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2017年4月12日(水)
若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン

若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン

安心と利便性を売りに急拡大している銀行カードローン。貸付残高はこの5年で60%増の5兆4377億円。しかし高金利や返済能力を超えた過剰融資で自己破産に陥る人も急増。日弁連は「多重債務問題の再燃だ」とする意見書を提出し、金融庁も調査に乗り出している。銀行と消費者金融がタッグを組んだカードローンビジネスの意外な実態や、カードローンの収益に頼らざるを得ない銀行の苦悩に迫る。

出演者

  • 宇都宮健児さん (弁護士)
  • 飯田泰之さん (明治大学准教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

お手軽・安心の陰で… 銀行カードローン破産!?

売りは手軽さと安心。
実際に利用されている方も多いのではないでしょうか。
でも、その使い方大丈夫ですか?

今、テレビやインターネットで銀行カードローンの広告を目にすることが多いですよね。
手続きは30分。
銀行だから安心。
こうした、うたい文句で利用者を急速に増やしています。
貸出金額は、この5年で一気に伸び、5兆円以上に達しています。
しかし今、安心なはずの銀行カードローンで借入額が膨れ上がり、返済に苦しむ人も増えているのです。
取材を進めると、高い利ざやを求め、カードローンビジネスにのめり込んでいく銀行の実態が見えてきました。

今や誰にでも身近な存在になった、銀行カードローン。
その裏側に隠された事実に迫ります。

「銀行だから安心」? カードローンの落とし穴

地方都市に暮らす、50代のシングルマザーです。
銀行カードローンで多重債務に陥り、去年(2016年)、自己破産しました。

「どれくらいの借り入れがあったか、教えていただけますか?」

50代 女性
「これが50万円。
こちらが2冊で130万円。
4社ですね、合計すると250万円くらい。」

女性の年収は200万円。
4つの銀行から借りたカードローンの総額は、それを大幅に上回っていました。
7年前に銀行カードローンを利用し始めた女性。
きっかけは、夫との離婚。
引っ越し代などの急な出費をパート収入だけでは、まかなえませんでした。
その時、テレビのCMで見たのが地元銀行のカードローンでした。

50代 女性
「消費者金融っていうのは、金利が高いとか取り立てが怖いとか、怖いイメージがあったんですけれど、銀行は怖いイメージがなかったんですね。」

銀行窓口で免許証を提示し、年収を申告。
それだけで、専用のカードと通帳を渡されました。
そのカードを使って、銀行ATMから借入金を引き出す仕組みです。
これが実際の契約内容の確認書。
50万円を利率14.8%で借り毎月1万円ずつ返済する契約でした。

女性の通帳には、毎月きちんと返済していた記録が残っています。
しかし、その半分以上が利息の支払いに充てられ、返済はなかなか終わりませんでした。
4年後、息子が高校に進学すると、学費の支払いに苦しむようになります。
女性は別の銀行から100万円を借金。
すると、意外なことが起きます。

50代 女性
「その3か月後ぐらいに、また貸してくれるっていうダイレクトメールが来て、一番最初の銀行も完済していないし、無理だろうなと思ったんですけど、ダメ元で申し込んだら、30万円、借りられたんです。」

銀行からの誘いもあり、女性は次々と借金。
借入総額は、年収を超える額まで膨れ上がっていきます。
働き始めた息子の給料も銀行への返済に充てましたが、借入金を減らすことはできませんでした。
そして去年、自己破産の申し立てを行いました。

50代 女性
「サラ金から借りてないとか、自分で自分を納得させてたけど、まさに現実、何百万って借金をずっと抱えていたんですね。
ある意味、マヒしていたと思います。」

今、この女性のように、銀行カードローンで返済能力を超える借金を背負ってしまう人が増えています。

「どのくらい借りてる?」

「278万円なんですね。」

利用者は、どんな目的でお金を借りているのか。
ある調査では、娯楽や生活費に加え、事故や入院などの医療費。
さらには、子どもの教育費などに使われていることが分かります。

一方、日弁連による調査では、年収の3倍以上、収入がない人に170万円といった、銀行による過剰融資の実例が浮かび上がっています。

全国ヤミ金融・悪質金融対策会議 宇都宮健児代表幹事
「気が付いたらこれだけ残高が残っていたということですかね。」

便利さと安心が売りの銀行カードローンに潜むリスク。
長年、多重債務問題に取り組んできた、宇都宮健児さんは警鐘を鳴らしています。

全国ヤミ金融・悪質金融対策会議 宇都宮健児代表幹事
「銀行のカードローンによって多重債務に陥る、返済困難に陥る人が現実的に増えてきている。
事例を集めて問題提起をしていくことが必要。」

銀行?消費者金融? 意外なローンのカラクリ

なぜ銀行は過剰な融資を行うのでしょうか。
利用者が返済不能になれば銀行にも損失が出るはずです。
その事情に詳しい人物が取材に応じました。
かつて消費者金融に勤めていた男性です。

男性によると、銀行による過剰融資の背景に、消費者金融の存在があるというのです。
実は、銀行カードローンビジネスは多くの場合、銀行単体ではなく、消費者金融とタッグを組んでいるのです。
消費者金融は、利用者にどれだけ貸せるかを審査。
銀行は、そのノウハウを消費者金融に頼っているといいます。

元消費者金融社員
「A、B、Cさんがいて、A、B、Cさん全てが同じ人間かというと違うわけで、当然、返済能力も違いますし、これを推測するには、それなりのデータがないとダメです。
こういう審査というのは、銀行さんでは出来ません。」

審査を請け負う消費者金融は、もし利用者が返済不能になった場合、銀行の損失額を全額保証します。
そのため、銀行は一切損をしない仕組みなのです。
一方、消費者金融も、銀行から多額の手数料を受け取れるため、たとえ一部の利用者が返済不能になっても、全体として、もうけは維持できるといいます。

元消費者金融社員
「銀行さんという、ひとつの大きな冠をいただいた、その裏で消費者金融が保証して。
それは大きいですよね、消費者金融としては。
今まで取り込めなかったお客さまが、自分たちのお客さまになってくれる可能性があるということですから。」

お手軽・安心の陰で… 銀行カードローン破産!?

ゲスト 宇都宮健児(弁護士)
ゲスト 飯田泰之(明治大学准教授)

田中:実は今回の銀行カードローンの問題。
今から10年以上前の、消費者金融問題と深くつながっているんです。
当時、消費者金融による3K。
これは、高金利、過剰な貸出、過酷な取り立てのことですが、これが社会問題化しました。
そこで2006年、貸金業法が改正され、利用者の年収の3分の1を超える融資を禁じる、総量規制などが導入されたんです。
ただ、このとき問題視されたのは、消費者金融だったため、銀行に規制をかけることはありませんでした。
その後、法律の狙いどおり、消費者金融からの貸出は減っていきます。
一方、銀行カードローンは膨れ上がって、2015年には、消費者金融からの貸出を上回りました。
そして去年、13年間減り続けてきた自己破産者の数が再び増加。
この背景には、銀行カードローンの急拡大があると指摘する声もあるんです。

かつての消費者金融の問題が、銀行カードローンによって再び起きているというようにも見えるが?

宇都宮さん:2006年当時は、こういう状態が起こると、われわれ、全く予測できなかったんですけど、ところが最近の自己破産が増加に転じたというのは、多重債務者がそれだけ増えているという証しだと思いますし、その原因は、やっぱり銀行のカードローン、貸金業の総量規制の適用のないカードローンの過剰融資が大きな原因になっていると思っています。
弁護士の相談事例も、そういうケースが見受けられますので、日弁連は国に対して、銀行の適切な審査体制の確立、それから銀行にも総量規制をかぶせるべきではないかと、こういう提言をしているところです。

国の規制改革推進委員として、銀行の実態にも詳しい飯田さん。
この問題の背景、どう見ている?

飯田さん:もともとの数字を確認すると、10年前に比べまして、消費者金融会社の貸付が10兆円減少して、そして、銀行系のカードローンが2兆円増加したということですので、この消費者向けの無担保での貸出、マーケット自体はかなり小さくなっているんです。
そして、銀行系カードローンが増えている背景としましては、やはりもともと、そういった急場の資金が必要であると。
また、公的な機関はもちろん、ちょっと知り合いにも言いにくいような理由でお金が必要になるということは誰しもあるんですね。
そういった需要を銀行が拾っていっているという状態なわけなんですが、そういった、ある程度リスクがある人、その人たちの金融の窓口というのを塞がないために、これからこの消費者金融というのが、どういう形で変容していくのか、どういう姿を目指していくのか、そういった問題を考える曲がり角には来ていると思います。
(銀行カードローンも含めた、消費者向けの融資?)
金融サービス自体が、どういう方向性を目指すのか。
今、ある意味、制度をしっかりと決めていくべき時期になってるんじゃないでしょうか。

田中:確かに借入が簡単な銀行カードローン。
実際、どんな落とし穴があるのか、専門家に聞いてきました。

ホントに借りて大丈夫? 銀行カードローン

経済ジャーナリストの荻原博子さんです。
銀行カードローンを利用する際は、金利の高さを理解しておくべきだといいます。

田中:3%ぐらいからと書いてある所も目にするんですけれども、実際はそんなことはないんですか?

経済ジャーナリスト 荻原博子さん
「3%もあるんですけど、それはものすごく大きな額を借りるとか、すぐに返済するとか、大体カードローンって、借りるとなると、10%から15%の間ぐらいになっちゃいますよね。」

さらに、荻原さんが警鐘を鳴らすのが、リボルビング方式による返済。
いくら借りたとしても、返済額は毎月同じ、定額方式です。
例えば、50万円借りて、毎月1万円を返すとすると。

経済ジャーナリスト 荻原博子さん
「この赤いほうは、利息。」

トータルの返済は、思わぬ高額。
しかも、さらなる落とし穴があるといいます。

経済ジャーナリスト 荻原博子さん
「(借りた50万円)は、1万円ずつ払っていけばいいわけですよね。
ところが、またお金が足りない状況が出てくる。
そうすると、もう1枚カードを作って、それで、ぼんとお金を借りて、いろんな所にお金を払って、でも自分は、そこのカードは1万円ずつ。
ですから、気が付いたときに、実はものすごい金額を借金しているという雪だるま式に借金が増えていっちゃう可能性があるんですね。」

こうしてリスクも多い銀行カードローンなんですが、これが拡大していく中で、現場では銀行本来の役割を果たしていないのではないかと、疑問を持つ当事者もいるんです。

なぜここまで拡大? カードローンに頼る銀行

カードローンビジネスへの傾斜を強める銀行。
その中で何が起こっているのでしょうか。
地方銀行で働いていた元銀行マンが取材に応じました。
地元企業に融資し、地域経済を発展させたいと考えていた男性。
しかし、銀行内で奨励されたのはカードローンなど、個人向け融資だったといいます。

「これはどういうものなんですか?」

元銀行員
「消費者ローンの獲得キャンペーンがあって、それで銀行内上位に入ると表彰される。」

「これはいくらくらいの金額?」

元銀行員
「僕個人で数千万円だと思いますけど。
とにかく若い銀行員は消費者ローンの案件をどれだけ取ってくるかが、その人の評価の基準の大きな柱になっている。」

この男性は、顧客の預金口座から、お金に困っていそうな人を割り出し、電話営業をかけたといいます。
一方、新たに事業を興そうとする人に融資しようとしても審査はほとんど通りませんでした。

元銀行員
「本当にもう忸怩(じくじ)たる思いでした。
(経営者が)ビジョンをしっかり持っていたりとか、数字に対する感覚がかなりしっかりしている人でも、(その企業に)担保はあるのか、保証人はどの程度か、必ず裏付けがないと融資出来ない。
リスクをとって企業を支援するというようなメンタリティ自体が銀行にない。」

別の銀行では、利用者の審査を行う消費者金融などの保証会社に過剰な要求をしていた実態も浮かび上がってきました。
保証会社で銀行カードローンの審査業務を行っていた女性です。
いくつもの銀行が、カードローンの利用者を1人でも多く審査で通してほしいと要求してきたといいます。

元保証会社社員
「絶対返せないだろう、おそらく返せないだろうというお客さまに対しても、この人をオッケー、可決にしてほしいというような銀行からの個別の圧力等もありまして、その可決率を上げられないのであれば、他の保証会社を利用すると言われていた。」

なぜここまで拡大? カードローンに頼る銀行

田中:程度の差はありますが、複数の関係者から取材した結果、多くの銀行がカードローンを収益の柱に据えていることが分かりました。
実際、銀行の決算などから消費者ローンが収益に占める割合を試算してみますと、ある大手の銀行では収益の半分、別の地方銀行では2割を占めるという結果になりました。
背景にあるのが、マイナス金利に象徴される超低金利政策です。
銀行の収益の1つの柱だった国債の運用は、利回りの低下で大きく落ち込んでいます。
また、企業への融資も、資金の需要が低迷している上、金利が低く、利ざやがほとんど稼げません。
その結果、貸出先別に見ますと、多くの業種で貸出残高が伸び悩んでいる一方で、カードローンが急拡大しているんです。

銀行も低金利のもと、大変厳しい状況にあるということは十分理解もできるが、本来の銀行の在り方としてはどうなのか?

飯田さん:もちろん、すべての銀行が同じような業務をやる必要はありません。
中には、消費者への貸出というのを収益の中核に据える銀行というのがあっても構わないんですが、しかし、そもそも金融業が利益を生むのは、リスクを取って、そのリスクをしっかりと審査する、リスクテークと審査能力、これが金融業の利益の源泉のはずです。
ところが現在、問題となっているようなタイプの銀行カードローンというのは、リスクは信用保証会社に、審査も保証会社にということですので、事実上、看板貸しに近いような業態になっている銀行というのも少なくないんですね。
これは、もともとの金融業の仕事ではなくなっています。
その意味で、もう一度リスクを取って、そのリスクを適切に審査するという金融業というのを考え直し、その結果として消費者金融、消費者への融資が中心になるならばそれもよし。
そうでないならば、そうでない貸出先というのを見つけていく必要があると思います。

田中さん、銀行側は、どう対応しようとしているんでしょうか?

田中:全国銀行協会は先月(3月)、会員の各銀行に対して、対策を要請しました。
具体的には、融資にあたっては利用者の収入などをチェックし、返済能力を正確に把握する。
過剰な借入を促すような広告や宣伝を行わないという内容です。
また、銀行を監督する金融庁は、私たちの取材に対して、全銀協の取り組みを見守りたい。
現段階で銀行に総量規制などを導入することは考えていないと答えています。

こうした銀行側の対応、どう見る?

宇都宮さん:私は非常に甘いと思っています。
銀行は、不適切な貸出はしないんだと、こういう性善説にのっとった対策だと思っています。
消費者保護をちゃんと考えるならば、私は銀行に対しても総量規制をかけるべきだと。
当面は、信用保証会社は消費者金融会社ですので、消費者金融の貸出と消費者金融が保証するのを合わせて年収の3分の1に抑える。
ただ、将来的には消費者の懐は1つですので、それが消費者金融から借りようが、銀行から借りようが、クレジット会社から借りようが、全体として規制する。
統一消費者信用法による規制、これがもう諸外国では一般的になされていますから、そういう規制をやるべきだと考えています。

この銀行がカードローンビジネスに頼る状況が続いた場合、日本経済全体、あるいは地域経済全体にどんな影響があると思う?

飯田さん:例えば、現在のカードローンのビジネスですと、リスクテークも審査もやっていない、この状態、現在は利益が出ていますが、これ、いずれ競争が激しくなるにつれて規制がなくても利ざやは減っていきます。
つまりは、より貸し倒れの可能性の高い人に貸すか、金利を下げるしかなくなってくる。
ですから、現在の個人向けカードローンの利益というのは、そんなに長続きする、永続するものではないんだと。
であれば、特に地方銀行であれば、地方銀行であることの強みを生かして、地域のビジネスというのを育てるという、そういった能力を早めに育てていかなければならない。
それができた銀行は残っていくでしょうし、残念ながら、それができない銀行というのは今後、その使命を終えていく運命にあるんじゃないかなと思います。
(地域社会のためにも一刻も早く、銀行本来の役割を取り戻してほしいが?)
それが地域の経済の循環を生むという方向に転換していく必要があるんじゃないかと思います。

ただ、どうしても利用せざるを得ない方、あるいは実際にもう返済に困っているという方もいらっしゃると思うが、これは、どうすればいい?

宇都宮さん:実は、全国各地にある社会福祉協議会では、生活福祉資金貸付制度というのがあるんですね。
(生活福祉資金貸付制度?)
ここでは、保証人がついていれば金利がゼロ、保証人がつかない場合は、年1.5%で借りられる。
ただ、あんまり考慮されて、使い勝手がよくないという問題があるんですけど、こういう所に相談してみるということと、どうしても、やっぱり返済困難になったら、できるだけ早く弁護士会や司法書士会、あるいは法テラス、消費者生活センターなどで相談をして、債務の整理をどうしたらいいか、早く相談されたほうがいいと思います。
(ちゅうちょせずに、相談すると?)
そうですね。
いろんな適切なアドバイスをもらえると思いますし、場合によれば、弁護士、司法書士が代理人になって、債務整理をすることも可能です。
(社会保障をきちっと充実していくということも、1つあるが?)
やはり、どうしてもこういうお金を借りたい人は、低所得者の人が多いですから、こういう金融ということでカバーするんじゃなくて、社会保障でみんなが支えていく、そういう社会にしたいと思っています。

このカードローンのリスク、私たちも教育などを通じて、しっかりと学んでいき、そして自覚していく必要があるというふうに思いました。
また同時に、銀行も本来、期待される使命をまっとうできるように、金融ビジネスに努めていってほしいというふうに思います。