クローズアップ現代

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2017年5月9日(火)
がんや認知症も!? コワ~い“男の更年期障害”

がんや認知症も!? コワ~い“男の更年期障害”

「疲れがとれない」「やる気がでない」「イライラする」…、今そんな症状に襲われる中高年の男性が増えているという。実はこれら、男性ホルモン「テストステロン」の減少がもたらす「更年期障害」が疑われる症状。最新の研究では潜在患者600万人。深刻なケースでは「認知症」「うつ」「心臓病」などを引き起こすこともある「現代病」であることが分かってきた。働き盛りの男性を襲う意外なピンチ、その克服の処方箋に迫る。

出演者

  • 堀江重郎さん (順天堂大学 教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

がんや認知症の恐れも!? コワ〜い“男の更年期障害”

連休明けなのに疲れが取れない、イライラする。
中高年男性の皆さん、それ、更年期障害のサインかもしれません。

心と体にさまざまな不調が現れる更年期障害。
最近、この症状に悩まされ病院を訪ねる男性が増えています。
原因は、生活習慣やストレスによって、男性ホルモンの分泌が低下すること。
最新の研究から、放置すれば、心筋梗塞や脳卒中、認知症などのリスクが高まることも分かってきました。
一体、どんな人が要注意なのか。
どうすれば、男性ホルモンは回復するのか。

働き盛りの中高年を襲う、更年期障害。
解決の処方箋を探ります。

謎の疲労・不調が増殖中 コワ〜い“男の更年期障害”

中高年の男性たちは、どんな症状に悩まされているのか。
番組では、疲労や不調に悩まされているという40代から60代の中高年を募集。
男性医学の専門家に、不調の原因を探ってもらいました。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「男性ホルモン、テストステロンと言うんですが、これが毎日の体調に関係するというのが、最近分かってまいりました。」

こんな症状が見られる人は要注意。

症状1「寝起きが悪い」。
精密機械メーカーで働く、長野史裕さん、47歳です。

2年ほど前から寝起きが悪くなり、目が覚めても、体がすぐに動かなくなったといいます。

長野史裕さん(47)
「朝、いま6時に起きてますけれども、体が動き出すのは、7時ぐらいまでずっと体が動かない感じで。
ボーっとしていますね、1時間ぐらいは。」

症状2「大量の発汗」。
長野さんの体の不調は出勤中にも。
暑いと感じていないのに大量の汗をかくようになったのです。

長野史裕さん
「普通に立っているだけで、ダラダラって垂れてきて、何滴もポタポタ落ちている状態。」

症状3「意欲の低下」。
こちらは飲食店で働く、三浦輝正さん、45歳です。

40代になってから、何をするにもやる気が出ず、休日も外出するのがおっくうになってきたといいます。

三浦輝正さん
「何かをこれからやろうという意欲の部分を、全部で100あるとするなら40ぐらいじゃないかな。」

どうです?
中高年の皆さん、心当たりはありませんか?
こうした不調、男性ホルモンと関係あるんでしょうか。
参加者たちの唾液からテストステロンという男性ホルモンの値を測ってみると。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「男性ホルモン、低いんです。
男性ホルモンの値でいうと低め。
ちょっと、男性ホルモンが低い。」

通常、テストステロンの値は100以下だと低い傾向にあるといわれています。
今回、13人中11人でそれを下回りました。
なぜテストステロンの値が低いと、心や体の不調をもたらすのでしょうか。
テストステロンは脳からの指令によって主に精巣で作られます。
筋肉や骨を作ったり性機能を維持する働きがある、いわば男らしさを象徴するホルモンです。
しかしこれが減少すると、筋力の低下、不眠、発汗性機能の低下など、身体的な不調をもたらします。
また認知機能にも関係しているため、減少すると、やる気が出ない、イライラするといった感情面でも影響が出てくるのです。
さらに最近の研究では、中高年を取り巻く環境の変化もテストステロンを減少させることが分かってきました。
例えば、寝起きの悪さに悩んでいた長野さん。
13人の参加者の中で、テストステロンの値が最も低い結果でした。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「仕事は、プレッシャーがいつもある?」

長野史裕さん
「自分の中では(プレッシャーは)そこそこありますね、きついので。」

堀江先生が指摘したのは、仕事のストレス。
実は、過度なストレスはテストステロンの分泌にとって大敵なのです。
精密機械メーカーに勤務する長野さん。
10年前に管理職となって以来、部下とのつきあい方や責任の大きさにプレッシャーを感じることが増えたといいます。

長野史裕さん
「自分が入社したときの課長たちより、いろいろ求められている。
今は『早く帰れ』とか『有給取りなさい』とか、そういう管理までしなきゃいけない。
ストレスは年々多くなってきているというのはありますね。」

テストステロンを下げる原因はほかにもあります。
意欲の低下に悩む、三浦輝正さん。
不規則な生活に要因があると指摘されました。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「シフトワーカーと言いますけど、決まった時に睡眠がとれないと男性ホルモンは減ることが多いんです。」

もともと証券会社で営業の仕事をしていた三浦さん。
しかし、13年前会社が経営破綻。
今は夕方から夜にかけて、飲食店でアルバイトをしています。

三浦輝正さん
「これからコンビニのアルバイトになります。」

さらに週3日、コンビニの夜勤バイトを掛け持ちしています。
テストステロンは、日中よりも夜、寝ている間に分泌量が増えます。
不規則な生活によって睡眠のリズムが崩れると、十分に分泌されなくなるのです。
さらに堀江先生が指摘したのは、三浦さんの交友関係です。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「仲間とかいらっしゃいますか?」

三浦輝正さん
「仕事関係なく相談できる親友とか友だちというのは少ない。」
皆無に等しいかもしれない。

実はテストステロンは、人と接する機会が多い人ほど高いと言われています。

三浦輝正さん
「44歳で離婚しましたから、本当に熟年離婚ですね。」

1年前に離婚して以来、1人で暮らす三浦さん。
こうした家庭環境も影響していると見られるのです。

三浦輝正さん
「4〜5日ぐらい疲れが取れないんですよね。
何をやっていいか分からない。」

あなたは大丈夫? “男の更年期障害”

ゲスト 堀江重郎さん(順天堂大学 教授)

私も少し思い当たる節があるが、男性の更年期障害、実際はどれくらい広がっている?

堀江さん:更年期というと、やはり女性の更年期障害がよく知られていますけれども、実は、この男性の更年期障害も、日本では大体600万人ぐらいいるということが分かってきています。

正式な病名は?

堀江さん:男性更年期障害の非常に大きな原因としては、男性ホルモンであるテストステロンが減少する「テストステロン減少症」というふうに言います。
あるいは、医学の言葉で「LOH症候群」とも言います。

なかなか自覚している人は少ないと思うが?

堀江さん:女性の場合は、閉経という大きなライフイベント、その時に女性ホルモンが下がってきますので、その前後に、すべての女性が大なり小なり何らかの症状を感じるということがよく知られているんですが、男性の場合は、一部の方がなるということと、これまでは何となく年のせいであるとか、年齢的なものとか、そういうことで、あまり意識されない、あるいは自分でもなかなか症状が気付きにくいということがありました。

ストレスや働き方といった、社会的な環境が影響している?

堀江さん:実は、このテストステロン、男性ホルモンというのは、男性の体を作るのに必要なホルモンなんですが、もう1つ重要なことには、社会性のホルモンです。
社会の中で自分を主張するとか、チャレンジするとか、あるいは競争する、そういった時にこのホルモンが分泌されますし、また、このホルモンがないと、社会の中でうまく参画できなくなると、そういったことが最近分かってきました。
(まさに現代病と?)
やっぱり労働環境が最近厳しくなってきていますので、実はそういった中で、この男性更年期障害が注目されていると思います。

田中:侮れない男性更年期障害。
こんな心当たりがあったら要注意です。
「最近笑っていない」。
「新聞が読めなくなった」。
「よく眠れない」。
「メタボ気味」。
これらは、男性ホルモン低下の典型的なサインでもあると言われています。
年のせいと放っておくと、症状が悪化してしまう場合があります。

「新聞が読めなくなった」というのは、どういうこと?

堀江さん:新聞を読むというのは、小さい活字を見て、それをインプットして理解するという、かなり高度な知的機能を使うと思うんです。
テストステロン、男性ホルモンは、この認知機能に深く関わっていますから、男性ホルモンが減ってしまうと、こういった新聞を読むということが結構しんどくなってくるというふうに感じています。
あるいはメタボ。
男性ホルモンは筋肉を作って、同時に脂肪を小さくするという作用があるんです。
ですから、男性ホルモンが減ってきますと、筋肉が減って、その分、今度は脂肪が増えてきて、ちょっとぽっちゃりしてくると。
こういったメタボ傾向になりやすいということになります。

田中:さらに最新の研究から、男性ホルモンの低下がより深刻な病と関係していることも分かってきています。
テストステロンは血管を拡張し、血液の流れをよくする働きがあります。
これが減少しますと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、狭心症、脳卒中といった命に関わる病気のリスクが高まるといわれているんです。
さらにテストステロンは、記憶をつかさどる脳の海馬を活性化させる働きもあるため、減少すると、記憶や認知機能が低下し、認知症につながる恐れもあるんです。

深刻な病気と関連しているケースもある?

堀江さん:今ありましたように、生活習慣病に関係する非常に重い病気、そういったリスクを上げるということで、例えば、がんも当てはまります。
日本人では前立腺がんが男性がかかるがんとして一番多いんですけど、男性ホルモンが低い方は、非常に悪性度が高い前立腺がんが起こりやすいということも分かっています。
より深刻な病気になりやすいということだと思います。

田中:心当たりがあると思った方は、病院の泌尿器科や、最近では男性更年期クリニックも開設されているので、まずはそちらを受診してください。
著しくテストステロンの低下が見られる場合、テストステロンを筋肉注射によって補充する治療が行われます。
治療は2週間から4週間に1度。
保険が適用され、費用は1回2,000円から5,000円。
ほかにも症状に合わせて飲み薬や漢方薬、サプリメントが処方されます。
中には、塗り薬もあるんです。
著しくテストステロンの値が低かった、この男性。
半年間治療を受けたことで、仕事への意欲が向上したといいます。

治療を受けた50代の男性
「やる気なんかも全体的に出て、ビジネス的にもすごくアップグレードできている。」

こうして病院で治療が必要になるというのは、どういう場合?

堀江さん:医療機関におきましては、採血をして、血液中のテストステロン濃度を測って、濃度が低い方、プラス今いろんな症状で困っている場合に治療を考えます。
大きく分けて、ご自身の男性ホルモンの分泌を高める治療、これは生活指導であるとか、あるいはお薬の治療があります。
もう1つは、テストステロンの濃度がかなり低くて、やはり症状も深刻な方には、このテストステロンの補充療法を考えるんですが、例えば今、前立腺がんがあるとか、あるいは前立腺肥大症が大きいとか、これからお子さんを作ろうというような方には、こういう男性ホルモンの補充療法は適用にはならないです。
そういったケースの場合には、やはり専門医にご相談してほしいと思います。

治療するまでもないが、何となく調子が悪いという方は、どういうふうにしていけばいい?

堀江さん:例えば、今日はちょっとめげたなという時は、実は男性ホルモンが下がっていたりとか、今日は何か達成したという時には、男性ホルモンが上がったりするんです。
そういった、ちょっとした意識や行動が、男性ホルモンを変えることができるんです。

では、その普段の生活で、どうしたら男性ホルモンを高めることができるのか。
男性ホルモンの測定会に参加していただいた方々に、堀江さんからのアドバイスを実践していただきました。

こんなに簡単!? “男の更年期障害”克服法

テストステロンをアップさせる方法、その1「適度な運動」。
長野さんが勧められたのは通勤の際、駅までの道のりを、いつもより早く歩くこと。
運動をすることでテストステロンが筋肉で消費され、さらなる分泌が促されます。
ホルモンの消費と分泌を繰り返すことで、より分泌されやすい体質になるというのです。
ポイントは無理をしないこと。
普段、体を動かさない人にとって、過度な運動はストレスにつながる可能性があるからです。
方法、その2「キャッチボール」。
このアドバイスを受けたのは椙山勇さん、51歳。

順天堂大学医学部 堀江重郎教授
「息子さんとキャッチボールやるとかね。
これは結構元気がでますよ。」

脳からの指令によって分泌されるテストステロン。
ポジティブな刺激を脳に与えることが効果的だといいます。
キャッチボールは運動をしながら、楽しかった子ども時代の記憶がよみがえる一石二鳥の方法なのです。
ところが…。

椙山勇さん(51)
「(息子は)大学生だし、キャッチボールするような年でもないし、(アドバイスに)どう答えたらいいか困っちゃったんですけど。」

そうですよね。
お子さんも大きくなって、相手をしてくれないという人も多いはず。
でも大丈夫。
先生からのアドバイスはもう1つ。
奥さん、出番ですよ。
方法、その3「夫婦で腕を組んで歩く」。

「奥さまと腕を組んで歩いてほしいんです。」

妻 あかねさん(51)
「腕ですか?
いや、かなり難しいですね。」

ふだん、味わうことが少ない、ワクワクやドキドキといった感情。
こうした感情も脳を刺激します。
そこで堀江先生が勧めたのが、奥さんと腕を組んで外出することなんです。

椙山勇さん
「とりあえず、手をつないでいきますか。」

最初はてれていた2人ですが…。

椙山勇さん
「せっかくなので、たまには、こういうふうに。」

妻 あかねさん
「ひじの高さが合わないんですよね。」

腕を組んで体を密着させた方が、より効果的なんだそうです。

妻 あかねさん
「こういうことひとつでも効果がみられるのであれば、継続してやっていきたいと思います。」

椙山勇さん
「お願いする立場ですから。
よろしくお願いします。」

妻 あかねさん
「こちらこそ。」

コンビニの夜勤で働き、不規則な生活が悩みだった三浦さん。
睡眠の質を高めるため、温かいミルクを飲んでリラックスするようにアドバイスされました。
さらに、意外な場所にテストステロンを上げる方法は隠されています。
やって来たのは、スナック。
堀江先生に勧められたのは、カラオケ。

ポイントは人前で歌うことです。
社会参加や自己実現ができている人ほど高いと言われるテストステロン。
誰かに褒めてもらったり、認めてもらうことで、その値は上昇するのです。
ただし、アルコールの取り過ぎは逆効果。
三浦さん、飲みすぎ注意ですよ。

あなたは大丈夫? “男の更年期障害”

田中:テストステロンをアップさせる方法はほかにも。
ポイントは、自分の居場所を確認できたり、リラックスしたりすることによって、脳や交感神経を活性化させることです。

測定会に参加された3人の方に、4日間、ご自身の無理のない範囲で実践していただいたところ、長野さんと椙山さんは数値が上昇。
カラオケでいったん数値が上がった三浦さんは少し下がるという結果になりました。

腕を組むとか、カラオケで男性ホルモンが上がるというのは驚いたが、お3方の結果をどういうふうに見る?

堀江さん:3人の方に、いろいろな研究結果に基づいたことを試していただいて、それぞれの方が男性ホルモンが上がってきたということを実感されたと思うんです。
三浦さんの場合には、カラオケは調子がよかったんですけども、やはり前の日に3時間ぐらいしか寝れなかったということで、この4日後、ちょっと下がっているというふうに見えますが、男性ホルモンは、実は朝高くて、夕方減って、寝てる間にまた回復するんです。
ですから、しっかり眠るということが、実は大切です。
また、もし眠る時間が少ない方であれば、そういう場合には、深く眠るような、眠る前にストレッチをするとか、ゆっくりお風呂に入るとか、そういった工夫も必要かと思います。

そうは言っても、本当に大きなストレスにさらされる年代でもあるが、健やかに過ごすために、また、男性ホルモンを高めるためには、どういうことが大切?

堀江さん:男性、はつらつとして生活していくというのは、やっぱり社会の中で、何かしら貢献できるということだと思うんです。
これは会社であるとか、組織であるとか、あるいは趣味の場であるとか、地域コミュニティーとか、友達とか、いろんな場があると思うんですけど、やっぱり他人と触れ合っている中で自分を主張できる、そういった場を見つけていく、あるいは小さなことでも何か与えていく。
小さなボランティアとか、親切とか、いろんなことがあると思うんですけど、そういったことを意識することによって、テストステロンがぐっと上がることが、はつらつさに関係するんじゃないかなと思っています。

視聴者の方より:「男性ホルモンと薄毛の関係が知りたいです」

堀江さん:男性ホルモンそのものが直接、薄毛に関係するわけではないんです。
もし、そうだとすると、一番男性ホルモンが高い大学生の時に、みんな薄毛になっているわけなんですが、これは男性ホルモンが、実は頭皮にある酵素によって変化しまして、悪玉のホルモンになるんです。
これが、毛が抜ける原因になります。
現在は、この悪玉ホルモンに変化させる酵素を抑える薬が、育毛剤として利用されています。

ということは、抜け毛が気になる方も、男性ホルモンは増やした方がいいということになるわけですね。
先ほどのお話、やっぱり受け身ではなく、ポジティブに、周りの方に影響を何らかの形で与えながら、人とのつながりを大事にしながら過ごすということなんですね。
今日は本当に、私も中高年の1人として、身につまされるような思いがいたしました。
男の更年期障害をもたらす厳しいストレスなどから完全に逃れるということは難しいと思いますけども、それでも、まずは身近なところから、できることを始めてみようと思いました。