クローズアップ現代

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2017年5月10日(水)
相次ぐ“墓トラブル” ~死の準備の落とし穴~

相次ぐ“墓トラブル” ~死の準備の落とし穴~

自分が死んだ後のために、生前に墓や葬儀を準備しておく”終活”がブームになる中、「墓をあらかじめ用意しても、入れない」という“墓トラブル”が相次いでいる。墓を販売する会社が倒産し、金を支払ったのに墓が建たないケース。生前に墓を準備しておいても、孤立した高齢者が多く、墓の存在を本人以外が知らないため、結局は無縁墓地に葬られてしまうケースも。こうしたなか、自治体自ら終活サービスに乗り出し、市民が生前に希望していた墓に入れるまで見届けるところも出てきている。どうすれば“墓トラブル”から身を守れるのか、考えていく。

出演者

  • 小谷みどりさん (第一生命経済研究所 主席研究員)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

相次ぐ“墓トラブル” 終活の落とし穴

家族に迷惑をかけたくない。
頼れる家族がいない。
あなたは死後の準備いわゆる終活をしていますか?

生前に自分で墓を買ったり、葬儀の予約をしておくといった死後の準備“終活”。
終活ビジネスの市場は、今や1兆円規模に拡大しています。
背景には、家族に頼ることができない1人暮らしの高齢者が増えている現実があります。
しかし、思わぬ落とし穴が…。
生前から墓を用意していたにもかかわらず、そこに入れない事態が相次いでいるのです。
認知症などが理由で、墓を買っていても周囲が知らず、終活がむだになるケースも。
そうした場合、身元不明の遺骨と一緒に、無縁墓地に葬られることになるのです。

今や、亡くなる人の4割が行っているという終活。
その陰で、相次ぐ墓トラブルの実態に迫ります。

相次ぐ“墓トラブル” 終活の落とし穴

鎌倉:今、終活が広がっている中で、生前にお墓を買う人が増えています。
人気なのが、家族に代わって、お寺が供養してくれる永代供養の納骨堂や、家族以外の人と一緒に入り、値段も安い共同墓です。
後継ぎがいない人や、家族には迷惑をかけたくないという人が、生前にこういったお墓を買っているんです。

しかし、墓があるにもかかわらず、自治体の無縁墓地に送られてしまう遺骨が増えているんです。

“墓があっても入れない” 増える“無縁遺骨”

横須賀市役所の一角にある倉庫。
ここに墓に入ることができず、行き場を失った遺骨が次々に運ばれてきます。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「病院で亡くなった、家で亡くなった、みとられて亡くなった。
(身元が分かる)一般市民の方が9割以上。」

亡くなった人の名前や住所はほぼ分かっていますが、墓がどこにあるのか確認できないのです。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「お墓がどこにあるか、戸籍謄本や住民票には書いていない。
そういったところに書いてあれば、多少違うだろうけど。」

こうした遺骨の管理を任されている福祉部の課長、北見さんです。
遺族を探し出し、遺骨を引き取ってもらおうとしています。
病院で亡くなった70代の男性のケース。
妻はすでに亡くなっていて、しかもどこに納骨されたのか確認ができません。
故郷にいる妹と連絡が取れ、両親の墓があることが分かりました。
しかし…。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「本当だったらお墓がないわけではないけど、いわゆる墓守(後継ぎ)がいないから、そこのお墓に入れることも容易ではないと。
墓守確保しないと、そのお墓にも入れない。」

“墓守”、つまり墓の手入れをする後継ぎがいない場合、墓は元の更地に戻す“墓じまい”をしなければなりません。
先祖代々の墓があっても、新たに入ることができない場合があるのです。
墓が見つからなかった遺骨は、市が管理する納骨堂に移されます。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「今は満杯です。
ほぼ満杯。」

300の遺骨を収容できますが、3年で埋まってしまいます。
納骨堂がいっぱいになると、遺骨はさらに別の場所へ。
遺骨は骨つぼから出され、袋にまとめられます。
骨つぼからよく見つかるのが、預金通帳です。
北見さんは、こうして亡くなった人たちの中には、生前、死後の備えをしていた人たちも少なくないのではないかと感じています。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「残高が50万円入っている。
『せめて自分の葬儀、これで出してくれないか』と思って貯めていたかもしれないと思うわけですよ。」

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「御位はいが入ってましたね。」

中には、先祖を大切にしてきたことが分かる遺品も出てきます。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「多分(亡くなった方の)お父さんの御位はいですよね。
こんなに大事に持ってるのに、何とかできなかったのかなと思います。」

最終的に遺骨がたどりつくのは、市の無縁墓地。
自治体が特定の宗教を選ぶことはできないため、供養は一切行われていません。
人生の最後を1人で迎えることになった人たち。
その人たちが望んだ形ではない葬り方をしなければならないことに、北見さんはやりきれない思いを抱えています。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「納骨堂に持って行く、そこから引きずり出す、穴にまく。
そういうことを本当にやってよかったのか。
本当にそこが切ないですよね。」

終活をしても… 相次ぐ“墓トラブル”

ゲスト 小谷みどりさん(第一生命経済研究所 主席研究員)

墓があっても入れないという実態。なぜ広がっているのか?

小谷さん:生前に自分でお墓を準備をしていたとしても、周りの人が、その方の死後、そのお墓がどこにあるのかを知らないというケースもあります。
それから亡くなったあと、誰かが遺骨をそのお墓まで運ばなきゃいけないわけですよね。
その誰かがいない。
家族がいなくて、遺骨をお墓まで運んでくれる人がいないというケースなんかもあります。
ですから、これは家族がいない人だけの問題ではなくて、家族がいても、今、核家族化が進んでいますから、遠くに離れた子どもたちは分からないということなんかもあるんですね。
誰にでも起きうるケースだと思います。

鎌倉:準備していたのに、希望のお墓に入れない、確かに切ない思いがいたします。
こういった引き取り手がなく、自治体が管理する遺骨、急増しているんです。
神奈川県では、調査で把握できた遺骨の数は、この10年で1.7倍に増えていることが分かりました。

背景の1つは、終活を巡るトラブルなんです。
例えば、認知症などが原因で、終活がむだになってしまうケース、本人が終活をしていても、誰もお墓の場所などを確認できず、お墓が見つからないというケース、多発しているんです。
それから終活を行う業者の破綻が相次いでいます。
大手スーパーの参入などによって、競争が激しくなり、低価格化が進んでいます。
このため、倒産する業者も出始め、準備したお墓に入れない人も出てきているんです。

相次ぐ“墓トラブル” 死後の準備の落とし穴

終活ブームの陰で相次ぐトラブル。
墓も例外ではありません。
去年(2016年)11月、後継ぎがいなくても入れる墓を売りにしていた会社が倒産しました。
負債総額は、およそ7億円。
生前に自分用の墓を購入していた人など、被害者は200人を超えています。

「何のスペースだった?」

ビルの所有者
「ここは営業部。」

もともとは先祖代々の墓を販売していたこの会社。
終活ブームに乗って、新たな霊園の開発にも手を広げ、倒産したとき会社の預金は僅か4万円でした。

ビルの所有者
「(社員が)最初は35人ぐらい。
最後やめる時には4人ぐらい。」

先月(4月)下旬、倒産した会社の債権者集会が行われました。
会社側は“先払いしてもらった墓の代金は返せない”と繰り返すばかりでした。

被害者
「経営の悪化って、(負債が)7億ぐらいあるでしょ。
何でこんなにできるの?」

被害者
「私は客として信用して、お墓を買ったんですよね。」

被害者
「これ結果的に全く、お金が戻ってくる余地はないと。
我々としたら、どうするんですか。」

終活中の人たちを襲った墓トラブル。
背景には何があったのか。
倒産した会社が墓を販売していた霊園です。

「会社倒産により、皆様にご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ございませんと。」

もともと会社が扱っていた先祖代々の墓は、核家族化などによって売り上げが減少。
会社は終活ブームに目を付け、後継ぎがいなくても入れる共同墓を建設しました。
寺が家族に代わって永代供養をしてくれると宣伝。
しかし、そうした終活ビジネスも価格競争が激しくなり、業績は悪化の一途をたどったと見られています。
この会社で働いていた男性が、匿名を条件に取材に応じました。
手っとり早く売り上げを増やしたかった会社は、墓の完成前に客から全額を先払いさせるよう指示していたといいます。

墓の販売会社 元社員
「契約と同時にできれば、全額入金してもらえるように。
お客さんたちには申し訳なくて。
もしお客さんの立場だったら、だまされたという気分はありますね。」

倒産した会社から墓を買った夫婦です。
先祖から受け継いだ墓がなく、自分たちのために必要だったといいます。
給料をやりくりして、なんとか墓の代金180万円を支払いました。

墓を購入した人
「一括で。
サラリーマン家庭ではもう…。」

墓を購入した人
「ちょっと奮発して。」

しかし、工事は一向に始まらず、何度問い合わせてもはぐらかされるだけでした。
そして突然、会社から一方的に倒産の知らせを突きつけられたのです。

墓を購入した人
「裏切られた気持ちでいっぱいで、こんなことが本当にあるのかな。」

墓は、自分たちのためだけに準備したものではありませんでした。
墓に一緒に入るはずだった娘の遺骨。
1歳で亡くなってから、5年間ずっと手元に置いてきました。
夫婦はもう一度、終活をやり直す気分にはなれないといいます。

墓を購入した人
「まさか、お墓屋さんが倒産するとは思ってなかったので。
せっかく主人が頑張って稼いでくれたお金で、こんな結果になってしまって、本当に今は(お墓を)建てるのも気力がなくなってしまった。
すぐに建てる気がなくて、どうしたらいいのか。」

“終活トラブル”巻き込まれないために

鎌倉:終活トラブルの中には、死後の不安につけ込む悪質なケースもあります。
会員の葬儀や納骨などを行うNPOが、預かっていた預金通帳から1,800万円を無断で引き出していたことが発覚。
そのお金、なんとNPOの幹部が車の購入や、自宅の修繕などに使っていたというんです。

業者の破綻や使い込みまで起きているが、こうしたトラブルに巻き込まれないためには、どうすればいいのか?

小谷さん:1つ目は、自分がどういうお葬式がいいとか、お墓がいいって思うのであれば、家族や周りの方に言っておくっていうことが一番大事だと思います。
周りの人が知らなければ、結局、いくら準備をしても、自分のことは自分でできないわけですよね。
それから2つ目が、元気なうちに自分の死後のことを考える方が多いんですけれども、亡くなるまでにまだ時間がたくさんあるわけです。
自分を取り巻く家族の環境も変わったりしますし、それから選択肢もどんどん増えてきます。
世の中の人の価値観もどんどん変わってくるんですね。
ですから、焦らないということです。

一括でお金を払うような契約をした人もいたが?

小谷さん:お金を払ってしまっても、あとでやっぱり気が変わってしまったというときに、返金してもらえないというようなトラブルなんかもあります。
ですから、お金を払う前に、まず自分はこういうことをしたいんだっていうことを、周りの人に相談をするということが一番大事だと思います。

業者側には、どんな問題があるのか?

小谷さん:例えば、自分の死後、遺体を大学の解剖などで献体をするというようなことがあります。
献体というのは、自分の生前の意思でないと受け付けないわけですけれども、大学では受け付けのときに、亡くなる本人と、そして亡くなったことを病院に知らせる、ご遺族、メッセンジャーとしての誰かを同席させないと、申し込みを受け付けないということがあります。
ですから、こういう業者も生前に契約をするのであれば、その方が亡くなったときに、誰がその業者に知らせるのか、その人、立ち会いのもとで契約をするっていうことが大事だと思います。
(今、そういうことはされてる?)
されてないんですね。

鎌倉:今回、NHKネットクラブで終活についてアンケートを行ったところ、1,280人から回答が得られました。
“納骨してくれる人がいない場合、どんなサービスが必要ですか”と、自由記述で答えを求めたところ、最も多かったのが、“なんらかの形で永代供養をしてほしい”というものでした。
また、“誰にサービスをしてほしいか”という点で見ていきますと、国や自治体という、公的なサービスを求める声が多くあったんです。
例えば、“供養、納骨、一括して公的な団体に頼みたい”。
“有償の公共サービスにしてもいいと思う”。
“悪徳業者もあるので、行政が監視の目を光らせてほしい”。
こういった声があったんです。

こうした中、横須賀市では、1人暮らしの高齢者の終活支援に全国でいち早く取り組んでいます。

自治体が乗り出した “終活サービス”

行き場のない遺骨の管理に頭を痛めていた横須賀市。
今、自治体でも珍しい終活サービスに乗り出しています。
生前に墓などの希望を聞き取るこの取り組み。
これまでに200人以上が相談に訪れています。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「(実家の)お墓には入れないですか?」

相談に訪れた70代男性
「行き来してませんので。」

この日、相談に訪れた70代の男性。
実家の墓には入れないため、寺の共同墓で供養してほしいといいます。

相談に訪れた70代男性
「人生も長い。
いつどんなことがあるか分からない。
20万円で(墓に)入れるなら、僕はそっちの方を求めたい。」

一般的に終活サービスの利用者は、直接、葬儀社などと墓や納骨について契約を結び、生前に支払いを済ませます。
しかし、利用者が亡くなった際、その情報が業者に届かず、その結果、希望の墓に入れないトラブルが避けられませんでした。
そこで横須賀市は、利用者と業者の橋渡しをするサービスに乗り出しました。
市が利用者から墓などの希望を聞き取り、代金を葬儀社に支払います。
利用者が死亡すると、市が速やかに葬儀社に知らせ、納骨されるまで市が見届ける仕組みです。
この日、市に終活サービスを申し込んでいた人の遺骨が、生前希望していた墓に納められることになりました。
亡くなったのは、介護施設で暮らしていた80代の女性です。
先に亡くなった夫の遺骨と一緒に墓に入れてほしいと希望していました。
子どもがいない夫婦が選んだのは、永代供養をしてもらえる寺の納骨堂でした。

「これでご夫婦ですね。」

高齢化率が全国平均を大幅に上回る横須賀市。
終活を支えるための模索が続いています。

横須賀市 福祉部 北見万幸課長
「終活をして生前契約をしても、誰が運ぶのか、誰が手続きするのか。
行政が一緒にタイアップすれば、取り組むことができると思います。」

理想の“終活”とは 安心して死を迎えるために

こうした取り組みがあると安心という人も多いと思うが、自治体がここまでやるべきことなのか、という点については?

小谷さん:神奈川県の大和市でももう始まっていますし、千葉市でもこの7月から始まるんです。
今まで、日本というのは、人が亡くなったあとは、家族や子々孫々で面倒を見ましょう、というスキームだったんです。
お葬式やお墓は公衆衛生の観点だったんです。
つまり、日本ではゆりかごから墓場までではなかったんです。
福祉というのは、揺りかごから亡くなるまでだったんです。
ところが、一人一人の生き方の観点から見れば、家族がいる、いないにかかわらず、みんながやっぱり安心して死んでいける社会を目指すということが、これからの社会の在り方だと思うんです。
そういう意味でいえば、行政が、どんな人も無縁死させないという工夫というのは大事だと思います。
外国でも葬式税というのを取って、すべての人が平等に、お葬式が出せる国なんかもあります。

こういう取り組みをしている自治体はまだまだ少ない。自分を見送ってくれる人を探すのもなかなかつらい、遠慮してしまう、見つからないという人もいると思うが?

小谷さん:死んだあとのことは迷惑かけたくないっていう方ってすごく多いんです。
でも自分のことは自分でできないんです、亡くなったあとは。
ですから、絶対にどんな人も人に手間をかけるんです。
手間を迷惑と思わせない環境を気付くということが大事です。
それは死後、やってくれる相手は子どもであるとは限りません。
近所の人でもかまいませんし、こうした行政サービスを利用しても構わないと思いますし、それから地域で見守りサービスをやっているようなところもあります。
ですから、やっぱり、なんらかの託せる人を見つけるということは、とても大事なことだと思います。

安心して老後を過ごすためにも、終活はどうあるべきなのか?

小谷さん:終活というのは、単に、お葬式やお墓の準備をするっていうことではないんですね。
むしろ、自分の死後を安心して託せる人を見つけるっていう意味で、私は終活というのは、縁作りではないのかなって思います。
近所の方でも家族でも、やっぱり自分が死後、この人に託せるんだっていう安心感があれば、自分の死後の不安、死の不安というのは、少し軽減されるんではないのかなと思います。
(そうすると、残された人生もそれだけ安心して豊かに暮らせるということになりますね)
どんだけ死後のことを考えても、自分ではできないんです。
それはもう、どんな人も限界があります。
ですから、その手間を誰に託すのか、それを考えることが終活ではないかなと思います。

終活は、この世のつながりを清算するとか、断ち切る準備と考えがちだが、そうではなくて最後に誰かとつながると?

小谷さん:残された時間、誰とつながるかというのを考えるのが終活ではないかなと思います。

それはそれで、一つの有意義な時間の過ごし方ですね。
自分の死後、迷惑をかけたくない、安心をお金で買いたい、その切実な思いは、本当によく分かります。
ただその前に、もう一度、自分の思いを託せる人がいないかということも考えてみたいと思います。