クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
No.39522017年3月16日(木)放送
“老人ホーム”が空いている!?

“老人ホーム”が空いている!?

“老人ホーム”が空いている!?

老人ホームというと、待っている人が多くて、なかなか入れないというイメージがありますが、今、ベッドが空いてきているんです。

まず見ていくのが、入居待ちが52万人に上るとされる、特別養護老人ホームです。

介護や医療的なケアなどのサービスが受けられ、国などから補助金が出ているため、年金の範囲内で入ることができます。
全国の特別養護老人ホームのベッド数は、56万床余り。

ベッドがどれだけ使われているかを示す稼働率について、今回、国が委託調査を行ったところ、その稼働率が96%と、100%に満たないことが分かりました。
入りたくても入れない高齢者がたくさんいる一方で、なぜベッドが空いているのか。
介護の現場を取材すると、さまざまな理由が見えてきました。

特養入居待ち52万人 なぜベッドに空きが?

東京・葛飾区の特別養護老人ホームです。

特別養護老人ホーム 桶川和則施設長
「全く使ってないですね。」

120のベッドのうち、10のベッドが空いたままです。
理由は、介護職員の不足。
国の基準で職員を確保できなければ、定員いっぱいまで受け入れることができないのです。

特別養護老人ホーム 桶川和則施設長
「死活問題ですね。」

求人誌で募集しても、なかなか人が集まらず、施設内に保育所を作るなど、あらゆる手を打ってきました。

特別養護老人ホーム 桶川和則施設長
「子育て支援を売りにしています。」

オープンから2年がたった今月(3月)。
職員を何とか確保し、初めて定員どおり、お年寄りを受け入れるメドが立ちました。
しかし…。

「あれだね。
できてる。」

3か月後には、同じ区で新たな施設がオープンするため、人材の奪い合いが激しくなります。

特別養護老人ホーム 桶川和則施設長
「実際は職員の取り合いもかなりある。
施設の方が多くなっているのが今の実態だと思う。」

ベッドが空いている、もう1つの理由は、制度の変更により、入れない高齢者が増えたことです。

地域包括支援センター職員
「薬飲んでないけど大丈夫?」

1人暮らしをしている、この男性も施設に入れなくなった1人です。
認知症を患い、薬を飲むことも忘れがちになっています。

地域包括支援センター職員
「私がいる前で飲んで。
忘れちゃうんだね。
心配、心配。」

着替えや入浴など、身の回りのことも1人では難しくなっていますが、息子夫婦は共働きで、十分に頼ることはできません。
自宅で1人暮らしを続けることは難しいとして、入居を申し込みましたが、断られました。

国が制度を変更したのは、2年前。
特別養護老人ホームの入居を待つ人が50万人を超える中、より介護が必要な人を優先させるため、入居条件に制限を加えました。
介護が必要な度合いが5段階のうち、2以下の人は原則入居できなくなりました。
認知症を患っている男性は、歩いたり食べたりすることは1人でできるため、要介護2。
男性は火の不始末など、目を離せない状況です。
しかし、国の制度の変更により、施設が空いていても入れないのです。

地域包括支援センター職員
「綱渡り状態だと思う。
もし事故があって、命を落とすことになったら困る。
だけどホームに入れる、介護度ではない。
厳しいと思う。」

一方、過疎化が進む地方では、別の理由でベッドが空いています。
施設の整備が進められている中で、人口が減少し、入居を希望する高齢者が減ってきているのです。

特別養護老人ホーム 徳永あけみ施設長
「4時くらいには着けると思います。」

入居希望者の減少が続く施設は、利用者の確保に奔走しています。
この日も、病院に営業に出向いていました。

特別養護老人ホーム 徳永あけみ施設長
「今日はどうもすみません。」


入院している高齢者を紹介してほしいと、各地の病院を回っているのです。

特別養護老人ホーム 徳永あけみ施設長
「ご退院の見込みがあって、うち辺りにという方は?
うち辺りでお話しいただけたら、うれしいと思うんですが。」

しかし市の計画では、さらにもう1つ、施設を増やす予定です。
すでに7つある施設の代表者たちは計画に反対しています。

入居を待つ高齢者が100人を超えているという市の説明に対し、実態はもっと少ないのではないかと見ているからです。

特別養護老人ホーム 施設長
「実際に順番が回ってきて、入られるかと言うと、『まだ家でみられる』とか。」

特別養護老人ホーム 理事長
「お声がけすると、半分以上の方が何らかの理由で入れない、入らない方がいる。」

特別養護老人ホーム 施設長
「人口密度に合った施設整備を計画していただきたい。」

反対の声を受け、市は計画を延期しました。
入居を希望する高齢者について今後、実態を把握したいとしています。

美祢市 高齢福祉課 河村充展課長
「市民のニーズがどの程度あるのかが一番重要なのかなと。」

50万人以上の受け皿を確保しようと、国が推し進めている施設の整備計画。
国は、現場で起きている矛盾をどう考えているのか。

「空いているベッド、ミスマッチをどうお考えに?」

塩崎厚生労働相
「私どもとしては引き続き、私どもの1億総活躍プランの中でもはっきりしているので、介護施設整備に全力をあげていくということは、何も変わらない方針です。」

特養入居待ち52万人 なぜベッドに空きが?

ゲスト 綾戸智恵さん(ジャズシンガー)
ゲスト 結城康博さん(淑徳大学教授)

綾戸さんは10年ほど、お母様の介護を続けているが、今のように、入りたい人がいるのにベッドが空いてしまっている現状をどう見た?

綾戸さん:人にはいろいろありますやん、事情が。
お年寄りのニーズもあるけど、見られるタイプのお仕事をする県と、夫婦2人、東京の都心やったら、仕事に行ってしまうとか。
どんだけ年寄りにとって、設備がいるんかというのは、町それぞれで違うということを。
(介護する方の状況もあるし、ご本人の状況もあると?)
家族がいっぱい住んでて、3代ぐらい家住んでる言うたら、「お母さん、仕事行ってくるな、おじいちゃん見ててな」、いろいろありますやん。
ベッドの数よりも、人の数というか。
先生、詳しく説明してくださいよ。

待っている人がいるのに、稼働率を調べたら、100%ではないということだが?

結城さん:数にすると、地域によって差がありますけど、全部で2万ベッドぐらいが空いているということで、今までも、確かに96%の稼働でも空きがあったんですけれども、数にすると2万ベッドが空いているということを、まずご理解いただいた方がよろしいかと思います。
(そこには、入院や死亡などで一時的に空いているものも含まれている?)
新しい観点もあるんですけど、まずは、今までの空いているベッドというのは、たまたま入院して、その間、空いているとか、もう入居者が決まっていて、ちょっと1か月ぐらい待っているとかという一時的な入居がある程度あったんですけれども、実際は、いろいろ見ていくと、職員不足でベッドを休ませなければいけないという。
ニーズがたくさんある地域なんだけれども、ベッドを止めておかなければいけないとか、そもそも地域によって少ない、そういう所で空きベッドが出始めているという要因が、新たに今、見つかるという調査が出ているということですね。

それが一時的ではなく、慢性的に空きの状態になってしまっていると。

綾戸さん:数字の問題じゃないものね?
数字というか、何人おるではなく。
やっぱり、どういう状態の家族がいるかいうことですよね。

さらに、調査では「空きベッドがある」と答えた施設に、その理由を聞きました。
まず、「職員の採用が困難だ」というところが30%ありました。
そして、一番多かったのが、「申し込み者数が少ない」というのが38%でした。
結城さん、これはどう見る?

結城さん:この調査は今、まだ途中経過なので、分析しているところですけれども、明らかに、VTRにもあったように、職員不足によって、空きベッドがあるということと、先ほど申し上げたように、申込者数がかなり減って、空きベッドがあるということがあります。

もう1つは、例外はありますけれども、特養の場合は、要介護3以上という制度変更によって、利用者数が減ったというのも大きな背景にあると、私は考えています。

綾戸さん:私、介護にランクをつけることはよう分かってないんですけれども、歩けるけど危険やとかありますやん、1人で住むのが。
そうなったら、介護力がもっと高くないとあかんのちゃいますか?

結城さん:特別養護老人ホームは、要介護4とか5とか重い人だったんですけれども、実は2とか、認知症の方は、体は動けるんだけれども介護が大変なんです。
国の政策として、例外はあるけれども、3からにしたことで2の人が入れなくなってきているということも、非常にミスマッチであると思います。

そして、ベッドが空いている背景には、こんなデータもあるんです。
2030年までに高齢者の人口がどれだけ増えるのか、都道府県ごとに示した地図です。
赤色で示された高齢者人口が20万人以上増える地域というのは、東京や大阪、主に大都市圏に限られます。
一方で、増加数が10万人に満たない、青色の県が半数以上です。
人口が増える所、増えない所が分かっているのに、施設は一律に作られていると?

結城さん:基本的には、自治体もちゃんとニーズを調査して作ることになっているんですけれども、実際、自治体の計画が、ずさんであるということは、私の認識ではあります。
ですから、きちっと自治体も事業計画を、ニーズ調査をして、やっていないところに、ある程度のミスマッチが起きているのではないかなと思います。

綾戸さん:算数から来るミスですね。

結城さん:単純に言うとそういうことですね。
VTRにもあったように、待機者=ニーズだけではなくて、さっき電話をかけたんだけれども、何人もようやく待っていると、そういう綿密な調査をしていないところに、こういう問題が出ているんではないかと思います。

老人ホームには、厚生労働省が作る施設のほかに、国土交通省が整備を進める施設もあります。
それが、サービス付き高齢者向け住宅です。

バリアフリーの賃貸住宅で、利用料は月に、平均およそ14万円です。

目標60万戸を掲げて、わずか6年で、21万5,000戸が建設されました。
しかし、建設ラッシュが起きた結果、今、各地で異常事態が起きています。

高齢者住宅“破綻” 建設ラッシュの裏で

名古屋から車で1時間。
人口17万の愛知県西尾市です。
この地域では、半径5キロの範囲に施設が乱立しているといいます。

この施設は、全体の半分の部屋が空いています。
赤字続きで、いつまで続けられるか、施設の関係者は不安を感じています。

施設のスタッフ
「今、みんなガラガラ。
ここもガラガラ。
うちだけじゃないと思う。」

そこから車で15分。
8億円かけて建設された、50部屋ある施設です。
オープン前に倒産。
今も閉鎖されたままです。

「ここも鉄骨だけですね。」

建設の途中で、放置されたままの施設も。
サービス付き高齢者向け住宅が急激に増えた背景には、国がさまざまな優遇措置を講じて、建設を推し進めてきたことがあります。
施設を建設すると、建設費用の補助金や固定資産税などの優遇が受けられます。

さらに、サブリース契約という仕組みが、建設を加速させました。
土地の所有者は建設費を出すだけで、施設の建設や運営はすべて会社に任せます。
空室があっても、一定の賃料収入が保証されるのです。
国の政策を追い風に、建設会社や経営コンサルタントなどが続々と参入。

当時 運営会社社長
「ここで一番注視する問題は、法律の裏付けがあるということ。」

愛知県西尾市で、多くの施設の建設を手がけた会社のセミナーです。
土地の所有者に、サブリース契約によって土地を有効活用できると呼びかけていました。
この会社に勧められて、使っていなかった土地にサービス付き高齢者向け住宅を建てた男性です。
契約する前は、毎年200万円の固定資産税がかかっていたといいます。

サービス付き高齢者向け住宅を建てた男性
「建築費も安くなる。
固定資産税なども安くなる。
おいしいところばかり並べられたので、飛びついてしまった。」

男性は金融機関から、およそ4億円を借り入れ、施設を建てました。
しかし、運営会社が倒産。
借金だけが残りました。

サービス付き高齢者向け住宅を建てた男性
「人(高齢者)のために役に立つと思ったが、だまされたという感じ。
手放すというか買い手がなければ、自己破産。」

なぜ施設は相次いで破綻したのか。
運営会社の社長は、国の方針に沿って、高齢者の受け皿を作りたかったと説明しました。

当時 運営会社社長
「私は特養の後継だと確信した。
そのために建設会社を作ったり、介護会社を作ったり、当時この形を一生懸命しようとした。
だけども私は限界を感じた。」

会社の元社員は、私たちの取材に対し、国の後押しもある中で、コスト意識が甘くなりがちだったと証言しています。

元社員
「要するに収支をちゃんと考えていない。
1日過ぎれば人件費などが、500万、500万、500万。
どんどん負債が増えていく。
事業として成り立たない形だと思う。」

この会社の破産手続きに関する資料です。
「施設が増え、入居率が低下したため、収益が悪化した」と記されていました。
施設を急増させた国の政策と現実との間に、大きな隔たりが生じていることが明らかになりました。
ついの住みかと考えていた施設の倒産は、利用者やその家族にも多大な影響を及ぼします。

母親が施設に入居していた 徳倉哲穂さん
「毎朝、必ず線香をあげるんですよね。」

倒産した施設に入居していた、徳倉千鶴子さん。
施設を出た後、認知症の症状が悪化。
3か月後に亡くなりました。
息子の哲穂さんは、生活環境が急に変わったことが影響したと感じています。

母親が施設に入居していた 徳倉哲穂さん
「本当に憤りを感じちゃいますね。
入居者がいなくて経営破綻して、結果的に利用者、家族が困ることにつながる。」

高齢者住宅“破綻” 建設ラッシュの裏で

NHKが調査したところ、廃業や登録取り消しの申請をした施設が、全国でおよそ260件に上ることが今回、初めて明らかになりました。
サービス付き高齢者向け住宅に補助金を出しているのは、国土交通省です。
整備計画を見直すつもりはないのか聞きました。

高齢者住宅“破綻” 整備進める国は

(サービス付き高齢者向け住宅に)空きが目立っている状況が分かってきている この現状をどう捉える?

国土交通省 住宅局 堀崎真一企画専門官
「補助金を出していることから考えると、活用された方がいいが、必要な住宅が供給されていることが重要。」

取材でさらに分かってきたのが、地方の入居のニーズが比較的、少ない地域で次々と建てられていることが見えてきているが?

国土交通省 住宅局 堀崎真一企画専門官
「あらかじめ市町村に意見聴取をして、市町村の街づくりと整合したものに限って、国も支援する仕組みを設けている。
市町村が街づくりの観点から、サービス付き高齢者向け住宅の立地誘導とか、(市町村が)供給のコントロールをしていただけたらと考えている。」

“ついの住みか”どうする 施設整備のあり方

国土交通省は、市町村の意見を踏まえて、今後も整備を進めていく方針だとしているが、地域ごとの適正な数の整備をしていくには、今後どうすればいい?

結城さん:まず、特別養護老人ホームの52万人待機者がいる、このお化け的な数字を、やはり国は早く是正して、ちゃんとしたことをはっきり言っていかないと、こういう無駄遣いが起きると、僕は思います。
(本当は、その数は違うかもしれない?)
これは、現場の専門家は分かっているんですけれども、一般の人は、52万人で特養って、なかなか難しいねと、だから、これは税金の無駄遣いがありますから、利用者も宝くじに当たるような特養だというイメージを払拭していただいて、サ高住と特養を上手に使うということが大事だと思います。

綾戸さんは、どう考える?

綾戸さん:思い込み、リサーチ不足、ごう慢、この3つが敗材と、子どものころに習ったことがあります。
敗材とは、負ける材料。
どうでしょう?
数に頼って、作り過ぎたんかな。
やっぱり歩かない子より歩く子の方が危ないでしょ。
1歳児より3歳児の方が危険が多いですよね。
どないしてんやろ、難しいな。
先生、助けて。

結城さん:ですから、有効な資源、特に介護士不足も深刻なんですけれども、こういう政策のミスマッチをやっていると、余計、介護士不足になりますから、ここは政策のところの重要なところだと思います。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

あわせて読みたい

PVランキング

注目のトピックス