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2017年6月19日(月)
波紋広がる“特区選定” ~独占入手 加計学園“新文書”~

波紋広がる“特区選定” ~独占入手 加計学園“新文書”~

学校法人「加計学園」が計画している獣医学部の新設。地域を限定して大胆な規制緩和を行う国家戦略特区制度を活用し、52年ぶりに認められた。今回の選定について政府は「すべて適切に行われた」としているが、一方で「行政がゆがめられた」との声も上がっている。選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか?経済成長をめざす特区制度はどうあるべきか?独占入手の資料や証言などをもとに特区制度をめぐる問題の深層に迫る。

出演者

  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

独占入手・加計学園 “新文書”とは

学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する新たな文書を入手しました。

文部科学省の追加調査で存在が確認された、加計学園の獣医学部新設をめぐる14の文書。NHKは今回それらとは別の新たな文書を入手しました。事業者が選定される前から政権幹部が加計学園の名前を出して指示していたと記されています。

文部科学相 現役職員
「これは安倍総理の関係する総理マターである。十分な議論がないままに結論まで行ってしまった。」

公平性、透明性の確保が求められている「国家戦略特区」の選定。

菅官房長官
「圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない。」

選定は適切に進められていたのか。検証します。

鎌倉:そもそも獣医学部の新設は、52年間、認められてきませんでした。獣医師の数は足りているとして、新設に規制が設けられていたからです。
それが4年前、第2次安倍政権の成長戦略の柱として、国家戦略特区の制度が始まります。地方自治体などからの提案に基づいて、内閣府に設置された総理大臣を議長とする諮問会議が、トップダウンで大胆な規制緩和を進めるのが、そのねらいです。
去年(2016年)の1月、まず国家戦略特区の対象の地域として、愛媛県今治市が新たに指定されました。その年の11月、国家戦略特区で扱える事業として、獣医学部の新設が加わります。そして今年(2017年)の1月、加計学園が、その事業者に選ばれました。先週、「総理のご意向」などと書かれた文書の存在が確認されましたが、そのほとんどは、獣医学部新設が決まる前の時期のものです。そしてこのころ、すでに加計学園に言及したものがあったことから、野党からは加計ありきだったのではないかという疑問の声が上がっています。

今回、私たちは、この時期に書かれたとされる新たな文書を入手しました。萩生田官房副長官が文部科学省の担当者に対して指示したとする内容をまとめたものです。「文科省だけが怖じ気づいている」「官邸は絶対やると言っている」などと記されています。NHKの取材に対し、文部科学省の複数の現役職員が、この文書は省内で共有されていたことを証言しています。
国家戦略特区では、特定の自治体や事業者にだけ規制を緩和することになるため、選定にあたっては公平性や透明性が極めて重要になります。加計学園の獣医学部新設をめぐるプロセスは、適切だったのでしょうか。

加計学園“新文書” 特区選定で何が?

今治市にある、獣医学部の建設予定地の映像です。3か月前、加計孝太郎理事長をはじめ学園の関係者が一堂に会して起工式が行われました。来年(2018年)4月の開学を目指し、急ピッチで工事を進める加計学園。
獣医学部の新設は長年の悲願でした。加計学園は10年前から今治市などの提案の中で新設を希望してきましたが認められませんでした。

状況が大きく変わったのが、国家戦略特区制度が出来た平成25年。
この制度は、いわゆる「岩盤規制」を突破するため、内閣府に設置された総理大臣を議長とする諮問会議がトップダウンで、どの地域で、どの規制を外すかを決めるものです。

安倍総理大臣と40年来の友人である加計理事長に便宜が図られたのではないか。安倍総理大臣は再三、否定してきました。

民進党 斎藤参院議員
「加計理事長は心の奥でつながっている腹心の友ということをおっしゃっていますが。」

安倍首相
「加計学園から私に相談があったことや、圧力が働いたことは一切ない。」

特区の指定を行う諮問会議の議員は、会議でのプロセスは適切だったと語りました。

国家戦略特区諮問会議 竹中平蔵民間議員
「これまでの準備の状況から、今治が適切だと全員一致で判断した。一点の曇りもないプロセスであったと理解しています。」

 

リポート:森並慶三郎(社会部)

 

今回の取材で、ある人物が安倍総理大臣の名前を使って加計学園を売り込んでいたとするメールの文書が見つかりました。文部科学省のOBで、後に加計学園の理事となる豊田三郎氏。豊田氏は、今治市が特区に認定されるより前の平成27年文部科学省の職員と会い、新設に向けた意気込みを語ったとされています。職員が書いたメールには「安倍総理大臣と親しい」としたうえで学部新設に力を入れていくと豊田氏が伝えた様子が記されています。

“安倍総理の留学時代のご学友である現理事長と安倍総理と食事をする仲になった。いざ総理が進めたときに『お友だち内閣ですね』と週刊誌などに書かれないように、中身をしっかりしたものにしないと総理に恥をかかせることになるから、ちゃんと学園として構想をしっかりしたものにするよう、私からは(理事長に)言っている。”

このメールの内容を共有していた、文部科学省の現役職員です。加計学園は獣医学部の新設で無視できない存在として省内で認識されるようになっていったといいます。

文部科学相 現役職員
「政治家が関係する案件を“マル政”案件と言ったりしますけれど、政治的に事が進められる可能性が高い案件という意識を持っていた職員は多いと思います。」

特区選定の背景には、獣医学部の新設を長年にわたり認めてこなかった文部科学省と、特区を進める内閣府とのせめぎ合いがありました。諮問会議は獣医学部新設の地域について新潟市や京都府なども手を挙げる中、今治市を選び、今年1月、事業者は加計学園に決まりました。そのプロセスは公平だったのか。加計学園に決まる3か月前の去年11月、ある条件が加えられていたことについて、一部に疑問の声が上がりました。
先週、文部科学省の追加調査で公表された文書。新設の条件に「広域的に」や「限り」などの文言が手書きで挿入され、獣医学部がない空白地域に限定されることになったのです。

これは、獣医学部がない四国での新設を目指す加計学園を念頭に置いたものではなかったか、修正を指示したのではないかと、野党から追及を受けたのが萩生田官房副長官です。

民進党 福山参院議員
「萩生田副長官から指示が出て、これを修正しろと言われたと。」

萩生田官房副長官は全面的に否定しました。

萩生田官房副長官
「わたしは修正の指示をしたことはありません。」

国家戦略特区を担当する山本地方創生担当大臣は、文言の修正をしたのは自分の判断だとしたうえで、次のように説明しました。

山本地方創生相
「広域的とか、わたしが決めたのですから、わたしに聞いていただきたい。
最終的に広域的に限られていることは、獣医師会等の議論を踏まえてわたしが最終的に決断して(去年)11月9日の特区諮問会議の結論になったわけであります。」

山本大臣は修正の理由について、「諮問会議の有識者の意見を受けたことに加え、獣医師の増加を懸念する獣医師会の要請に配慮したもので、他の地域を排除する意図はなかったとしています。
しかし、同じく手を挙げていた京都府と京都産業大学の中には、異なる受け止めをした人もいました。

京都府 畜産センター 上村浩一所長
「この辺一帯を、獣医学部を設置する予定地と当時は考えておりました。」

新設に向けた提案を中心となって作成した京都府の職員、上村浩一さんです。上村さんは、提案を採用してもらおうと入念に準備を進めてきました。
内閣府に出した提案書です。iPS細胞を使った再生医療など、最新技術を持った獣医師を育てるとしていました。

そこに立ちはだかったのが、新たに追加された条件だったといいます。同じ関西地域には、すでに別の獣医系の学科がありました。

京都府 畜産センター 上村浩一所長
「新たな規制を出したということ、それに対する条件が合わないというのが京都府であると。」

京都府と共同で新設を目指していた京都産業大学。提案の作成に関わった松本耕三元教授は、選考のプロセスに納得できないといいます。

京都産業大学 松本耕三元教授
「広域的にないところ、まさに後出しジャンケンでそういうことされたら、それは負けますわね。(京都は選定の)テーブルには乗っていないでしょうね。」

 

リポート:荒川真帆(社会部)

 

加計学園の選定は公平に進められたのか。NHKは新たな文書を入手しました。
去年10月21日、萩生田官房副長官が文部科学省の局長と面会し、官邸や内閣府の考えを伝えた発言をまとめたとするものです。「広域的に」という文言が手書きで加えられたのと同じ時期です。

この文書はNHKの取材で、文部科学省の少なくとも3つの部署のおよそ10人の職員が共有していたことが分かっています。この時期は、事業者が加計学園に決まる3か月前。まだ獣医学部の新設さえ決まっていないころでした。しかし、文書にはこのときすでに「加計学園」という名前が挙げられていました。そして、開学の時期まで区切り、文部科学省に早く進めるよう迫る内容が記述されていました。

“内閣府や総理補佐官と話した。総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた。工期は24か月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。”

“補佐官からは、農水省は了解しているのに文科省だけがおじけづいている。何が問題なのか、整理してよく話を聞いてほしいと言われた。官邸は絶対やると言っている。”

獣医学部の新設には、生命科学など新たな分野に対応できる獣医師の養成など、4つの条件が閣議決定されていました。文部科学省は、加計学園がこの条件を満たしていないと見ていました。
文書には、萩生田官房副長官が今治市のある四国で条件をクリアするための具体的なアドバイスをしたと記されていました。そして、萩生田官房副長官は加計学園の事務局長を文部科学省の課長に会いに行かせると伝えたと記されています。
文部科学省は文書に書かれていたとおりの動きをします。6日後、担当者が加計学園の事務局長と省内で会っていたことが取材で分かりました。

NHKが入手した別の文書です。加計学園に対して文部科学省が、獣医学部の新設が決まる直前に、条件をクリアするための課題について具体的に伝えていたことも分かりました。
文書を保管していた文部科学省の職員は、加計学園ありきの指示だと受け止め、本来、文部科学省として慎重に精査すべき手続きが行われなかったと語りました。

文部科学省 現役職員
「おかしいというふうに思っていても、それに従わざるを得ないところがありますし。本来決めるべき(条件の審査の)ステップを踏まないで押し切ったというところはやっぱりあるんじゃないかと思います。」

萩生田官房副長官 “新文書”への回答

今回明らかになった、萩生田官房副長官の発言をまとめたとされる新たな文書について、萩生田官房副長官はNHKの取材に対し、先ほど文書で次のように回答しました。

“加計学園に関連して、総理からいかなる指示も受けたことはありません。具体的に総理から開学時期について指示があったとは聞いていませんし、私のほうからも、文部科学省に対して指示をしていません。
官房副長官という立場上、この時期に開催されていた国家戦略特区諮問会議の関連で、文部科学省を含む各省からさまざまな説明を受け、そのつど気付きの点をコメントすることはありますが、私は基本的に報告を受ける立場であり、私のほうから具体的な指示や調整を行うことはありません。加計学園に力を貸すために、和泉補佐官や関係省庁と具体的な調整を行うとか、指示を出すことはありえません。”

(加計学園の事務局長を文部科学省に行かせるとする記述について)

“事務局長という方と、本件やほかの件でもやり取りしたことはございませんし、お名前も存じ上げておりません。したがって、私から文部科学省へ行かせると発言した事実はありません。
なお、今回の件では、心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じています。”

加計学園“新文書” 意味するものは

大河内直人(NHK記者)
原聖樹(NHK記者)

今回の文書は、獣医学部新設が決まる前のやり取りをまとめたと見られる。萩生田官房副長官は内容については心当たりがないとしているが、どんな経緯で記されたものなのか?

大河内記者:この文書ですが、去年10月21日、萩生田官房副長官が文科省の局長と会ったときに、文科省の職員がその発言を記録したというものなんです。NHKの取材では、この文書は少なくとも3つの部署で、10人近くがパソコンなどで保管していたことが分かっています。

文部科学省は先週、追加調査で14の文書の存在を確認しているが、なぜ新たにこうした文書が見つかった?

大河内記者:この追加調査ですが、個人のパソコンについては任意の調査だったんです。提出するかどうかは職員の判断に任されていました。このため、まだ公開されていない文書が残されていたわけです。

もう1つNHKが入手したメールでは、文部科学省のOBが獣医学部の新設に向けた発言をしたと記載されていた。実際にそうした発言をしていたのか?

大河内記者:文部科学省OBの豊田氏ですが、取材に対して「詳しい内容は覚えていない」としていましたが、面会した事実は認めています。このメールについても複数の職員で共有され、保管されていました。

国家戦略特区での加計学園の獣医学部新設について、内閣府・文部科学省・今治市とさまざまな機関が出てくるが、どんな構図で特区の選定に関わっている?

原記者:かなり分かりにくいと思うので、ちょっと大胆に説明します。

民事訴訟を想像していただきたいんですが、今回、今治市、規制緩和を求める自治体、これはいわば訴えを起こす原告になるんですね。その弁護士役を務めるのが内閣府になります。内閣府のもとには全国各地からいろんな規制緩和の要望があり、その中で勝てそうなものを内閣府が選ぶんです。今回であれば、今治が勝てると内閣府は判断したわけです。その場合に、訴えられる側、これは規制官庁、今回の場合では文部科学省になるわけです。その両方のやり取りを聞いて、最終的に決定を下すのが国家戦略特区諮問会議、ここで安倍総理大臣が議長を務めているわけなんですね。
通常の裁判とちょっと違うのは、ここで多くの場合、諮問会議が決定を下すというよりも、この前段階、内閣府と規制官庁の間で和解が成立するんです。今回の場合でも、例えば「広域的に」という文言を入れることで、双方が折り合って、この文言だったら獣医学部設置してもいいということが、国家戦略特区の会議で内閣府の山本大臣と松野大臣を含んだ3大臣が出席した中で決まっているんです。

獣医学部新設 選定は適切だったか

諮問会議のメンバーからは、選定のプロセスについて一点の曇りもないという発言が出ているが、これはどういうこと?

原記者:すべての決定の過程が議事録が残っている上に、オープンにインターネット上でされていると。すべての場所に必要な人が出席して、意思決定をしている中において、間違いが起きるはずがないということなんですね。
さらに先ほど「広域的」という文言もありましたが、有識者の方々は記者会見で、われわれが獣医師会や、規制を緩和したくない文科省に譲歩してなんとか認めてもらうために入れた文言であって、なんらかの変な形で入ったわけではなく、われわれのサジェスチョンで山本大臣が決定したのだと。ですからそこに違法性はない、政府もこうしたプロセスを踏んでることから、手続きが適正に行われていて違法性もないと強調しているわけなんです。

大河内記者:今の議論、この透明性というのは確保されていると思います。ただ今回の獣医学部をめぐっては、内閣府と文科省は水面下で交渉を繰り返していました。今回の文書は、先週存在が確認された文書と同様に、そうした水面下での交渉が記録された文書の1つなんです。選定にあたっては、公平性・透明性が保たれたかどうかということは、こうした省庁間の交渉も含めて、検証する必要があるのではないでしょうか。

この加計学園の獣医学部新設について、安倍総理大臣は先ほど記者会見で、次のように述べました。

波紋広がる特区制度 安倍首相は?

安倍首相
「専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。そうした時代のニーズに応える規制改革は、『行政をゆがめる』のではなく『ゆがんだ行政をただす』ものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感を持って進めることは、まさに総理大臣としての私の意志であります。
文書の問題をめぐって対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては率直に反省しなければならないと考えています。国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては今後ともわかりやすく説明していく、その努力を積み重ねていく考えであります。」

加計学園“新文書” 政権への影響は?

この問題、今後の政権運営にはどんな影響がある?

原記者:少なからず影響はあると思います。安倍総理大臣は「安倍一強」ともいわれ、高い内閣支持率に支えられて、さまざまな政策を推進してきてるんですね。今日(19日)、安倍総理大臣がみずからの国会答弁にも言及しながら反省のことばを述べたのは、各種世論調査で、内閣支持率が急落していることに対する危機感の表れだと思います。
今週23日には東京都議会議員選挙も告示されますので、そうしたことへの影響を懸念する声も政府・与党内に出ているんです。内閣支持率が回復しなければ、政策の推進力、政権の勢いというものも影響が出ることが予想されますので、安倍総理大臣としては今後、いかに政権の浮揚を図っていくのか、これが課題になると思います。
一方、野党側は、今回の問題をめぐって、証人喚問や閉会中審査を求めています。このとき与党側は、世論の動向なども見極めながら今後の対応を慎重に検討していくものと見られます。

波紋広がる特区選定 専門家の見解は?

鎌倉:改めて、規制緩和を大胆に進めるという国家戦略特区、現在、全国10の地域が指定されていて、医療や農業など、さまざまな分野で規制緩和が進められています。そうした中で、公平性や透明性への疑問を生じさせている今回の事態。立場の異なる2人の専門家に、特区選定のプロセスと、制度の意義について聞きました。
まず、国家戦略特区の選定などに当たる諮問会議の民間議員の八田達夫さん。諮問会議での議論においては、公平性や透明性に問題はなかったとしています。

(今回のプロセスは?)

アジア成長研究所 八田達夫所長(諮問会議 民間議員)
「(諮問会議の)議事録をご覧になれば明らか。どこを選ぶか、ひいきするなんてない。公平性は完全に保たれていると思います。」

(どう見る? 国家戦略特区)

「理由のない規制が山ほどある。そして規制の多くが参入規制なんです。国家戦略特区の特質は、総理が議長をする(諮問)会議で、毎月一度開かれて方向性を示す。各省庁に対してリーダーシップを発揮できる制度。私はこれは業界と結びついた各省庁の抵抗を打ち破るには唯一の方法だと思う。これからもこういう機能を強めていかなければいけないと思います。」

鎌倉:一方で、国家戦略特区の制度に慎重な立場を取る、立命館大学教授の高橋伸彰さんは、特区選定のプロセスには、検証すべき点は多いと指摘しています。

(今回のプロセスは?)

立命館大学 高橋伸彰教授
「今の政策の進め方は、どうしても実現したいということが前のめりになっていて、効果だけを強調しがちで、本来の政策が持っているさまざまな弊害についてはなんら議論がされていない。」

(どう見る? 国家戦略特区)

「規制を撤廃するならば、規制がどういう効果を生むかだけではなくて、その規制を撤廃することによって、どういう弊害が出てくるかをあわせて議論しなければいけない。単にそこに規制があるから、そこに穴を開ければそれによって経済成長が実現するという見方は短絡的な見方だと思います。」

波紋広がる特区選定 その課題は?

特区制度による規制緩和、どうあるべき?

原記者:国家戦略特区を利用した規制緩和、これは少子高齢化が進んで過疎化が進む地方の活性化に向けた切り札と、安倍政権は位置づけているんです。スピーディーに規制緩和を進めることで、地方自治体が生き生きとできることをやっていけるようにしたいという思いからなんです。ただ、今回の加計学園の問題で、国民から疑念を持たれてしまったわけです。
安倍総理大臣自身、今日の記者会見で、国家戦略特区の重要性を強調する一方、「信なくば立たず」ということばも述べています。国民の疑念が払拭できなければ、非常にたけている政策も傷ついてしまいますので、まずこの公平・公正なプロセスというのをより高めていく努力、より国民の疑念を招かれないような努力というのが必要だと思います。
さらに、一連の今回の国会審議では、公文書の有無や、捨ててしまったりということも問題になり、多くの時間が国会審議の中で費やされました。ですから公文書の管理の在り方、これは行政をスピーディーに進めるためには、なんでもかんでも残すということになると、遅滞や、話したいことも話せなくなるという問題も当然あるんですけれども、そういう中で、国民に疑念を持たれない公文書管理の在り方、これはやはり政府は模索していく必要があるのではと思います。

今後のこの問題についての焦点は?

大河内記者:今回の問題の本質ですが、選定のプロセス、これが恣意的に行われていたかどうかということです。文科省と内閣府の水面下の交渉の経緯を示す文書について、これは2つの省庁の間で見解が食い違ったままなんです。専門家からは、真相解明するためには第三者による調査を求める意見も出ています。
もう1つ注目したいのは、加計学園の獣医学部が実際に開学できるかどうかです。特区では確かに新設が認められましたが、開学には文部科学省の諮問会議で認可される必要があるんです。教員の数や学生の定員、それに教育内容というのが新しい獣医学部にふさわしいものなのかどうか審査が続いていて、8月末に結論が出されます。引き続き取材したいと思います。

長年続いた規制や制度を一気に変えるためには、国民の政治への信頼が欠かせません。公平性、透明性が求められるのはもちろん、疑念が生じたのであれば、政府には納得のいく説明を尽くしてほしいと思います。