クローズアップ現代

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2017年4月5日(水)
スマホで指紋が盗まれる?“映りすぎ社会”到来!

スマホで指紋が盗まれる?“映りすぎ社会”到来!

急速に進む携帯カメラの高解像度化。スマホで撮ったピース写真から指紋が盗み取られ、パソコンなどに勝手に侵入される危険があることが明らかになった。さらに解像度の高い映像から万引き犯などを瞬時に見つけ出す新たな防犯システムがスーパーなど身近な場所に広がり始め、私たちも毎日のように不審者かどうかチェックされている。想像を超えるすさまじい技術の進歩。その力を私たちの社会はコントロールしていけるのか、考える。

出演者

  • 森川亮さん (C CHANNEL社長)
  • 星周一郎さん (首都大学東京教授)
  • 武田真一・田中泉 (キャスター)

スマホ写真で指紋流出!? “映りすぎ社会”のリスク

スマホで撮ったピース写真。
あなたの大切なものが盗み取られているかもしれません。

携帯電話にカメラが付いた当初、解像度は僅か10万画素でした。
それから十数年で、画素数、なんと200倍以上に。
こうした鮮明な写真から私たちの指紋などのデータが読み取られ、悪用されるおそれがあること、皆さん、ご存じでしょうか。

そして、高精細映像を使った防犯システム。
私たちの身近な場所にも利用が広がっていました。
万引き被害に悩むスーパーやコンビニなどでは、私たちも毎日のように不審者かどうかチェックされていたのです。
画像技術のすさまじい進歩。
その便利さの陰に潜むリスクにどう向き合えばいいのか、とことん考えます。

スマホ写真で事件解明! 高精細カメラの威力

急速に進むスマホの高精細化。
それが今、犯罪捜査の現場を変えようとしています。
徳島で起きたある性犯罪事件。
容疑者の男のスマホに収められていた写真が、捜査で大きな役割を果たしたのです。
事件を担当した鑑識課の協力を得て、容疑者の行動を再現しました。
男は、スマホで被害者を撮影。
そこに決定的な証拠が写っていたといいます。

ごく普通の顔写真に見えますが、鑑識課が注目したのは、被害者の瞳でした。
当時の捜査と同じように拡大し、色や明るさを修正していくと…。

番組スタッフ
「きれいに映ってるんですね。」

まず見えたのは、容疑者の姿。

「(捜査では)髪の生え際のラインとか、『顔の細い・太い』が容疑者と酷似していた。」

そして、背後の様子から、その場所が犯行現場であることが特定できました。
容疑者、場所、時刻、そのすべてがそろったスマホ写真が動かぬ証拠となったのです。

徳島県警 鑑識課 秋山博康次長(当時)
「これは最高の証拠だなと思いました。
長年、刑事をやってきて、これほど証明力の高い証拠を見たのは初めてです。」

スマホ写真で指紋流出!? “映りすぎ社会”のリスク

一方、鮮明なスマホ写真には思わぬ落とし穴があることも明らかになってきました。

各国の政府関係者などが出席した情報技術の見本市。
ある発表が注目を集めました。

国立情報学研究所 越前功教授
「自撮り写真をSNSに公開すると、“なりすまし”の被害にあいます。」

スマホのピース写真から盗まれた指紋で生体認証が破られ、パソコンや携帯を他人に乗っ取られるリスクがあるというのです。

来場者
「とても怖い。
非常にショックです。」

来場者
「簡単に指紋が盗まれるなんて思いもしませんでした。」

スマホ写真から指紋が盗まれる?
そんなことが本当に起こりうるのでしょうか。
実際に、そのリスクを研究している越前教授に協力を依頼。
初の実験を試みることにしました。
まず、番組ディレクターをごく普通のスマホで撮影します。

国立情報学研究所 越前功教授
「顔に焦点が当たりやすい。
その横にある指にもピントが合いやすいので、指紋が盗まれやすい。」

田中キャスター
「普通ピースをするときって、顔のそばにしますよね。」

国立情報学研究所 越前功教授
「大体、皆さん(顔の)近くで撮られる。」

写真を見てみると、確かにくっきりと指紋が写っています。
この画像に加工を施して、指紋を強調。
これを基に、偽の指「偽指」を作り、パソコンなどにログインできるか試してみることにしました。
防犯上、詳しい工程は明らかにできませんが、市販の機械を使って、僅か1時間足らずで製作できました。

「これで偽の指紋『偽指』が完成しました。」

果たして、本人になりすますことはできてしまうのか。

田中キャスター
「この指紋の複製でログインできるんでしょうか。」

田中キャスター
「開きましたね…。」

国立情報学研究所 越前功教授
「カメラで撮った写真からログインできてしまうというのは今回初めて見ました。
生体情報はパスワードと違って、終生不変の情報ですので、一旦漏れてしまうと、パスワードのように変更することができない。
取り扱いに非常に大きな注意が必要。」

さらに越前教授は、より深刻なリスクについて警鐘を鳴らしています。
顔写真がSNSの投稿などと照合され、氏名、生年月日なども盗まれれば、さらに重大な犯罪の被害に遭う可能性が高まるというのです。

国立情報学研究所 越前功教授
「指紋情報にひも付いているのが私の顔であり、この顔をうまく分析すると、顔だけで、この人が誰なのか、どこに勤めているのかが分かる。
『私の情報』と『生体情報』がペアになって、とられてしまうのは非常に脅威。」

スマホ写真で指紋流出!? “映りすぎ社会”のリスク

ゲスト 森川亮さん(C CHANNEL社長)

許し難い凶悪犯罪の捜査に利用できる一方で、スマホの写真で指紋が流出するというリスクも見えてきました。
LINEなど、スマホを使った新サービスを手がけてこられた森川さん。
気軽にSNSに写真をアップする方も多いと思うんですが、IT業界では、この写り過ぎるというリスク、どのぐらい認識されていて議論されているんでしょうか?

森川さん:今のところ、指紋とか静脈を使った生体認証というのは、あまり一般的ではなく、今はまだメールアドレスとパスワードでログインするというものが中心なんですが、今後、生体認証が伸びてくると思いますので、業界としても注意が必要かなと思いました。
(今の段階では、そこまでどうするかという議論は進んでいない?)
これからの議論かなと思います。

個人情報のセキュリティーの問題 どうみる?

森川さん:前職でも、他社で漏れたIDとパスワードを使って、アカウントを乗っ取りみたいなことが起こりまして、結果的にパスワードを二重化することによって問題は解決したんですが、ただ、その分、使いにくくなったという問題が起こりまして、利用者の皆さんにもご理解が必要かなというふうに思います。
(利用者側が理解することで、より安全で使い勝手のいいものにできる?)
そうですね。
その両方のバランスが重要かなと思います。

本当にスマホでおちおち写真も撮れないような時代になってきた気がするんですが、私たちはどうすればいいんでしょうか?

田中高解像度化に伴うリスクに対する自己防衛策、取材してきました。

まず、手や指のアップの撮影は避けること。
これ、近づき過ぎると危険です。
例えばVTRで行っていた実験ですと、30センチメートルの距離から撮ったスマホ写真で指紋の複製ができてしまいました。
次に、写真を共有する際は画質を下げること。
LINEやフェイスブックでは、アップする時に自動的に画質を下げる初期設定になっているんですが、サイズの大きなオリジナル画像を扱う時は、どうぞ注意してください。
さらに、越前教授は今後の対策として、特殊な樹脂で指紋を隠す方法も開発中だということです。

高解像度化が進んでいるのは、スマホだけではありません。
街のあちこちで私たちの行動がつぶさに見られているんです。

“不審者”を瞬時に発見! 脅威の個人識別カメラ

鮮明な映像から個人の顔を識別する技術など、最新の防犯設備を集めた展覧会です。
東京オリンピックを控え、特に注目されたのが、スタジアムや空港などの群衆の中から要注意人物を瞬時に探し出せるという監視システムでした。

「ブラックリストの顔を登録して、即時に映ったものをリアルタイムで認証している。
何時何分にどのカメラの前に現れたか、全ての履歴を検索することができます。」

メーカーによれば、人工知能を組み合わせることで、事前に登録した指名手配犯だけでなく、群衆の行動を分析して、不審者を割り出すことも可能だといいます。
さらに、たとえ顔が見えなくても容疑者を見つけ出せる、全く新しいシステムの開発も進められています。
研究を担っているのは、アメリカを拠点にする識別技術の専門家、岩下友美さんです。
この日は、73階建ての超高層ビルの上から、地上にいる容疑者役の人物を特定する実験を行っていました。

地上300メートルから撮ったこの映像。
分析すると…。

NASA 岩下友美研究員
「“犯人と思われる人物”と認識された。」

通りを行き交う人の中から、容疑者役の発見に成功しました。
それにしても、一体どうやって特定したのか。
識別の決め手になっているのは、なんと人の影だといいます。

NASA 岩下友美研究員
「実は、地面の影がその人の歩き方を投影しているので、影に対して歩容(ほよう)認証を適用することで、人物認証(特定)ができる。」

人の歩く姿、歩容は一人一人異なり、その人特有の癖を把握できれば個人を特定できます。
その歩く姿を正確に反映しているのが影。
真上からの撮影で、手足や腰などの動きがほとんど見えない場合でも影ならはっきり確認できます。
映像を特殊なソフトで加工し、シルエットをくっきり浮かび上がらせ、全身の30以上の関節の動きを分析して識別していたのです。
この世界初の歩容プラス影認証を飛行船に搭載。
雑踏に紛れ込んだテロリストや、はいかいする高齢者などを素早く発見できるシステムを目指しています。

NASA 岩下友美研究員
「カメラの高解像度化が進むと、得られる画像もきれいになるので、認証性能もどんどん向上していく。
より高い所にカメラをつけて、より広範囲のセキュリティ・システムが実現できる。」

こんな身近な場所で! 最新“顔識別”カメラ

実は、こうした個人を識別する技術は、すでに私たちの身近な場所に幅広く導入されています。
深刻な万引き被害に悩むスーパーやコンビニなどの小売り業界です。

大手書店
「万引きの被害が深刻になっております。
顔認証はものすごく有効です。
顔認証カメラも、ほぼ全店舗に入れていますので、調べていくと(万引き犯が)判明します。」

大手ドラッグストア
「特に万引きについては(犯人の)映像をリアルタイムで各店舗に流す。」

万引き被害に悩み、実際に顔識別システムを導入している、ある現場を取材することができました。
大手スーパーや100円ショップなど、40の店舗が入る、駅前の商業ビルです。
館内のすべての入り口に、顔識別を行うための防犯カメラが設置されています。
システムは、どう運用されているのか。

万引き犯を見つけた場合、本人に伝えたうえでシステムに登録。
すでに200人以上がリストアップされていて、館内に入ってくると警報が作動するといいます。
番組スタッフの顔を万引き犯として登録し、実験を行いました。

「年齢や特徴をここに登録しておくと、次に反応したときに、この情報が出てくるので、すぐに(誰か)分かる。」

入り口をくぐると、すべての客はいったん顔を録画され、あらかじめ登録されている万引きをしたという人物と照合されます。
万引き犯役のスタッフが入り口に入ると、反応しました。

「万引き常習犯の入店ありました。
メガネをかけていて、グリーンのパーカーを着ています。」

「了解です。
追尾します。」

地域の警察から依頼を受け、万引き犯以外も登録しているといいます。

商業ビル顧客部門 長田泰文部長
「警察から『指名手配犯を登録しておいてほしい』という話もあるので、『指名手配犯が発報した(検知された)ときは、必ず連絡しますよ』みたいな。」

顔という個人情報を撮影する一般客に対しては掲示板などを通じて、顔認証を行っていることを通知。
録画から10日後には顔の画像を消去するなどの対応をしながら運用しているといいます。

商業ビル顧客部門 長田泰文部長
「顔認証システムを入れてから、ロス高(被害額)が半分以下に抑えることができた。
今は認証率も上がってきているし、なくてはならないシステム。」

こんな身近な場所で! 最新“顔識別”カメラ

顔識別の技術がここまで広く利用されているとは驚きでしたね。

田中取材を進めていきますと、さまざまな場所でこの顔の識別が行われている実態が見えてきました。

こちらは、大手コンビニで実際に使われているパソコンの画面です。
導入する店舗は増えているといいます。
しかし、運用を巡って心配なことも見つけました。
こちらはコンビニの店員と見られる人物によるネットの書き込みです。
“バイクを触られた腹いせに万引きリストぶち込んでやる”、“君の顔と関係ないけど、お友達の顔を登録しておこう”。
こうした、いわば腹いせ登録や、巻き添え登録ともいえる行為が次々と書き込まれているんです。
一方、深刻な万引き被害に悩む小売り業者の間では、こんな構想も検討されています。
万引き犯の情報をデータベース化して、企業の枠を超えて広く共有するというものです。
顔という個人情報を扱う、この最新技術の導入について、専門家の間では慎重な意見もあります。

加速する高解像度化 “超管理社会”への不安

新潟大学 鈴木正朝教授
「万引き犯以外のすべての顧客の顔識別情報が蓄積されるわけですから、さまざまな本人の行動履歴等を追跡できるようになりますので、極めて使い方によっては危険な情報。
かなりオーバースペック(過剰)な技術、万引きに対しては。
テロ対策だと話は別。
空港に入れるなら話は別で、この技術に対して、社会的コンセンサス(合意)を形成していく途上にある。
まさに管理社会の入り口が開いてしまう話。
極めて慎重に議論していかないとならない問題です。」

あなたも登録されている? “超高解像度”社会

ゲスト 星周一郎さん(首都大学東京教授)

ここからは、防犯カメラの運用を巡る議論に詳しい、星周一郎さんにも加わっていただきます。
万引き対策としては過剰だという今のご意見なんですけれども、どういうふうにお聞きになりましたか?

星さん:一方では、テロ対策では許されるけれども、万引きといった場合、例えば1,000円、2,000円といったようなものを考えた場合には、オーバースペックなところがあると思います。
ただ現実には、ネットオークションでの転売目的とかで、10万とか100万という単位の、店の存続に関わるような、地域社会の存続に関わるような大きな被害も出ているという実態もあります。
(そうすると、やはりメリットとデメリットのバランスということになる?)
もちろん、こういったようなシステムが入った場合、映像を撮られるかの不安というものも当然あると思います。

そこをまず議論して、コンセンサスを作っていかなければいけないということなんですね。
ただ、店に入っただけで写真が撮られるというのは嫌な気もするが、そもそも、このルールはどうなっている?

星さん:これだけ高精細の画像になってきますと、個人を識別することが非常に容易になってきますので、撮られた画像は全部、個人情報に原則として当たるんだということで、個人情報保護法の対象ということになってきます。
個人情報保護法の対象になりますと、本人に対して、取得していることを通知しなければいけないと、あるいは第三者に提供する場合には、同意を得て行わなければいけないといったような原則になっています。

お店で顔識別が行われていることが分からない方が多いと思うが、それはなぜ?

星さん:1つには、犯罪者の情報というのは、通知をして同意を得て運用するということはできないものですので、どうしても同意なしという形になるんですが、他方で、こういう技術は、まだそれほど理解が得られていないということがありますので、お店の側も少しちゅうちょしてしまっているという現状があるんだと思います。
(「識別してます」というと、お店に対して反感が募ってしまうというようなこともある?)
まだ、そういったようなところに対する一般の理解が得られていない新しい技術なんだということだと思います。

顔などの個人情報は変更が利かないもの 誤って登録されてしまったり、流出した場合の対策はどうなっている?

星さん:誤登録されてしまうというのは登録された側にとっても、非常な不利益なんですが、実は登録する側にとっても、そういったような誤った情報を登録してしまうというのは、無用なトラブルを生じさせるだけだというところがあります。
したがって個人情報は、内容を常に正確に保たなければいけないという法律上の義務はありますので、それをいかに実効的なものにしていくかと、例えば第三者機関みたいなものを作ってチェックしてもらうといったような仕組みも考えていく必要があるかと思います。

こうして進歩する画像識別技術をどう使いこなしていくのか、私たちも当事者として議論に加わって、話し合っていかなければいけない これについて、どう思う?

森川さん:やっぱり新しい技術というのは、必ず光と影の部分があって、この顔認識カメラに関しても、防犯とプライバシー保護、この両面から、もっともっと議論を詰めていく必要があるかなと思います。
ただ、セキュリティーに関しては完璧ということはないので、むしろ問題が起こったときにどう対応するのか、準備をしていく必要があるかなと思います。
こういった新しい技術全般ですが、やはり人類の進化につながってきたので、画像認識技術に関しても、例えば医療の分野で、がんを発見したりとか、また農業の分野で、ドローンを使って農地を改善したりとか、またスポーツの分野でも、さまざまな応用がされているので、こういった技術をいかに賢く使えるのか、教育も含めて、議論が必要かなと思います。
(セキュリティーに関しては、パスワードを変えなきゃいけないとか、分かっていても、なかなか実行に移せないところがあったりもするが?)
面倒くさいところも正直ありますね。
ただ学校でも、子どものときから教えていくということも大事なんじゃないかなと思います。

確かに怖い部分もあるんですけれども、やはり私たちみんな、何が問題なのかっていうことを正しく理解して、そして手当てをしていって、有効なツールとして利用していくということですね。

森川さん:やっぱり、まだまだ知られてない技術とか、知られてない使い方があるので、いかにそれをシェアして、そして問題解決につなげていくか、これが大事なんじゃないかなと思っています。

不安ではあるんですけれども、まだ、もやもやしているんですけれども、これから少しじっくりと考えて、何とかいい方策を考えていきたいなと思います。
こうして技術革新がどんどん加速していきますけれども、それを誰もが納得して使いこなすための議論も加速させていくという必要があると改めて感じました。