クローズアップ現代

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2017年5月31日(水)
人類のピンチ!? 天体衝突を回避せよ

人類のピンチ!? 天体衝突を回避せよ

今月、地球への天体衝突の可能性や影響などを議論する国際会議が東京で開催された。最も注目を集めたのは、小惑星の接近を想定し、衝突回避の方法をシミュレーションするプログラム。爆破や引力を利用した軌道修正など、SFのような最新技術が検討された。地球への衝突が懸念される天体は1万6千。しかも毎日5個のペースで増え続けている。かつて、地球上に君臨した恐竜を絶滅させた天体衝突。もし今、再び起きれば、人類は存亡の危機に立たされる。はたして天体衝突は回避出来るのか?研究の最前線に迫る。

出演者

  • 吉川真さん (JAXA宇宙科学研究所・准教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

地球に接近!? 天体衝突の脅威

その脅威はある日、突然やって来ます。隕石の衝突です。

NASA ポール・チョーダス博士
「今日、地球に接近する小天体が見つかりました。今から10年後に衝突する危険があります。」

「2017PDC」と名付けられた小天体が、なんと10年後地球に落下する可能性がある!?
しかも!

NASA ポール・チョーダス博士
「東京近郊に落下する可能性があります。」

詳しくは後ほどにして、とにかく、ひとたび起きれば地球規模での被害をもたらしかねない天体衝突。今、警戒が必要な小天体が次々と見つかっています。その数、なんと16,000。

天体衝突の脅威に立ち向かうすべはあるのか。最新の報告です。

迫り来る小天体! 人類はその時どうする?

東京・お台場にある、日本科学未来館。今月(5月)、NASAをはじめとする各国を代表する研究機関の専門家たちが集まり、ある会議が行われました。それが…。

NASA ポール・チョーダス博士
「今日、地球に接近する小天体が見つかりました。」

冒頭で紹介した、一場面。実は、架空の天体衝突を想定したものだったのです。この会議、その名も「地球防衛会議」です。

田中:今回の会議には、世界24か国、およそ200人の研究者が参加しています。皆さん、活発に議論されていますね。
天体衝突は現実に起きるのでしょうか?

ドイツ航空宇宙センター 研究者
「天体衝突は必ず起きます。実際に4年前、ロシアで起きています。小さな隕石でしたが、街に深刻な被害を与えました。」

欧州宇宙機関 研究者
「天体衝突は現実の脅威です。そうでなければ、ここには来ません。甚大な被害につながつので、前もって準備しておく必要があるのです。」

地球に衝突する可能性のある小天体。その多くは、火星と木星の間からやって来ます。
数十万個の小惑星が漂うエリア。木星や火星の引力の影響などで軌道が変化することで、地球に接近してくるのです。
4年前のロシア。大きさ、十数メートルの小天体が中部のチェリャビンスク近郊に落下。1,500人以上がけがをし、7,400の建物が被害を受けました。
さらに先月(4月)、全長650メートルほどの小天体が、地球からわずか180万キロにまで接近。宇宙の距離感で言えば、かなりのニアミスでした。
また、世界各地に見られるクレーター。その多くは、天体衝突の痕跡です。現在、確認されているだけでも170以上。地球は、天体衝突の危険に絶えず、さらされているのです。
こうした中、危険な小天体をあらかじめ見つけようという取り組みが世界中の天文台で行われています。その1つが、ハワイにあります。ハレアカラ天文台です。口径1.8メートルの大型望遠鏡を使い、2008年から地球に迫り来る天体がないか、監視を専門に行っています。
この写真の中に、警戒すべき小天体が見つかりました。16分置きに撮影した複数の写真を連続再生してみると、1つだけ移動している天体があります。

こうして動いて見えるものが、地球のそばにある小天体。2015年10月に発見され、その20日後、地球からわずか50万キロの距離を通過していきました。
こうした観測の結果、実は地球のそばには警戒すべき小天体がたくさんあることが分かってきました。今や、分かっているだけで16,000に上っています。観測施設の増加や技術の向上によって、まだまだ増えると考えられています。

ハワイ大学 リチャード・ウェインスコート博士
「90年代初めまで、小天体はほとんど見つかっていませんでした。その後、アメリカ議会が天体衝突は警戒すべき、自然災害だと予算をつけたことで観測が本格化したのです。注意が必要な小天体は、まだまだ、たくさん潜んでいると考えています。」

こうした状況を踏まえ、今回の地球防衛会議で行われたのが、架空の小天体の接近を想定したシミュレーションです。架空の小天体のプロフィールは、直径は100から250メートル。10年後、日本近海から北大西洋のどこかに落ちる可能性があるとされました。
研究者たちは、小天体の組成の分析や、衝突した時の衝撃の予測、そして衝突回避の方法の検討など、いくつかのグループに分かれて、さまざまな角度から対策を話し合います。
こちらは、衝撃予測グループ。

過去の天体衝突の被害などから推定していきます。
参考データの1つが、この映像。

1908年、シベリアで起きた天体衝突直後の様子です。木々が爆風で、なぎ倒されています。その数、8,000万本。東京都に匹敵する範囲に及びました。
今回、想定する天体のサイズは、この2倍から4倍。都市を丸ごと破壊する威力を持つと試算されました。
落下地点などの情報は、日々少しずつ更新されていきます。3日目のこの日は、落下予測地点が絞られたことが発表されました。

NASA ポール・チョーダス博士
「東京近郊に落下する可能性があります。」

それを受け、市民への情報伝達を検討していたグループの議論が紛糾します。

「すぐ市民に避難を呼びかけるべきでしょう。」

「いや、まだ落下が決まったわけではない。混乱が起きてしまう。」

「確信がないと市民を動かせません。まだ100%の確信はありません。」

一般の人には、現実的な危機として捉えられていない天体衝突。パニックを起こさせないように情報を伝達する方法が課題として浮かび上がってきました。そんな中、ひときわ白熱していたのが、衝突の回避を検討するグループです。

「核爆弾なら破壊できるのでは。」

「それはダメだ。破壊したら、破片が地球に落下する可能性がある。」

田中:迫り来る小天体に、研究者たちはどう対応するのか?結末は、また後ほど!

人類と地球のピンチ! 天体衝突の脅威

ゲスト 吉川真さん(JAXA宇宙科学研究所・准教授)

今回の会議で日本の窓口を務めたJAXA宇宙科学研究所の吉川さん、議論が白熱していましたが、この会議、どういったことを目的としたものだったのか?

吉川さん:天体の地球衝突という、起こったらとんでもない事態になりますけれども、それについて最新情報を交換した上で、どのような対策をとったらいいかと、それを世界中の専門家が集まって議論することが目的でした。

まさに、SFでも何でもなく、真剣に議論しなければならないことだということなんですね。実際に会議を取材してきた田中キャスターは、どんなことを感じたんでしょうか?

田中:私が取材した方は、アメリカ、ドイツ、タイなど、世界各地から会議に来ていまして、それだけ多くの国の人たちが天体衝突という同じ問題意識を共有していることに驚きました。そもそも、この会議が始まるきっかけとなった出来事があるんです。それが、1994年に起きた、木星への天体衝突です。こちらが、その実際の映像です。白く丸で囲んだ部分に注目して下さい。今、明るくなりましたよね。これが、人類が初めてリアルタイムで観測した大規模な天体衝突の瞬間でした。

これをきっかけに、地球でも同様の衝突が起こるのではないかと考えられるようになり、世界中の天文台で観測が行われることになりました。その結果、地球の軌道と重なる可能性がある小天体が16,000も見つかりました。こうした観測が進む中で、研究者たちが対策を考える地球防衛会議が始まったんです。

地球のそばに16,000個の小天体が発見されている。これは、大丈夫なのか?

吉川さん:今、発見されている、この16,000個については、軌道が計算されてまして、今後数十年ないし、100年ぐらいは地球にぶつからないということが確認されています。
(ということは、ほかにも危険なものがまだある可能性がある?)
実は、その通りでして、まだまだ見つかっていなくて、地球に接近、あるいは衝突し得る天体がたくさんあります。

気になるのは、その衝突の被害。4年前のロシアでは、多くの建物が被害を受けて、けが人もたくさん出た。また、恐竜を絶滅させたのも隕石の衝突が原因ではないかと見られている。天体衝突によって、どれぐらいの被害が、どれぐらいの頻度で起きると考えられている?

吉川さん:まず、恐竜絶滅については、大きさが10キロメートルぐらいの小惑星がぶつかっただろうと言われているんですが、この場合には、頻度は小さくて恐らく1億年に1回程度ということになります。ですが、小さい天体、例えばロシアに落ちたチェリャビンスク隕石は、大きさが20メートルもないぐらいの小さなものなんですけれども、これは数が多くて、推定で1,000万個ぐらいはあるんじゃないかと。まだ、ほんのちょっとしか見つかっていないですから、そういった天体を探すことが重要になります。
(これは、どれぐらいの頻度で落ちてくる可能性がある?)
この場合は、数十年に1回とか100年に1回とか、落ちる可能性があります。

そして今回、会議で想定されたのは、直径が100メートルから250メートルクラス。これは、どのぐらいの頻度で、どのぐらいの被害をもたらすと考えられる?

吉川さん:この場合は、もし仮に東京に落ちたとすると、関東地方ぐらいが被害を受けてしまいますし、かなり大きなことになります。頻度的には、数千年に1回ぐらいじゃないかなと思いますけれども、よく分からないところですね。

では、今回の地球防衛会議で想定された、小天体衝突を回避する方法は見いだせたのでしょうか?

天体衝突を回避せよ! 最新科学 驚きのアイデア

衝突回避の方法。真っ先に挙がったのは、このアイデアです。

「小型の爆弾を使うのはどうでしょうか?軍の力を借りなければならないので、機密事項も多くなってしまいますが、小天体の軌道を変えられるかもしれません。」

今、最も現実的だと考えられているのが、人工物を小天体にぶつけることで破壊したり、軌道を変えたりする「衝突方式」です。
2005年、NASAは小天体へ、「インパクター」と呼ばれる人工物を命中させることに成功しています。こうした技術を応用すれば実行可能な対策だと考えているのです。しかし、衝突方式に反対する意見が出されました。

「私は破壊には反対です。どれくらいの破片が発生するか分かりませんからね。」

砕けた破片は制御できないため、やはり地球に衝突する恐れがあるというのです。そこで、提案されたのが…。

「スロープッシュという方法もあるかもしれません。」

スロープッシュ。もっと緩やかに軌道を変えるやり方です。その1つが「けん引方式」というもの。まず、小天体の近くに探査機を送り込みます。すると、小天体と探査機の間には引力が働きます。その後、探査機を操作することで、少しずつ小天体を引っ張り、衝突軌道からそらすというのです。

さらにNASAは、もっとユニークなスロープッシュのアイデアを検討しています。それは、探査機を使い、小天体に特殊な塗料を吹きかけるという方法です。一体なぜ、これで軌道を変えられるのでしょうか。
小天体は、太陽の周りを回りながら、同時に自転もしています。太陽によって温められた面が影に入ると熱が放射されますが、これがわずかな力となって、天体の軌道に影響しています。小天体に色をつけることで、熱の吸収率を変えれば、軌道を変化させられると考えているのです。これらの方法は、衝突方式のように破片を出すことはありませんが、軌道を変えるためには、数10年単位の長い時間が必要となります。

「今回は、けん引方式のようなスロープッシュは難しいかもしれません。落下まで、あまり時間がありませんから。」

「スロープッシュと衝突方式、両方試してみては。」

「予算が想像もつかないな。」

ここで5日間の議論は終了。どのような衝突回避の方法にたどりついたのでしょうか。

「衝突方式を試そうという結論に至りました。」

小天体の地球到達まで時間が限られている今回の条件では、破片のリスクは取ってでも衝突方式がベストとされたのです。

迫り来る小天体! 人類はその時どうする?

衝突方式が最終的な結論とされたが、これは、どの程度現実的な選択肢なのか?

吉川さん:今のところ、衝突方式が一番現実的なんですが、ただ条件があって、相手の小惑星の大きさが100メートルか、せいぜい数百メートル。要するに小さい。それから、もう1つは衝突までの時間が10年以上はあるという、そういう条件がありますね。その場合には、探査機、宇宙船を小惑星にぶつけることによって、軌道を微妙にそらすという方法が非常に有効になっています。
(ただ、小天体が大きくて、時間がないという場合には、この方式はどうなる?)
その場合には、この方式ですと、軌道がずれないんですね。その場合に、もっと大きなエネルギーが必要になってしまって。例えば、核エネルギーを使うとか、そういったことが検討はされています。

一方、けん引方式や塗料を塗るというユニークな方式もあったが、これはどの程度現実的な方法なのか?

吉川さん:けん引方式というのは、万有引力を使うんですね。そのためには、非常に大きな宇宙船を作って小惑星との間の引力を強くする必要があるんですが、それでも、50年、100年という時間がかかってしまいます。それから、もう1つ、オシリス・レックスが打ち上がったというビデオがありましたけれども、これは太陽の光が小惑星の軌道にどう影響するか、それを正確に調べようというのが目的でして、これも実は、時間がかかるんですね。だから、なかなか短時間で軌道をそらすには難しいと思います。

ただ、そういった探査機を打ち上げて研究は始まったということなんですね。
このほか、情報伝達など、別のグループでも議論があったが、そのほかの課題としてはどういうことが議論された?

吉川さん:まず、一般の人にどう正しく情報を伝えるか、パニックを起こさないようにするか、あるいは国際協力で、どのようにやっていくか。そういうところで、今は国連で随分議論が進んでいます。

実際に、国連でそういったことが具体的に議論されているということなんですね。

田中:天体衝突に対して、各国ではどのような対策がとられているのか、まとめました。アメリカでは、年間50億円もの予算をNASAなどに投じて、地球に接近する危険な小惑星の発見や監視に取り組んでいます。また、ヨーロッパでは、EUの支援を受け、大学や民間企業などが連携し、国の垣根を超えたネットワークが作られています。一方、日本ではヨーロッパなどと比べますと、予算が少ないのが現状です。そんな中、JAXAでは今、ユニークな対策技術を開発中。このような家庭用の望遠鏡を持っている一般の天文ファンを巻き込むことで、警戒すべき小天体を見つけようという試みです。

研究しているのは、JAXAの柳沢俊史さんです。

JAXA 柳沢俊史研究員
「1枚の画像では見えていないような、非常に暗い天体を検出できる手法になります。」

このシステムの仕組みです。望遠鏡で撮影した連続写真から画像の一部を切り出していきます。これを重ねた時、明るく見えるものがあれば、地球の近くにある小天体だということになります。こうした画像解析によって、解像度の低い望遠鏡でも小天体を見つけ出すプログラムなんです。
こちらが、試作段階で発見した小天体の画像。

今後は、日本全国に10万人いるとされる天文ファンに、このプログラムを使ってもらいたいと考えています。

JAXA 柳沢俊史研究員
「将来的には、ぜひアマチュアの方にも、我々の技術を使っていただいて、こういうNEO(小天体)の監視体制に貢献していただければと考えております。」

日本の小惑星探査というと、吉川さんが責任者を務めている「はやぶさ2」のプロジェクトがあるが、これは、小天体の衝突にどういう貢献が考えられる?

吉川さん:もともと、はやぶさというミッションがあって、探査した「イトカワ」という小惑星、まさに地球に接近する小惑星で、その素性が非常に正確に知ることができたわけで、これは衝突回避という問題に対して、非常に重要な情報源になったということになります。

天体衝突、まさに起こりうる自然災害として、私たちもしっかり認識していかなければいけません。
天体衝突を防ぐ道筋、専門家として今、どの程度の確信で見えている?

吉川さん:まず、発見する。これはもう今、順調に続いてますので、恐らく、割と近い将来には多くの危ない天体が見つかると思いますが、問題なのは、どうやって回避するか。ここは、今後の課題ということになります。
(回避するということに関しては、まだまだ課題は多い?)
はい。これからの研究が必要になります。

この研究、対策というのは、国の枠を超えて、人類的な課題として加速していかなければいけないということで、国際的な枠組み作り、協力体制を作るということも課題なのでは?

吉川さん:まさに、今回の会議でかなり議論になりました。

そこも、これから整備していく必要があるということなんですね。
この私たちの住む地球。常に、宇宙からの脅威にさらされているということに、今日は改めて驚きました。専門家の議論に任せるだけではなく、私たちも、いつか必ず、やって来る自然災害として捉えて、関心を持っていくことが必要だと感じました。