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2017年6月28日(水)
保険値上げで家計直撃!賢い見直し術とは

保険値上げで家計直撃!賢い見直し術とは

昨今、生命保険をめぐる事情が大きく変わり、加入や見直しの際に注意が必要になっている。この春から、一部の生命保険が大幅に値上がり。背景には、「マイナス金利のために、運用で利益があがらない」保険会社の苦しい事情がある。さらに、保険会社や販売代理店の利益のために、一部では、「顧客のニーズにあわない商品を勧める」ケースもあるという。保険料を節約しながら、将来の安心を得るには?かしこい保険の活用術を考える。

出演者

  • 出口治明さん (生命保険会社創業者)
  • 植村信保さん (保険アナリスト)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

保険値上げで家計直撃! 賢い見直し術とは?

ゲスト 植村信保さん(保険アナリスト)
ゲスト 出口治明さん(生命保険会社創業者)

将来の安心を、お金で買う生命保険。この春、一部が大きく値上げされ、商品選びに注意が必要になっています。

今、保険で悩む人たちが次々と相談窓口を訪れています。家計を直撃する保険料の値上げ。背景にあるのは、マイナス金利政策です。資産運用が厳しくなり、生命保険各社の懐事情が苦しくなったのです。さらに、消費者を戸惑わせる事態が、金融庁の調査で明らかになりました。保険会社などの利益優先で、高い手数料の商品を勧めるケースがあるというのです。ますます難しくなる保険選び。でも、上手に見直すと、保険料の負担が軽くなるケースも。
住宅の次に高い買い物といわれる生命保険。どうすれば、保険料を節約しつつ十分な安心を得られるのか、徹底的に考えます。

鎌倉:保険の種類、大きく分けて3つあります。まず、死亡時などにお金が支払われる生命保険。事故や災害などの補償をする損害保険、そして医療保険やがん保険などの第3分野の保険です。このうち4月に値上がりしたのは、生命保険の中の貯蓄型の終身死亡保険、それから、老後の蓄えを積み立てる個人年金保険、子どもの教育資金に備える学資保険などです。

家計を取り巻く環境が一段と厳しくなっている今、賢く保険を選ぶには何が大切なんでしょうか。まずは、保険相談の現場に密着しました。

最近、保険の見直しで悩んでいるというこちらの女性。田中えみさん、36歳です。夫と、幼い2人の子どもがいる会社員。毎月10万円近い保険料を支払っています。

田中さんは現在、育児休業中。収入が減ったため、保険料の支出を抑えたいと考えていました。
この日、訪ねたのは、保険の見直しについて、アドバイスしてくれるコンサルティング会社。特定の保険会社との結び付きがない独立系のファイナンシャルプランナーに相談することにしたのです。
加入している保険の内容を伝えた田中さん。まず指摘されたのは、3年前に入った貯蓄型の生命保険にリスクがあるということでした。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「28年間、元本割れなんですね。そのリスクって大きいですよね。」

田中えみさん
「イメージ的に定期の積み立てのイメージをしてたんですね。」

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「(保険と定期預金は)商品が全然違うんですよね。」

死亡保障が付いた夫の生命保険。65歳まで毎年58万円ずつ積み立てます。田中さんは貯蓄のつもりでしたが、途中で解約した際に戻ってくるお金が、この先28年間は元本割れしてしまうというのです。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「この4月から(保険の)利率下がっているんですね。保険で貯蓄というのは、もうやめたほうがいいと思います。」

金利が高かった時は、こうした貯蓄型の保険のメリットは大きかったのですが、最近は利率が低いため、うまみは少ないといいます。

貯蓄をしたいなら、必要な時に自由に引き出せる銀行などへの預金がお勧めだそうです。田中さんは、貯蓄型の保険を解約してもいいとアドバイスされました。自分たちが死亡した場合に備え、別の生命保険にも加入していることや遺族厚生年金があることも大きな理由でした。一方で、新たに加入を勧められたのが、掛け捨て型の就業不能保険です。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「いちばん保険の優先順位が高いのは、この就業不能、働けなくなるときの保障。」

田中えみさん
「初めて聞きました。」

子どもが経済的に最も困るのは、親が交通事故や病気などで働けなくなった場合。生命保険の死亡保障も受け取れません。そんなときに役に立つのが就業不能保険。毎月数千円を掛け捨てで支払うことで働けなくなった場合、月収代わりのお金を長期で受け取ることができるのです。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「働けない年数が長くなっていくほど、家計には非常にボディブローのように効いてくるので、その部分だけ保険を掛けると。」

田中えみさん
「掛け捨ては、もったいないなというイメージがふんわりあって、それで終身(貯蓄型)かなと思ってたんですけれども、改めて見直して、現金での貯蓄部分を増やしていければなと思います。」

保険を見直す際、商品の中身や金利以外にも大事な指標があります。それがライフステージです。相談に訪れた八木敬子さん、55歳です。夫と就職した息子、大学卒業間近の娘がいるパート社員。毎月5万円の保険料を支払っています。

夫の定年退職が近づき、大幅な収入ダウンを見越して、保険料を減らせないかと考えていました。
いきなり大胆なアドバイスが飛び出しました。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「住宅もあります。お子さんも、もうあと、ひと頑張りですということなので、いろいろ保険に入っていらっしゃいましたけれども、そこからもう卒業が見えてきて、実際に(保険から)卒業ができる。」

保険からの卒業。まず指摘されたのが、死亡保障が付いた生命保険の見直しでした。
息子は、すでに就職、娘もまもなく独立するため、自分に万一のことがあっても、子どもに大金を残す必要はありません。これまで支払った分の保障はキープしつつ、新規の支払いは中止することを勧められました。出産、退職など、人生の転機は保険見直しのタイミングでもあるのです。
さらに、一定の収入や貯蓄があれば、医療保険も、必ずしも必要ではないとアドバイスされました。日本では、高額療養費制度が充実しており、ばく大な医療費がかかった場合も、負担が大幅に減るからだといいます。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「入院したときしか使えないとか、所定の手術をしたときしか使えないようなお金にしていくよりは、(預貯金で)自由にさせといたほうがいいんじゃないかなと思うんです。」

ただし、治療が何年も続く恐れのある、がん対策の保険は、心配なら残した方がいいと言われました。それでも、生命保険と医療保険の支払いをやめると…。

独立系ファイナンシャルプランナー 内藤眞弓さん
「(減らせるのは)3万2,967円になりますね、月々。」

相談の結果、ひと月3万円以上のお金が浮き、10年で400万円近く、預貯金に回せる計算になりました。

八木敬子さん
「この年になると、特に(保険が)なくても、いろいろ他でカバーすればいいんだっていうのがすごくよく分かって。保険に縛られないほうがいいんだなということが、よく分かりました。」

鎌倉:日本は、1人当たりの保険料の支払額が、世界有数の保険大国といわれています。一方で、VTRにありましたように、ちょっと保険に入りすぎという方もいらっしゃるのではないでしょうか。独立系のファイナンシャルプランナー 内藤真弓さんが、優先度が高いと考える保険です。
単身、夫婦2人の時は、病気やけがなどで収入が途絶えた時のために就業不能保険、所得保障保険ともいわれます。さらに、子どもが生まれた場合、自分の死亡時にまとまった金額を残せる掛け捨て型の死亡保険への加入を検討してもいいのではということです。

医療保険やがん保険については、公的な高額療養費制度があることを念頭に置きつつ、どのくらい貯蓄があるかなど、それぞれの事情に応じて検討するとよいということでした。

保険アナリストで、金融庁で保険会社の経営分析などに携わった植村さん。
VTRでは、低金利時代に貯蓄型の保険に入るのはお勧めできないという話だったが、植村さんの考える優先順位の高い保険は何?

植村さん:今、紹介がありました死亡保険、これは、独立していない子どもがいて、収入が一人だけという場合には、やはり必須なんじゃないかなと思います。また、同じく紹介がありました、収入を保障するという保険ですね、働けなくなった時とかの。これは、特に自営業の方は、非常に有効だと思います。
さらに、損保になるんですが、個人賠償責任保険というのがありまして、例えば自転車事故で、誰かに、けがをさせてしまったとか、そうすると、損害賠償請求を受けますよね。そういった時の備えの保険です。こういったものもあると、いいんじゃないかなというふうに思います。そして、「保険に今、貯蓄を求めるのは厳しい」ということを書いたんですけれども、やはり今、この金利がこれだけ低い中で貯蓄というのを保険に求めるのは、あまり得策ではないのかなというふうに考えています。

顧客本位の保険を求めて、自ら保険会社を創業した出口さん。
出口さんは、保険を見直す時に何が大切だと考える?

出口さん:2つ挙げたんですが、1つは、これからは人口の増加や高度成長はちょっと難しいですから、ひょっとしたら所得も右肩上がりではなくて、下がっていくかもしれません。そういう時に保険は固定費ですから、手取りの3%から5%ぐらいに、合計の保険料を抑えておくと、所得が下がってもそんなに困らない、これが1点。
それから昔は、家族と子どもと暮らしているのが普通でしたから、生命保険は家族や子どものために、死亡保険とかが売れていたんですが、今は世帯の3分の1は1人暮らしですよね。そうすると、自分のためを考えて、先ほど、内藤さんが言われていた、就業不能保険のような保険を考える。自分のためか、家族のためか、目的をはっきりすることが大事だと思います。

鎌倉:保険については、去年(2016年)金融庁が出した、あるレポートが波紋を呼んでいます。貯蓄型の保険について、顧客のニーズではなく、販売側の論理で売っているのではないかという指摘があったんです。どういうことなのか、具体的に見ていきましょう。
まずは、手数料が高い保険が売られているケースです。例として挙げられているのが、外貨建て保険。外貨で運用する死亡保険を外国債券、投資信託などと組み合わせた商品の場合、仮にそれぞれをバラバラに買った時に比べて、手数料が10%ほど高くなるケースがあるというんです。
さらに、こんな裏事情も指摘されていました。保険会社は、窓口で保険を売ってくれる銀行や証券会社などに対して、新発売の商品など、たくさん売りたい商品の販売手数料を上乗せするケースがあるというんです。さらに、保険会社が勧める商品を売った販売員に対して、ご褒美として、旅行や賞品などを贈ることもあります。こういった経費が、最終的に私たちの保険料アップにつながってしまうんです。
最近、街でよく見かける保険ショップの一部でも、実際に行われていることが今回の取材で分かりました。

必要ない保険を販売? 保険ショップ 元店員証言

かつて、保険ショップで販売を担当していた男性です。

元保険ショップ販売員
「(目標額を)達成した社員には、海外旅行をもれなくプレゼントしますと。あとよくあるのは商品券ですよね。インセンティブ(報酬)が度を超えているというかですね。ちょっとやり過ぎのような気もします。本当にお客様の希望する商品を勧めているかというと、必ずしもそうではない。(客に)『ごめんなさい』ということを思いながら、契約の手続きということはありました。」

一部の保険ショップで指摘されている問題点を、どう捉えたらいい?

植村さん:確かに、保険ショップのような複数の保険会社の商品を取り扱っていると。一見、公平とか中立というふうに見えるけれども、実は、保険会社の高い手数料を出してくれるところの商品を優先的にお客さんに勧めたんじゃないかと、そういうような疑いがあるというのは、かねてから言われていたことなんですね。そこで、昨年スタートした制度改革というのがありまして、保険業法が変わり、1つは保険代理店、保険ショップとかに、お客さんの意向に反した保険を売ってはいけませんよ、意向に沿った形で勧めなさいということを求める。もう1つは、監督する金融庁が直接、販売会社、代理店を監督するようになった。こういうような改革が行われました。ですので、比べて保険を選びたいというニーズはあるわけなので、今後、それが本当の意味でできるような世界になっていくといいなというふうに期待しています。

窓口に行く私たち消費者は、どうすればいい?

植村さん:ちょっと今言った話と、ややあれなんですけれども、そうはいっても、規制は出来たけれども、代理店は代理店なんですね。代理って、保険会社の代理なわけです。ですので、まず、そこは押さえていただきたいなというふうに思います。あとは、社会保障を皆さん入ってるわけですね、健康保険とか、社会年金ですね。ですので、それと加えて、どうしてこの商品勧めるんですか?というふうに聞いてみるというのも、1つの手かなというふうに思います。

出口さんは、どう考える?

出口さん:今のお話を聞いていて、アメリカでも同じ話があったのを思い出したんですけれども、アメリカでは、そういう時には、お客さまが2つの商品を勧められたら、それぞれの手数料はいくらですかと聞いて、答えなきゃいけないんですよね。日本は、そういう義務はないんですけれど、そういうふうに聞いてみたら、保険を売る側でも、いや、これは手数料ではなく、あなたのニーズを考えて、ちゃんとお勧めしたんですよということを説明する、その担保になると思いますから、手数料いくらですか?と聞いてみるのもいいかもしれませんね。

鎌倉:私たちが人生で直面するリスクは、死亡や病気だけではありません。実は近年、日常に潜む、さまざまなリスクをカバーする保険がたくさん生まれています。その多くが、数百円ほどの支払いで短期の保障を得る少額短期保険、いわゆるミニ保険です。例えば、ペット保険はペットが病気にかかった際などの医療費をカバーしてくれるもの。チケット保険は、急な病気やけが、突然の出張命令などで、イベントに行けなかった場合などに、そのチケット代金を補償する保険です。さらに、もう1つあるんですけれども、レスキュー保険というのは、登山で万が一、遭難した時に、レスキュー費用を補填してくれるものなんです。そして、こういったミニ保険の中でも、特に注目されているものがあります。

社会のニーズをとらえろ ユニークなミニ保険

毎日2時間、満員電車で通勤しているこちらの男性。先月(5月)加入したのが、痴漢えん罪保険です。

痴漢のえん罪被害に遭った時に、スマートフォンで、すぐに弁護士と連絡を取り助けを求めることができます。女性に挟まれて、ぎゅうぎゅう詰めになることも多く、えん罪をひと事に思えなかったといいます。

保険の加入者
「いつ自分の身に降りかかってくるか、他の人に代わってもらえないような仕事っていうのもありますし、そういったところを突然奪われることは、すごい困る。」

ミニ保険は、保険の実験場といわれています。業界では、どんな保険が必要か、市民の声を集め商品の開発につなげています。

日本小額短期保険協会 安藤克行理事
「商品をすぐに作れるという意味では、小額短期保険会社のほうが、割と機動力があるものですから、こういうところから保険商品を作っていかないと新しい時代のものは生まれてきませんので。」

ミニ保険の中には、発売後、予想以上の広がりを見せ、大手が取り扱いを始めるものもあります。その1つが、孤独死保険。孤独死があった際、大家さんに清掃代などが支払われます。このアパートを経営する古根村博和さんも、2年ほど前に加入しました。

アパート経営 古根村博和さん
「この保険なんですが。」

この保険では、1室当たり月300円の保険料で、最大300万円を補償します。
3か月前、孤独死に直面した時は清掃代のほか、空室が続いたことによる家賃の損失など、合わせて56万円ほど、カバーすることができました。この保険のおかげで、1人暮らしの高齢者も安心して受け入れられるといいます。

アパート経営 古根村博和さん
「大家としては高齢の方だったりすると、貸すことに及び腰になってしまうこともあると思うんですけれども、こういった保険があることによって、大家としては救われる部分はありますね。」

マイナス金利時代 賢い保険見直し術とは

鎌倉:ほかにも、予想以上の広がりを見せたミニ保険、例えばこんなものがあります。健康年齢保険は、医療保険の1つでして、健康診断の血糖値や中性脂肪などの結果がよかった場合は、保険料が安くなります。現在、大手保険会社も含めて10社ほどが導入を検討しています。それから、葬儀保険。急な出費であるお葬式代をカバーしようという保険なんですね。死んだ後に迷惑をかけたくないという単身の高齢者の加入が増えているそうで、こちらは13社ほどに広がっています。

こういったミニ保険が次々と開発されているが、こういう状況をどう見る?

植村さん:ミニ保険会社って、比較的新しいプレーヤーなんですよ。ですので、新しい人たちが、新しいものを提供していく、これは消費者にとって、非常にいいと思います。ただ、ちょっと気になることがあって、それは、その保険会社の経営内容についての情報開示が総じてちょっと見劣りするのかなと。その保険会社を信用して、皆さん加入するということになりますので、もうちょっと情報開示したほうがいいのかなというふうに思います。

出口さんは、どう思う?

出口さん:やはり、いろんな商品を実験しているということは、すごく大事ですよね。でも、それと同時に、やっぱりミニ保険会社も、いろんな経営内容をディスクローズしてくれたら、消費者も安心して買えるようになると思います。

単身世帯の増加やマイナス金利、保険を巡る事情、かつてと大きく変わってきているが、これからの時代、保険とどうつきあっていくべき?

出口さん:どんな商品でも同じだと思うんですけれど、やっぱり調べて、比べて、買うというのは鉄則ですよね。今は、インターネットとか、いろんな雑誌とか、あるいは銀行等の窓口に行っても、いろんな情報が得られますから。調べて、比べて買う。いい消費者は、いいメーカーを作ると昔から言われてますから、それは資源だと思います。

植村さんは、どう思う?

植村さん:保険、特に生命保険って、まずは社会保障があって、その上乗せって、位置づけだと思うんですね。ですので、まずは社会保障をないがしろにしないということかと思います。あと、保険の得意分野って、やっぱりあると思うんですよ。めったに起きるというリスクじゃないんですけれども、起きたら、ちょっと経済的に大変だという、こういったものに対しての備えとして、自分がそういうリスクを抱えてるのかどうかということを考えた上で、保険を利用するというのが、非常に重要なつきあい方だと思います。
(自分のリスクをきちんと把握するということ?)
そのとおりです。

先行き不透明な時代、人生のリスクに備えるため、保険だけではなく、貯蓄や公的な制度など、さまざまな選択肢を自分の目で見極めて、賢い選択をしていきたいと思いました。