クローズアップ現代

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No.39512017年3月15日(水)放送
北朝鮮 高まる脅威 ~化学兵器と闇のビジネスに迫る~

北朝鮮 高まる脅威 ~化学兵器と闇のビジネスに迫る~

キム・ジョンナム氏 殺害1か月 北朝鮮 高まる脅威

キム・ジョンナム氏の殺害事件から1か月。
捜査は難航していますが、北朝鮮による、国家ぐるみの犯行であるとの見方が一層強まっています。
北朝鮮は、マレーシアとの間で関係が極度に悪化。
さらに、ミサイルの発射を強行し、ますます孤立を深めています。
しかし、取材を進めますと、北朝鮮が東南アジアを中心に、闇のネットワークを構築し、化学兵器やミサイル開発などの資金源としていることが見えてきました。

追跡!北朝鮮 闇ビジネスの実態

先月(2月)、マレーシアの国際空港で起きたキム・ジョンナム氏の殺害事件。

この事件に関与したとして、マレーシア警察に一時拘束された北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル氏です。
籍を置いていた会社では、勤務実態がなく、給与も受け取っていなかったリ氏。
その会社を隠れみのにビジネスをしていたと見られています。

かつて、東南アジアにある北朝鮮の大使館に勤務し、2年前に脱北した元外交官、ハン・ジンミョン氏です。
北朝鮮は国を挙げて、各国にリ氏のような要員を派遣し、外貨稼ぎを手広く行っているといいます。

北朝鮮の元外交官 ハン・ジンミョン氏
「北朝鮮の人が外国で会社を設立するには、外務省の支援が必要です。
リ氏は北朝鮮から現地の会社に派遣され、国家のためのビジネスを行っていたと思われます。」

北朝鮮は、どのように外貨を獲得しているのか。
取材を進めると、その実態が明らかになってきました。

マレーシア人のムスタファ・ヤークブ氏。
2005年ごろ、北朝鮮大使館から紹介された人物にビジネスをしないかと誘われ、会社を設立しました。

マレーシア企業役員 ムスタファ・ヤークブ氏
「彼らは普通のビジネスマンだと思っていました。
身辺調査もしませんでした。」

会社では、北朝鮮から軍事用の通信機器などを輸入。
マレーシア企業の社名を表示して、アフリカに転売していました。
国連の制裁対象となっている軍事機器のロンダリングに、マレーシア企業が利用されたのです。
こうした闇の取り引きに、外国企業を取り込む手口も見えてきました。

韓国系オーストラリア人のピーター・チョン氏です。
アジア各地に販路を持つ商社を経営し、建設機械などを販売しています。

総合商社社長 ピーター・チョン氏
「写真を見せるよ。」

2年前、北朝鮮からピョンヤンに招待されました。

総合商社社長 ピーター・チョン氏
「彼らはオーストラリアから、羊毛と肉の輸入をしたいと言いました。
私の方に異存はないので、価格交渉を行いました。」

そこで厚いもてなしを受けたチョン氏。
政府高官から、フィリピン南部の武装組織への武器の販売を仲介しないかと持ちかけられたといいます。

総合商社社長 ピーター・チョン氏
「『武器の輸出をやらないか』と、彼らは言ってきました。
それは深刻な問題です。
調べてみるとだけ答えて話をそらしました。」

先週、こうした北朝鮮の闇のビジネスの一端が、国連によって報告されました。
北朝鮮は、取り引きの規模や範囲を拡大。
手口が巧妙化していると指摘しています。
活動の拠点は、東南アジア。
軍事用の通信機器や地対空ミサイルなど、国連の制裁対象となっている品目をアフリカや中東へ密輸しているとしています。

国連が報告書の中で名指ししている企業の1つが、マレーシアと北朝鮮の合弁企業「MKP」です。
アフリカを中心に、世界各地で建設や医療、テーマパークなど、さまざまな事業を展開。
国連の制裁に従わず、北朝鮮の銀行と不正な取り引きを繰り返している疑惑が持たれているのです。

「MKPですね。」

会社の所在地として登録されている場所に向かいました。
しかし、そこはすでに使われていませんでした。

「いつ引っ越したのか分かりますか?」

近所の住民
「5か月前だと思う。」

近所の住民
「ときどき大きな高級車が、たくさん止まっていました。」

手がかりを求めて、企業の登記簿を調べました。
役員の名前の一番上にあったのは、ハン・フニルという男性です。
アフリカを対象にした投資フォーラムに参加する、エドワード・ハンという人物。
韓国の有力紙・朝鮮日報は、このエドワード・ハン氏が、MKPのハン・フニル氏だと伝えています。
国連の疑惑の対象となっている、MKP。

その中心人物、ハン氏の自宅とされる場所を訪ねましたが、そこには別の人が暮らしていました。
先週末、MKPの社員に接触することができました。

「ハン氏は北朝鮮から来たのでしょうか?」

MKP社員
「それは知っていますが、直接会ったことはありません。」

「MKPは北朝鮮とビジネスを行っているのですか?」

MKP社員
「詳しいことは知りません。」

謎に包まれた、ハン氏。
その活動を知る人物から話を聞くことができました。

殺害されたキム・ジョンナム氏を知る、韓国人ビジネスマン。
北朝鮮から命を狙われる恐れがあるとして、撮影しないことを条件に取材に応じました。
ビジネスマンは、ハン氏は、北朝鮮が東南アジアで行う外貨稼ぎを取りしきっていたと証言。
そこから得た資金を北朝鮮本国に送金していたと話しました。
国際社会の監視の目をかいくぐる、北朝鮮の闇のビジネス。
そのネットワークがどれだけ広がっているのか、全貌はまだ解明されていません。

キム・ジョンナム氏 殺害1か月 北朝鮮 高まる脅威

ゲスト 平岩俊司さん(関西学院大学教授)
ゲスト 古川勝久さん(国連・北朝鮮制裁委員会 元委員)

今回、北朝鮮は核兵器のみならず、大量の化学兵器も保有しているという情報があった これは、深刻な状態だと受け止めていい?

平岩さん:北朝鮮の大量破壊兵器の問題は、これまで、核が中心に国際社会も非常に関心を高めてきました。
昔から化学兵器の可能性については、いろんな所で指摘がされていたんですけれども、実態がなかなかつかめなかったんですが、今回、仮にVXガスを北朝鮮が使ったということであれば、明確な1つの事例ということになりますし、北朝鮮からすると、通常兵器の老朽化が指摘されている中で、非常に安い価格で作れるということで、北朝鮮にとってみると、すごく魅力的な兵器ということになってしまうんだろうと思います。

古川さんは去年(2016年)まで、国連で北朝鮮に制裁が実行されているかどうかを監視していたが、具体的には北朝鮮は闇のネットワークを使ってどのように資金を集めていたのか?

古川さん:東南アジアは、経済の成長の拠点で、商業の中心地ということで、北朝鮮にとっても当然、重要な拠点です。

ここに、いろんなフロント企業を置いています。
現地の企業と一緒にジョイントベンチャーを組んでみたり、あるいは現地の企業の中に、北朝鮮人のエージェントをしたり、フロント企業があると。
(一見すると、北朝鮮だということは分からない?)
分からないです、外から見たら。

こういうフロント企業を前に立てて、海外に対して、兵器類等の販売をしてみたり、あるいは逆に、東南アジアで生産されている最先端の工業製品を調達して、本国に送ってみたり、または、もう1つ重要なポイントとして、さまざまな合法、非合法の北朝鮮のための金融の拠点、いわば国際の金融の拠点に引っ掛からないようなマネーロンダリングの拠点として使っている。
こういう実態がございます。

実際には、どういうようなものがやり取りされていた?

古川さん:昨年摘発されたアイテムとしましては、軍事用通信機器、実際には、これは北朝鮮の企業なんですけれども、マレーシアの企業に偽装したものが、アフリカに輸送されてました。
ほかにも、さまざまなロケット弾等をはじめ、こういう通常兵器、これをほかの所から、北朝鮮からアフリカ、中東に送る時にも、こういう東南アジアの拠点を通して、お金をアレンジしたり、船舶アレンジしたり、いろいろやっています。
(アフリカ、中東とあったが、そうした取り引きの対象は?)

いくつか旧ソ連製の兵器体系を持ったアフリカの国々、これは今、北朝鮮以外に手入れしてくれるような国がありません。
あるいは中東の非国家主体の武装組織。
足がつかないように、ほかの国々が北朝鮮製の兵器を調達して回している、そういう事案が確認されています。

今回のことで、マレーシアと北朝鮮の関係は緊張状態にある こうした闇のネットワークビジネスは、やりづらくなるのでは?

平岩さん:マレーシアと北朝鮮の関係が、これで悪化をしていけば、そういう傾向になるんだろうと思うんですが、今、北朝鮮とマレーシアの間で、今回の問題をどうするのかということが、恐らく水面下で行われておりますので、これがどうなるのかというのが1つ注目です。
それから、仮にそのマレーシアが活動しにくくなったとしても、東南アジアのほかの国にも、VTR、あるいは古川先生のご指摘のように非常に巧妙ですので、なかなか完全に北朝鮮の活動空間というのを制限するのは難しいと言わざるを得ないと思います。

こうした状況の中で、どのように対処していけばいいのか、注目されるのが、アメリカです。
最近の北朝鮮の動きに対しまして、トランプ大統領の発言も変化しつつあるんです。

北朝鮮 高まる脅威 トランプ政権の出方は?

ドナルド・トランプ氏
「私は北朝鮮に行くつもりはないが、キム・ジョンウン氏が来るなら受け入れよう。
会議室でハンバーガーでも食べながら話し合おう。」

大統領選挙中、北朝鮮との対話に前向きな姿勢を示していたトランプ氏。
しかし…。
日米首脳会談のさなかに、北朝鮮がミサイルを発射。
トランプ大統領は怒りをあらわにしました。

アメリカ トランプ大統領
「(直接会談は)もう手遅れだ。
彼のやり方には頭にきた。
ミサイル防衛以外のことも検討している。」

「どんなこと?」

アメリカ トランプ大統領
「それ以上のことだ!」

先月、トランプ政権は安全保障の担当者を集め、対北朝鮮政策の抜本的な見直しに着手しました。
そこでは、軍事行動を含む、あらゆる可能性が検討されたと伝えられています。
軍事行動はあり得るのか。

トランプ政権に近いシンクタンクで、対北朝鮮政策の提言を行っている、クリングナー氏が取材に応じました。
トランプ大統領にとって、軍事的オプションを取ることは、決して容易なことではないといいます。

ヘリテージ財団 上級研究員 ブルース・クリングナー氏
「アメリカは自国と同盟国を守らなければなりません。
北朝鮮が攻撃をしかけてくるという確かな情報があれば、先制攻撃も辞さないでしょう。
しかし私は武器開発の阻止を目的とした軍事行動は検討されていないと思います。
朝鮮半島で、全面戦争になってしまうからです。」

北朝鮮の脅威に、どう向き合うのか。

クリングナー氏は、中国の一層の協力が不可欠だといいます。
トランプ政権は、中国にある複数の会社が国連決議を守らずに、北朝鮮の外貨稼ぎに加担していると見ています。

今日(15日)から日本、韓国そして中国を訪問するティラーソン国務長官。
中国への働きかけを強める構えです。

ヘリテージ財団 上級研究員 ブルース・クリングナー氏
「制裁を効果的なものにするために、中国を説得しなければなりません。
ティラーソン国務長官は、中国にこう伝えるでしょう。
『北朝鮮への圧力をためらえば中国も望まない危機に直面することになる』と。」

北朝鮮 高まる脅威 国際社会 打つ手は?

アメリカは選択肢の1つとして、軍事行動も有り得るのかどうか 平岩さんは、どう見る?

平岩さん:アメリカがあらゆる選択肢をといった場合には、当然、この軍事行動も含まれると考えるべきなのだろうと思います。
もちろん、それが全面的な戦争を意味するわけではなくて、例えば核関連施設への部分的な攻撃によって、核能力をそぎ落とすということを目標としてやるという可能性があります。
とりわけ、トランプ政権の場合、前のオバマ政権が戦略的忍耐ということで、北朝鮮に無為に時間を与えてしまったという反省から、こういった極端な行動を取る危険性について、注意をする必要があるのだろうと思います。
それと、もう1つの極端な選択肢なんですけれども、これは今の段階では、ほとんど可能性が高いとは言えないんですけれども、北朝鮮の核放棄がかなり難しいということであれば、とりあえず今の現状を認めて、これ以上悪化をさせないという取り引きを北朝鮮としてしまう可能性というのも全く排除できないので、国際社会はアメリカの動向を見ていく必要があると思います。

国連は、北朝鮮に制裁を科している 例えば、すべての兵器の取り引き禁止や、石炭など、鉱物資源の輸入制限・禁止、外国企業の事務所の閉鎖など、これを達成することで、北朝鮮の外貨収入の4分の1を減らしてしまおうという目的があるわけだが、実際はどうなのか?

古川さん:国連制裁、ほかにも金融制裁とありまして、かなり包括的なツールが入っています。
ただ、これを本当にしっかりやるというのは、実は非常に難しいです。
すべての兵器の取り引き禁止、兵器というのは、北朝鮮は今、すべてパーツに分解して輸出していますから、市販品なんです。
これが、そういう兵器目的で輸送されているかどうか、途中で貨物を捕まえてみると判断するのは難しいです。
こういうことをするためには、各国がちゃんと、そういうこともできるような法体系を持ち、それをちゃんと運用できるような行政官も必要です。
したがいまして、トレーニングも必要です。
ですから、国連制裁をしっかりやるというためには、かなり徹底した国際協力が必要になります。

こうしたものを、いわゆる本当に力のある、実効性のあるものにするためには、中国の存在、協力が欠かせない やはり中国の関わりというのは大きい?

平岩さん:当然、中国が積極的に対応してくれないといけないと思います。
とりわけ、北朝鮮と取り引きのある企業ということになりますと、中国が非常に大きいので、中国の姿勢というのは重要になります。
ただ、今の段階で、中国が一方的にやるのは、なかなか難しいので、これはアメリカがかなり積極的に中国に働きかけをして、米中関係の枠組みの中で協力を求めていく必要があると思います。
そういう意味で今、ティラーソン国務長官が、日本、韓国、中国を訪問するというのは、どういう動きがあるのか、今後、注目する必要があると思います。

今後、こうした制裁も含めて、国際社会はどんな対応をすべき?

古川さん:もう聞き慣れた言葉ですけれども、対話と圧力。
それを同時並行的にやるということが重要だと思います。
まずは、制裁というのは、あくまでも外交戦略のためのツールです。
それ自体が戦略ではありません。
制裁をしっかりやる、そのためには、今申し上げたような国連制裁を、加盟国がしっかりできるように、例えば日本であれば、東南アジア、中国なども含めて、実務レベルで能力増強支援をしていく必要もあります。
さらに、国連安保理決議に基づいて、もう1つ大きな制裁の柱がありまして、それは、加盟国は単独で国連制裁違反の企業、個人を制裁する義務があるんです。
ですから、もし中国企業、個人、明らかに悪意のある制裁違反をしているのであれば、それは当然、加盟国が日米韓、ヨーロッパ等が連携して、制裁対象にする必要があります。
こういうことをして制裁を強化しながら、しかし同時並行的に外交的アプローチというのも忘れずに、しっかりと踏まえていく。
こういうふうな対話と圧力のシナジー、連携をどうやって作り出しながら、北朝鮮を対話の場に引きずり出すか、これが問われていると思います。

今後どのような対応が必要だと考える?

平岩さん:北朝鮮が今のところ、なかなか国際社会に対する挑発というものをやめずに、姿勢を変えてこないとすれば、まずは、北朝鮮の脅威に対する防衛体制というものをしっかりしなければならないと思うんですね。
そのためには、やはり日本とアメリカと韓国、この3か国が、日米韓の協力体制を、防御に対する、北朝鮮の脅威に対する防御体制というものを、しっかりまとめていく必要があると思うんですが、今、ご案内のとおり、韓国が大統領選挙を控えています。
そういう状況ですので、なかなか対外的に積極的な姿勢が取れない。
そういう中で、やはり日本の役割というのは非常に大きなものになりますし、それから中国を含めた対応が必要になりますので、その部分についても、日本の役割というのが、国際社会、注目されるところだと思います。

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