを攻撃するぞと。そのミサイルをとにかく開発したい。

争いをなくすには?“国”や“立場”をこえて

北朝鮮以外の問題についても、高校生たちは寝る間も惜しんで意見を交わしていました。日本にはない徴兵制についても議論が及びました。

「徴兵制は絶対にありえない。」

「そんなことになったらさ、もう上から行けっちゅうねん。」

「僕は行くで。」

「やっぱ、でも行かんようにすべきやと思うで。」

国籍や立場をこえた話し合いも続きます。

日本人
「答えづらいと思うけど、尖閣諸島とか領土問題についてはどう思ってる?」

日本人
「中国ってさ、核兵器のこととかどう思っているの?」

中国人
「国を守るだけです。もしどこかの国と戦争になったら、自分の国を守るために使うかもしれない。」

日本人
「国を守る抑止力っていうの。」

日本人
「そんなこといったらさぁ、相手よりも多く持ちたいって、ばく大に武器がどんどん増えていくからさ、怖いぞ。」

どうすれば争いをなくせるの?

田中:議論の中では、まず高校生たちでもできる身近なことから始めていこうという意見も聞かれたんですが、こちらにいる山田くんは、いじめをなくすことから始めたいと考えているんですよね。

山田明怜さん:僕自身、昔いじめを受けていて、その中で、いじめと戦争は同じ、いじめは戦争の縮図ではないかと思っていて、いじめも戦争もどちらも憎しみを生む行為。もしクラスにいじめられている人がいるんだったら、まず明日、朝行って、とりあえずあいさつをしましょう。そこから、もし落ち込んでいるんだったら声をかけて、話題振ってあげて。

田中:そうしたことも、ひいてては争いもなくしていけると?

山田明怜さん:もうちょっと勇気を出せば、とめられるんじゃないかっていう思いが生まれると思ってて。

高校生たちの白熱した議論、どうお聞きになりましたか?

池上さん:中国は中国で核兵器を持つ論理っていうのを言いましたよね。ふだん私たちは核兵器を持つ論理って知らないですよね。あっこんな思いを持っているからなんだという、お互いの立場をまずは知るという、そこから始まるっているというのはすばらしいことだなと思いましたね。

福くん:いろいろな考え方で見て、ああいうふうに議論していかないと、ものは解決していかないと思う。SNSからでもいいから、ああいうものをどんどん増やしていけば、戦争っていう形じゃなくて、議論で交流をしてくれたら良いなって思いました。

瑛瑠くん:さっきの高校生みたいに、いろいろ議論をする場を作ることで、より良い日本が作れるんじゃないかなって思いましたし、より良い日本を作ることで、より良い世界ができるんじゃないかと思いました。

梨央ちゃん:私が全然知らなかったことも知れたし、知ってすごくわかったこともあったし、自分にとって何かできることとか、ニュースとかも見て考えられるようになりました。自分の意見も出したいです。

大人も頑張らなきゃいけないですけど。大人は何ができるのか、そして子どもたちに何を伝えていけるのでしょうか?

池上さん:1つは今、戦争のことを知らない人たちが、子どもだけじゃなくて大人にも増えてますよね。そういう時に先ほどの美輪さんのお話を聞くと、本当に心打たれるものがあるでしょ?戦争をするとどんなひどいことになるのかってことは、私たちが知らなければいけませんよね。
それからもう1つは、先ほどの高校生たち、ああやって議論するとそれぞれ国に帰ったあとずっと友だちになれますでしょ。よその国に友だちがいると、その国と日本との関係が悪くなった時に、「でもあそこには友だちがいるもんね」って思うでしょ?君たちが世界中にたくさんの友だちを作っていく。それが国と国が仲が悪くなった時にそれを止めることになるんじゃないかなって思いますね。

美輪さん:お互いに、世界平和のためには文化しかないと思うんですよ。美術・文学・音楽・スポーツ、そして経済。経済はね、お互いが“お得意さん”であればいいんですよ。自分たちがメリットがあって、いい品物を納めてくれる。その国でなきゃできない。そしたらそれを攻撃したら自分たちがマイナスになる。だからそういった意味で、“お得意さん”でお互いがあればいいんですよね。
そしてこの日本は、“大”いなる“和”の国、“大和”の国なんですよ。ですから仲よくして、あっみんなこういう顔か、人種もこえて、醜いものもきれいなものも、金持ちも貧乏人も、みんなおいでおいでといって、なごやかに和する国、大いなる和の国、大和の国。これが日本の真骨頂。私はそう思ってます。

瀬谷さん:シリアのサファーちゃんも言ってましたけど、日本の復興した経験を教えてほしい。これ、いろんな紛争地で言われるんですよね。ただ、実際に私たちがそれをしてるかっていうとそうじゃない。私たちは日本がどうやって立ち直ったか、そして今、実際、紛争地で自分たちだけでは話し合いもできないような所に、中立的な立場で平和をなしとげた国として貢献できるっていう、他の先進国が持っていない、日本だけの価値を持っていると思います。
それを私たちができるうちに、美輪さんの世代たちがつくり上げた平和な国というものを当たり前のものと思わずに、私たちはどういう行動をとったらいいのかというのを改めて考えて、それを実行していく段階にきているのかなと思います。

福くん:“未来を背負うのは僕たち”だっていうのをよく言われるんですけど、本当に自覚を持ってどんどんやっていかないと駄目なんだろうなというのがよくわかりました。日本から世界を変えていけたらいいなって思います。

戦争やテロを経験した世界の子どもたちが描いた絵。
そこには一人一人の将来の夢も描かれていました。

とても大事だけど、私たちの日常からは遠い気がする戦争とテロ。簡単に答えが出るわけではありませんが、厳しい状況に置かれた人たち一人一人の体験や思いを聞くことで、自分のこととして捉えることができるようになるのではないか。そう感じました。
戦争はなぜなくならないのか?どうすればなくせるのか?
「くろげん+」も伝え続ける責任を果たしていきたいと思います。